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第389回:ダビング10 とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「ダビング10」は、日本の地上デジタル放送(地デジ)、衛星デジタル放送で使われている、映像データの著作権保護技術です。Dpa(デジタル放送推進協会)技術委員会で策定され、ARIB(電波産業会)でARIB TR-B14「地上デジタルテレビジョン放送運用規定」、TR-B15「BS/広帯域CSデジタル放送運用規程」の改正によって標準化されました。「ダビング10」の導入によって、これまでデジタル放送で使われていたコピー・ワンスに代わり、一度録画機器に録画した映像データを9回メディアへのコピーと、1回のムーブの利用が可能となりました。

 録画番組のコピーに制約がなかったアナログ放送と違い、デジタル放送では、放送番組の録画・コピーを制限する仕組みが組み込まれました。デジタル放送に開始に伴って使われるようになったのが「コピーワンス」と呼ばれる仕組みです。

 「コピーワンス」は、放送番組を録画した機器から、ムーブ(メディアに一度だけ映像データをコピーし、同時に録画機器からはデータを取り除くこと)ができ、メディア―メディア間のコピーなどは許さないというコピーガードの仕組みです。

 しかし、「コピーワンス」では、「ムーブ」に万が一失敗した場合は、メディアにはデータがコピーされず録画機器からはデータがなくなりますし、コピー先のメディアがなんらかの事故などで読めなくなってしまった場合も、録画時のマスターデータが消失されており復元できないことなどもあり、不評でした。

 不評だった点を緩和すべく、2008年7月4日からデジタル放送で運用が開始されたのが、録画制限の新しいルール「ダビング10」です。

 「ダビング10」では、放送局がダビング10制御データを加えた番組を放送し、番組を対応機器で録画した場合には、その録画データを9回まで「録画機器からデータを削除せずに」メディアへのコピーできます。10枚目のメディアに録画データをコピーしようとすると、その場合は「コピーワンス」のときと同じように、録画機器からデータを削除する「ムーブ」として処理されます。

 ダビング10対応機器として、DVDやBlu-rayに対応したハードディスク(HDD)レコーダーやHDDレコーダー内蔵テレビ、USBワンセグチューナーなどが発売されています。


ワンセグ対応の携帯電話にも「ダビング10」

SH706iw

SH706iw
 携帯電話では、2008年9月現在、NTTドコモの「SH706iw」がダビング10対応です。本体メモリに録画したワンセグの番組を9回までメモリカードにコピー、1回ムーブすることができます。

 携帯電話関連機器では、たとえば、バッファローがパソコン向けのワンセグチューナーで録画したデータを携帯電話向けに転送できるmicroSD/SDカードリーダーライター「DH-OP-SDCR」を発売しています。同製品では、同社のダビング10対応ワンセグチューナー「ちょいテレ」(DH-KONE4G/U2DS、DH-KONE/U2V)を使ってワンセグで放送された番組を録画した場合、リーダーライターを使ってメモリカードに転送し、携帯電話に挿入すると、携帯電話上で録画番組を視聴できます。


コピーワンスの拡張技術

 「ダビング10」の仕組みは、基本的にそれまでデジタル放送で使われていた「コピーワンス」という技術を拡張したものです。「コピーワンス」「ダビング10」では一世代のコピーが可能という考え方が採用されており、たとえばHDDレコーダーで録画したテレビ番組をメディアにコピーすると、そのコピーメディアから新たな複製を作ることはできません。

 「コピーワンス」では、放送データ中に一世代のみコピー可というデータがあった場合、録画したデータをムーブできるようになっていましたが、「ダビング10」では、この“一世代のみコピー可”という情報を拡張して、コピーの可否を示す「コンテンツ利用記述子(識別信号)」が追加されています。

 「ダビング10」の技術概要を定めているTR-B14/TR-B15の中では、この技術のことを「ダビング10」とは呼ばず「個数制限コピー可」技術と呼んでいますが、まさに「コピーワンス」では一度きりだった録画データの複製を、制限つきながら複数個可能にした方式だと言えます。ちなみに、標準の状態でダビング10利用可能とされているので、基本的にこれまでコピーワンスが利用できていた番組を録画した場合、ダビング10が利用可能になっています(ただし、有料放送などではあえてコピー・ワンスのみ対応としている番組もあります)。

 また、基本的にこの技術はコピー・ワンスの個数制限コピー可能化技術なので、コピー・ワンスと同様、メディア間の録画データのコピーは許していません。番組情報にはこのダビング10を許すかどうかを示すコンテンツ利用記述子は記載されていませんので、録画機器で利用できる電子番組表(EPG)などでは、番組がダビング10を利用可能かどうかを知ることはできないなど、利用者にとっては中途半端な改良となっている部分もあります。


 このような仕組みが採用された最も大きな理由は、すでに利用されているコピーワンスと技術的な互換性が高い点が挙げられるでしょう。技術的にはダビング10はコピーワンスに個数制限仕様を加えただけの規格ですから、コピーワンス機器を作っていたメーカーとしては、その機器をダビング10対応に改良するには、コピーワンス機器のソフトウェアに個数制限コピーに関するプログラムを加えるだけの改良で済みます。ひいては、放送を行う放送局のダビング10対応のための機器の改修やリプレースが最小限で済みますし、家庭向けの録画機器新製品を開発する際にもダビング10対応のコストは最低限で済むため、値上げ幅を抑えることができます。機器によっては、オンラインからのファームウェアを入れ替えることでコピーワンス対応機器をダビング10対応にすることも可能でした。

 つまり、コピーワンスの欠点を改良するために、放送する側、受信する側、どちらにとってもコストの低い対応方法が、このダビング10という方法だった、というわけです。

 なお、日本では、デジタル放送の場合ほとんど全ての番組がコピーワンス、あるいはダビング10開始後はダビング10でコピーガードをかけていますが、海外などでは、デジタル放送でも無料放送にコピーガードをかけているケースはほとんどありません。またワンセグのように携帯機器向けの解像度の低いデジタル放送でコピーガードをかけているケースは、2008年9月現在では皆無です。そのため、海外でのデジタル放送対応携帯電話でも、個数制限コピー可能化技術対応という携帯電話はこれまで例がなく、「SH706iw」は世界初ということになります。



URL
  Dpa
  http://www.dpa.or.jp/
  ARIB
  http://www.arib.or.jp/

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ドコモの「SH706iw」、実はダビング10対応


(大和 哲)
2008/09/24 10:56

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