ケータイ Watch
最新ニュースIndex
【 2009/06/26 】
携帯フィルタリング利用率は小学生で57.7%、総務省調査
[17:53]
ドコモ、スマートフォン「T-01A」を28日より販売再開
[16:47]
ソフトバンク、コミュニティサービス「S!タウン」を9月末で終了
[15:51]
ソフトバンク、ブランドキャラクターにSMAP
[15:34]
カシオ、携帯での閲覧にも対応した画像変換ソフト
[14:56]
テレビ朝日、iモードで動画配信「テレ朝動画」を開始
[13:54]
ファーウェイ、東京に「LTEラボ」開設
[13:22]
SoftBank SELECTION、iPhone 3GS向けケース3種発売
[13:04]
「G9」の文字入力に不具合、ソフト更新開始
[11:14]
アドプラス、iPhone 3G向けコンバージョンレンズ
[10:41]

【WILLCOM FORUM & EXPO 2008】
ウィルコム近氏、現世代PHSの下り3.2Mbps化に言及

ウィルコム 取締役 執行役員副社長 開発本部長の近 義起氏

W-OAMの1.6Mbps化、下り3.2Mbps化などに言及
 「WILLCOM FORUM & EXPO 2008」の28日の講演では、ウィルコム 取締役 執行役員副社長 開発本部長の近 義起氏が登壇し、次世代PHSに関する最新動向を解説した。その中で近氏は、現世代のPHSに対する施策として、高度化PHS(W-OAM)の通信速度の1.6Mbps化と、下り速度を3.2Mbps化する通信速度の高速規格を検討中であることを明らかにした。

 近氏は講演で次世代の無線技術や次世代PHSの動向を解説する一方、現世代のPHSに対する施策として、前述のように高度化PHS(W-OAM)規格を発展させ、下り3.2Mbpsの通信速度までは、技術的な目処がたっていることを明らかにした。

 現在「W-OAM typeG」として提供されているサービスは、多重化を進展させた「W-OAM typeG 16x」(仮称)で通信速度1.6Mbpsを実現できるとした。また、ハードウェアの小型化が求められるW-SIMなどでは、非対称高速化として下り速度を強化、「W-OAM typeAG 8x」(仮称)として、下り800kbpsを実現するという。さらに、「W-OAM typeAG 8x」(仮称)を4つ束ねる形で下り3.2Mbpsの速度を実現する「W-OAM typeAG 32x」(仮称)も実現できるとのことで、「このあたりの速度までは、現世代PHSでいけそう」として、規格化の目処がたっていることを明らかにした。実用化の時期は未定ながら、「1Mbpsぐらいの速度では、実力値はHSDPAなどを上回るだろう」として、マイクロセル方式による安定した速度の実現にも自信を見せた。

 また近氏は、W-SIMに対する施策として、オープンプラットフォームとしてのさらなる展開に言及した。同氏は「ひとつのモジュールですべての方式をサポートできるようになる。端末メーカーからすれば、ジャケットを作れば世界で売れるようになる」とオープン化が進展した際の構想を語り、「GSM版、CDMA版はすでにW-SIM賛同企業が自主的に開発し動作している」と現状を紹介。W-SIMという統一されたインターフェイスの上でUMTSや次世代PHSを実現するという方向性を打ち出し、将来的にはソフトウェア無線(SDR)技術により世代を超えたあらゆる通信方式をサポートできるという構想を明らかにした。


現世代PHSの商品構想の一旦が明らかに W-SIMはSDR技術も視野に入れる

無線ブロードバンドの特徴と課題

3.5G以降では共通化される部分も増加

ソフトウェア無線技術も完成に近づいているという

「不都合な真実」とするスライドでは、次世代のスペックと実利用状況との乖離を指摘
 講演の中では、3.9Gや4Gといった次世代の無線ブロードバンド規格の動向や課題、次世代PHSの特徴とこれからの施策などが順を追って解説された。

 近氏はまず、業界全体の今後の流れとして、通信インフラの世界のみならず、エンドtoエンドの領域でもIP化が進展すると予測し、キャリアが地域の事情を色濃く反映させる垂直統合型のビジネスモデルに変化が訪れ、今後はインフラフリーの環境が重要になると語った。一方、IP化の進展でアクセス網以外では統合が進んでおり、インフラのハードウェア面が共通化されていくとした。

