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【WIRELESS JAPAN 2004】
有力CP各社による定額制をテーマにパネルディスカッション

 WIRELESS JAPAN 2004最終日となる23日午後のカンファレンスで、「最新モバイルビジネスに関するリレープレゼンテーション」と「モバイルCPのビジネスモデル創造 ~定額制ネットワークにおけるビジネスモデル~」と題されたパネルディスカッションが行なわれた。後半のパネルディスカッションのパネラーはドワンゴ 社長の小林 宏氏、サイバード 常務取締役の中島 謙一郎氏、インデックス メディア事業部長 中村 礼樹氏、スクウェア・エニックスのモバイル事業部 部長の洞 正浩氏。前半のリレープレゼンテーションはパネラーの各氏もしくは代理による。モデレーターはモバイル・コンテンツ・フォーラムの事務局長 岸原 孝昌氏。


多様化するコンテンツプロバイダー各社の状況

 パネルディスカッションに先立ち、パネラーの各氏が自社の方向性と事業の説明を行なった。


ドワンゴの森氏
 ドワンゴの小林氏の代理としてプレゼンテーションを担当した同社副社長の森 秀樹氏は、これまでのケータイ向けコンテンツについて「自動販売機型ビジネス」と呼ぶ。「パソコン向けのコンテンツを単純に持ってきて、公式サイトに頼って売る。これだとユーザーはどこで買うのかも気にせず、目に付いたサイトでダウンロードしてしまう。コンテンツプロバイダーもコンテンツホルダーも、下請けになってしまう」と危惧をあらわにし、「自動販売機型ビジネスモデルから脱却する必要がある」と説いた。また「コンテンツの2次利用ではなく、新たな表現の場であるという評価を高めることに、業界で取り組むべき」とも語った。

 その解決策として、ドワンゴは新会社モバイルコンテンツを設立した。モバイルコンテンツは、コンテンツホルダーからコンテンツを確保し、次世代ケータイ向けのコンテンツを開発し、複数サイトへ提供することで、コンテンツホルダーとコンテンツプロバイダーのあいだでWin-Winの関係を築くという。


同社が考える、自動販売機型ビジネスからの脱却について モバイルコンテンツのビジネススキーム

サイバードの中島氏
 サイバードの中島氏は、メディアとの連携を重視した同社の戦略の一環として、MCFのモバイルプロジェクト・アワード2004の最優秀賞を受賞したテレビ番組連動サービスの「ワンプッシュ」を挙げた。

 また、定額時代の事業については「ちょっと思考を変え、いろいろなビジネスをやる他企業を支援するサービスが重要と考えている」と語った。その上で、ワンプッシュを共同で開発した映像技術サービスの大手であるIMAGICAとともに、ディムーブという携帯電話向け映像編集などを請け負うジョイントベンチャーを設立したことを紹介。さらに沖縄に「沖縄統合モバイル・オペレーション・センター」を設立し、そこでモバイル向けサービスのカスタマーサポートのサービスなどを提供していることを紹介。幅広いコンテンツを提供してきたサイバードのノウハウを生かし、さまざまな支援業務を行なっていることをアピールした。


ディムーブについて 沖縄統合モバイル・オペレーション・センターについて

インデックスの中村氏
 インデックスの中村氏は、同社がさまざまなビジネスに展開していることをアピールした。まずテレビとの連携サービスでは、「Navi Chan」というテレビ電話連動サービスを開発していることを紹介。さらにテレビ番組の企画自体にも深く関わり「ケータイがないと面白くない番組も考えている」と語り、「テレビ局などはいえないが、10月からはロンドンブーツ主演で、ケータイが主役の番組をやる」と明らかにした。また、BS-iの「旅まにあ」という番組では、ケータイ向けサイトの会員が選んだ旅行商品を作ったりと、さまざまなアプローチでテレビとの連携を強めていることをアピールした。

 一方で異業種と組むことが多いとも語る。タカラといっしょに人工知能を使ったサービス「だめんずうぉ~か~」を開発したり、タカラとジョイントベンチャーを設立して暗記エンジンの「エムサピエンス」を開発していることを紹介。さらにアニメ制作会社のマッドハウスを買収し、ケータイだけでなくパソコンやテレビにコンテンツを提供していく考えも明らかにした。一方で本多エレクトロンを買収し、同社が持つ電力線通信技術を使って、電力会社のインフラを使ったリッチコンテンツの配信も積極的に進めていきたいとも語った。


テレビとの連携ビジネスについて 3Gに向けてアニメ製作会社マッドハウスを子会社化

スクウェア・エニックスの洞氏
 スクウェア・エニックスの洞氏は、同社が合併によって豊富なコンテンツを持ったことをアピール。ゲームではドラゴンクエストとファイナルファンタジーというビッグタイトルを保有し、出版ではアニメも好調な「鋼の錬金術師」を持つ「少年ガンガン」を発行していることを紹介。さらにオンライン事業ではケータイ向け以外にパソコンとPS2向けにMMORPGのファイナルファンタジーXIを提供中で、有効会員数が50万人いると語った。その上で現在のケータイ向けコンテンツについて、認知度や料金などの問題から「既存ユーザーの奪い合いになっている」と指摘。スクウェア・エニックスが持つドラゴンクエストなどの魅力的な資産を使って、新規ユーザーを開拓していきたいという考えを語った。

