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“エッジeメール”でメール使い放題を実現した「KX-HV210」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


eメール/コンテンツのパケット通信対応端末第1弾

 昨年、DDIポケットがスタートさせたパケット通信サービス「AirH"」は、定額、もしくはそれに準ずる料金でデータ通信が利用できるため、個人ユーザーから企業まで、幅広い層に支持を得ている。DDIポケットはAirH"と同じ仕組みを利用し、eメール送受信やコンテンツ閲覧もパケット通信で利用できるサービスを開始した。その対応端末第1弾として登場したのが九州松下電器製「KX-HV210」だ。筆者も機種変更で購入したので、レポートをお送りしよう。


進化するDDIポケットのPHSネットワーク

KX-HV210

 DDIポケット/九州松下電器『ル・モテ KX-HV210』。サイズ:49×94×22.5mm(折りたたみ時)、98g。キャラメルオレンジ(写真)、ラベンダーブルー、スノーシルバーをラインアップ。
 AirH"が好調なDDIポケットは、先日、記者会見を行ない、今秋からデータ通信カード一体型PHSをさらに数機種、投入することを明らかにした。AirH"は従来のPHSと違い、主にパケット通信を採用していることが特長だが、記者会見の席ではDDIポケットのPHSネットワークのバックボーンなどについても説明が行なわれた。従来のPHSでは基地局からのバックボーン回線にISDNを利用していたが、現在は専用線に近いものに切り替え、これを活かすことにより、AirH"のパケット通信サービスを実現している。もう少しわかりやすく言えば、PHSのバックボーン回線を従量課金ベースのものから定額制のものに切り替えることにより、AirH"の「つなぎ放題コース」をはじめとする定額制プランを実現しているわけだ。

 こうしたPHSネットワークの進化を受け、DDIポケットは他の通信事業者にPHSネットワークを貸し出す形のサービスも提供している。たとえば、日本通信の「bモバイル」、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)の「KWINS(KCCS Wireless IP Network Service)」、三菱電機情報ネットワークの「MINDモバイルネットワークサービス」が提供しているデータ通信サービスがこれに該当し、この他にもNTTコミュニケーションズと富士通が同様の形式でPHSサービスに参入するのではないかという報道も出ている。

 今回紹介する九州松下電器製「KX-HV210」も進化したDDIポケットのPHSネットワークを活かしたサービスに対応しているのが特長だ。九州松下電器は昨年、音声端末では初のAirH"対応端末「KX-HV200」を発売し、好評を得ているが、今回のKX-HV210はこれの後継モデルに相当するものだ。

 しかし、ハードウェア的な改良以上に注目されるのがパケット通信方式によるメール送受信とコンテンツ閲覧に対応したことだ。なかでもDDIポケットが新たに提供を開始した「エッジeメール」は、月額700円を支払うだけで、メール使い放題になるというアドバンテージを持つ。詳しくは後述するが、ケータイでメールを利用するユーザーだけでなく、普段からパソコンでプロバイダやオフィスのメールを送受信しているユーザーにもかなり魅力のあるサービスと言えそうだ。従来モデルのKX-HV200との比較もまじえながら、KX-HV210とエッジeメールの可能性について見てみよう。


ボディは従来のKX-HV200を継承

 製品の細かい仕様などについては、DDIポケットや九州松下電器の製品情報ページを参考にしていただきたい。ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心にお伝えしよう。

 まず、ボディは基本的に従来のKX-HV200を継承しているが、トップパネル部分のデザインや塗装を変更したことにより、全体的なイメージは大きく変わっている。従来のKX-HV200が男性的なデザインだったのに対し、KX-HV210はやや女性的な柔らかいイメージになっているが、九州松下電器によれば、ボディデザイン担当が女性に変わったとのことだ。

 ちなみに、塗装面については従来モデルでややはがれやすいという指摘があったこともあり、今回のKX-HV210では塗装面を強化し、従来製品と比べて、2倍の強度を実現しているという。ハードウェア的な機構や装備は基本的に従来モデルと同じで、KX-HV200のセールスポイントだった「ワンタッチオープン機構」や「SDメモリカードスロット」も継承されている。SDメモリカードは従来同様、最大64MBのものまでを装着することができる。


KX-HV210(左)との比較 SDカードスロット
 従来のKX-HV200(左)からトップパネルと塗装の仕上げを変更したことで、全体的にグッと洗練された印象だ。  本体左側面にSDカードスロットを装備。最大64MBまでのSDカードを装着可能。

 液晶ディスプレイのスペックもまったく同じで、6万5536色表示が可能な2インチTFT半透過型カラー液晶を採用し、待受中に[終話]ボタンでバックライトの点灯/消去を切り替えられるようにしている。視認性については最近の端末の中でも良好なレベルにあると言えるだろう。

 ボタン類は基本的に従来モデルと同じレイアウトを採用しているが、テンキー部分のキートップの印刷が若干変更され、少し見やすくなっている。ボタン類の操作感はまったく変わりない。

 外見上の変更点を書き並べてみると、KX-HV210は従来モデルとほとんど変わらない端末のように見えるが、ボディカラーとトップパネルのデザインが変更されたことにより、全体的な印象と質感はかなり向上したように感じられる。