 同氏は、3.9G、4Gと呼ばれる次世代の通信方式ではシステム要求条件がほぼ同一であるとする表を紹介し、さらにサービス要求も似ていることからキャリア幅の要求も近いものとなり、結果的に同じハードウェア構成となる場合もあることを紹介。加えて「ソフトウェア無線(SDR)技術が完成の域に達している」と述べ、試作機の動作状況からも、現状のLSIと「ほぼかわらない」ところまできているという。これにより、通信方式や世代を超えてサポートする統一的なハードも「目前に迫っている」とした。

 こうした次世代の技術の特徴を紹介した後、近氏は「不都合な真実」と題したスライドを表示。現在の国内の固定インターネット回線では、月平均で1回線あたり10GBに達する容量が利用されており、なお増大中であることからも、無線技術を使う回線が固定回線に置き換わるには現在の1,000倍の容量が求められると指摘した。そして、電波の利用にはシャノン原理が示す容量拡大の壁があることを紹介し、「容量の拡大は10倍が限度」と述べて、帯域幅でもって現在の1,000倍の容量を実現することは不可能であるとした。


シャノン原理による容量拡大の壁 マイクロセル方式がカギを握るという マクロセルでは補えない領域があるため、FMCが必須になっていると指摘

マイクロセル方式が容量拡大のカギ

 近氏はそうした容量拡大の解決策のひとつとして、「マイクロセル」方式を挙げた。「マイクロセルのみが100倍以上の容量拡大を実現可能」と語る一方で、「現在の100倍の基地局を建設するには10年以上かかるだろう。マイクロセル方式が容量拡大の唯一の解と言えるが、すぐにはできない」として、実現が容易ではないことも認めた。

 近氏は続けて「ウィルコムは、幸か不幸かマイクロセル方式でスタートし、ようやく携帯電話に匹敵するエリアを実現した。次世代の無線ブロードバンドではFMCが語られるが、真の無線ブロードバンドであればFMCは必要ない。マイクロセル方式が本物の無線ブロードバンドを実現でき、ウィルコムにはインフラ(基地局の場所)がある。これを実現するための免許もいただけたので、大変に意気込んでいる」と語り、ウィルコムのマイクロセル方式と次世代の無線ブロードバンドの相性の良さをアピール。全国16万局という膨大な数の基地局と、高密度なネットワークを運用する技術の蓄積が次世代でも強みを発揮するとした。


基地局回線の光ファイバー化

関東の地図上を埋め尽くす赤い点がマイクロセル方式のウィルコムの基地局。黄色の円は次世代PHSで当初予定するマクロセルの領域
 今後の施策としては、基地局回線の光ファイバー化を2008年の初めから開始し、順次換装を進めていることを紹介した。同氏は光化により最大で800kbpsの通信速度が実現できる一方、「一番の大きな効果は、遅延が少なくなること」と述べて、LANでの運用を前提としたビジネスアプリや、VoIP、オンラインゲームなどにおいても、遅延の少ないネットワークが強みを発揮するとした。

 また、基地局回線の光化は、そのまま次世代PHS「WILLCOM CORE」の準備も兼ねているとのことで、「すでに次世代の基地局の準備をしているようなもので、スタートダッシュが可能になる」と述べた。なお、サービス開始時にはマクロセル方式でエリア拡大を行ないながら、マイクロセル方式も進めていく形になるという。

 同氏は「世界の孤児になってはいけない」と述べて、基本的な要素技術は業界の標準的な取り組みをなぞって「コスト面でのスケールメリットも出していく」という姿勢を示すとともに、「高密度のマイクロセルに自信とプライドを持っている。かならずや来年には次世代PHSをお届けしたい。一生懸命がんばります」と意気込みを語った。


基地局回線の光ファイバー化で「サクサク感」が業界No.1とした 光ファイバー化は次世代PHSの準備も兼ねる


URL
  「WILLCOM FORUM & EXPO 2008」
  http://www.willcom-forum.jp/

関連記事
次世代PHS向けコンセプトモデルなどPHSの最新動向を紹介
喜久川社長、ウィルコムの目指す未来を語る


(太田 亮三)
2008/05/28 16:47

ケータイ Watchホームページ

ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.