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第159回:ベクターフォントとは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


シャープLCフォントに新しく採用された技術

表示品質保ったまま、自由に文字の大きさを帰ることができる、シャープの「LCフォント生成技術」。ベクター型のフォントデータを利用している
 携帯電話やコンピュータは、画面に文字を表示します。この文字の形(書体)や、書体をコンピュータにわかるようにデータで表わしたものを「フォント」と言います。たとえば、普通の携帯電話の場合、通常文字や丸文字などを選んで画面の文字をどのフォントで表示するか変更できます。これは携帯電話の中に、通常文字や丸文字のフォントデータが格納されているから可能なのです。

 フォントデータのタイプには、ラスターフォント、ベクターフォント、アウトラインフォントなどがあります。携帯電話で一般的に内蔵されているのはラスタ型のフォントデータです。これに対してシャープが11月14日に発表した「LCフォント生成技術」で新たに採用されたのがベクターフォントです。

 シャープ製の携帯電話やモバイル機器には、以前から液晶画面で見やすくなるよう形や表示方法が工夫された「LCフォント」が利用されていました。LCフォントは基本的にラスター型のフォントデータが利用されていましたが、今回、発表された「LCフォント生成技術」ではベクター型のフォントデータを利用することで、文字サイズなどを自由に替えられるといった特長があります。

 ベクターフォントは、シャープの新しいLCフォント生成技術のほかに、Windows系のOSを搭載したパソコンにおける「Modern」「Roman」および「Script」というフォントで利用されているほか、ボールペンなどを使って印刷を行なう機械「プロッター」などで使われています。


ベクターフォントとは

 ベクターフォントは、簡単に言うと、文字を書くときの書き順の手本のように、どこからどこに線をひくという手順を数値化して文字を描きます。

 これに対して、一般的に携帯電話で使われているラスターフォントでは、文字の形を縦横のマスメで区切って「それぞれの点が塗られているかそうでないか」ということをデータにしています。世間一般で一番よく使われているフォントデータ形式であり、家電やゲーム機など文字を表示するほとんどの機器に組み込まれているのがこのラスターフォントです。

 ちなみに、アウトラインフォントは、文字の輪郭線(アウトライン)の座標をデータ化したものです。パソコンで使われているTrueTypeフォントなどがこのタイプのフォントデータになります。

 一般に携帯電話で使われるラスターフォントのよい点は、画面に表示するのにそれほどコンピュータのパワーを必要としない点です。携帯電話の画面に表示するために、コンピュータはメモリに描きたい文字の形をデータとして転送するのですが、ラスタフォントは、メモリに転送するデータとフォントのデータが似たような形式になっているので、コンピュータの負荷は簡単なデータの変換作業と転送作業分だけになるからです。

 逆にラスターフォントの弱点は、拡大縮小が自由にできないことです。小さい文字用には12×12ピクセル用の文字フォント、大きな文字用には16×16ピクセル用というように大きさが決まっています。携帯電話に内蔵されたフォントデータ以外の大きさにはできないのです。

 というのも、たとえば12×12ピクセルのフォントデータしか持っていないにも関わらず、16×16でも表示させようとすると、この12×12ピクセルのデータを拡大することになるわけです。「12」→「16」ですから大きさを3分の4、つまり3個ならんでいるピクセルを4個で表現しなければなりません。しかし3個のあるうちどれか1つだけを増やせば、どうしても文字の一部だけが大きく、ほかの部分が元のままということになり、ガタガタに拡大することになってしまいます。また、単純に2倍するというような拡大でも、ひらがなの文字のカーブの部分が階段状に拡大されてしまうのです。


ベクターフォントデータでは、「書き順」をデータにしているため、文字を大きく描くのも簡単にできる。ラスターフォントデータでは各ピクセルに点を描くか描かないかをデータにしているため拡大すると表示がガタガタになってしまう

 これに対して、ベクターフォントデータは、「どこからどこに線をひくか」という書き順のみをデータにしています。つまり大きく文字を描きたいときは書き順は同じで、書き初めと書き終わりの点の位置を離せば、それだけで文字を綺麗なまま大きくできるわけです。

 柔軟に文字の大きさを変えられることや、複数の大きさの文字データを持つ必要がないために内蔵するフォントのデータサイズを小さくできること、これがベクターフォントのメリット、ということになります。ちなみに、ベクターフォントやアウトラインフォントなど、品質を保ったまま、容易に文字の簡単に変えられるフォントをまとめて「スケーラブルフォント」と呼びます。

 通常、ベクターフォントを利用して画面に文字を描く場合、拡大する場合はいいのですが、あまりに小さい文字を描こうとすると、文字がつぶれて見えにくくなってしまう問題があります。シャープの新たなLCフォント技術では、小さな文字を表示させた場合に表示の一部を省略することなどで見やすさを保つなど、さまざまなサイズが利用できるように独自の工夫もこらされています。

 一方、ベクターフォントの弱点は、画面に文字を描く際にラスターフォントと比べるとコンピュータの負担が重くなることです。まず、文字を作っている直線やカーブの1つ1つに対して、コンピュータがどのようにデータを書き込むかといった計算をしなければなりません。単純に書き順どおりに線を引くだけならばともかく、たとえば明朝体のように横に引かれる線は細く、縦の線は太くというように、見た目を綺麗にする工夫を凝らす場合は、そのためのマシンパワーも必要になってしまいます。

 かつての携帯電話に使われていたマイクロコンピュータは非常に非力で、また画面の解像度もそれほど高くなかったので、ベクターフォントを利用することは非現実的でした。

 QVGAのような高い解像度の画面表示ができるようになり、文字の大きさもさまざまなサイズが必要になってきたというニーズがあることに加えて、現在の携帯電話ではアプリケーション専用プロセッサや、Javaが利用できるほど高機能なマイクロコンピュータを搭載できるようになったことが、このような技術を利用可能にした背景にはあるでしょう。


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(大和 哲)
2003/12/02 11:48

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