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第113回:CGシリコン液晶 とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


「CEATEC JAPAN 2002」や「WPC EXPO 2002」で参考出品されていた次期ザウルス
 CGシリコンとは、シリコン結晶を規則的に配置するように作られたポリシリコン薄膜の一種です。「CG」とは、「Continuous Grain(連続粒界結晶)」の略で、結晶粒が途切れずに、それぞれ規則正しく接合していることを指しています。CGシリコン液晶はCGシリコン薄膜を利用した液晶パネルで、新世代の液晶パネルとして期待される最先端のTFT液晶です。

 2002年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2002」や「WPC EXPO 2002」の両展示会では、シャープがCGシリコン液晶パネルを使用した様々な機器を展示していました。たとえば、従来と同じくPDAサイズでありながら、VGA相当の640×480ピクセルで表示が可能という非常に高精細な液晶を搭載した次期ザウルスが参考出品されていたほか、液晶パネルを搭載しながら、数ミリの薄さに作られたデジタルスチルカメラや携帯電話のモックアップも展示されました。液晶パネルの開発に注力しているメーカーはいくつかありますが、CGシリコン液晶は、ほぼシャープの独壇場となっている技術なのです。


CGシリコンの仕組み

シャープが「ガラス基板上にCPUを形成」と記者発表会で説明時に使用した資料。それぞれのシリコンの特性を説明
 CGシリコン技術を利用したTFT(薄膜トランジスタ、Thin Film Transister)液晶は、従来のアモルファスシリコンTFT液晶やポリシリコンTFT液晶と比較して、電子の移動度が高いため、液晶パネルに利用すると高精細・高輝度ディスプレイを実現することができます。

 TFTタイプの液晶パネルでは、より鮮明に光のON、OFFを行ない、より綺麗に画像を表示するために、TFT(薄膜トランジスタ)を利用しています。非常に薄い膜を作るために、初期のTFTではアモルファス(非結晶)シリコンが使われていました。通常シリコンのような無機物で結晶を作ると、元素が規則正しく整列した結晶となりますが、規則性を無くして、無秩序に並ばせたものがアモルファスです。

 アモルファスシリコンは、後述するポリ(多結晶)シリコンと比較すると、製造工程が比較的単純な分、ローコストに作ることができるのですが、結晶粒子が小さくバラバラであるため、電子が移動しにくい、つまり電子移動度が低いという弱点がありました。電子移動度が低いということは、電気が流れにくく抵抗が大きくなり、また電子がある点からある点まで到達するのに時間がかかってしまう、ということを意味します。

 TFTを形成するために使われているもう一方のポリシリコンでは、シリコンが多結晶かつ大きな結晶となっています。その分、電子は流れやすくなっています。しかし、粒子と粒子の間(結晶粒界)が互いに接合できていない原子があります。これが電子の流れには妨げとなってしまい、散乱が生じてしまうのです。

 この電子の移動度を高めることが出来たのがCGシリコンです。CGシリコンは、シリコン結晶が規則的に配置された「連続粒界結晶」になっています。つまり、結晶粒界の原子間の接合がスムーズなので、電子が結晶から結晶への移動をスムーズに行なうことができるのです。

 一般的にポリシリコンでの電子移動度は100~150cm2/Vsですが、現在のCGシリコンでは200cm2/Vs程度の電子移動度のものが作られています。さらに2005年までには400cm2/Vs程度の電子移動度を持つものも作られる、とされています。


高精細、そして周辺回路も取り込んだ液晶パネルを

シャープが計画している「ガラス基板上に形成するCPU」のロードマップ
 電子移動度が高いシリコンを利用したTFTでは、従来のポリシリコンと比較しても、さらに省電力、反応速度の速いトランジスタを作ることができます。また、非常に精細な液晶パネルを作ることもできます。

 展示会の次期ザウルスのデモで使用されていたCGシリコン液晶の画面が、PDAサイズでありながら、VGA相当の640×480ピクセルという数値であることからもうかがえるでしょう。

 また、電子移動度が高いということは、その分電子が高速に移動できるということでもあります。そのため、CGシリコンを使ったTFT液晶パネル上では、光を通す・通さないを決めることで描画する「液晶」の動作が直接補助されるだけでなく、そのほかの回路も液晶パネル上に載せてしまうことが可能になるとされています。

 従来の液晶パネルでは、液晶画面全体を制御するドライバLSIなどは、液晶パネルそのものとは別個のパーツとして作られています。シャープと半導体エネルギー研究所が開発した技術では、ガラス基板上にこれらのLSIの機能を作りこんでしまうこともできます。液晶パネルそのものの上に周辺部分の機能も作りこんで一体化してしまったものを「システム液晶」といいます。CGシリコンはシステム液晶開発の中核技術ともなっているのです。

 CGシリコンTFTを使ってガラス基板上に回路を作るデモとしては、先日、シャープがデモを行なっていました。たとえば、ケータイWatchでは、10月22日に紹介された「シャープ、ガラス基板上にZ80を形成」という記事において、シャープと半導体エネルギー研究所がCGシリコン技術を応用して、ガラス基板上に8ビットCPUの形成に成功したことを報じています。

 この発表会で行なわれたデモは、CGシリコンを利用して、プロセスルール3μmで約1万3000個の薄膜トランジスタが形成されたガラス基板を「ガラスでできたCPU」として、20~15年ほど昔のコンピューターのCPUの代わりに使用する、というものでした。

 現在、このCGシリコンを利用してガラス基板上には3~4μmのプロセスルールでLSIを作ることができ、これを2005年には0.8μmルールで20~30MHz駆動のLSIを、ガラス基板上に作りこむことが目標となっているそうです。

 さすがに今のパソコンに採用されているCPUのような大規模で集積されたLSIを形成するにはまだまだ遠いようですが、現在の組み込み用途程度のCPUやドライバLSI、メモリ、DAC、コントローラLSIまで作れるようにすることも目標だそうですから、そのころには、簡単なPDAくらいならガラス基板1枚分の薄さ、軽さで実現できるようになっているかもしれません。


シャープ、ガラス基板上にZ80を形成


(大和 哲)
2002/10/29 11:00

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