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第108回:Wake On Ring とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


電話を使って電源を入れる

 先日発売されたNTTドコモのPDA「musea」などで利用できる「Wake On Ring」は、PDAやノートパソコンなどに接続された通信カードへの呼び出しによってPDAの電源を入れ、プログラムを起動するという機能です。NTTドコモの「P-in Comp@ct」「P-in m@ster」などの通信カード、それに対応したソフトウエアと組み合わせることでこの機能を利用できます。

 この機能は、PDAを初めとするモバイルコンピューティングでの用途向けに、国内の主なモバイルコンピューターに関連する企業が加入しているコンソーシアム「モバイルコンピューティング推進コンソーシアム」(MCPC)によって規格化されています。MCPC規格としては、このWake On Ringのほかに、通信カードが通信圏外から圏内に移動した際に、PDAやノートPCなどのモバイル端末を起動させる機能「Wake On Radio」なども規格化されています。

 Wake On Ring、Wake On Radioのように他のデバイスからの信号やデータによって、機械のスイッチを入れて動かすような仕組みには、よく「Wake On …」という名前がつけられており、「…」の部分にはその機械を動かすトリガーとなる仕組みや装置の種類の名前が入っています。これはモバイルコンピューティングだけでなくコンピューター一般によく使われている用語です。たとえば、サーバー用コンピュータやパソコンなどの仕組みとして「Wake On LAN」というものもあります。

 これはコンピューターに接続したネットワーク(LAN)に、他のネットワーク上のコンピューターから「マジックパケット」と呼ばれる起動用のデータを送ることで、そのコンピューターの電源を入れて起動させることができる、という仕組みです。Wake On LANに対応したコンピューター本体とWake On LANに対応したネットワークカードを使用することでこ利用することができるようになります。


Wake On Ringの仕組み

 Wake On Ringの大きな特徴は、モバイルコンピューターを呼び出し側の都合で電源を入れて起動できるということですが、それだけでなく、起動後に呼び出し側が指定したPDA上のプログラムを起動させることもできる、ということにもあります。

 それを実現しているのがメール機能を利用したWake On Ringの仕組みです。Wake On Ringでは、通信カードの呼び出しに携帯電話・PHSの通話ではなく、メール機能を利用しています。

 たとえば、museaとP-in Comp@ct、P-in m@sterなどでの組み合わせにおけるWake On Ring機能では、PDAを起動させるトリガとしてNTTドコモのPHS向けサービスで、最大20文字のメッセージが送受信できる「きゃらトーク」が利用されています。

 インターネット上からPDAに配信したい情報が流れてきた場合、その途中にある呼び出しサーバーでは、データの種類を識別して、PDA起動用データをきゃらトークでPDAに配信します。このデータはNTTドコモのPHS網を通じてPDAに挿入されているP-in Comp@ctに到着します。

 電源が切れていたPDAは、このきゃらトークによって電源が入れられます。さらにWake On Ring用ミドルウエア(OS上で動作して、ある機能を他のソフトなどに提供する基本ソフト)が起動し、きゃらトークの内容を読み取ります。このメールには「どんな種類のデータが配信されるのか」といった内容が書かれており、PDAはそれに応じてプログラムを起動して、データを利用するわけです。


Wake On Ringによるプッシュ配信の仕組み。呼び出しサーバーからの「きゃらトーク」によってPDAが起動。Wake On Ringミドルウエアが呼び出しデータにあわせてアプリケーションを起動し、アプリケーションがサーバーからコンテンツを取り出すことでコンテンツのプッシュ配信が完了する。

 このデータの種類が「インターネットメールを受け取れ」という内容であれば、PDAはインターネット接続とメールソフトを起動してインターネットメールを受信することができます。あるいは「インターネット上のWebを巡回して記録しておけ」というような内容であれば、Web巡回ソフトを起動してPDA上にWebデータを保存しておくこともできます。


一番のメリットはプッシュ配信が利用できること

 この仕組みの一番大きなメリットは、これまで効率的な利用が難しかったPDAやモバイルコンピューターでもプッシュ配信型の情報提供が簡単にできるようなることでしょう。

 PDAなどのモバイルコンピューターは、携帯電話などと違い、常に電源が入っているというような使い方はしません。大抵はしばらく電源が入ったまま操作が行われないと自動的に電源が切断されます。そのため、いつ情報が送られてくるかわからないプッシュ型の情報配信では、なかなか効果的に使うことができなかったわけですが、このWake On Ringという仕組みでは、サーバーから送られてきたデータによってPDAのスイッチをONにするだけでなく、またそれに応じたプログラムも自動的に起動することができます。

 実際のサービスとして、たとえばmuseaではWebサイト自動巡回ソフト「Auto Web Recorder」やメールの受信トレイが、アイコンのWake On Ring用ソフト「AICON Wake-Up」と連動可能で、非常に便利になっています。

 「Auto Web Recorder」では、自動的にお気に入りのWebサイトを巡回し、キャッシュとして保存しておくことで、「毎日決まった時間に、インターネットからダウンロードしたニュースなどを通勤電車の中で読む」というような使い方もできるわけですが、このほかに呼び出しサーバーからPDAを即座に起動させ、指定したURLのWebページを記録させる、というような使い方も可能になっています。

 またメールソフトの受信トレイでは、Wake On Ringによってサーバーからの指示でメールを受信できるほか、Wake On Radioにも対応していて、通信圏外でメールの送受信に失敗した場合でも、ふたたび圏内に入ったとき、自動的にメールの送受信が行えるようになっています。


アイコン、「musea」にWake On Ring用ソフト提供


(大和 哲)
2002/09/17 11:14

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