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【mobidec 2004】
電子書籍についてコンテンツホルダーなどが異なる立場で語る

 8月26日、27日の2日間、青山ダイヤモンドホールで開催されている携帯電話関連のセミナーイベント「mobidec 2004」で、シャープ、新潮社、ミュージック・シーオー・ジェーピーの各社が、電子書籍について講演を行なった。


フォーマット開発から配信サービスまで幅広く展開するシャープ

シャープの矢田氏
 まず最初にシャープ オンリーワン商品企画推進本部 SST推進センター所長の矢田 泰規氏が「シャープの展開する電子ブック事業の戦略と方向性」と題した講演を行なった。

 矢田氏は同社の電子書籍への取り組みについて「電子書籍のフォーマットであるXMDFの開発」「対応ハードウェアの販売」「コンテンツの販売」「コンテンツ配信インフラの開発」の4つの方向から総合的に展開していることを説明した。

 書籍を持つ出版社の電子書籍に対する反応も、最初は絶版本や著作権の切れた書籍の配信など消極的な展開に限られていたが、最近では評価も高まり、紙の新刊本と同時に電子書籍を配信するなど「出版者側もチャレンジングになっている」という。

 さらに矢田氏は「携帯電話ではメールを読む。つまり携帯電話で文字を読むという文化がある。また電車で書籍を読むように、書籍はモバイルとも合致する」と語り、電子書籍のビジネスにおいて携帯電話に注目していることを述べた。

 シャープでは各キャリア向けに電子書籍の配信サービスを提供しているが、auには端末を提供していないものの、電子書籍分野ではコラボレーションしていると紹介。XMDFがBREW端末向けの公式フォーマットに採用されたことや、動画などを含むマルチメディア配信のEZチャンネルにおいて、電子書籍がEZチャンネルの売り上げの54%を占めるなど、ケータイにおける電子書籍ビジネスも順調であることを紹介した。

 最後に矢田氏は、電子書籍ビジネス拡大のポイントとして「読みやすい機器を選べるように、対応プラットフォームを拡充すること」「読みたい本が読めるようコンテンツを拡充すること」「電子書籍が手に入りやすくなるように配信サービスを拡大させること」を挙げ、同社がさまざまな面がから電子書籍ビジネスの拡大に取り組んでいることをアピールした。


XMDFを中心にしたシャープの電子書籍展開 電子書籍に対する、出版社の態度の変化

ケータイならではの電子書籍のアイディア 市場拡大のポイント

コンテンツホルダーとして慎重な姿勢を示す新潮社

新潮社の村瀬氏
 続いて新潮社 電子メディア事業室 室長の村瀬 拓男氏が「新潮社における携帯メディアへの展開について~『新潮ケータイ文庫』など」と題した講演を行なった。

 まず村瀬氏は、新潮ケータイ文庫など同社がケータイ向けに展開しているサービスを紹介し、その上で書籍のビジネスサイクルを説明した。書籍はまず、雑誌などで連載され、そのあと新刊として発売される。発売直後に発行部数のピークがあり、そのあと発行部数は下がっていく。そして書籍は委託販売なので、売り上げが返品コストを下回るとその書籍は絶版となる。これが基本的なパターンで「新潮ケータイ文庫では、絶版以降の、紙の書籍ではビジネスになるほど売れないが、わずかなあらニーズがあるというゾーンをカバーできる」と語った。

 また、新潮ケータイ文庫で、作家の書き下ろし新作などを配信していることも紹介。新聞連載小説くらいのボリュームで、常時20コンテンツ程度を配信しているという。これについて村瀬氏は「従来の雑誌連載など、コンテンツ生産とほぼ同列に位置づけている」と説明した。

 同社の電子書籍配信が、コンテンツ生産と絶版以降の段階しか行なわれないことについて村瀬氏は、「紙の利益率がきわめて高いので、そこを浸食する可能性があるところは手を出せない」と説明する。出版は、返品コストを上回ったときの利益率が高く、ある一定部数を超えると「お札を刷っている感覚」だという。村瀬氏は、「この利益率が高い部分を削ってまで電子書籍をやることはできない。これが出版社が消極的になる理由。利益率が高い部分を大事にした上で何を電子書籍で提供できるか、ということが現在の電子書籍サービスの位置付け」と語った。

 さらに村瀬氏は「いまのところ電子書籍は市場として立ち上がっていない。だから助かっている。市場として立ち上がると、紙の市場との調整をしなければいけない。いつかは何らかの形で市場が成立する可能性がある。そのとき、紙の市場との関係が困ったものにならないように布石を打っていく、これが新潮ケータイ文庫に進出した理由」と語った。


新潮社における電子書籍の位置付け。販売サイクルで利益率の高いところは紙の書籍が占める 電子書籍はターゲット層的にも紙の書籍とかぶりにくい展開をしている

現状の流通モデルの問題点を指摘するミュージック・シーオー・ジェーピー

ミュージック・シーオー・ジェーピーの佐々木氏
 3番目にはミュージック・シーオー・ジェーピーの佐々木 隆一氏が、「電子出版流通~新しい電子出版配信システムの実現を目指して~」と題した講演を行なった。

 同社ではパソコン、PDA向けにも電子書籍の配信サービスを展開しているが、現時点でケータイ向けの方が売り上げが多いという。その上で佐々木氏は、「パソコンには7000冊とかそろえている一方、ケータイ向けは数百冊のレベル。対応ケータイの数もまだそれほどない。にもかかわらず売り上げがあることから、ケータイの需要は高く、今後、対応ケータイが増えれば、電子書籍のマーケットは数十倍まで伸びる可能性があるのではないか」と今後への期待を示した。

 今後の課題としては、「現状はデータと端末が1対1の関係で、ユーザーがパソコン・ケータイ・読書専用端末でシームレスにコンテンツが読めるようになっていない」と指摘した上で「電子書籍をユーザーが持つさまざまなデバイスで楽しめるような環境を作る必要がある」と説明。そのためには、電子書籍を統一管理できるコードを作ったり、異なる端末でもコンテンツを読めるようにフォーマットやDRM(デジタル著作権管理システム)を整備することが必要だと述べた。

 また佐々木氏は、「デジタル上で書籍を読むことは、単にアナログがデジタルになるということだけではなく、新しい文化になると思う」と語る。「出版物とは違う機能、読書スタイルを確立する必要がある。絶版になった本を売るというビジネスモデルもあるし、ストリーミング的に配信して安くするのもよい。従来の紙の書籍とは違う機能を持ち、違うところでビジネスが成立しなければいけない」と述べ、電子書籍ならではのコンテンツや配布方法の必要性を訴えた。

 今後の可能性として佐々木氏は、ケータイのセキュアな部分を使ったモデルを提示した。そのモデルでは、ケータイでコンテンツを購入・ダウンロードと、利用権の移動をするというもの。「いろいろな業種と一緒に作らなければいけないところだが、こうした流通モデルを作ることが、新しいスタイルの開拓になる」と語った。


電子書籍の流通が抱える課題 利用権を移動させられるようにした流通モデル


URL
  mobidec 2004
  http://www.seshop.com/event/mobidec/


(白根 雅彦)
2004/08/27 20:39

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