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【WPC TOKYO 2006】
携帯電話の“デザイン”を語るパネルディスカッション

 WPC TOKYO 2006で20日、「生活や文化の質を高める“カタチ”とは? デザインはケータイをどう変えるか」と題するパネルディスカッションが開催された。携帯電話や工業製品のデザインに携わる関係者5名が、自身の経験やビジョンを交えつつ、携帯電話の将来についてさまざまな視点から語った。


開発者、デザイナーがそれぞれの立場から携帯電話を分析

 今回のパネルディスカッションでは、各パネラーが携帯電話との関わり、期待することなどを自己紹介する形で始まった。最初に挨拶した、NTTドコモ プロダクト&サービス事業本部 マルチメディアサービス部 マーケティング企画 主査の増田智子氏は、「端末本体の形状だけではなく、搭載する機能もまた、デザインの大きな要件の1つ」と解説する。同社の「キッズケータイ」開発時には“良質なおもちゃ”としての外観を追求しただけでなく、防犯ブザーに連動した位置情報メールを自動送信機能、専用工具がなければバッテリーを外せない機構の導入など、利用客を徹底的に追求したデザインを心がけたという。

 雑誌「宣伝会議」編集長の田中里沙氏も、キッズケータイの開発に、働く女性の立場から意見を寄せた。「自分の利用している携帯電話を他人に見せるときは、まるで自分自身の個性をさらしている感覚になる」とコメント。携帯電話の存在そのものが生活やコミュニケーションにも大きく影響を与えつつあると、現状を分析した。

 デザインスタジオS代表の柴田文江氏は、auが女児向けに発売した「Sweets」「Sweets pure」のデザインに携わった人物。柴田氏は大量生産品としての腕時計を例に「(会場内には数百人の観客がいるものの)同じ腕時計をしているひとは2人といないはず。将来的には携帯電話も同様になるのでは」と展望する。さらに「携帯電話がファッションの域にまでたどり着けば、さらなる可能性が出てきそう」とも付け加える。

 一方、“携帯電話をデザインしたことがないデザイナー”の立場として、富士フイルムデザインセンター デザインマネージャーで、デジタルカメラ「FinePix Z1」やインスタントカメラ「チェキ」をデザインした堀切和久氏も参加した。堀切氏は「携帯電話はカメラ以上に生活へ密着している。携帯電話自体が話題の中心なることも多く、存在そのものがコミュニケーションの入り口になっているようだ」と羨望を向ける。


「宣伝会議」編集長の田中里沙氏(左)とNTTドコモ プロダクト&サービス事業本部 マルチメディアサービス部 マーケティング企画 主査の増田智子氏 デザインスタジオS代表の柴田文江氏(左)と富士フイルムデザインセンター デザインマネージャーの堀切和久氏

携帯電話の“賞味期限”

 ディスカッションでは、Kom&Co.代表取締役 デザインプロデューサーの小牟田啓博氏による進行のもと、パネリストからさまざまな意見が募られた。中でも、大きなテーマとなったのが携帯電話の“賞味期限”だ。この話題の口火を切ったのは田中氏。「例えば、カシミアのコートは長く着続けられることが魅力の1つ。携帯電話はファッション的なデザインが追求されるにも関わらず、長く使うことが重視されていないのでは」と話す。

 「価格もまたデザインの1つ」と語る増田氏は、流通上の問題や加速度的に機能が進化して新機種が次々発売される影響ゆえに、製品の陳腐化や端末販売価格の下落が急激な現状に歯噛みする時もあるという。

 また柴田氏は「携帯電話のデザインは、搭載機能が決まってから開始される。しかも素早さが要求される」と現場の苦労を語る。その様子を柴田氏は「優秀なスタッフを引き連れながら、目をつぶって高速道路を走る感覚」と表現。大変な開発スピードが必要とされながらも、一方で「時代を切り取った旬のデザインが生まれる」としている。

 堀切氏は賞味期限の短さについて、ポジティブな捉え方も可能だと話す。「デジタル機能のある製品を孫の代まで使い続けることは難しいかもしれない。しかし寿司のように、賞味期限がある中で最高に素晴らしい製品を提供することは可能だろう」(堀切氏)。


モデレーターを努めたKom&Co.代表取締役 デザインプロデューサーの小牟田啓博氏。KDDI所属時代に「au design project」に携わった ディスカッション中は、参加者にも意見を求めた。挙手に代わって、携帯電話のバックライトを点灯させるという一風変わった方法がとられた

身近な存在としての携帯電話

 ディスカッションでは、携帯電話の身近さを再確認させられる発言も続いた。柴田氏は「自動車は経済事情に応じて選べる種類が自然と制限される。しかし携帯電話は、お金持ちでも一般人でも、数万円前後の“誰でも無理なく買えるラインナップ”の中から選ぶ。それだけにセンスが問われる」と語る。堀切氏も携帯電話を「時計以来、初めて生まれた“身に着けるプロダクト”という意味でも歴史的なのかもしれない」と補足している。

 田中氏も「女子高生を中心に、使い終わった携帯電話を大切に保存していることが多いようだ」というエピソードを披露。小牟田氏も「携帯電話を利用した先に、かならずコミュニケーションする相手がいたことも後押ししているのだろう」と、単なるデジタル機器を越えた用途に注目した。

 ディスカッションの最後には各パネラーが将来に向けてのメッセージをそれぞれ語った。田中氏は「生活そのものに影響を与えるような製品を作っていってもらいたい」、増田氏は「『(ディスカッションのテーマである)デザインがケータイをどのように変えるのか』という答えは見つからない。見つけようとする努力こそが必要とされる」とコメント。

 また堀切氏は「ケータイはすごいね、といわれ続ける(先進的な)製品であり続けてほしい」。そして柴田氏は「携帯電話は、開発に当たってお客様の意見を非常に重要視している。皆さんも常に開発者へ要求を投げてほしい」とまとめた。



URL
  WPC TOKYO 2006
  http://expo.nikkeibp.co.jp/wpc/


(森田秀一)
2006/10/20 23:10

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