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第63回:ユビキタスとは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


空気のように、あたり前にコンピュータのある社会を

 これからのコンピュータやネットワークのめざす方向として、「ユビキタス」という単語がよく言われるようになってきました。ケータイ方面でも、たとえば「すべてのナレッジが携帯電話から取り出せる『ユビキタス』社会の実現へ」といったように語られることがあります。

 「ユビキタス」あるいは「ユビキタス・コンピューティング」は、ゼロックスのパロアルト研究所の故マーク・ワイザー(Mark Weiser)氏が提唱した概念で、「利用者がどこに移動しても、同じような性能の計算機の能力を利用できる環境」を指しています。“コンピューティング”とは言っても、パソコンやPDAのようにコンピュータらしい姿のものがあるのではなく、日常使っているいろいろなものにコンピュータが入っていて、その能力を提供する、というコンセプトです。

 また、このユビキタスなコンピューティングでも、インターネットでの情報の閲覧や検索、交換といった部分をフォーカスして「ユビキタス・ネットワーク」と言うこともあります。一般的に「ユビキタス」と言うと、ユビキタス・コンピューティング、ユビキタス・ネットワーク、その周辺の技術やその中の部分、などを指すことが多いようです。具体的には、「ユビキタス社会」では、“身の回りにあるものが情報の検索や計算をしてる社会”と考えるとわかりやすいでしょう。

 「今、ここから東京に行く一番早い電車はどれ?」と思ったら、携帯を使って街で歩きながら見ることができたり、車に乗りながらカーナビに表示させることができたり、あるいは駅の切符の自動券売機やコーラの自販機のボタンを押したときに、内蔵されているコンピュータが教えてくれるかもしれません。

 あらゆるモノが、現在のパソコン以上にいろいろな情報や計算能力を提供する社会。そして、「コンピュータに対して何かをする」のではなく、「人間の行動に従ってコンピュータが気を利かせる」のがユビキタス社会です。

 なお、ユビキタス(Ubiquitous)という言葉は、空気のように「あまねく存在する(遍在する)」という意味のラテン語に由来しています。「コンピュータの力があまねく場所に存在する」ようになることだ、と思ってもいいでしょう。

 ユビキタス社会は多くの企業や研究者がめざす夢の社会といってもいいかもしれません。多くの人がコンピュータにいろいろな場所で助けられるのは、とても助かることでしょう。

 また、不況にあえぐ産業界にとっては大きなビジネスチャンスであるとも映っているようです。その性質から、客がどこにいても商品の注文が可能ですし、また、いつでもコンテンツを提供できるなどのメリットがあるからです。


ユビキタス社会は本当に来るのか?

 壮大な「ユビキタス」な社会の構想ですが、そのスケールゆえ、実際にユビキタスな社会を実現するには、ハードウエア的にもソフトウエア的にもクリアしなければならない課題は数多くあります。

 ハードウエア的には、まずいろいろな機器に内蔵されたコンピュータがその人に必要なデータをすばやく取り出せるようになるためにより高速で、より高度なネットワークが必要になるでしょう。特にネットワークがオープンで、有線接続と無線接続を意識しないでつなげられる、ということは必須です。

 携帯電話事業者が「ユビキタス」を口にするのは、W-CDMAやCDMA2000を始めとするG3(第三世代)、G4(第四世代)携帯電話、またはそのシステムが、このようなネットワークに近いものがあり、また事業者としても、そのようなものに利用したい(=マーケットを拡大したい)願望もあるのでしょう。(もちろん、無線LANやBluetoothなども強力な対抗馬として存在することは言うまでもありません)。

 携帯電話はいずれ、手に持って会話をするという、私たちの知っている携帯電話ではなく、ありとあらゆる機械に内蔵され、常にデータをやりとりしている、ごくありふれた部品のひとつになっているかもしれません。また、ユビキタスを安全なものとして実現するためには、プライバシーを守るための技術や操作性と言ったものも考えなくてはなりません。

 いずれにしても、ユビキタスは社会全体に影響を及ぼす、また及ぼさずには完成することのない概念です。それが実現するかどうかは、まだ誰にもわかりません。ただ、ユビキタスを構成するための要素になりうる技術が育ちつつあるのは事実ですから、それが変質したり矮小化したりすることはあっても、確実にそれに似た社会になっていくことは必然と言ってもいいでしょう。


・ Ubiquitous Computingについて(英文)
  http://www.ubiq.com/hypertext/weiser/UbiHome.html


(大和 哲)
2001/10/09 17:40

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