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「SH-Mobile」で高速動作を可能にした「A5303H」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


ムービーメール対応端末第2弾

 auのCDMA2000 1x端末のハイエンドラインアップ「A5000」シリーズ。その3機種目となるのが日立製端末「A5303H」だ。インパクトのあるスタイリッシュなデザインもさることながら、アプリケーションプロセッサ「SH-Mobile」を搭載していることでも話題となっている。筆者も機種変更で入手したので、レポートをお送りしよう。


「SH-Mobile」でムービーやアプリケーションを高速動作

au/日立製作所『A5303H』。サイズ:50×100×27mm、112g。スパークレッド(写真)、シアーパープル、エアシルバーをラインアップ
 カメラ付きケータイが急速に普及する一方、昨年来、動画を扱うムービー対応のケータイも注目を集めている。当初、ケータイにおける動画は、TV電話や配信サービスがその役を担うと見られていた。そのため、NTTドコモはFOMAのサービス開始当初からTV電話を提供したわけだが、静止画からTV電話へ一足飛びにジャンプすることは難しかったようで、読者のみなさんもよくご存知の結果となっている。iモーションやezmovieをはじめとする動画をダウンロードするコンテンツも通信コストの関係からか、本格的な普及には至っていないようだ。

 これに対し、着実に普及の足掛りが見えつつあるのがカメラ付きケータイによる動画撮影と動画メールだ。静止画を撮影して送信するというスタイルを正常に進化させ、動画を撮影して送信するというスタイルが模索されている。ただ、ケータイはパソコンやPDAなどと違い、十分なCPUパワーがあるわけではなく、保存領域も比較的限られているため、なかなか動画の扱いが難しい面もある。そのため、各キャリアやメーカーでは限られたCPUパワーで動画を撮影し、小さいファイルサイズに保存できるように、さまざまな技術開発が続けられている。

 今回紹介するauの日立製端末「A5303H」は、アプリケーションプロセッサ「SH-Mobile」を搭載することで、より気軽にムービーを撮影できるようにした端末だ。アプリケーションプロセッサは簡単に言ってしまえば、音声や動画などのマルチメディア・アプリケーションを扱うために設計されたプロセッサで、ムービーの再生やJavaアプリケーションの実行などを高速に処理することができる。つまり、ケータイ本来の通信や通話はCDMA2000 1xの心臓部であるQUALCOMMのチップに任せておき、ムービーを撮影したり、Javaアプリケーションを実行するときに高速なSH-Mobileを活用する仕組みになっているわけだ。

 また、日立と言えば、cdmaOneのサービス開始当初からcdmaOne端末のトレンドをリードし続けてきたメーカーだが、折りたたみデザイン採用の遅れなどが影響したためか、ここのところは一時期の勢いが感じられない状況にある。今回のA5303Hは日立製端末初の折りたたみデザインを採用しており、デザイン的にも一気に巻き返しを図ろうという狙いだ。SH-Mobileの実力もチェックしながら、その仕上りを見てみよう。


独特のウェッジシェイプボディを採用

曲線を活かしたボディデザイン。1960~1970年代のSF的というか、ウルトラマン的というか……

背面に格納されているアンテナはあくまでも補助用。通常はアンテナレスで利用できる
 製品のスペックや細かい仕様については、auや日立製作所の製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。

 A5303Hで最も特徴的なのは、やはり、ボディデザインだろう。日立製端末初の折りたたみデザインになるが、過去の端末には見られなかった大胆なデザインを採用している。外部接続端子を側面にレイアウトすることで、折りたたみボディの先端部を細く仕上げ、ウェッジシェイプの鋭いデザインにまとめている。カラーリングもここで紹介している「スパークレッド」が特に印象的で、一部の年齢層からは「まるでウルトラマン・ケータイだな」といった声も聞かれるほどだ。受話口のすぐ隣には日立製端末でおなじみの「気くばりセンサー」が内蔵されており、外部の明るさに応じて、着信音を止めるなどの設定が可能だ。ヒンジ部分には180度、回転する34万画素のCMOSイメージセンサによるカメラを内蔵し、テンキー部の背面側にはアンテナが格納されている。ただ、このアンテナはあくまでも補助用で、基本的にはアンテナレスに近い意識で開発されているという。

 液晶ディスプレイは132×176ドット/26万色表示が可能なTFTカラー液晶パネルを採用する。サイズ的には先週紹介したA5302CAとほぼ変わらないが、ディスプレイの周囲の処理が違うため、A5302CAよりもわずかに小さく感じられる。背面側のサブディスプレイは88×64ドット/26万色表示が可能なTFTカラー液晶パネルを採用し、周囲には2つのサブソフトキーと着信ランプ、スピーカーが装備されている。サブディスプレイのサイズはA5302CAよりもひと回り小さいが、視認性は良好で、カメラ起動時のファインダーとして利用するときもそれほど不満が感じられない。


メインディスプレイは132×176ドット表示が可能なTFTカラー液晶パネルを採用 背面のサブディスプレイもTFTカラー液晶パネル。画面は「日立ケイタイFanサイト」からダウンロードしたカレンダー

