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第322回:BCMCS とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


auのEZニュースフラッシュなどで「BCMCS」が利用されている

auのEZニュースフラッシュなどで「BCMCS」が利用されている
 「BCMCS」は、基地局から、エリア内の多くの端末に同時に情報を送信する「同報通信」のための技術で、Broadcast/Multicast Servicesの略です。

 auが採用している3G携帯電話の規格「CDMA2000」の1xEV-DO Rev.0の規格に含まれており、既に実用化されています。たとえば、auでは、ニュースや天気予報といった情報を定期的に配信し、携帯電話側は自動的に受信する「EZニュースフラッシュ」、音楽番組やお笑い番組の映像データを深夜から早朝にかけて自動で配信するサービス「EZチャンネルプラス」に、このBCMCSを利用しています。

 携帯電話の通信は“ユニキャスト”といって、1対1の通信が基本です。複数の携帯電話が通信をする場合は、同じ内容をやり取りする場合でも端末台数だけ帯域を使用してしまいます。しかし、利用できる電波の帯域は有限であり、利用者が非常に多いサービスを提供したい場合には、あっという間に帯域を使いきってしまうでしょう。

 最初に述べたように、BCMCSは、基地局から多くの端末に情報を送る技術です。しかしユニキャストではなく、多くの端末に対して1つの帯域で送信し、複数の端末が同時に受信します。上下両方向の通信をする必要があるサービスに、BCMCSを利用することはできませんが、下りだけの伝達をする場合には、電波資源を節約しつつ、多くの端末を相手にできる有用な手段です。


CDMA2000の特徴を生かした同報送信技術

 BCMCSは、CDMA2000を採用している事業者にとっては、既存のEV-DO Rev.0の基地局のハードウェアをそのまま使えるため、低コストで提供可能なサービスということになります。ただし端末側には、対応チップセットが必要です。

 基地局のハードウェアは従来と同じですが、ソフトウェアは新しいものが追加されており、通信方式にはさまざまな工夫がされています。

 たとえば、同報送信では受信電波が弱かったり、ノイズが混じってデータにエラーがあった場合でも、ユニキャスト(1対1での通信)で行なっていたような「再送信によるエラー訂正」などはできません。そのため、「Soft Combine」と、「FEC」という方式で、データの受信エラーを回避するようにしています。

 「Soft Combine」とは、複数の基地局から電波を同時受信する技術で、これによりある基地局からの電波が弱くても、別の基地局からの電波を同時に受信すれば、データを補い合って、クリアな受信ができるのです。ちなみにCDMA2000は、時間で同期することを意識した通信方式であるため、複数の基地局から同時にデータを発信することが実現しやすいのです。

 また、「FEC」は、同報送信のためのエラー訂正技術です。あらかじめ送信するデータに冗長性を持たせておくことで、もし受信データが一部欠けていてもエラーを訂正できるというわけです。FECは、「先のエラー訂正」を意味するForward Error Correctionの略で、高い誤り訂正能力を持つLDPC(Low Dencity Parity Check)符号を採用し、電波が弱くて途切れがちな環境、あるいはノイズが発生しやすい環境でも正しい形でデータが受け取れるようにしています。


次世代は「Platinum」

3月の「CTIA Wireless 2007」では、クアルコムが次世代版BCMCSのデモを行なっていた

3月の「CTIA Wireless 2007」では、クアルコムが次世代版BCMCSのデモを行なっていた
 BCMCSには、次世代の規格としてEnhanced BCMCS(EBM)、別名「Platinum BCMCS」という規格も控えています。

 この規格は、BCMCSと同じく、同報送信するための規格ですが、より高速なデータ送信が可能です。1xEV-DOが下り方向通信でTDM(Time Division Multipling:時分割多重)化されていることを利用し、一部の変調方式をOFDMとすることで高速化したものです。現在のBCMCSのデータ伝送速度は約400kbpsですが、次世代版では3倍以上の約1.5Mbps程度まで増速することが可能です。これにより、動画などのリッチコンテンツをタイムリーに配信することができるかもしれません。ちなみに、次世代BCMCSが「Platinum」で称されることから、現行方式を「Gold BCMCS」と呼ぶこともあるようです。


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(大和 哲)
2007/05/15 12:56

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