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【3GSM World Congress 2005】
3.5G、バリューチェーン、低価格化……欧州トレンド総おさらい

 14日~17日にかけて、フランス・カンヌで開催された世界最大級の移動通信関連イベント「3GSM World Congress 2005」。本誌でもイベントレポートとしてブースや講演の模様をお届けしたが、本稿ではイベントで見えてきたトレンドについて、3つのテーマに渡ってお伝えしたい。


W-CDMAの広がり、そしてHSDPAへ

NTTドコモのブースは、HSDPAなど技術面をアピールしていた
 まず、2004年初頭からこの1年間で劇的に変わったのは、W-CDMA方式のサービスエリアが西欧を中心に一気に拡大したことだ。ドイツ、オランダ、フランス、イギリス、スペイン、イタリアで次々とサービスインし、西ヨーロッパの中心となる国のほぼすべてが今やW-CDMA方式のサービスを展開している。

 こうした背景もあって、3GSM会場では、W-CDMA端末と次世代通信技術となる「HSDPA」のインフラ部分の展示がハイライトとなった。端末の形状に落とし込んで最大1.8Mbpsの通信実験を行なったクアルコムをはじめ、NEC、テキサスインスツルメンツ、エリクソンなどが「HSDPA」のデモを披露した。

 日本では、NTTドコモが「HSDPA」導入当初に3.6Mbpsのスループットを実現すると見られている。これはGSM圏のキャリア、インフラメーカーも同様のシナリオを描いており、3.6Mbps → 7.2Mbps → 14.4Mbpsと進化していくことが予想される。

 NTTドコモからすれば、HSDPAの導入は高速化だけが目的ではない。全世界で同じケータイが使えるようにするという国際ローミングは、そもそもHSDPAよりも前にW-CDMAをはじめとするIMT-2000が策定された当初からの3Gにおける大きな目的だ。

 しかし、NTTドコモは2001年にサービスインするため、W-CDMAの規格の中でも、比較的初期のバージョンを採用せざるをえなかった。そのため、同じW-CDMA方式でありながら、リビジョンが異なるために、「N900iG以外のFOMA端末をそのまま海外に持ち出しても使えない」という状況になってしまっている。しかし、W-CDMA技術に詳しいクアルコムの説明員は、「HSDPAは、全世界同じリビジョンでサービスを展開できるだろう」と語っている。冒頭の通り、欧州でのW-CDMAエリアは拡大している。さらに今後HSDPAが導入されれば、一気にW-CDMA方式の国際ローミングが加速しそうだ。


クアルコムは、携帯電話の形状にしたHSDPA対応の試作機を披露 FTPダウンロードの実測値でおよそ1.2Mbpを記録した

欧州もバリューチェーン型ビジネスモデルへ

 日本を一歩出たとたん、ケータイを取り巻く環境は一変する。それは通信方式や端末だけでなく、ビジネスモデルもまたしかりだ。今回の3GSMにおいて、一般紙でもっとも大きな扱いを受けたのは、ノキアがマイクロソフトと音楽配信分野で提携したことだ。このことは、欧州におけるキャリアと端末メーカーの力関係を象徴するもっとも大きな出来事だろう。

 伝統的に、欧州では端末メーカーがケータイのビジネスモデルを牽引してきた。日本や米国と比べ、狭い地域に小国が密集していること、さらにそれらがEU(欧州連合)を結成したことにより、人の出入りが自由になり、経済的に1つの勢力圏としてまとまったことは端末メーカーにとって好都合だった。

 なぜなら、通信は国家政策に大きく関わる分野のため、日本のNTTグループのようにたいていの国では、民営化された企業を含み、国営企業の関連会社が大きなシェアを占めているケースが多い。グローバル化した今でもそれは例外ではなく、ドイツのトップシェアはドイツ・テレコムのグループ会社であるT-Mobileが、フランスはフランス・テレコム系列のOrangeが、イタリアはテレコム・イタリア系列のTIMがトップシェアだ。これは、国境を越えてキャリアがビジネスを展開することがいかに難しいかを示している。もちろん、ボーダフォングループやT-Mobile、Orangeは国外でもサービスを展開しているが、国外でトップシェアを握るまでには至っていない。


ノキアが3GSMにあわせて発表した「Nokia 6680」 は高機能面を追求したモデル。価格は500ユーロ(約69,000円)と案内されていた
 その一方で、GSM方式とW-CDMA方式という同じ通信方式を採用している欧州では、国や契約するキャリアを問わず、GSM端末でさえあればどこでも利用でき、どこでも販売できる。端末メーカーは容易に国境を越えられるのだ。結果、ノキアやモトローラといった大きなシェアを握っている端末メーカーは、欧州全土、ひいては日本と韓国をのぞく全世界のユーザー、キャリア、および業界に対して影響力を及ぼすことができる。