中央に方向キーと決定ボタンを装備。左右上にソフトキーも備えるが、待受時に[メモ](右上のソフトキー)がいきなり呼び出せるのは意外に珍しい
 ボタン類は方向カーソルキーを中心に、左右上に2つのソフトキー、右下に[EZ]キー、左下に[メール]キーをレイアウトする。左側面にはカメラを起動するためのスライド式の[カメラ]キー、これまた日立製端末ではおなじみのスライド式[気くばりスイッチ]を備える。カメラキーはヒンジ側にスライドさせると[ムービー]モード(動画)、反対側にスライドさせると、[カメラ]モード(静止画)が起動する。いずれかのモードでカメラを起動していても[カメラ]キーを反対側にスライドさせれば、もうひとつのモードに切り替えられ、同じ方向にスライドさせれば、カメラを終了させることができる。気くばりスイッチはスライドスイッチを操作するだけでマナーモードを起動できるもので、ヒンジ側にすべてスライドさせれば、まったく音が鳴らないサイレントモードになる。


左側面にはカメラキーと気くばりスイッチを装備。カメラキーはやや長めにスライドさせる必要がある 上方向キーでショートカットメニューが表示される

動画撮影時の保存の速さはピカイチ

 次に、機能面について見てみよう。日立製端末としては、C3001H以来、約1年ぶりの登場になるが、従来モデルで好評だったものも含め、最近のトレンドになっている機能はひと通り網羅されている。

 メールについては、フォルダによる管理、振り分けがサポートされている。フォルダによる管理は出荷時にメインフォルダ以外に9つのフォルダが用意されており、すぐに使うことができる。振り分け設定はすべてのフォルダを合わせて、100件まで条件を設定でき、受信時に自動的に振り分けが実行される。振り分け条件はアドレス帳のグループとメールアドレスで設定できるが、「Subject」などの項目で設定することはできない。ちなみに、すでに登録されているメールアドレスを他のフォルダに振り分ける条件に追加しようとすると、登録済みである旨を伝えるエラーメッセージが表示される。このあたりの配慮はフォルダによる振り分け設定に慣れていないユーザーにもやさしい。フォルダによる管理はメールだけでなく、「お気に入り(Bookmark)」や「ezplus」にも採用されている。


メニュー画面はアイコン表示。アイコンを選択すると、一覧表示のメニューが表示される メインメニューから[EZメニュー]を呼び出すと、EZweb関連の機能が呼び出せる メールはフォルダ単位で管理が可能。自動振り分けもできるが、基本的にメールアドレスでしか振り分けができない

「ターボモード」の画面ではSH-Mobileの「効き」を3段階で設定が可能
 一方、A5303Hで最も注目されるアプリケーションプロセッサ「SH-Mobile」とカメラ機能についてだが、実はこの2つがA5303Hのすべてを体現していると言っても過言ではないくらい存在意義が大きい。SH-Mobileについては、大和哲氏が『ケータイ用語の基礎知識』で詳しく解説しているので、ここでは説明を割愛するが、簡単に言ってしまえば、本来、ケータイに必要とされる通信部分以外の処理を行なうために、専用のCPUを別途、搭載したことになる。そのため、アプリケーションプロセッサを搭載していない端末よりもJavaの実行、動画の撮影時にリアルタイムエンコード(撮影しながら圧縮して保存)が可能になるなどのメリットを持っている。

 実際に使ってみて、どの程度の差があるかというと、先週紹介したA5302CAでは動画を撮影してから保存に約1分近くを必要するのに対し、A5303Hでは保存にわずか1秒程度しか掛からない。つまり、動画を撮って、すぐにメールに添付して送信するといった使い方に適しているわけだ。ただ、静止画撮影時にはあまり効果を発揮しないようで、最大解像度で撮影した場合、保存に約10秒ほど掛かってしまう。

 ezplusのアプリケーションについては最速の「ターボモード」に設定した場合、A5302CAで起動に5秒以上掛かるものが、A5303Hでは1秒前後(ほぼ瞬時に近い)で起動することが可能だ。このサクサク感は今までのCDMA2000 1x対応端末で味わえなかった感覚だ。ただ、先日発表されたように、auではA5304Tを皮切りに、BREW対応端末も投入するとしており、アプリケーション起動についてのアドバンテージは若干、薄れる可能性もある。


180度、回転が可能な内蔵カメラ。ボディを閉じたままはもちろん、幅広いアングルで撮影ができる
 カメラについては前述の通り、34万画素のCMOSイメージセンサを採用しており、640×480ドット(VGA)の[PCモード]、120×160ドットの[ケータイモード]の2種類のサイズで撮影が可能だ。撮影した画像は[ケータイモード]の他に、120×120ドットのPNG形式になる「au C4xxモード」、ファイルサイズの小さいJPEG形式「J対応」に変換することが可能だ。ただし、A5303Hのサブディスプレイ用サイズに変換する機能はない。

