ケータイ Watch
連載バックナンバー
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事務機のようにシンプルなデザイン
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[2003/03/07]

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[2003/02/14]

「CFGPS2」とPocket PCで実用的ハンディGPS
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2002年

2001年

モバイラーズ★EYEタイトルGIF
非ザウルスユーザーが見たMI-E21(後編)
山田道夫
1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している


現在のPDAではベストな使い心地のWebブラウザ

 Webブラウズに関しては、ほとんど不満点が見当たらない。現在市販されているPDAのWebブラウザの中では、最強ではないかと個人的に思っている。ディスプレイの縦横表示をリセットすることなく切り替えできるし、SSLにも対応。ほとんどのページを表示できる。表示の切り替えや文字の大きさの変更も可能なので、印象ではVGAサイズくらいの表示は可能なようだ。筆者は、一般的には横型にしてブラウズし、テキストを入力するときなどに縦型にして入力するといった使い方をしている。

 他の多くのPDAとは異なり、縦型にすればキーボード入力が可能なので、URL入力もさほど苦痛ではない。ディスプレイの表示領域が狭いことは少々気になるが、電車の中でちょっとニュースを知りたいといった場合や、ちょっとした待ち時間にWebブラウズするなどの使い方には非常に向いているPDAだ。筆者は、電車の中での読書時間が極端に減ってしまった。


Webブラウザは非常によくできている。「インターネット」という名称のブラウザをタップして接続する。縦横表示の切り替えも簡単だ 録画したり、保存したページを後で「読む」ことも可能だ。ただし、ページごとの保存しかできないようで、リンク先のページも保存したい場合は再度接続する必要がある

Webブラウズを継続して、バッテリー駆動時間をみる

 MI-E21にAirH" card petit RH2000を装着して、PHS通信でWebブラウズをし続けてみた。フロントライトは「明るさ最大」に設定。1時間40分を過ぎたところでACアダプタを使ってくださいという警告が出て、1時間44分で自動的に終了した。

 次に、MI-E21にエナックスの外付けバッテリーのPowerBattery Slim(1万1000円)を使ってバッテリー駆動時間を計ってみた。PowerBattery Slimは、デジタルカメラ向けに開発されたものだが、ザウルス MI-E1/L1/E21、CASSIOPEIA E-700/750と、PDAにも対応。41×116×13mm(幅×奥行×高)とコンパクトで重量も98gと軽く、気軽に持ち歩ける。

 今回もフロントライトは「明るさ最大」に設定。4時間で警告が出て、4時間3分で電源が切れ自動終了した。なお、本体の電源も満充電の状態でスタートしたので、本体バッテリー+PowerBattery Slimを併用しての持ち時間ということになる。コンパクトな外付けバッテリーなので、非常に長持ちとは言えないが、それでも本体バッテリーのみの場合に比べると倍以上の時間持つことになる。

 さらに、エナックスのデジタルカメラ用のPowerBattery for DC(1万6800円)を試してみた。PowerBattery for DCは、60×140×20mm(幅×奥行×高)、重量250gとそれなりに大きい。こちらもデジタルカメラ用だが、ザウルスMI-E21にも対応する。こちらも最大光量でWebブラウズし続けた結果、7時間2分を過ぎたところでACアダプタに接続してください、という警告が出て、7時間6分過ぎに自動終了した。こちらも本体バッテリーは満充電の状態でスタートしたため、本体バッテリー+PowerBattery for DCを併用しての持ち時間だ。使い方にもよるが、7時間ていど持てば、1泊旅行くらいなら、メールチェックをして、少々Webブラウズもしたとしても、十分間に合うだろう。


PowerBattery SlimをMI-E21につないで、接続しつづけた。液晶の明るさを最大に設定しても、比較的電流消費の大きなRH2000で4時間持つのはうれしい PowerBattery Slim(上)とPowerBattery for DC(下)。大きさも違うが、重量も、98gと250gと2.5倍程度の差がある

 MI-E21では、ちょっとバッテリーが心配なところもあるが、予備のバッテリーを持つよりも外付けバッテリーを1本購入しておく方が、安心な場合も多いだろう。なにしろ、MI-E21をACにつながなくても充電できてしまうのだ。

 なお、バッテリー駆動時間は、バッテリーの条件や気温などによっても異なってくるので、一応の目安と考えた方がいいだろう。また、エナックスの外付けバッテリーはいずれもエナックスがMI-E21を対応機種として謳ってはいるが、シャープが想定している使い方ではないので、基本的に自己責任で使用することになるので注意してほしい。