 これまで、端末メーカーはWAPやMIDIといったオープンプラットフォームをベースに端末を開発し、提供してきた。コンテンツプロバイダーはオープンプラットフォームをベースにコンテンツを作り、キャリアは通信サービスを提供した。この3者は完全な分業体制になっており、積極的に相互作用することはなかった。こうした状況だったため、ノキアの最新機種は、キャリアと契約しようがしまいが500ユーロ超で販売されるという形になって、キャリアが販売奨励金を支払う日本とは、大きく異なる現象が起きていたのだ。

 しかし、NTTドコモがライセンスを供与することで、2002年春に独E-Plusがドイツ国内でiモードサービスをスタート。その後、オランダのKPNモバイルやベルギーのKPNオレンジ、仏ブイグ・テレコムなどが相次いでiモードサービスを開始した。

 また、英ボーダフォングループが日本のJ-フォン(現ボーダフォン)を買収し、日本のサービス形態をモデルに作り上げた欧州版「Vodafone live!」を開始し、主にドイツで加入者数を伸ばした。これらの動きは、欧州においてキャリア主導型ビジネスモデルへの移行を加速させることになった。

 これに伴い、販売奨励金制度も取り入れ、契約込みで旧機種を1ユーロで販売するスタイルも急激に普及した。シャープがボーダフォンのサービスに特化したモデルを出荷し、ヒットを飛ばすなど端末メーカーの在り方にも大きなインパクトを与えたことは間違いない。

 このことは、これまで影響力を保っていたノキアにも大きなショックを与え、「高機能化」「パソコンとの融合」「デザイン」といった端末そのものの強化を戦略の中心に据えていたノキアが方向転換し、キャリアや周辺業界との結びつきを強めようと考えたことは想像に難くない。

 ノキアは今回の3GSMで、非接触ICチップを使ったフィールドテスト、中国最大手キャリアであるChina Mobile向けのカスタマイズモデル、通信事業者や端末メーカーの開発の自由度を向上させるSeries 60のバージョンアップなど、徹底して「バリューチェーン」を構築する戦略を打ち出している。世界ナンバーワンの端末メーカーが、ついに動き出したのだ。このビジネスモデルの大きな変化は、日本のケータイ業界が起こしたと言っても過言ではない。


ノキアが披露した非接触型ICチップ「NFC」搭載端末 ベーシックな折りたたみ型GSM端末「Nokia 6101」は、カスタマイズ版が中国市場に投入される

端末の低価格化

中国向け端末の「N923」。NECは中国市場へ積極的なアプローチを続けている
 今回、端末メーカーのブースやプレスカンファレンスを取材していて、何度となく耳にした言葉が「低価格」「安価な」「手軽に導入できる」といったフレーズだ。前述したノキアのSeries 60 Version 3の発表も、大きな目的の1つに「コストダウン」を挙げており、端末の低価格化は世界の端末メーカーの合い言葉となっている。

 その大きな理由は、市場の成熟化だ。日本でも「1億2,000万人のうち、すでに8,400万の加入者がいる」といった表現がよく使われるが、欧米では状況はさらに深刻だ。日本は人口の70%程度の普及率だが、ドイツは95%以上、そのほか主要国でも軒並み70%を超えており、80%以上のところも少なくない。W-CDMAが普及し始めた欧州は、端末メーカーにとっても今がまさにシェア増加の大チャンス。GSMからW-CDMAの移行を促し、さらに端末販売を伸ばすためには幅広いユーザー層の取り込みが必須課題となっている。

 低価格化のもう1つの理由は、中国市場だ。現在、年間8,000万台のペースで契約者が伸びている中国だが、所得格差の大きい中国への普及を考えたとき、低価格端末は欠かせない商品だ。欧州の市場成長率から考えれば「青天井」とも言えるこの巨大市場を制するか否かは、世界全体のシェアを左右しかねない。現状としては、中国でトップシェアを誇るモトローラを、ノキアやサムスンが追いかけている。なお、NECが端末供給先として、開発の軸足を日本から中国に移している理由もここにある。中国市場はケータイ業界にも目の離せないバトルフィールドだ。



URL
  3GSM World Congress 2005(英文)
  http://www.3gsmworldcongress.com/2005/

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(伊藤 大地)
2005/02/23 19:18

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