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【WIRELESS JAPAN 2006】
クアルコム松本氏、「ユーザーを満足させる企業が生き残る」

 「WIRELESS JAPAN 2006」最終日の21日、米クアルコム上級副社長の松本徹三氏が「ワイヤレスコミュニケーションの将来」と題する講演を行なった。


特許問題は「公平な競争環境」による摩擦の結果

クアルコム松本氏

クアルコム松本氏
 まず、松本氏は「クアルコムと聞けば、端末メーカーが寝ずに働いているそばで、ロイヤリティを取っていく企業だと思われるかもしれない。だが、今日、話を最後まで聞いていただければ“クアルコムも悪いヤツじゃないな”とわかってもらえるだろう。いわば我々は技術開発を行なう企業。2005年は(技術開発に)1,000億円投資した。ここまで多岐にわたって開発するのは、世界でも当社とドコモくらい。どんな開発を行なうにせよ、最終的に生き残るのはエンドユーザーを満足させるモノを作るところ」と語り、同社の活動を説明。

 また、同氏は昨年からクアルコムとノキアなどの間で、特許に関する問題が発生していることに関連し、「CDMA技術で成長してきた当社だが、長く通信事業に取り組んで、ノウハウを蓄積した企業からすれば迷惑とされる。たとえばGSMではノキアのシェアが高いが、CDMAになると、通信事業に携わって日が浅い数多くのメーカーが参入している。中国のメーカーとなれば、同じソフトウェアを作る場合、日本メーカーの1/3のコストでできたりする。これでクアルコムが憎い、クアルコム問題と言われている。しかし、これは公正な競争がもたらされたということで、何も恐れることはない」と述べた。

 さらに松本氏は、海外で普及しているGSM方式の市場について「なぜGSM市場で日本メーカーは討ち死状態なのか。GSMの特許はノキアやエリクソン、モトローラ、ルーセントなどが保有しているが、10数年前にGSMが立ち上がるころ、日本メーカーは仮想敵とされていた。いわばGSMはハンディキャップ競争で、ノキアにとってこんな良い世界はない。2Gはゆがんだ形だが、3Gで公正な形にした。それがなぜか我々が悪い者と扱われている。しかし、私はクアルコムが一番貢献していると信じている」と語り、同社の正当性をアピールした。


環境が整った今後はOFDMを通信分野に

通信技術には、大きくわけてITUとIEEEで標準化されているものがある

通信技術には、大きくわけてITUとIEEEで標準化されているものがある
 世界的に3Gが普及しつつある中、HSDPAやWiMAXなどが更なる高速化をもたらす通信技術として話題を呼んでいる。

 松本氏は、前提条件として「携帯の通信技術にOFDMを取り入れるという流れがあるが、OFDMそのものは20年前からある技術。ただし、CDMAは電波環境が変わりやすいなど、移動体に強い技術で、携帯電話向けに利用されてきた。一方、OFDMは周波数がある程度幅広くあり、安定している状況ならば、局から端末へのForword Linkが速くなる。そのため、放送などで活用されてきた。現在、基本的な携帯電話の通信網か行き渡ってきて、より高速な通信が必要とされている。各国もその需要を認識して、かなり思い切って、周波数帯を割り当てるようになってきた。こういった状況であれば、OFDMも通信に導入できるベースができてきた、と我々は判断した」と述べ、大きな流れを簡単に説明した。

 OFDM技術を通信に活かすという道を示そうとしたクアルコムには、「フラリオンテクノロジーズ」という企業が大きな壁になっていたと語る松本氏は、「フラリオンは、元々ベル研究所の精鋭が、従来とは全く異なる方法で高速通信を実現しようとし、独立した企業。これは相当なレベルにある、と我々は判断し、買収を申し入れて受け入れてもらった」と、2005年8月の買収劇の背景を改めて説明した。