 ちなみに、今回はAirH" card petit RH2000を使用してみたが、同じAirH" card petitのシリーズでも、「RH2000」よりも「CFE-02」の方が消費電力がかなり少ない。このため、同じテストをしたら、おそらくバッテリー駆動時間にもかなり違いが出るはずだと思うが、CFE-02ではまだ確認していない。


・ PowerBattery製品情報(エナックス)
  http://www.enax.co.jp/products/

MI-E21でのビデオ閲覧

ビデオレコーダーを使えば、非常に簡単にTVなどの内容を録画することができる。唯一の問題点は、録画している最中はMI-E21を使えないことだろう
 この機能については、すでにあちこちで紹介されているのでいまさらではあるが、思ったよりは画質は悪くない。予約録画も可能で、1ボタンでその場で録画することもできるので操作も簡単だ。ただし、当たり前のことだが、録画中はMI-E21を録画に占有されることになるので、それほど見たい映像というのは、どれほどあるのだろうかということが少し気になる。まあ、人をびっくりさせるといった目的には向いているとは思うけれど。

 筆者の場合、CFタイプのビデオレコードカードを使って録画してみた。画質はまあまあといったレベルだ。240×176ドットのファインモードで録画した洋画の場合、テレビでよく見る画面下に表示される字幕ならば、比較的不自由なく読めた。サッカーの試合であれば、遠景だと選手が誰かわからないが、ボールの動きはなんとかわかる程度で、それなりに実用になる。64MBのSDカードで約30分の録画が可能だ。512MBのSDカードを使えば4時間分の録画ができることになるが、512MBのSDカードはMI-E21本体に近い値段がしてしまうので、実際に録画のために購入する人はほとんどいないとは思うが、可能性としては4時間まで録画できるというのは心強い。


別売のデジタルカメラカードで遊ぶ

デジタルカメラカードで撮影する場合は、映像を見ながら撮影できるので意外に使い勝手がいい。これで画像のクオリティがもう少しだけよかったら……。モデルは高長恭氏
 デジタルカメラカードは2年前に発売された周辺機器で、従来品をサポートするシャープの姿勢には感心するが、記録できる画像サイズはVGA(604×480ピクセル)サイズまでということもあり、画像メモ用と割り切って使った方が良い。本気で写真を撮りたいのなら、デジタルカメラで撮影して、MI-E21はビューワとして利用する方がいいだろう。

 画像メモ用としては、カメラカードがCFタイプでコンパクトなこともあり、カメラカードを取り出して装着し、すぐに撮影ができるとのは便利だ。顔写真を「スケジュール」に貼り込めたり、電子メールに添付して送信するのも簡単。連携機能はさすがという感じで、その分画質のクオリティが残念に思える。画質をメモ用として割り切ることができるかがポイントになるだろう。


デジタルカメラカードで撮影。PhotoShopで縮小しているが、レタッチはしていない 同じくデジタルカメラカードで撮影。夜、室内で撮影

 なお、シャープのソフトウェア「ビデオカメラ(シェアウェア、1000円)」をダウンロードして、デジタルカメラでムービーを撮影することもできる。デジタルカメラとして利用する場合には必要がないが、ムービーを撮影する場合には、別途この「ビデオカメラ」ソフトをダウンロードする必要がある。記録動画のサイズは240×176または160×120ピクセルで、それぞれにファインとノーマルのモードが選択可能だ。撮影場所の明暗も設定できる。また、メールに添付するかどうかもメニューから選択可能になっている。録画データのファイル形式には、Nancyファイルを採用。PCで見る場合には、無料のNancy用のブラウザをダウンロードする必要がある。

 画質的には、正直なところ“撮影ができる”というレベルだ。動画撮影の場合、SDカードなどに記録すると、かなりカクカクした印象となる。ステレオでの録音も可能だが、音声を録るにはまた別売マイクなど周辺機器が必要だ。


ムービーもスチルと同じデジタルカメラカードを利用して撮影する。シャープのソフト「ビデオカメラ」はシンプルでわかりやすく使い勝手がいい 「MOVIEプレーヤー」で再生してみたがややカクカクした印象を与える。音声を利用するためにはさらに周辺機器が必要