液晶 ボタン
 液晶ディスプレイのスペックはKX-HV200と同じ。KX-HV200でバージョンアップが行なわれた壁紙自動チェンジ機能は標準で搭載されている。  ボタン類の基本レイアウトは同じだ。テンキー部分のキートップの印刷がやや変更されている。

プロバイダのメール転送にも便利なエッジeメール

メニュー

 メニュー画面は基本的に同じレイアウトを踏襲している。
 細かいデザイン変更で印象を変えることに成功したハードウェア面に対し、ソフトウェア面はどうだろうか。メニュー構成などはあまり大きく変更されていないが、冒頭でも触れたように、KX-HV210はパケット通信対応という特長を持つ。従来のKX-HV200もパケット通信機能を搭載しており、データ通信ケーブルを接続して、AirH"のデータ通信サービスを利用することができたが、KX-HV210では新たにEメール送受信とコンテンツ閲覧でもパケット通信を利用できるようにしている。

 DDIポケットではKX-HV210の登場に合わせ、新たに「エッジeメール」を開始しており、これを利用できるのは今のところ、KX-HV210に限られている。エッジeメールはDDIポケットがH"LINKで提供してきたEメールをパケット通信で実現するもので、メール機能としての基本スペックは従来のH"LINKのEメールとまったく同等のものだ。受信が全角10000字、送信が全角1000字、メールアドレスのドメイン名に「pdx.ne.jp」を採用している点も変わらない。ただし、センターとの通信方式にパケット通信を利用している点が異なるだけだ。

 このエッジeメールは現在契約している料金プランによって、60秒あたり5/10/15円の通信料が掛かるが、オプション契約として新たに提供された「エッジeメール放題」を契約することにより、月額700円でメールの送受信を使い放題にできる。エッジeメール放題のオプションは「標準コース」「スーパーパックL」「スーパーパックS」「データパック」「つなぎ放題コース」「ネット25」の料金プランを契約している場合に選択でき、「スーパーパックLL」、オプション契約の「メール放題&トーク割」を契約している場合は月額700円のエッジeメール放題のオプション料金も不要になる。つまり、最も安いプランの場合、標準コースの月額2700円とエッジeメール放題の月額700円を合わせ、月額3400円でメールが好きなだけ送受信できるようになるわけだ。年間契約を組み合わせれば、月額の費用を3000円以下に抑えることもできる。

 DDIポケットでは今までISDNのユーザー間情報通知機能を利用した「ライトEメール」などのサービスで、メール料金の低廉化を図ってきたが、今回のエッジeメール放題により、メール送受信の完全定額化を実現したことになる。特に、ライトEメールは文字数が送信で103文字、受信で123文字と短かったが、エッジeメールは受信で全角10000字、送信で全角1000字という十分すぎるスペックを確保しており、メールマガジン並みの長文メールでも問題なく、受信することができる。


センター通信方式

 KX-HV210はコンテンツサービスとEメールサービス利用時のセンター通信方式を「パケット」と「PIAFS」から選択できるようにしている。
 また、エッジeメール放題を契約した場合は、パケット通信によるコンテンツ閲覧時の通信料が半額になるという特典があるが、従来のPIAFS方式によるH"LINKのEメールでは最大64kbpsでデータの送受信を行なっていたのに対し、パケット通信によるメール送受信やコンテンツ閲覧は約半分の最大32kbpsとなるため、実質的には同等の料金体系という解釈もできるだろう。

 ただ、エッジeメール放題で注意しなければならないのは、使い放題の対象となるのが「エッジeメール」で送受信した場合に限られる点だ。たとえば、ライトメールやPIAFS方式によるH"LINKのEメールで送信した場合は、別途、通信料が必要になる。受信については端末側でセンターとの通信方式として「パケット通信」が設定されていれば、自動的にエッジeメールで受信することになるため、あまり気にすることはないが、送信については多少、注意が必要だろう。ちなみに、KX-HV210ではセンターとの通信方式を「PIAFS」と「パケット通信」から選択して設定できるようにしている。

 また、注意というよりは残念な点ということになるが、エッジeメールについては端末上、もしくはオンラインサインアップ画面上で、エッジeメール放題の契約が有効になっているかどうかを把握することができない。そのため、エッジeメール放題を契約したつもりでエッジeメールを使いまくったのはいいが、あとで請求書を見て驚くということになり兼ねない。この点はH"LINKのオンラインサインアップ画面上で、何らかの対策を期待したい。


 エッジeメール放題によって実現した『メール使い放題』という環境は、一見、メールのヘビーユーザー向けと受け取られがちだが、実はプロバイダーのメールを転送して閲覧したいユーザーにも適している。たとえば、筆者はメインのメールアドレス宛のメールをエッジeメール放題でKX-HV210に転送しているが、長いメールが来ようが、1日に何通も送られてこようが、料金的に違いがないというのは非常にうれしい。もちろん、通常はパソコンやPDAでメールのチェックをしているが、週末などはパソコンやPDAを持ち歩いていないこともあり、こうしたオフタイムでもメールの着信が確認でき、ほぼ全文が読めるのは非常に重宝している。

