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【mobidec 2002】
クアルコム、BREWでケータイアプリの共通市場創出を目指す

クアルコム ジャパン 事業戦略部長 山田氏
 8月29日、30日の2日間、モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)および翔泳社主催による携帯電話関連のコンテンツ開発者向けイベント「mobidec 2002」が青山ダイヤモンドホール(東京・表参道)で開催されている。その中で、クアルコム ジャパンの常務 事業戦略部長の山田 純氏は「BREWが創る新しいモバイル・インターネット世界」と題した講演を行なった。


「アプリの共通市場の創出」がBREWの目的

 講演の冒頭で山田氏は、BREWの事業の目的が、全世界のキャリアと共同で「アプリケーションの共通市場」を創出することであると語った。

 まず「これからのデータ通信時代においては、そのデータ通信を活かすアプリケーションが価値を握る」とアプリケーションの重要性を強調。そしてアプリケーションのデベロッパーにとっては、アプリケーションを提供できる市場の規模が重要となる。こうした市場を、BREWで創っていこうという考えだ。

 山田氏は「手ごわい相手は世界の携帯電話の60%を占めるGSM」と表現する。その上で「データ通信とアプリケーションによって、状況を変えていくことができる」と、巨大なGSM市場に十分立ち向かっていけるという考え方を示した。

 BREWのビジネスについて山田氏は「CDMAチップに搭載されたプログラム実行環境」「開発キットの提供」「アプリケーション配信・販売システム」の3つで完全なソリューションを提供していく、というBREWのあり方を明らかにした。そのビジネスの展開については「数」と「柔軟性」「幅」の3つの次元で展開していくと語った。


順調に世界で採用例を増やす「数」

 BREWの基礎となるCDMAシリーズの展開について山田氏は「GSMと戦っている半ばだが、1億3000万まで成長した。年末には2億5000万になる」と語った。そして全世界で16のキャリアがBREWを検討もしくは採用していると実例を挙げて示した。

 まず最初にBREWサービスを開始したのは韓国のKTF。KTFではすでに100万の加入者がいて、1日6万ダウンロードがあるなどのデータを披露。年末までに300万加入まで増える見込みなど、好調さをアピールした。続いて米国でも大手キャリアのVerizon WirelessがBREWサービスを全国展開していることを紹介。また巨大な携帯電話市場として注目を集める中国でも、BREW採用が正式に発表されたなど、海外で順調に採用例が増えていることを紹介した。

 これに対して日本のauでは、ダウンロード非対応のながらC3003PにBREW対応アプリケーションがプリインストールされ、2003年の第1四半期にBREW 2.0を採用したサービスを展開する予定だと語った。


配信形式の「柔軟性」

 BREWの特徴のひとつとして、そのソリューションの中に配信・課金システムが含まれるというものがある。海外ではコンテンツ課金システムを持っていることが少ないので、そこを補うためにBREW側で課金システムを管理しようという考えだ。

 また、すべてのダウンロード可能なアプリケーションにIDを与えて一元管理するシステムも提供される。これによりアプリケーションの連携が容易になるという。

 もちろん、配信をせずにBREWアプリケーションを端末にプリインストールすることも可能だ。これにより、たとえばブラウザや日本語変換システムなど、携帯電話が搭載する機能をほとんど同じアプリケーションで動作させることが可能となり「サードパーティ(たとえばモバイルWnnを作るオムロンなど)との連携で端末コストを下げることも可能になる」という。サードパーティ側にすると、端末ごとにアプリケーションを作りこむ手間を減らすことが可能となる。

 またBREWには、認証機関に認証されて電子署名が付与されたものしか実行できない、という仕組みがある。BREWは制限の設けられているJavaとは違い、携帯電話のほとんどすべての機能にアクセスすることが可能だ。そのためウィルスなど悪意のあるプログラムもありうるわけで、そうしたものが流通することがないように、BREWアプリケーションはキャリアなどが提供する認証機関で認証され、専用のサーバーに置かれることでダウンロード・実行が可能になる。もちろんこうしたシステムも、前述した課金システムやID管理システムと連動している。

 BREWアプリケーションの認証の詳細については、提供するキャリアによって変わるわけだが、韓国や米国での実績から言えば、審査までに3日、配信可能にするまでに3日と、だいたい1週間くらいの時間がかかるという。