MP3プレーヤーとしても楽しむ

別売のイヤホンでは、停止、再生、次曲、前曲、ボリュームの上下が可能。リモコンとしての機能は不満のない出来だ
 MI-E21では、他の多くのPDA同様、MP3プレーヤーとして音楽を楽しむことができる。対応フォーマットはMP3のみで、さらに高圧縮な規格が出てきている現在では、MP3ファイルだけというのはやや物足りない感もあるが、音質はまずまずといったところだろう。

 イヤホンが別売されており、モバイルオーディオプレーヤーとしてもなかなかよくできている。データは、SDカードとCFカードのどちらにあってもよい。SDカードまたはMMCで再生した場合、アップデータを利用すれば12時間も連続再生可能になるので、十分実用的だろう。さらに、外付けのバッテリーを持ち運ぶようにすれば安心だ。


PCとのシンクロナイズ(同期)

 MI-E21とPCとのシンクロナイズは、設定さえ終えてしまえばかなり簡単だ。シャープは物持ちがいいので、接続用のケーブルなどはかなり古いものと同じだ(標準価格は9000円だが、実売価格は6000円程度かも)。そのため、MI-E21では、付属のCD-ROMを使ってアップデートする必要がある。これは面倒というほどではないが、初心者はとまどうのではないかと思う。

 シンクロナイズ自体は、USBケーブルをPCに接続して(別売でシリアルケーブルもあり)、MI-E21側からソフトウェアで行なう。MI-E21からシンクロナイズを行なうのが面倒だという人の場合は、クレードルを別売しているので、クレードルにUSBケーブルを接続し、PCと接続してしまえば、クレードルの「スタート」ボタンを押すだけでシンクロナイズ可能だ。クレードルはMI-L1の発売に合わせて発売されたものが利用MI-E21にも対応する。

 クレードルの価格は4000円と安くはないが、日常的にPCとシンクロナイズするユーザーなら、クレードルを購入した方が手間がなくて簡単だろう。なお、クレードルはMI-E21の本体充電も行なえる。

 Microsoft Outlookとザウルスではデータの持ち方が違ったりするので、完全互換とまではいかない点もあるようだが、Outlookのデータを移行する程度なら十分実用的に使える。MI-L1以降、メモのシンクロナイズも可能になったので、かなり実践的に利用可能になってきたといえる。ただし、Outlook側で分類を用いてメモを整理している場合は、MI-E21に移すと分類が反映されず、一覧で表示されるためかなり探しにくい。このあたりは、今後の対応が待たれるところだ。


クレードルを使えば、ボタンを押すだけでシンクロナイズしてくれる。シンクロナイズ自体はかなりよくなっている スケジュールでOutlookとのシンクロナイズしたデータを確認してみた。Outlookとシンクロナイズ可能なのは、スケジュール、アドレス帳、メモ帳、アクションリスト、メール

電話機としての利用

取り付け方はこんな風になる。別売のアダプタとマイクイヤホンが必要。音質は非常にクリアですばらしい
 MI-E21のCMでもおなじみなように、MI-E21では、電話機としても利用が可能だ。P-in m@sterをCFカードに装着し、インデックスから「ダイヤラー」を起動する。電話を模したイラストが表示されるので、数字をタップして電話番号を入力すればOKだ。もちろん、アドレス帳から、電話番号を参照することもできる。発信履歴も残り、発信した番号をアドレス帳に登録することもできる。

 筆者はビクターのイヤホンマイクTF-PM30で利用してみたが、音質は携帯電話など問題にならないくらいクリアで聞きやすい。固定電話回線でも使ってみたが、通話先が固定電話と間違えそうなくらい聞きやすかった。

 音質は良いが、しかし現実的な利用シーンを考えると、PHSカードを取り付け(これはCFカードスロットにいつも装着している人も多いだろうけれど)、アダプタを装着し、さらにイヤホンマイクまで取り付ける必要がある。バッグやポケットからこれらを取り出す時間も考えると、携帯電話なら用件をかけ終わってしまうかもしれないくらいの時間がかかるし、余分な小物を持ち歩く必要が出てくる。こう考えると、携帯電話をかけることができない地下鉄の中とか、携帯電話が輻輳で利用できない場合など、バックアップ手段と考えるのが現実的かもしれない。もちろん、人を驚かせるという目的ならいつでも有効だろうけれど。


