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第84回:3Dサウンド とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


3次元に音を再現する3Dサウンド

 耳は、顔の左右にふたつ付いています。この両方の耳は、音が左右のどちらから聞こえるかを判別できるのに加え、その音がどこから出ているのか、奥行きや高さといった要素も交えて3次元的に把握することができます。例えば、車が背後から走ってくれば音がだんだん接近してくるのもわかりますし、頭上に高速道路があれば車が走っているのは背後ではなく上を走っている、というようなことも判別することができます。

 このように、人が3次元的に音を聞き分けられるのは、2つの耳に届く音の違いからです。私たちは、左右それぞれの耳に到達する音の僅かな「時間差」や「位相差」、「音量差」などから、聴覚的な立体感を得ています。

 自然に音が出ているのであれば、人はその位置を把握することができますが、それではオーディオのようにスピーカーが固定されているものではどうでしょうか。あたかも、ある場所から音が出ているように音の3次元的な位置をも再現しようとする技術が、今回ご紹介する「3Dサウンド」です。

 携帯電話は、単音からFM音源、PCM音源へと、音に関しても進歩してきましたが、基本的にはモノラルサウンドが主流です。しかし、この3月にJ-フォンから発売予定のケンウッド製パケット対応機「J-K51」では、3Dサウンドによる再生機能が搭載され、3次元的なリアルな音を再生できるようになっています。最大40和音の再生が可能で、プリセットの「3D効果音」の3曲が3Dサウンドに対応しています。


近日発売予定のJ-フォン端末「J-K51」。ケンウッド製のパケット通信対応モデルで、ヤマハ製の音源LSIの搭載により最大40和音のメロディ再生が可能。背面にはCMOSカメラを搭載し、ムービー写メールにも対応する

3Dサウンドの仕組み

 携帯電話に限らず、音を出す機械、つまりオーディオ機器では、元来スピーカーは1つで、平面的な音を出す「モノラルサウンド」でしたが、人間には左右2つの耳があるのですから、左右に音を分けることでよりリアルに音を再生しようとする「ステレオサウンド」が登場しました。

 さて、それでは音の発する位置まで3次元的に再現しようとするとどうなるでしょうか。もしスピーカーをいろいろな場所に置けば、ある程度は音に奥行きが生まれるかもしれません。しかし、携帯電話の場合は持ち歩く1つの機械ですから、スピーカーを前にも後ろにも置くといったようなことはできません。

 そこで、この3Dサウンドでは、携帯電話のスピーカーから出る音を加工し、その場所にスピーカーはないにもかかわらず、あたかもその場所にスピーカーがあって音を出しているかのような「仮想音源」を作り出して、3次元的に音を再現しています。


DVXとステレオダイポール再生技術

「J-K51」は、本体背面にステレオツインスピーカーを搭載
 3Dサウンドに対応した「J-K51」では、3次元的に音を再生する仕組みに、ダイマジックの「DVX(DiMAGIC Virtualizer X)」が採用されています。DVXは、ダイマジックが開発した独自の音響信号処理理論に基づくアルゴリズムで、音の高さや音色、大きさなどに加え、音の方向や距離などの空間的な情報も再生する「仮想音源」を作り出します。

 「ステレオダイポール」(2つのスピーカーを近接配置することで音を立体的に再生し、コンパクトに3Dの音場再生システムを実現できる音場創成技術)の再生方式でDVXを利用すると、5.1chなどのマルチチャンネルに処理されたサラウンドサウンドを、臨場感のある広いサウンドステージ(上下左右背後など、音が出ていると感じられる範囲)の音場に作り出すことができます。

 なお、DVXは、オーディオシステムなどの場合、DSPで信号処理し、2つのスピーカーで音をサラウンドサウンドとして再生しますが、J-K51の場合では、プリプロセッシングと言って、着信音にあらかじめDVX処理を施したデータが内蔵され、これをそのまま再生することによって3Dサウンドの音を再生します。

 ちなみに、2つのスピーカーで音を出す場合は、ヘッドホンなどと違って右側のスピーカーからは右の音が、左側のスピーカーからは左の音が、といったように単純に伝わるわけではありません。右のスピーカーの音も左に、左のスピーカーの音も右に聞こえてしまいますが、それぞれのスピーカーから再生された音が受聴者の両耳にどのような伝わり方をするかを示すのが、音の「伝達特性」です。

 ステレオダイポール再生では、音の信号を「伝道特性」と「リアルタイムキャンセレーション」(左右のスピーカーが互いに干渉する状況で、逆位相の音で音を打ち消す処理)によって音場を作ります。これによって、スピーカーから右耳に伝えたい音を右耳に、左耳に伝えたい音を左耳に確実に伝え、結果として、クリアな仮想音源を作るのです。

 このように、DVXでは左右のスピーカーが互いに干渉することも考慮に入れているため、今までのステレオと違ってスピーカー同士が近接して設置されることになります。携帯電話では、手に持てる程度の大きさで筐体を収めなくてはなりませんから、このような方式はモバイル機器に適していると言えるでしょう。


・ ダイマジック
  http://www.dimagic.co.jp/
・ ケンウッド
  http://www.kenwood.com/jhome.html

ケンウッド製「J-K51」に採用される3Dサウンド技術とは
J-フォン、SD対応の「J-SH51」とツインスピーカー搭載の「J-K51」


(大和 哲)
2002/03/12 14:16

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