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「W51H」開発者インタビュー
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ワイドVGAと指紋センサーで活きるPCサイトビューアー
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KDDIから発売される「W51H」は、480×800ドット、2.9インチのワイドVGA液晶を搭載した日立製作所製のWIN端末。2軸ヒンジを採用したビュースタイルでは、横800ドットというこれまでにない高解像度でコンテンツを楽しめる。また、指紋認証機能を備えた「スマートセンサー」はスクロールやカーソル操作にも利用できるなど、同社として初めて搭載するデバイスを意欲的に取り込んでいる。
「W51H」を開発した日立製作所、カシオ日立モバイルコミュニケーションズの担当者に話を聞いた。
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酒井氏(左)と吉田氏(右)
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――まず、W51Hの開発コンセプトを教えていただけますか?
石田 伸二郎氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ 商品企画チーム)
この春のモデルでは、「W43HII」で“ワンセグ派”を、「W51H」で“ネット派”をターゲットにしています。ワンセグに注力してきた日立が次のトレンドは何かを検討した結果、ユーザーにも魅力的でかつ、auのネットワークの高速・定額を活かせる機能は「PCサイトビューアー」の活用ではないかと考えました。「いかに見やすく使いやすくするか?」という点に注力しました。
また、もうひとつのトレンド軸は「セキュリティ」です。昨今の携帯電話は、個人情報や企業情報がたくさん保存され、おサイフケータイの機能まで付き、法人やビジネスはもちろん、プライベートでもセキュリティ機能が注目されています。単にセキュリティレベルを高めるだけでなく「いかにスマートにロックおよび解除ができるか」という点に注力しました。この2つのポイントを両立したのが「W51H」です。
酒井 健一氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ 商品企画チーム)
当社で事前に調査を行ない、ユーザーが次に購入する携帯電話に求める機能を調べたところ、フルブラウザ機能である「PCサイトビューアー」は「ワンセグ」と共にニーズの高いものでした。
「W51H」は「PCサイトビューアー」をより見やすく、使いやすくしたいという思いから、横向きのビュースタイルで横800ドットとし、多くのホームページを横スクロールなしで閲覧できるワイドVGAの高精細な液晶を採用しました。また、そのビュースタイルでも操作しやすいセンサーを搭載しました。
具体的には3つのポイントがありまして、一つ目は高精細な2.9インチのワイドVGAのIPS液晶、二つ目はビュースタイルでの操作性を確保したスマートセンサー、三つ目はワイドVGAに対応したアプリです。縦向きのオープンスタイルに加え、横向きのビュースタイルでも使いやすさに配慮しました。
液晶パネルは、日立の液晶技術として液晶テレビ「Wooo」で実績のあるIPS液晶を搭載しているのが大きな特徴です。
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PCサイトビューアーでは横800ドットで多くのWebサイトを横スクロール無しで閲覧できる。左側にはスマートセンサー
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――スマートセンサーは日立の端末として新たな試みです。
酒井氏
PCサイトビューアーで十字キーの代わりになる、というものですが、なぞることでスクロール操作ができますし、ダブルタップで決定ボタンの代わりにもなります。側面のサイド十字キーは、画面のズームアップやブラウザの「戻る」「進む」などに割当てています。さらにサイド決定キー長押しではサブメニューの表示も可能です。ビュースタイルでもオープンスタイル変わらない操作性を目指しました。
PCサイトビューアー以外では、EZナビウォーク、PCドキュメントビューアー、カメラ機能もワイドVGAの解像度に対応しています。カメラのズームアップ、ズームダウンもスマートセンサーで行なえます。スマートセンサーは指紋センサーとして認証機能で利用できますし、すべてのロックナンバーを求められるシーンで利用できます。ロックナンバーとの併用、指紋のみの利用にも対応しています。
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左から石田氏、黛氏、猪俣氏
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――スマートセンサーを搭載した意図はどこにあるのでしょうか?
