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【mobidec 2006】
MVNOのディスカッション、携帯産業は垂直統合から水平分業へ

 11月30日、東京・目黒雅叙園でモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)主催のイベント「mobidec 2006」が開催された。イベント最後のセッションでは、「我国におけるMVNOビジネスの課題と今後への期待」と題してパネルディスカッションが行なわれ、国内でMVNOビジネスを展開する上での問題点などが指摘された。

 なお登壇者は、インデックスの経営戦略局長兼技術局長の寺田眞治氏、日本通信の常務取締役CFOの福田尚久氏、Movabilityの代表取締役社長兼CEOの三木雄信氏の3名。モデレータはMCFの木村潤氏が担当した。


インデックスの寺田氏 日本通信の福田氏 Movabilityの三木氏

 MVNOを取り巻く国内の状況を説明したインデックスの寺田氏は、携帯電話がさまざまなメディアを繋ぐハブの役割を担っている現状を受けて、それら多くのサービスを全て提供できる企業は、既存の携帯電話会社であるとの認識を示した。しかし同氏は、「ユーザーは全部が全部欲しいというわけではない」と述べ、MVNO事業者が展開する余地が充分にあると述べた。

 また、「ひとくちにMVNOといっても多様性がある」と語り、ニッチなマーケットに提供するものから、キャラクターなどを使ったエンターテイメント寄りのもの、法人向けのソリューションなどさまざまな可能性があるとした。

 このほか、「FMCを展開することを考えると、全国レベルで展開できるのは既存の携帯電話会社3社しかいない」とコメント。インターネットサービスプロバイダー(ISP)などがFMCを展開する場合、現状の選択肢は「3キャリアの傘下になるか、MVNOをやるしかない」という。「ユーザーは欲しい端末でやりたいことができればいいと考えている。自由な選択ができるMVNOが最終的にどうしても必要になる」と続けた。

 次いで、日本通信の福田氏は、携帯電話の市場が非常に特異なマーケットであることを訴えた。

 同氏は、米フォード社の例を挙げ、自動車を作る場合にゴム農園を経営し、そのゴム農園からタイヤメーカーのファイアストン社を起こしたという自動車産業の黎明期の逸話を話した。「何か産業が起こる時は、最初は全部自分たちでやるしかない。垂直統合型のビジネスとなるが、そのあと水平分業型になる。こうした流れはどの産業でもほとんど同じようになる。しかし、携帯電話のビジネスはかなり違う。ビジネスモデルは携帯電話会社が全て自分たちで展開している」と語った。福田氏は、携帯電話電話の産業規模がすでに水平分業型に移行しなければならない時期に、未だに垂直統合型のビジネスを展開している現状に危機感を表わし、「産業規模に対してプレーヤーの数が少ない。このままで産業自体が衰退してしまう」と語った。

 また、MVNOを展開する上で、ハードウェアと通信、そしてコンテンツが三位一体となっている必要性があると主張。前職で手がけたiMac DVやiPodでの経験を話し、ユーザーに対して、「何でもできる」よりも何ができるのか明確であることが重要だとした。

 さらに、無線通信は電波が限られている中でのビジネスとなるため、ネットワークを構築するインフラ基盤を提供する企業には最適な数があるが、その上で、ユーザーが使うものを提供する場合は「競争原理が必要」と述べ、その競争原理を持ち込むのがMVNO事業者であるとした。

 MVNO事業者を支援する立場のMVNE(Mobile Virtual Network Enabler)として登壇したMovabilityの三木氏は、「携帯電話事業はガラパゴス諸島」との言葉を引用して、国内携帯電話産業の垂直統合型による“独自の生態系”を批判した。また、支援する立場として、利害調整が難しいとした上で、「日本の携帯電話は世界的に観れば非常に進んでいる。MVNOで成功すれば世界に出られるチャンス」と述べた。


携帯を中心としたロードマップ モバイル関連のトピック FMCとMVNO

産業の初期は垂直統合型 福田氏は携帯産業は表の中のブルーのあたりにいると語っていた インフラ会社は適切な数で、製品とサービス提供者には競争原理を

Movabilityが提供するもの コンセプト MVNOの事業パターン

既存キャリアはこの先破綻!?

