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【CeBIT 2002】
総括 ~ヨーロッパでも見えてきた次世代携帯電話の実像~

世界最大級のIT関連展示会

 2002年3月12日からドイツ・ハノーバーで開催されているCeBIT 2002は、世界最大級のIT関連イベントとして知られている。「ケータイ Watch」ではすでに速報レポートをお送りしているが、今回は取材で得られた情報などを中心に、CeBIT 2002レポートの総集編をお送りしよう。


世界最大をさらに拡大

 CeBITを語るとき、必ず出てくるのが「世界最大」という言葉。CeBITそのものについては昨年のスペシャルレポート(2001年3月27日掲載)を参考にしていただきたいが、レポートを始める前に少し紹介しておこう。

 まず、CeBITが開催される「ハノーバーメッセ」という会場は、昨年、万博が行なわれたことでも知られている巨大な展示会場だ。どれくらい巨大なのかというと、敷地面積が100万平方メートルもある。東京ディズニーランドの約80万平方メートル、ユニバーサルスタジオジャパンの54万平方メートルと比べると、いかに巨大な展示会場であるのかがよくわかる。

 この広大な敷地内に、昨年までは26個のホールで展示を行なっていたが、今年は新たに完成した27番ホールを加え、合計27ホール、49万7730平方メートル(ホールの総面積)でさまざまな展示が行なわれている。来場者数は80万人を超え、60カ国、約3000社を超える出展社が参加する巨大イベントだ。

 これだけの巨大な展示会をハノーバーという一都市だけで支えられるわけもなく、関係者や来場者は周辺の都市などに滞在し、ICE(Inter City Express)と呼ばれるドイツ版新幹線などで1~2時間ほど掛けて、会場に毎日通うことになる。今回、「ケータイ Watch」のスタッフ2名と筆者は、ハンブルグに宿を取りそこから「通勤」をしながら速報レポートをお送りした。

 CeBITは携帯電話の市場にとっても重要なイベントのひとつだ。なぜなら、世界で最も普及しているGSM(Global System for Mobile Communications)携帯電話のエリアで行なわれる最大級のイベントであり、このイベントに合わせ、ノキアやソニー・エリクソン、モトローラといった世界を代表する端末メーカー、欧州の携帯電話事業者などが新製品や新サービスの発表などを行なうからだ。つまり、このイベントを見ずして、欧州の携帯電話市場、ひいては世界の携帯電話市場を語ることはできないわけだ。


欧州へ進出したiモード

ドコモブース

 今回はE-Plusや端末メーカーの後押しをするような印象だったNTTドコモのブース
 さて、今年のCeBIT 2002で最も注目されることと言えば、やはり、iモードの欧州上陸だろう。昨年はNTTドコモがCeBIT 2001に出展し、日本の携帯電話の先端ぶりをアピールしたが、今年はいよいよドイツの携帯電話事業者である「E-Plus」が会期中にiモードサービスを開始することになった。

 さて、E-Plusという会社について、少し説明しておこう。同社はオランダのKPNモバイルの子会社で、ドイツ国内ではドイツテレコム「T-Mobile」英Vodafoneグループ傘下の「D2 Vodafone(D2 mannesmann)」に続く、第3位の携帯電話事業者だ。ただ、現実的にはドイツテレコムとD2 vodafoneの二強が市場をほぼ支配しており、E-Plusの存在感はそれほど大きくない。街中を歩いていても上位2社のショップはよく見かけるが、E-Plusのショップを見かけるケースはあまり多くない。こうした位置付けの事業者がiモード導入により、シェアを拡大することができれば、iモードの魅力が世界に通用することを証明することになるだろう。

 E-Plusが開始するiモードサービスは、日本でのiモードサービスをいろいろな面で上手に取り込んでいる。まず、端末はNEC製「N21i」が投入され、会期中には東芝が「TS21i」で参入することも発表された。この2社以外には、欧州市場でTriumブランドを展開する三菱電機の参入が予定されており、その他にも数社の日本企業が参入するのではないかと噂されている。


ドイツ版iモード

 メニュー表示はもちろん、ドイツ語だが、日本のユーザーにはどことなく親しみが感じられるドイツ版iモードのトップメニュー。
 また、E-Plusのiモード端末は日本と同じように、すべて事業者から販売される。GSM携帯電話のエリアでは、基本的に端末の販売と回線の契約が切り離されているため、ユーザーが自由に端末や回線を選ぶことができるが、E-Plusのiモードを利用するには、N21iやTS21iなどのiモード端末を購入しなければならない。ちなみに、NECはN21iとほぼ同スペックの「DB7000」というGSM端末を欧州市場で販売しているが、これを購入してもE-Plusのiモードサービスは利用できない。こうした事業者主体の販売システムがどのように受け入れられていくのかも非常に興味深い点だ。