 同社のケータイ向けゲームコンテンツについては「ファイナルファンタジーXIの場合は家に帰ってがっつりと遊ぶという感覚だが、ケータイの場合は歩きながらもやるかもしれないし、誰かに呼ばれたらいつでも飛んで行かなくてはいけない環境かもしれない。パソコンやコンシューマーゲーム機とはそこが全く違うところで、それを意識している」語った。

 またファイナルファンタジーXIと連動したコンテンツで新規ユーザーを獲得するという考えも披露。ケータイからファイナルファンタジーXIの世界にアクセスできるソリューションを開発していることを明らかにした。具体的には、ファイナルファンタジーXI中のグループチャットであるリンクシェルをケータイから使えるようなものを開発中だという。

 さらに「ポリモーフィック・コンテンツ」という展開についても言及。これまでのメディアミックス展開は、小説が映画化され、映画がゲームになる、など1次、2次と展開していった。ポリモーフィック・コンテンツはそれと異なり、コアとなるオリジナルの世界観を元に、各メディアに適したコンテンツを提供するもの。スクウェア・エニックスでは今後、こうしたメディア展開を進めていくという。

 その第1弾として洞氏は、開発中の「BEFORE CRISI - FINAL FANTASY VII」を紹介した。これはファイナルファンタジーVIIの世界観を使ったオンラインアクションRPGで「魔法の入手方法も携帯電話ならではの方法だったりする」と、携帯電話ならではのゲームになっていることを紹介した。


ポリモーフィック・コンテンツについて ポリモーフィック・コンテンツとして展開するBEFORE CRISIS - FINAL FANTASY VII -

メディアとの連携を重視するサイバード中島氏

パネラーの各氏
 パネルディスカッションでモデレーターの岸原氏がスクウェア・エニックスの洞氏に「スクウェア・エニックスは3G時代に走り始めた印象があるが、どうか」と聞くと、洞氏は「ファイナルファンタジーとドラゴンクエストを移植しておいて言うのもなんだが、本当は移植という言葉は大嫌い。既存のゲーム機や広告メディアとしての部分を持ってくるのは違う。ケータイはそれ自身が最大のメディアでもあり、できそこないのゲーム機でもなく、その上に位置する端末」とコメント。さらにiモード向けドラクエやファイナルファンタジーのサービスの加入率については、「普及数自体がわからないが、かなりの数。プリインストールされているアプリとしては利用率が高い」という。「これまでゲームが入っていることすら意識されていなかった」と語り、同社の有名ゲームが新規ユーザーの獲得につながっているという考えを明らかにした。

 サイバードの中島氏は、モバイルのメディアとしての価値について「すごいものがあると思う」と語った。その中で中島氏は「ケータイはメディアの子機」という考え方を示す。「たとえば電車の中づり広告を見たとき、その瞬間に興味が湧いても、いままでは電車を降りると詳細を忘れてしまう。ケータイがあれば、その広告を見たときに情報をピックアップし、それを週末、カーナビに送ったりできる。テレビのグルメ番組の情報をピックアップしてパソコンに送ることもできる」と説明。「ケータイと連動すれば雑誌からも動画を提供できる。ほかのメディアが特性として縛られた部分を解き放てる」ともコメントし、ケータイがほかのメディアと連携しやすいことを強調した。それに対してドワンゴの小林氏は、「うちはほかのメディアと連携するのではなく、モバイル発のコンテンツをやりたい」とコメントした。


定額制に対する各社のさまざまな考え

 定額制によってコンテンツがどうなるかについても、各社さまざまな考えを語った。

 スクウェア・エニックスの洞氏は「実際に定額制を活用するコンテンツを作ろうとすると、月額いくらになるのよ、というくらいサーバーが必要になる。定額によってユーザーは使いやすくなるが、それを生かしたコンテンツは作りにくい。また、定額化と高速化により、試しにダウンロード、のようなことが気軽になった。ごまかしがきかなくなったので、コンテンツのおもしろさが追求されてくる。これはメディアとして市場として成熟した証ではないかとも思う」と語った。

 この洞氏の発言に対してドワンゴ小林は「モバイル発のオリジナルコンテンツをスクウェア・エニックスに期待している」とコメント。それに対して洞氏は「まだいえないけど、やっている。これまで作ってきた資産を使ったり、広げたりして、より本気でコンテンツを作って儲けていけるのではないかと考えている」と述べた。

 サイバードの中島氏は「定額制になると、ユーザーがパケット代を気にしながらコンテンツを利用する、というマイナス要素がなくなる。この上で新しい価値をいかに作るか、が問題。また、これまでは企業側がケータイをプロモーションに使うとき、パケット代を立て替えることはできないか、と相談してきた。プロモーションの延長でユーザーが料金負担をすることは本来はあってはいけないこと。定額制ではこれがなくなる」とコメントした。

 ドワンゴの小林氏は「定額制でリッチコンテンツが使えると言うことで、派手ですごいものを出していきたいと思いがちだが、ゲームの歴史などを見ると、派手ですごいものは一瞬で過ぎ去り、消える。そんな歴史を繰り返してはいけない。大きな手間をかけないでもいろいろできるというモバイルならではのメリットを否定していくことになりかねない」と自らを戒めた。



URL
  WIRELESS JAPAN 2004
  http://www.ric.co.jp/expo/wj2004/


(白根 雅彦)
2004/07/23 23:18

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