既存キャリアはこの先破綻するという福田氏

MVNOの現状
 今回集まった3社の発言の中で、それぞれ表現は異なるが共通していた部分は、日本の携帯電話産業がキャリアを中心とした垂直統合型のビジネスモデルであり、それを水平分業型に移行させたいというものだ。

 日本通信の福田氏は、海外でのMVNOについて、「MVNOという言葉は1999年に英国で生まれた。英国では、携帯電話産業の初期の段階で、ネットワークを構築する企業は最初の10年間は顧客サービスをしてはいけないとした。このため、非常に多くの携帯電話販売会社が増えたが、大手企業がいない状況になった。そのタイミングでVirginグループが参入し、モルガンスタンレーがMVNOという言葉を使った。日本では英国の状況とは異なり、すでに独占企業体ができている」と説明。また、米国では、大手企業が携帯電話会社を買収し、MVNOの余地がなくなっているという。

 さらに同氏は、「日本のMVNOはデータ通信の利用をもっと広げようというもの。携帯電話会社は、3Gのネットワークに移行する際に5~10倍のコストをかけた。しかし、移行しても音声部分にはメリットがない。日本では無線データ通信インフラが使える状態にある。携帯電話の先進国で、特にデータ通信においては圧倒的な先進国だが、携帯電話のキャリアは先々破綻すると思う。それは3Gにかけた投資に対して使っていないからだ。そこでMVNOということになる」と続けた。

 インデックスの寺田氏は、日本でMVNOが遅々として進まない点について、「本当にMVNOをやろうと思えば技術的にできないものではない。日本の場合はそういう仕組みを入れていない。国際的に3Gは標準化されているが、日本の3Gは国際標準ではない。MVNOのようなビジネスが出てこない背景には、キャリアが独自の仕様で展開していることにある」と語り、国際的な競争力をつけていくには標準化が必要との見解を示した。

 こうした状況について、Movabilityの三木氏は「長期的に観れば、オープン化や標準化に進まなければならないことはキャリアもわかっている」と話した。同氏によれば「誰も自分から口火を切ろうとしない。それはキャリアだけでなくCPなども同様だ」という。


 MVNOへの課題が論じられたディスカッションの最後に、モデレータの木村氏は、「これらの課題をどう乗り越えていくのか?」との疑問を投げかけた。

 これを受けた日本通信の福田氏は、大きく分けて「制度のイノベーション」と「技術のイノベーション」が必要だとした。同氏は、会場が目黒区ということで付近の鉄道を例に挙げて説明し、「東急電鉄は地下鉄と相互に乗り入れを行なっている。交通というネットワークインフラを提供する上でそれは義務だ。電気通信の法律にも他の事業者がネットワークの繋がりを求めた場合に受け入れなければならないとあるが、独占の弊害でそうはなっていない。これは行政も我々交渉する側も声をあげていかなければならない」と説明。技術面は、「設計とコンセプトがあればあとは作るという人が生まれてきている。あとは制度さえ乗り越えたら充分解決できる」と語った。

 これに加える形でインデックスの寺田氏は、「そもそもMVNOって何よ? の声がもっとも欲しい。結局、ユーザーの欲しいという声が高まればうまくいくのではないか」とコメント。三木氏も「MVNOをやりたいという経営者がもっと出てきて欲しい」と述べた。

 最後に福田氏は、「これだけの無線のネットワークを持っている国はない。皆さんといっしょに実現していきたい」と話し、ディスカッションを締めくくった。



URL
  インデックス
  http://www.indexweb.co.jp/
  日本通信
  http://www.j-com.co.jp/
  ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト
  http://www.jfpro.jp/
  mobidec 2006
  http://www.mobidec.jp/

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(津田 啓夢)
2006/11/30 22:20

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