 コンテンツについてはすでに日本のコンテンツプロバイダなどが参入しており、日本でiモードが開始されたときよりも充実した内容になっている。コンテンツプロバイダの立場から見れば、課金システムがハッキリしない従来のWAPサイトよりも携帯電話事業者が課金を代行するiモードのビジネスモデルの方が魅力的だからだろう。ただ、端末と同じように、こうしたシステムを欧州のユーザーに受け入れられるかどうかはまだ何とも言えないというのが正直な感想だ。

 メールについてだが、E-Plusでは「任意の文字列@imail.de」という形式のメールアドレスを採用した。基本的なシステムは同じだが、欧州にはすでに「SMS(Short Message Service)」と呼ばれるメッセージサービスが普及しており、これを上回る魅力を発揮できるかどうかは微妙な状勢だ。SMSは携帯電話の制御チャンネルを利用して文字メッセージをやり取りするもので、日本で言えば、NTTドコモのショートメール、auのCメール、J-フォンのスカイメールなどがこれに相当する。日本のメッセージサービスは事業者間で互換性がないため(PHSはDDIポケットのPメール互換で利用可能)、相手が同じ事業者の端末を持っていない限り、基本的にメッセージのやり取りができなかった。そこで、各社はインターネットメールと接続が可能なメールサービスを提供したことにより、現在のように異なる事業者間でもメールのやり取りが可能になっている。これに対し、GSM携帯電話のSMSは基本的に互換性が取れており、異なる事業者のユーザーに対しても同じようにSMSを送信することができる。つまり、日本でメールサービスが普及したときと同じようなシナリオが描けないわけだ。


E-Plusのブース

 他の事業者のブースよりも確実ににぎわっていたE-Plusのブース。
 このように、今後の推移を見なければ判断できない要素も多いが、会場で見ている限り、iモードに対する来場者の関心は非常に高く、E-Plusの展示ブースも他事業者より確実ににぎわっていた。余談になるが、今回の取材に参加した編集スタッフIがハノーバーにあるE-Plusの販売店でGSMプリペイド携帯電話を購入したとき、店員に「iモードの反響はどう?」とたずねたところ、「反響はそれなりにあるが、まだそれほど目立った動きはない」と答えていた。販売店にしてみれば、やや肩すかしなのかもしれないが、日本でiモードがスタートしたときもあまり大きな騒ぎにならなかったことを考えると、欧州での静かなスタートもそれほど不安視する必要はないだろう。むしろ、今後、サービスを提供するE-Plus、それを支えるNTTドコモ、コンテンツプロバイダなどがどのようにiモードを盛り上げていくのかによって、欧州でのiモードの成否が決まることになる。おそらく1年後には何らかの方向性が見えていると予想されるので、各社の動向をじっくりと見極め、来年のCeBIT 2003でもう一度、取材をしてみたい。


MMS、GPRS、そして次世代へ進む欧州勢

NOKIA 7650

 実機のデモが行なわれたNOKIA 7650。モバイルカメラを搭載し、MMSでメッセージのやり取りができるGPRS対応端末だ。
 一方、iモード以外の動きはどうだったのだろうか。各メーカーや携帯電話事業者の発表などを見ていて、いくつか目についたものを紹介しよう。

 まず、端末やサービスで目立ったのがMMS(Multimedia Message Service)だ。MMSはその名前からも想像できるように、SMSのマルチメディア版という位置付けのサービスだ。つまり、既存のSMSを拡張し、画像や音楽データなどを添付してやり取りするサービスのことだ。今回のCeBIT 2002で発表された多くの端末がMMSをサポートしており、携帯電話事業者やコンテンツプロバイダのMMS関連のサービスをいくつか発表していた。MMSで送受信するデータはいろいろな種類があるが、ノキアの「NOKIA 7650」やソニー・エリクソンの「P800」、Panasonicの「GD87」を見てもわかるように、最も期待されているのはモバイルカメラで撮影した画像のやり取りだ。つまり、日本の「写メール」に似たサービスに期待が寄せられているわけだ。

 MMSと並んで、もうひとつ各社が積極的にアピールしていたのが「GPRS(General Packet Radio Service)」だ。GPRSはエリクソンなどが中心になって開発したもので、GSM携帯電話で利用するパケット通信サービスのことだ。既存の回線交換が9.6kbpsであるのに対し、GPRSのパケット通信サービスは最大115.2kbpsまで高速化している。課金も日本のiモードなどと同じように、回線交換が時間単位だったものがGPRSではパケット量単位になる。前述のE-PlusのiモードもGPRSをベースにした通信システムが構築されている。

