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第143回:コレステリック液晶 とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


松下電器産業が開発している「ΣBook」
 本誌でも既に紹介されていますが、松下電器産業が2003年秋頃にΣBook(シグマブック)という省エネ型電子ブックを発売する予定です。ΣBookはSDカードに格納されている電子データを液晶画面に表示するのですが、XGAサイズ(1,024×768ドット)のグレースケール16階調モノクロ液晶を2枚搭載しながら、1日100ページほど閲覧しても、アルカリ電池2本で約3~6カ月間も使うことができるという、省エネルギーなデバイスなのです。

 ΣBookの省エネルギーの秘密は、搭載されている液晶パネルにあります。液晶は分子構造配列によって、「スメクティック(Smectic)液晶」「ネマティック(Nematic)液晶」「コレステリック(Cholestric)液晶」という3種類に分類できるのですが、ΣBookの液晶パネルで使われているのは「コレステリック液晶」というものです。

 よく携帯電話やPCに使われている液晶パネルであるSTN液晶やTFT液晶で使われている液晶は「ネマティック(Nematic)液晶」と呼ばれている種類のもので、このタイプの液晶は、画像表示を維持するために電力を供給し続けなければなりません。

 コレステリック液晶は、ネマティック液晶とは分子の配列様式が異なる液晶で、画面の光を通す(フォーカルコニック)状態、特定の光だけ反射する(プレーナ)状態と、どちらの状態のときでも電力を加えずにそのまま安定する「双安定性」という性質をもっています。そのため、コレステリック液晶を使って作った表示パネルでは、一度画面に文字や絵を描くと、電力を与えなくても表示を維持できます。この「無電源供給での表示維持」がΣBookでの省エネルギーの秘密なのです。

 現在、コレステリック液晶を使った無電力表示維持液晶パネルは512×64ドット程度のサインボードから、ΣBookで使われているようなSVGA解像度程度のもので、モノクロ(白/青や黒/緑)のものがあり、国内メーカーをはじめとするいくつかのメーカーで製造され、販売されています。


実は身近なコレステリック液晶

 コレステリック液晶は、実は、ネマティック液晶と並んで古くから各方面で使われてきたものでもあります。

 液晶という物質は、1888年にプラハで、オーストリアの植物学者、F・ライニッツァーによって初めて製造されました(「スメクティック・ネマティック・コレステリック」という液晶の3分類が確立したのはもっと後のことですが)。このとき作られた液晶が、コレステロールと安息香酸から作られた化合物でコレステリック液晶でした。

 他にも、よく聞く液晶の話として「イカから液晶が取れる」、という話を聞くことがあるかと思います。これは、イカの肝臓から取れるコレステロールを処理して作るコレステリック液晶の話です。

 コレステリック液晶はらせん階段のような分子構造をしていて、このらせんのピッチに応じた光を反射する(つまり色が変わる)「選択反射」という性質があります。

 このイカから取れるコレステリック液晶は、温度によってらせんの長さが変わります。つまり、温度によって見える色が変わり、さらに特定の温度を過ぎてしまうと人間の目には見えなくなるわけです。この性質を利用したのが、「液晶を使った温度計」です。黒いシールやカードの上に数字が並び、現在の温度を示す部分の色が変って見える液晶温度計シールやカード型の液晶温度計がこのコレステリック液晶を利用しています。他にも見る角度によって光り方が代わる塗料など、意外なところでコレステリック液晶は身近に使われている物質なのです。


コレステリック液晶を利用したテープ温度計の例。現在の温度の数字は緑で表示される

コレステリック液晶の特徴

 さて、話をコレステリック液晶を使ったパネルに戻しましょう。同じ液晶の性質を利用したコレステリック液晶パネルとネマティック液晶を使った液晶パネルですが、画面を表示する原理は異なっています。

 ネマティック液晶を使うTN/STN/TFT液晶パネルでは、液晶パネルを作るのに「偏光板」を利用します。液晶をねじった状態に配置されるように配向膜というものを利用し、さらにこれを方向の違う2枚の偏光板の間にはさみます。こうするとそのままでは光がこの2枚の偏光板の間を通り抜けることができませんが、液晶を間にはさみ、これを光を通すスイッチにすることでパネル上の白の点や、黒の点を表現します。

 コレステリック液晶では、白黒の点を表現するための原理が違うため、偏光板を必要とせず、この液晶のもつ「選択反射」という原理を使って表現します。反射が起こるときが特定の色(たとえば黒や青)を表現する、そうでないときは光が散乱するので白くなります。

 このため、コレステリック液晶では、偏光板を使用しない液晶パネルを作ることも可能です。以前、このコーナーで「電子ペーパー」を紹介しましたが、他の電子ペーパーデバイスと同様の特徴をもった軽くて紙のように扱えるコレステリック液晶パネルもそのうち登場する日も来るかもしれません。研究レベルでは、コレステリック液晶を使った、フィルムのように柔らかい反射型カラー液晶パネルの試作例なども国の機関や、海外・国内のメーカーの研究所から発表されています。

 あるいは、コレステリック液晶には、さらにいくつかの用途への応用も考えられています。たとえば、アメリカのレベオという会社では次世代DVDメディアとして利用しようとしています。コレステリック液晶の白、青でデジタルデータの「0、1」を記録するようなディスクを作ろうというわけです。これだけならばCDなどと変わりませんが、コレスティリック液晶は光を透過できますから、このディスクを何層も張り合わせて大容量のディスクを作ろう、というわけです。レベオの研究所では「6層」のディスクを作り、これによってテラバイト級の容量を持つディスクも作れると発表しています。



URL
  米レベオ
  http://www.reveo.com/

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(大和 哲)
2003/07/29 12:15

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