WiMAXは移動体には向かない

モバイルWiMAXの公開資料を元に、携帯向け通信技術と比較した資料

モバイルWiMAXの公開資料を元に、携帯向け通信技術と比較した資料
 さまざまな企業が取り組んでいるモバイルWiMAXについては、これまでもクアルコムは「固定向けの技術であり、移動体には適していない」とする意見を表明してきた。今回の講演でも、松本氏は「モバイルWiMAXは、もともと固定通信向けに進められた技術がベースで、ハンドオーバーや基地局間の干渉低減技術など、移動体向けの思想が入っていない。日本では、既に各地に光ファイバーが張り巡らされており、エンドユーザーがアクセスする部分は無線LANで良いのではないかと思えてならない」と語った。

 同氏は、電波の利用効率を示す統計データを掲げ、「ダイバーシティアンテナを採用すれば、CDMA2000 1xEV-DO Rev.AやHSDPAは1MHzあたり1Mbpsという数値を達成できる。しかし、モバイルWiMAXはそこまで及ばない」と述べ、携帯電話向け技術としては不適格との見解を示した。


今後の通信ロードマップ

携帯電話に対してユーザーが求めるニーズを満たすことが重要

携帯電話に対してユーザーが求めるニーズを満たすことが重要

クアルコムが描く通信技術のロードマップ

クアルコムが描く通信技術のロードマップ
 それでは、どのような技術が今後求められるのだろうか。松本氏は、企業の論理よりもエンドユーザーが求めるものを満たすことが重要と指摘。携帯電話において、エンドユーザーが求めるポイントとして「いつでもどこでも最低限、通話やメール、ブラウジングができること。さらに自宅など一定の環境であればより高速な通信ができること、その通信コストは安くあるべきで、さらにフリーズしない端末であることや省電力であることなどが挙げられる」と述べた。

 ロードマップを示した同氏は「将来的にはW-CDMAもCDMA2000もOFDMを入れていくことになる。今後、KDDIがCDMA2000 1xEV-DO Rev.Aを導入する方針だが、ロードマップではその次の次のバージョンにあたるRev.Cも考えている。これは下位互換性を保った規格になる。一方、W-CDMA方式ではドコモがスーパー3Gを提唱しているが、なかなか良い感じの方式と見ている。ただ問題は下位互換性がないこと。その部分は、チップでカバーできるため、さほど問題ではない。さらに将来的には、W-CDMAとCDMA2000にIEEE802.20が入ってくるかもしれないが、無理矢理入れる必要はない。進化のスピードとしては、KDDIのほうが決定が速いこともあって、ドコモよりも少しスピーディに進むだろう。最終的にはW-CDMAもCDMA2000も似たようなところを目指すことになる。無線通信は総合戦で、我々が自信を持っているのは、あらゆる分野で開発を進めているためだ」と話す。

 このほか同氏は、チップセットのロードマップを示し、「ハイエンドは40ドル、ローエンドは7ドルくらいの製品だが、これだけのラインナップを維持するのは大変なこと。ただ、毎日を新機種で競争する環境となれば、このくらいの製品は必要だ」とした。

 同社の技術力を示す一例として、実装技術も紹介された。「たとえば4GVという技術は、状況によって音質を変化させるもの。現状、携帯電話の通話品質は一定に保たれているが、大規模災害が発生した場合などは、音質よりも相手に連絡したいというニーズが高まるだろう。そういった場合、4GVは音声品質を変えてサービス提供できる」(松本氏)という。

 最後に松本氏は「最後まで勝つために必要なのは、ユーザーを満足させることだ」と改めて聴衆に語りかけていた。


こちらはチップセットのロードマップ クアルコムの持つ実装技術
こちらはチップセットのロードマップ クアルコムの持つ実装技術


URL
  クアルコム
  http://www.qualcomm.co.jp/
  WIRELESS JAPAN 2006
  http://www.secretariat.ne.jp/wj2006/

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(関口 聖)
2006/07/21 17:48

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