実際に電話をしている様子。PHSしかつながらない場所や携帯電話が輻輳で使えない場所などでは役立つかも ダイヤラーでは簡単に電話をかけることができる。受信はできない

まとめ

 筆者は、PDAというのは立っていても使いやすいかどうかが非常に重要だと思う。いまどき、座って使う場所であればノートPCやjornada 710/720やシグマリオンIIなどのハンドヘルドPCの方がはるかに使い勝手がいい。高速で入力できるし、Webブラウズも非常に見やすく高速で表示される。メールだって高機能なメーラーがそのまま使える。バッテリーの連続駆動時間も伸び、以前ほど神経質にならずに済むようになってきた。そういった現状のモバイルノートPCの弱点が、外で立って使うという場合だ。これは、実際にやってみるとわかるけれど、非常に不安定で使い勝手が悪い。とにかく持ちにくいのだ。片手で本体をホールドしながらもう片方の手でキー操作などを行なう不安定な姿勢では、落とす不安も大きい。実際にほかの荷物がずり落ちるのを防ぐのに気を取られたりして、落とす可能性も高いだろう。また、すばやく取り出すことも難しい。ちょっと取り出して、ちょっとブラウズしてすぐにしまうといったことにはまったく向かないのだ。

 ただし、すでにPDAもPIMブラウズだけでは物足りなくなっている。PIMブラウズだけであれば、携帯とかで十分だろう。というよりは、デバイスが減る分だけ携帯にするべきなのかもしれない。プラスαが、Webブラウズであり、メールなどの送・受信だろう。

 そういったユーザーには、MI-E21は非常にいい選択だと思う。動画や写真といったものは、すぐに飽きちゃうんじゃないかと思うのだが(私の嗜好ではないだけかもしれないが)、基本的な機能とプラスαは非常にしっかりしている。現在では、PCでOutlookを使っていても、追加の費用はかかるけれどMI-E21で簡単にシンクロナイズが可能だ。

 ザウルスMI-E21は大変すばらしいPDAだと思う。しかし、これまでPocket PCやPalmをメインで使っていた人間からするといくつかつらい部分もある。まず一番気になるのが、初期設定では、前回終了時の状態が保存されないことだろう。初期設定では、電源を落とすとインデックスに戻るようになっている。


「電源を切る前の画面」を選択すれば、電源を切っても電源を切る前に使っていたプログラムのそのままの状態で復帰する
 これは、「インデックス」画面で「メニュー」ボタンを押し、「インデックス設定...」を選択し「電源を切る前の画面」を選択することで設定を変更すれば、電源を切る前の画面を次回起動時に表示させることが可能だ。しかし、他のプログラムを使ったりすると、またそのプログラムに戻ってもプログラムの初期画面に戻ってしまっている。これは、PalmやPocket PCやPsionに慣れた身からすると非常に使い勝手が悪い。昔、シャープの方になぜこういった仕様にしているのかを聞いたことがあるけれど、その時の話では、初心者などへのモニタリングした結果の配慮ということだった。

 確かに、既存のPDAユーザーよりもこれからPDAを使用するユーザーの方が多いのだろうとは思う。しかし、それは選択できればいいだけだと思う。ザウルスのOSの根幹にかかわるようなことなのかもしれないが、いつかはそういった選択も可能になってほしい。

 そんなわけで、非常にすばらしいPDAだとは思うけれど、誰にでも勧めたいというわけではない。PalmやPocket PCなどに慣れたPDAユーザーの場合は、当たり前ではあるが、カルチャーの違いに慣れる覚悟が必要だと思う。完成度は非常に高いし、機能を考えるとコストパフォーマンスは非常に高いため、冒頭で述べたように、初心者ならこれを勧めるが。

 しかし、シャープはユーザーの意見に耳を貸すメーカーでもある。MI-E1で使い勝手の悪かった部分は、かなりMI-E21で改善されている。たとえば、ACアダプタは、MI-E1では非常の巨大で重いものだったが、MI-E21では携帯電話タイプの歯が折りたためる物に改良されている。また、持ちにくかった横幅も詰められたり、ユーザーの使い勝手には非常に気を使っているメーカーでもあると思う。さらなる今後の製品に期待したい。


・ ザウルスMI-E21製品情報
  http://www.sharp.co.jp/products/mie21/
・ ザウルス情報ページ
  http://www.ezaurus.com/mie1/product/index.html


(山田道夫)
2001/11/09 16:36

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