 こうしたニーズが出てくることを予想してか、KX-HV210には受信メールをフォルダに自動的に振り分ける機能が搭載されている。ただ、この振り分けの機能はもう少し工夫が欲しかったところだ。KX-HV210の振り分け機能はメールアドレスや電話番号をキーワードにしているのだが、「Subject(タイトル)」や「To(宛先)」など、その他のヘッダ情報もキーワードとして設定できるようにして欲しかった。たとえば、メールマガジンなどは一定の「Subject」を設定していることが多いし、プロバイダーからのメール転送では「Subject」に「Fw:」がついていることがある。こうした部分を利用すれば、pdx.ne.jpドメインに直接、届いたメールとプロバイダーやオフィスから転送したメールを区別しやすくなるからだ。

 また、SDカードにメールを保存するように設定したとき、データの読み出しがやや遅くなる点も気になる。SDカードの読み書きの遅さは、H"端末で共通採用されている端末用CPUのパフォーマンス不足が原因のようだが、SDカードの特性を活かすためにも今一歩の改善を期待したい。

 ところで、従来のKX-HV200のレビューで、SDカードに録音ができる「ICレコーダー機能」の再生が端末上でしかできないという話を紹介したが、九州松下電器ではSDカードに保存した録音データをパソコン上で再生、編集ができる「Voice Editor2 for H"」の配布を開始している。もちろん、今回のKX-HV210にもこの機能は継承されており、同じように使うことができる。


受信メール Subject
 受信メールの表示画面は最大11行表示が可能。本誌のメールマガジンも十分読めるレベルだ。  メールマガジンの多くは「Subject」に固定的な文字列を使うことが多い。これをフォルダ振り分けのキーワードに使いたいところだ。

「エッジeメール放題」に興味があるなら「買い」

 最後に、KX-HV210の「買い」を診断してみよう。KX-HV210は従来のKX-HV200とほぼ同等のハードウェアで構成されているが、トップパネルのデザイン変更やパケット通信への対応により、さらに完成度の高い端末として仕上げられている。特に、エッジeメールへの対応はメールを多用するユーザーだけでなく、プロバイダーやオフィスのメールを転送したいユーザーにも有用なものであり、オプションの「エッジeメール放題」はぜひとも契約しておきたいところだ。

 その昔、携帯電話のメールサービスが開始されたばかりの頃、J-フォン(当時はデジタルホン及びデジタルツーカー)のメール受信料が無料だったため、パソコンでメールを利用するユーザーがこぞって契約したということがあったが、エッジeメール放題はその再来が期待できる魅力的なサービスだ。仮に、音声通話やコンテンツ閲覧に興味がなくても外出先でのメール受信を必要とするユーザーなら、これだけでもかなりの利用価値があると言えるだろう。

 ただ、敢えて苦言を呈しておきたいのがDDIポケットのサービス内容のわかりにくさだ。KX-HV200のレビューのときにも述べたことだが、どんなに便利なサービスを開発してもユーザーがそれを理解できなければ、意味がない。たとえば、パケット通信のメールを「エッジeメール」、エッジeメールが使い放題になるオプション契約を「エッジeメール放題」と表記していることが理解できれば、エッジeメールの優位性を理解し、端末の購入と同時にオプション契約を検討するだろう。しかし、「今度のPanasonicのPHSはメールが使い放題らしい」くらいの情報しか持ち合わせていないと、端末を購入するだけでオプション契約を申し込まず、60秒で5/10/15円のメール通信料を支払う羽目になる。つまり、販売店がきちんとサービス名と内容、料金を理解していないと、ユーザーが思わぬ不利益を被る可能性があるわけだ。せっかくメール使い放題というアドバンテージを実現できたのだから、それを活かすために十分な配慮をして欲しいところだ。もちろん、将来的にはサービス名や内容などを再構成し直す必要もあるだろう。

 厳しいことを述べたが、エッジeメール放題はDDIポケットが進化させてきたPHSネットワークの特性を十分に活かしたサービスであり、ユーザーにとっても非常に有用なサービスであることは間違いない。現時点でこのサービスを利用できるのはKX-HV210のみであり、メール使い放題をメリットと考えるユーザーなら、迷わず「買い」と言えるだろう。


・ ニュースリリース(九州松下電器)
  http://www.kme.panasonic.co.jp/corp/news/2002news/jn020823/jn020823.html
・ 製品情報(DDIポケット)
  http://www.ddipocket.co.jp/syohin/i_kx-hv210.html
・ 製品情報(九州松下電器)
  http://www.kme.panasonic.co.jp/pana/hmp/hv210/
・ 「エッジeメール放題」ニュースリリース(DDIポケット)
  http://www.ddipocket.co.jp/news/h140823.html

松下、「エッジeメール」対応の折りたたみ型端末「KX-HV210」
DDIポケット、H"LINKにパケット通信導入で割引プラン
KX-HV200とKX-HV50の録音データを再生できるソフト
ユニークなワンタッチオープン機構を採用した「KX-HV200」


(法林岳之)
2002/09/24 14:58

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