 撮影時の機能については1~4倍で5段階のズーム(PCモード時を除く)、±4で9段階の明るさ調整、10秒固定のセルフタイマー、14種類のフレーム、3種類の画像効果などが利用可能だ。ワイド側(広角側)の設定ができないのは残念だが、機能的にはほぼ十分と言えるだろう。撮影後の編集は前述のサイズ変更に加え、24種類のスタンプ、7種類の画像効果、画像回転、画質調整などができる。動画については、A5302CA同様、テロップやアフレコ機能などを備えている。欲を言えば、音声付きで撮影した動画を無音に編集する機能も追加して欲しかったところだ。


撮影した画像はサムネイル表示で閲覧が可能。この画面から画像を添付したメールの作成もできる PCモードで撮影したVGA画像。高層ビルの上から街並みを写したが、晴天にも関わらず、かなり暗く写る印象だ。特に、周囲の暗さが気になる

友人の結婚式で撮影。音声を有効にすると、雰囲気も出るが、できれば、感度調整が欲しいところ。サンプル動画(amc形式)はこちら 水族館で熱帯魚を撮影。やはり、小さい生き物を追いかけるのに、ケータイムービーは最適。サンプル動画(amc形式)はこちら

同じく水族館でイルカのショーを撮影。離れているので、今ひとつわかりにくいかな。サンプル動画(amc形式)はこちら 港で周囲の風景を撮影。こういう映像をたくさん用意して、「場所当てクイズ」をするのも面白い?サンプル動画(amc形式)はこちら

背面側にカメラを向けたときは、切り欠きを気にせず、写真くらいの位置に合わせるのがいいようだ
 カメラはヒンジ部中央に備えられており、前後に180度、回転させることが可能だ。カメラ部にはヒンジ部とデザイン的に処理した切り欠きが付いており、ユーザーの感覚としては切り欠きを揃えるようにカメラ部をセットしてしまう。しかし、切り欠きを揃えた状態では背面に向けたときに指で隠してしまったり、正面に向けたときも妙に上を向いてしまうため、実際には切り欠きを少しずらしてセットして、撮影した方がいいようだ。このあたりはauや日立も気付いているようで、パッケージにはカメラの使い方に関する紙が同梱されている。また、A5303Hのカメラは180度、回転する構造になっているが、どの向きに合わせてもヒンジ部の内側にカメラ部を格納できないため、常に外部にレンズが晒されることになる。他の多くのカメラ付きケータイがカメラ部をむき出しで装備していることを考えれば、別に大きな問題ではないが、せっかく回転するのであれば、FOMAのF2051のように、レンズ部を格納できるような構造にしても良かったのではないだろうか。

 その他の機能で個人的に気に入ったのは、「JukeBox Multi」機能だ。着信メロディやezmovieデータ、ボイスデータなどをジュークボックスのように登録できる機能だが、登録した音は目覚し時計などのアラーム音として利用することが可能だ。最近のケータイではアラーム機能が当たり前になっているが、実はアラーム音を自由に選べる端末はあまり多くない。A5303Hは「着うた」にも対応しており、ezmovieデータなどを組み合わせてアラーム音を作れば、オリジナリティあふれる個性的なアラーム音を設定可能だ。


ムービーを撮りまくりたいなら「買い」

 さて、最後にA5303Hの「買い」について診断してみよう。auのムービーメール対応端末第2弾として発売されたA5303Hは、日立製端末初の折りたたみデザインを採用し、ウェッジシェイプのインパクトのあるデザインでまとめられている。180度の回転式カメラやアプリケーションプロセッサのSH-Mobile搭載という他のCDMA2000 1x対応端末にはない特長も持ち合わせている。なかでもSH-Mobileはezplusの起動やムービーの撮影に絶大な威力を発揮する。カメラ周りの機能は及第点が付けられるものの、同時期に出たA5302CAに比べると、やや一歩譲る面もある。

 これらのことを総合すると、A5303Hを「買い」と言えるのは、ezplusやムービーを頻繁に活用したいユーザー向けということになる。ボディデザインや独特のカラーリングなどで個性を主張しているが、やはり、A5303HのアイデンティティはSH-Mobileであり、これが活用できる機能に魅力を感じなければ、他機種との比較はほぼ互角と考えていいだろう。ezplusは他事業者のJavaアプリケーションに比べ、ややコンテンツが少ない感が残るが、ムービーを撮って、すぐに保存できる環境は快適であり、A5303Hでは自ずとムービーの利用頻度もグンと上がってくる。ただ、今のところは撮影したムービーを再生できる環境が限られているため、購入時はその点も十分に考慮する必要があるだろう。


・ A5303H ニュースリリース(au)
  http://www.kddi.com/release/2002/1118/
・ A5303H 製品情報(au)
  http://www.au.kddi.com/phone/cdmaone/a5303/
・ A5303H 製品情報(日立製作所)
  http://www.hitachi.co.jp/Prod/vims/mobilephone/

A5303H(スパークレッド)
au、“着うた”対応のムービーケータイ「A5302CA」「A5303H」
第120回:SH-Mobile とは


(法林岳之)
2003/01/31 12:50

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