 またBREWの配信システムで特徴的なものとして「リコール可能」というものがある。BREWでは、誰がどのBREWアプリケーションをダウンロードしたり、逆に端末から消去したかなどを、すべてサーバー側で管理するというシステムがある。これにより、一度配信されたBREWアプリケーションにバグが見つかった際、そのBREWアプリケーションをダウンロードして消去していない端末に対して「リコール」を行なえるわけだ。リコールを行なわれると、自動的にアプリケーションの消去や、新しいBREWアプリケーションとの置換などの対処がなされ、危険なバグへのスムーズな対応が可能となる。極論を言えば、最初のバグ報告があった時点でリコールすることにより、バグによる障害をその最初の1件で留めることすらできると言える。


 このほかBREWの特徴的な機能として「Extension」というものが挙げられる。ExtensionとはAPIやDLLに当たるもので、ユーザーが直接実行するプログラムではなく、他のプログラムが参照するプログラム、というものだ。たとえばビデオコーデックや3Dグラフィックエンジン、プロトコルエンジンなどが考えられるが、こうしたExtensionも、普通のBREWアプリケーションと同様に開発でき、同様に認証を受けて配信される。

 BREWのExtensionがユニークなのは、こうしたExtensionをどのBREWアプリケーションが利用しているかなどを、サーバー側と実行環境側で常に把握することで、依存関係にあるExtensionに収益配分を行なうということだ。この仕組みにより、多数のBREWアプリケーションに採用されるような優れたExtensionを開発する、といったビジネス展開も可能になるという。


高速かつ応用範囲の広い動作環境の「幅」

 山田氏はJavaなどに対するBREWの優位性について高速であることを強調する。「VMやインタプリタを通すより数倍の速度で動く。電子署名の確認を含め、一瞬で起動する」という。

 またExtensionなどに限らず、BREWアプリケーション同士で連携できるという特徴もある。たとえばメーラーとランチャー、画像表示ソフトが連携動作する、といったことも可能になるわけだ。

 オープンなネットワークを利用できるということもポイントの1つとなる。Javaプログラムでは通常、HTTPによる通信しかできないが、BREWではソケットとなるAPIを用意すれば、TCP/IP上で動作するあらゆるプロトコルを扱うことが可能となるわけだ。山田氏は例として「UDPパケットを使った完全対戦ゲーム」や「TCP上の独自プロトコルを使った『真の』インスタントメッセーシング」などの例を挙げた。


高速性と柔軟性をデモでアピール

 山田氏によるプレゼンテーションの後には、実機によるデモンストレーションも行なわれた。ちなみにデモでは、C5001Tなど発売済みの端末のソフトウェアを書き換えたものが利用されている。クアルコムによると、現在発売中の端末のチップはBREWに対応していて、ソフトウェアを書き換えるだけでBREWアプリケーションの実行が可能になるという。講演会場で展示されていたC5001Tでは、ダウンロード専用のBREWアプリケーションを使ったデモンストレーションも行なわれていた。


 まずデモが行なわれたのは、KDDI研究所が開発したベクトル地図表示アプリケーション「Walking Navi」。同様のアプリケーションのJava版では2秒に1枚程度の地図描写だったが、BREWアプリケーション版では1秒に2枚程度の地図描写が可能になっているという。これにより、よりストレスのない地図のスクロールや拡大縮小操作が行なえるわけだ。


 次にデモが行なわれたのは、富士通によるインスタントメッセージング(IM)システム「FLAIRINC(フレアリンク)」。これはMSN MessengerやICQなどと同じ、いわゆるIMソフト。たとえばBREWアプリケーションで自分の状態を「コーヒーブレイク」に変更すると、他のBREW端末やパソコン上のユーザーリストに即座に反映される、といったデモが行なわれた。フレアリンクにはこの他にも、メッセージチャット中にGPS情報を元にした地図を表示させたり、画像を表示させる機能がある。また待機状態で、ユーザーの位置情報に応じて広告バナーを表示させたり、企業ソリューション向けとしては特定の条件に当てはまるユーザーに対してメッセージを送るなどの機能があるという。


 デモンストレーションを行なった富士通 システムインテグレーション事業本部の塚原 哲矢氏は、インスタントメッセージングの可能性として「人だけでなくスケジュールが変わることだってIMに表示するべきプレゼンス」として「IMはメールやWebに並ぶ常時接続時代のサービスインフラ」と語った。また、インスタントメッセージングのための環境として「TCP・UDP/IPコネクション」「常時接続やサーバーからのプッシュ」「ダウンローダブル」「位置情報や電話帳との連携」という面から「BREWが最適」とした。一方では、「欧州で展開中のGPRSとOMA陣営へも展開していきたい」と語った。フレアリンクのシステムは、11月にVer1.0のサーバーパッケージと各種クライアントが出荷予定だという。


・ クアルコム
  http://www.qualcomm.com/
・ mobidec 2002
  http://www.shoeisha.com/event/mobidec/


(白根 雅彦)
2002/08/30 18:50

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