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【CEATEC JAPAN 2006】
ITU内海氏、日本の通信業界に提言「世界と共にスタンダードを」

ITU 事務総局長の内海 善雄氏
 CEATEC JAPAN 2006のキーノートスピーチでは、国際電気通信連合(ITU)事務総局長の内海 善雄氏が登壇し、「日本の情報通信産業界への期待」と題した講演を行なった。

 ITUとは、国連の専門機関のひとつ。世界貿易機関(WTO)、世界銀行(WB)、国際通貨基金(IMF)、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、世界知的所有権機関(WIPO)などと並ぶ専門機関で、電気通信・放送分野を担当し、世界各国で使用される通信技術の標準化などを管轄している。

 内海氏は1999年よりITUの事務総局長に就任。国連機関のトップとして活躍する数少ない日本人の1人でもある。同氏はITUの本部があるスイスのジュネーブに8年間滞在しているとのことで、氏が感じる外国から見た日本企業・日本人の特異さも織り交ぜながら、日本の通信業界への期待を語った。


今は「日本ナッシング」

 内海氏は、国際社会から見た日本人について「国際社会では異質。超真面目で、お人好しで、バカ正直なところがある」と述べ、子供の頃より競争社会を意識させられるアングロ・サクソン系の人々の社会との違いを指摘。そういった競争社会を意識して育った人々が現在の国際社会をリードしているとした。また最近においては、国際社会の中で日本の存在が忘れられているとし、「20年ぐらい前は日本バッシング、数年前は日本パッシングだった。今は日本ナッシングに見える」と述べて、国際社会での存在感の無さを指摘。国連機関のトップ20人が集まる会議では、世界銀行総裁が「世界経済の3分の1を日本が占めている」と既知の事実であるにも関わらず改めて報告しなければいけなかったというエピソードを紹介し、日本の存在が近年益々希薄になっているとした。

 一方で同氏は、「日本は木がたくさんあるだけでも豊かな国と言える。サウジアラビアなら1本の木を維持するのに年間十数万円はかかる。外国の高価なワインが人気だが、日本のワインも美味しい。ただ、それを世界に発信できていない」と語り、存在感の無さの原因として、日本からの発信不足を挙げた。


国際イベントに出展しない日本企業

 情報通信分野においても、「日本企業は全く元気がない」と内海氏は述べる。ITUでは「ITU TELECOM」として数年に一度国際イベントを開催しているが、南アフリカで開催した際には日本企業の出展が無かったという。同氏は盛大に出展していた韓国企業に出展した意図を聞いたところ、逆に何故そんな質問をするのか聞かれたという。「我々は世界一の企業になろうと思っている。出るのは当たり前」と韓国企業は答えたというが、出展がなかった日本企業は「そこでは全然商売にならない」という旨の返事があったという。同氏はITU TELECOMが韓国で開催された際も、日本企業からの出展がほとんどなく「みじめな状況だった」と振り返る。

 ITUの標準化活動においても、かつては伝統的に日本企業から出席者があり、企業のトップもその動向をフォローしていたというが、現在はジュネーブの会議に出席する日本人は少なくなり、韓国人、中国人がたくさん参加している状況だという。

 途上国を含め、外国の企業幹部には日本企業で研修を受けた人員も少なくないとのことで、日本企業の品質の高さや、約束をきちんと守り、信頼できるといった点を評価する人が多いという。日本企業が自分たちの国に進出することを期待している場合も多いというが、日本企業からは「価格競争に負け、海外進出は難しい」といった声が返ってくると言う。


世界マーケットでの展開に遅れ

 「技術があり、信頼され、期待されているのに海外に行けないのは何故か」とする同氏は、2つの原因を挙げる。1つは世界のマーケットを考えていなかったこと。国内市場である程度の需要があるため「マインドが基本的に無い」とし、逆の例としてノキアの例を挙げる。ノキアは、フィンランドという数百万人規模の国内マーケットは無いものと同じとして、通信企業として展開を開始した当初から世界マーケットを意識した展開を行なったという。

 2つ目は、「世界の潮流を見ていなかった」こと。ブロードバンドや携帯電話を例に、FTTH、PDCといった日本独自の規格を推し進めたことで世界のスタンダードから孤立している現状を指摘し、「携帯電話も技術は日本がトップだったが、日本だけの技術(PDC)を進め、ヨーロッパがGSMで団結してもGSMを作らなかった。3Gを導入してもすでに(孤立を是正するには)遅かった」と携帯電話業界の国際化の遅れを分析した。

 「かつてはそれもでよかったかもしれない。しかしグローバル化で壁がなくなり、世界市場は均一化されている。カルチャーが違う日本人が対処するのは難しい」と語る内海氏は、韓国、台湾といった勢いのある企業では「英語ができないとダメ」とし、「日本企業でもトップの国際化への取り組みが大事」とする。また、「中国や韓国といざこざを起こしている余裕はないはず。韓国企業に、手を取り合いましょうとお願いに行くぐらいでないと」と、政治面・経済面での摩擦にも言及した。


世界の人と共にスタンダードをつくる

 内海氏は、日本企業から、日本の規格を世界のスタンダードにするのはどうすればいいのか?とよく質問を受けるという。内海氏は「その考えがダメと答えている。世界の人と共にスタンダードをつくる。そういう考えが大事。自分の国のものを推し進めても世界から叩かれる。AT&Tのベル研でさえアルカテルと手を組んでいる。日本だけでスタンダードなんてあり得ない」とする一方、「我々の良いところは長期的な視点で考えられること。長期戦略を、我慢してがんばれる。また、日本ほど組織力のある国は無い。地下鉄が1分50秒おきに到着する国は日本だけ」と日本企業、日本人の長所を述べる。

 「携帯電話のソフトウェアも、何千人が関わるものになっている。方向さえ間違わなければ、世界で勝てるものと信じている。ジュネーブからはそう見える」と同氏は携帯電話業界への期待を述べたほか、「世界の動向を見る、というのも間違いだろう。日本と世界を分けるのではなく、“周りを見る”ということ」と述べて、日本企業、日本人の国際社会での在り方を示した。



URL
  ITU(英文)
  http://www.itu.int/
  日本ITU協会
  http://www.ituaj.jp/
  CEATEC JAPAN 2006
  http://www.ceatec.com/


(太田 亮三)
2006/10/03 22:20

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