酒井氏
PCサイトビューアーを、パソコンライクに使いたい、という考えがありました。ボタンを配置するよりも、タッチパッドのようなスクロール操作がよりパソコンに近いと考えました。
猪俣 真一氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 ハード設計グループ)
入力と出力という面において、スマートセンサーとワイドVGAによる操作という組み合わせは、ヘビーユーザーにも満足してもらえる仕様に仕上がっていると思います。ワイドVGA液晶も指紋センサーも当社にとっては初めてのデバイスだったので、非常に苦労はしましたが、逆に、技術者としてはかなりやりがいのある内容でしたね。
黛 克典氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 ハード設計グループ)
指紋センサー搭載の端末を作るメーカーはまだそれほど多くないこともあり、「W51H」の開発を始めた当初はセンサーデバイスの種類も多くありませんでした。その中で、今回の企画にあったポインティング機能と指紋認証精度を持ったデバイスを選ぶのがまず大変でした。外側に出るのである程度の強度が必要になりますし、液晶の脇に実装して片手で操作できるとか、さまざまな要素を考慮して選びました。
読み取り方式もいろいろなタイプがあります。デバイスも進化していて、ある程度小型化されたものが出てきたので、消費電流も考えながら最適なものを選びました。
酒井氏
光学式も電界検知式も、どちらが進化したもの、ということではなく、それぞれ進化していますね。今回は、指の表面ではなく真皮を読み取るタイプで、ある程度小型化されていた電界検知式のセンサーを採用しています。
――ブログやSNSのモバイル版ではQVGAサイズを意識したものもあると思いますが、「W51H」ではパソコン版サイトを主に楽しむ、ということでしょうか。
吉田 征義氏(日立製作所 製品開発事業部 携帯電話本部 営業部)
液晶の見やすさと、PCサイトビューアーの操作のしやすさにはこだわっています。家ではパソコンで見て、その環境をそのまま持ち出せる、というのが「W51H」の特徴ですね。
酒井氏
今はブログも、文章だけでなく画像もふんだんに使われていますし、ワイドVGAとPCサイトビューアーの進化は大きなポイントではないでしょうか。
PCサイトビューアー側で今回対応した点ですが、今まではカーソルの移動がリンクをたどっていくような動きで、上下左右にリンクの付いたサイトを閲覧するときなど直感的に分かりづらい部分がありました。今回はポインターを表示していますので、カーソルの移動が分かりやすくなっています。また、このポインターはスマートセンサーで直感的に操作することもできます。
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EZナビウォークの地図も高精細に表示
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――PCドキュメントビューアーやEZナビウォーク辞書機能も横画面対応ですね。
酒井氏
EZナビウォークは便利ですが、QVGAサイズの画面ではわかりづらいこともあった地図の表示も「W51H」ではワイドVGAの横画面表示に対応しています。EZ助手席ナビでは、カーナビの画面のような感覚で使えますし、本当の意味で便利な機能になっていると思います。
辞書機能は、このモデルでは使い易さを重視し、辞書内に表示される英単語・英熟語・英文章を音声発音させる機能も付けました。
――デザイン面でのポイントはどのあたりでしょうか?
岩間 徳浩氏(日立製作所 デザイン本部 ホームソリューションデザイン部 専門デザイナー)
デザインのポイントは、なめらかなフォルムと凝ったディテールです。シンプルな外観でありながら、近くで見るとおっと思えるようなデザインを意識しています。細かなところでは、サブ表示パネル周辺にはテクスチャードパネルという特殊なエンボス印刷を施しています。ビュースタイルは横向きで使う、ということを意識してデザインしましたし、横向きで使いやすいようなキーレイアウトにしています。サイドキーは片側に集めましたが、最初はキーが一列に並んでいました。しかしそれでは少し使いにくいと考え、十字キーを意識したレイアウトに変更しています。また、スマートセンサーの指の使われ方が一方向だけではないので、センサー周辺の面のつなぎには苦労しました。
ボディカラーの3色ですが、久しぶりの赤の「プレミアムレッド」は2種類のパールを混ぜて作りました。指紋センサーもあるということでビジネスユースも考えてシルバーも用意しました。通常のメタリックシルバーの塗料はアルミ粉で作りますが、今回はそれにパールを混ぜて金属製のような質感に仕上げました。ホワイトは現在調査を行なうと必ず上位にくることもあり、人気色として採り入れています。
また、待受画面のデザインもワイドVGA対応のものをいくつか用意していますし、ワイドVGAの解像度ならではのユニークなものも搭載しています。
――フォントなど、VGA向けのUIはどうなっているのでしょうか?
酒井氏
VGA対応のコンテンツもありますが、そうでないものは倍角表示になります。
石田氏
メールなどは使い方やフォントサイズもある程度決まってきていますので、無理にVGAに対応させてパフォーマンスを落としてしまっては意味がない、という部分もあります。VGAが活きるコンテンツから、しっかりと使いやすくして対応しています。
吉田氏
フォントについては、VGAに合わせて48ドットの大きなフォントも搭載しています。
――そのほかに、こだわったポイントなどはありますか。
酒井氏
テンキーはフォントを各色ごとに変えていますね。最近は薄型端末の登場でシートキーも増えてきましたが、「W51H」ではタイルキーを採用して押しやすさにも配慮しました。
吉田氏
タイルキーは、縦方向だけでなく、今回は横方向も認識しやすいようにキー形状を改善しています。
酒井氏
Wシーン機能を今回も搭載していますが、「W51H」ではEZケータイアレンジのON・OFF設定をWシーン機能の中に設けました。[*]キーの長押しでWシーンと一緒にEZケータイアレンジも手軽に切り替えられます。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
製品情報(KDDI)
http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/w51h/
製品情報(日立)
http://www.hitachi.co.jp/Prod/vims/mobilephone/w51h/
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(太田 亮三)
2007/02/13 12:56
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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