 GPRSは筆者がはじめてCeBITを取材した2000年からアナウンスされていたが、今回はミッドレンジクラスの端末にもGPRSが搭載され、実際にドイツ国内の事業者でもサービスが提供されるなど、かなり身近な存在になりつつある。ちなみに、GPRSは次世代携帯電話(第3世代携帯電話)への足掛りとなるため、欧州では「2.5G」とも呼ばれている。

 このGPRSを経て、次なるステップとなる次世代携帯電話についても少しずつ方向性が見えてきた。2000年や2001年のCeBITに比べ、今年のCeBIT 2002では海外メーカーの展示において、次世代携帯電話に関するものが増え、モックアップや利用シーンの提案なども数多く見かけた。世界最大の端末メーカーであるノキアも「W-CDMA/GSM」のデュアルモード端末を今秋にもリリースすることを発表している。日本での次世代携帯電話サービスの開始を見て、欧州の携帯電話事業者や端末メーカーも「次世代携帯電話の開発には膨大なコストと手間が掛かる」「必要以上に焦ってはいけない」と認識したようで、まずはコンテンツをはじめとする利用シーンや利用目的を明確にしようとしている。その1つの解がMMSで実現される画像付きメールであり、これを次世代携帯電話で動画メールやテレビ電話に昇華させようという考えのようだ。


 一方、昨年に引き続き、バリエーションが増えてきたのがPDA一体型端末だ。国内ではパソコン、PDA、携帯電話と、それぞれの利用目的がある程度明確化され、ホームページなどもそれぞれに公開されているが、欧州は携帯電話向けにWAP対応ページが公開されたものの今ひとつ奮わず、「ホームページと言えばパソコン向け」という印象が強い。その影響か、パソコンで閲覧するような本格的なホームページをPDAなどの携帯情報端末で見たいというニーズが強いように感じられる。

 こうしたニーズの背景には、GSM携帯電話では契約者情報がSIMカードに記録されており、SIMカードを差し替えれば、どの端末でもデータ通信などができることも挙げられるだろう。つまり、データ通信をしたいときは、音声通話のための端末からSIMカードを抜き、PDA一体型端末に挿して、必要なだけホームページを閲覧するというわけだ。もちろん、PDA一体型端末でも音声通話が可能で、機種によってはBluetoothとヘッドセットによって、ワイヤレス音声通話の環境を実現しようとしている。


シャープ「TQ-GX10」

 シャープは国内市場で培ったノウハウを活かし、欧州市場に参入する。
 国内ではPHSを利用したモバイルコンピューティングが十分普及しており、今年はホットスポットサービスも一気にブレイクしそうな気配だが、欧州はこれと異なるシナリオでPDAが進化することになりそうだ。もしかすると、こうしたPDA一体型端末が一気にブレイクしてしまうと、欧州でのiモードサービスの普及に少なからず影響を与えるかもしれない。

 また、これらの欧州勢に混じって、日本の端末メーカーやソフトウェアベンダー、コンテンツプロバイダも会場内で注目を集めていた。個人的に注目したのはシャープとPanasonicだ。シャープは国内で爆発的にヒットしているJ-フォン向け端末の余勢を駆って、欧州にモバイルカメラ付きの端末をリリースする構えだ。日本の展示会のように、コンパニオンのおねえさんと「パシャッ」というわけにはいかないが、来場者の関心は高いようで、説明員に質問をくり返す来場者を何度となく見かけた。また、Panasonicは以前から欧州市場に参入していたが、今回は国内向けとして登場してもおかしくないレベルの「GD87」を発表しており、こちらも来場者の関心を集めていた。言い方は悪いが、「日本のお下がり」ではなく、今持てる技術とデバイスをきちんと搭載した端末を欧州に持ち込んだ姿勢は評価できるものだろう。


ケータイはグローバルの時代へ

 昨年、CeBIT 2001を取材したとき、レポートの最後に「CeBIT 2001は日本のケータイ文化を世界に展開するターニングポイントになるかもしれない」ということを述べた。今回のCeBIT 2002はその第1ステップとして、iモードの欧州上陸、国内メーカーの欧州市場への新規参入、コンテンツプロバイダの進出などの動きが見られた。その一方で、欧州の携帯電話事業者やメーカーも着実に日本市場のノウハウを取り入れており、サービス内容を急速に充実させている。「ケータイは日本が一番さ」などとあぐらをかいていては、あっという間に追い越されてしまうかもしれないほどの進化ぶりだ。次世代携帯電話への移行はゆっくりかもしれないが、サービス内容を含めたトータルな環境は着実にグローバル化が進んでおり、今回のCeBIT 2002ではその方向性をハッキリと見て取ることができた。グローバルなケータイの時代は、日欧の携帯電話文化が融合するのか、相反して激突するのか、今後の行く末をじっくりと見守っていきたい。


・ CeBIT
  http://www.cebit.de/

CeBIT現地レポート一覧


(法林岳之)
2002/03/18 19:55

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