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第332回:MBMS とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


3GPP標準のマルチメディア一斉送信サービス

 MBMSとは、マルチメディア放送および同報サービスを意味する「Multimedia Broadcast and Multicast Service」の略で、動画や音楽などのマルチメディアコンテンツを既存ネットワーク、特にW-CDMAをベースとする3G携帯電話網、GSM/EDGEをベースとする2.5G携帯電話網で効率よく配信するための技術です。

 MBMSは、W-CDMAを利用した第3世代移動体通信システム(3G)の規格を標準化するための共同プロジェクト「3GPP」が2005年6月に仕様を定めた、3GPP標準規格「3GPP Release 6」に含まれる技術です。

 現在のところ、MBMSを利用したサービスは実用化されていませんが、2007年2月には、欧州最大の携帯電話の展示会「3GSM World Congress」で、エリクソンやクアルコムがデモを行なっていました。技術的には実用化一歩手前のところまで来ており、2008年にはスウェーデンなどいくつかの国でこの技術を利用したモバイルテレビサービスがスタートすると考えられています。


補完的な携帯向け動画配信に?

 動画閲覧などマルチメディアコンテンツのニーズが高まると、現在の1対1でのデータ通信(ユニキャスト通信)では回線容量が不足してしまいます。電波周波数帯は限られた資源ですから、全ての要望を満たす枠を確保することはできません。MBMSのような「マルチキャストを利用したマルチメディアデータ配信技術」が生み出されている背景には、このような事情があります。

 マルチキャスト通信とは、同時刻に複数の端末に対して一度の送信で通信を済ませてしまうというものです。たとえばテレビ番組のように、同じ時刻で同じものを見たい人が存在するサービスを実現する際に、マルチキャスト通信を行なうことで電波の効率的な利用が可能になるわけです。

 同じ発想で、マルチキャストでマルチメディアデータを一斉送信するための技術としては3GPP2のBCMCS、クアルコムのMediaFLOというような規格もあります。また、放送という意味では、いわゆるワンセグや、欧米のDVB-Hといった携帯向けデジタルテレビ放送もライバルであると言えるでしょう。

 MBMSの特徴としては、既存のW-CDMA携帯電話網と親和性が高い技術である、ということが挙げられます。


2月の3GSM World Congressでクアルコムが披露したMBMSのデモ

2月の3GSM World Congressでクアルコムが披露したMBMSのデモ
 たとえば、既存のW-CDMA網での利用を前提としているので、放送データ送信のための追加周波数帯は必要ありません。費用面でも専用の放送設備などは必要なく、基地局設備の更新などで済むため、他のデジタルテレビ方式に比べて初期投資が少ない可能性があります。

 逆に、既存の携帯電話の周波数帯を、音声通話、HPDPAなどのデータ通信などとも分け合わなくてはならないために、放送専用に周波数を確保する他のモバイルデジタルテレビ方式に比べて通信速度が遅くなり、チャネル数も少なくなってしまう弱点もあります。

 ただ、MBMSの強みとしては、一斉送信のほかに、従来のW-CDMAによる1対1のパケット通信を組み合わせたインタラクティブなコンテンツの送信など、他のデジタルテレビ規格にはない応用も可能といった点が挙げられます。

 そのため、テレビ番組のようなコンテンツ(放送)は、DVB-Hなどのデジタル放送規格にまかせて、MBMSはオーディオクリップのような映像コンテンツの送信というように、住み分けるべき技術だとも考えられているようです。

 たとえば、あるメーカーでは、「MBMSは、マルチメディアによる緊急警報の配信にも対応しているので、被災地域のユーザーに対して、対処法や避難所の地図を含む詳細情報も通知し、そのレスポンスを受け付けられる」として、災害対応システムへの応用なども可能であるとしています。エンターテイメント以外の分野では、そのような方面への展開もいずれはあるのかもしれません。


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(大和 哲)
2007/07/24 12:02

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