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世界初の歩数計で楽しさを加味した「らくらくホンIII F672i」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるVAIO 基本編 2003年モデル対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


使いやすさを進化させた「らくらくホンIII」

 ケータイの高機能化はとどまるところを知らないが、高機能であるがゆえにケータイを敬遠するユーザー層も確実に存在する。そんなユーザーのために販売されているのが使いやすさを追求したNTTドコモの「らくらくホン」シリーズだ。その最新モデルとなるのが「F672i」が発売され、筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。


ケータイの高機能化が生み出したもの

F672i

 NTTドコモ/富士通『F672i』。サイズ:51×99×22mm(折りたたみ時)、105g。フロンティアブルー(写真)、パールゴールド、フェザーグリーンをラインアップ
 カメラ付きにアプリケーション、GPS、テレビ電話と、ケータイの高機能化はとどまるところを知らない。先日、行なわれたCEATEC JAPAN 2003でも『カメラ付きの次』を模索する新しいアプローチが数多く見受けられた。

 こうしたケータイの高機能化は、事業者にとっては新しいトラフィック、コンテンツプロバイダやサービス事業者にとっても新しいビジネスを生み出すきっかけになっている。多くのユーザーもそれを積極的に利用しようとしている。しかし、その一方で端末の複雑化や操作の煩雑化を招くというリスクを持ち合わせている。ここ1~2年、携帯電話は急速に高機能化が進んだが、最新モデルを日常的に触っている筆者や編集スタッフですら、「あれ? これって、どうするんだっけ?」と戸惑ってしまうことも少なくない。我々のような立場の人間でそうなのだから、デジタルに強くない人たちにはもっと難解なシロモノに見えるはずだ。特に、シニア層、シルバー層と呼ばれる人たちからは、「携帯電話は使いたいけど、もっと使いやすくして欲しい」「シンプルでわかりやすい端末が欲しい」という声が数多く聞かれる。

 また、ディスプレイひとつ取っても最新モデルでは液晶ディスプレイの解像度(表示ドット数)のQVGA(240×320ドット)化が進んでいるが、2.4インチクラスのディスプレイを搭載した端末では全角1文字のサイズ(幅)が標準設定でわずか約3mm、縮小設定では約2mmしかない。これは文庫本の本文と同じか、それよりも小さいサイズであり、人によってはかなり見えにくく感じてしまう。街中でもシニア層の人が携帯電話の画面を見るとき、メガネをずらし、目を細めながら画面を見ているシーンをよく見掛ける。

 つまり、携帯電話の高機能化は進んでいるが、一方でこうした動きに取り残される、あるいはその流れを受け入れられない(受け入れたくない)ユーザー層も着実に増えてきている。

 こうしたユーザー層に対し、一定の支持を集め続けているのがNTTドコモの「らくらくホン」シリーズであり、その最新モデルとなるのが今回紹介する富士通製端末「F672i」だ。らくらくホンのラインアップは1999年10月に発売された「らくらくホン P601es」に始まり、2001年9月に発売された「らくらくホンII F671i」、2002年9月に発売された「らくらくホンIIS F671iS」に続き、今回の「らくらくホンIII F672i」が3代目(4機種目)のモデルということになる。らくらくホンシリーズは「使いやすい」「見やすい」「わかりやすい」を基本コンセプトに、誰にでも使いやすく、人に優しい携帯電話を目指して開発されている。高機能端末を見慣れたユーザーにはあまり興味がないかもしれないが、実は本誌に掲載されている販売ランキングでも1年を通して、常に上位にランクインしており、NTTドコモの集計によれば、過去3機種で累計240万台も販売されたという実績を持つ。

 今回のF672iは、従来のF671iSのデザインを継承しながら、新たに世界初の歩数計を搭載することにより、使いやすさに楽しさを加味しようとしている。実機を見ながら、その出来をチェックしてみよう。


22mmのスマートボディとわかりやすいボタン配置

 製品のスペックや細かい仕様については、NTTドコモや富士通の製品情報ページ、近日掲載予定の「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。

 まず、ボディは従来のF671iSに引き続き、折りたたみデザインを採用している。従来のF671iSが厚さ28mmだったのに対し、F672iはアンテナ部の突起をなくし、22mmまでスリム化されている。ちなみに、アンテナは一見、伸縮式のように見えるが、実は固定式となっている。液晶ディスプレイ部左には回転式ボリュームボタン、テンキー部左側面には丸型コネクタのイヤホンマイク端子を備える。


背面 ボリューム
 丸みを帯びたスマートなボディデザインを採用している  ディスプレイ側の左側面には音量調節が可能な回転式ボリュームを装備

 ディスプレイはメイン側に160×160ドット/65,536色表示が可能な2.1インチTFTカラー液晶、サブ側に120×66ドット表示が可能なモノクロTFT液晶を採用する。スペック的には従来のF671iSと大きく変わらないが、メイン、サブともに明るさやコントラストを向上させることにより、視認性を良くしている。表示フォントは従来同様、20ドットフォントを採用しており、メールやiモード閲覧時、電話帳などにもすべて共通のフォントが利用されている。


メインディスプレイ 背面ディスプレイ
 メインディスプレイは160×160ドット表示が可能なTFTカラー液晶を搭載  背面ディスプレイはモノクロ。こちらの表示もフォントが見やすい

ボタン

 ボタンのサイズを大きくするだけでなく、それぞれのボタンの形状を変えることにより、わかりやすくしている。ボタンの近くの印刷の文字も大きくてわかりやすい
 ボタン類もF671iSを継承し、方向キーと[決定]ボタンを組み合わせたマルチカーソルキーを中心に、左上に[メニュー]ボタン、右上に[電話帳]ボタン、左下に[開始/文字]ボタン、右下に[電源/終了]ボタン、下に[戻る]ボタンをレイアウトしている。液晶ディスプレイ側にはワンタッチで登録したところに発信できる3つの[ワンタッチダイヤル]ボタン、右側面には操作説明やメールの読み上げ時に利用する[音声読み上げ]ボタンを備えている。テンキーは通常端末と幅こそ変わらないものの、縦方向のサイズがわずかに大きく、キートップのプリントもハッキリしているため、全体的に大きく見える印象だ。突起(キートップの盛り上がり)も通常端末より大きくしたり、役割が異なるボタンのデザインを変える、ボタンのすぐ近くに印刷される機能の文字も大きくするなど、細かい部分で使いやすさに対する配慮がうかがえる。


ワンタッチボタン 音声読み上げボタン
 3つの発信先を登録しておくことができる「ワンタッチボタン」。未登録時、このボタンからも登録メニューが呼び出せるとベターなのだが……  右側面に装備された[音声読み上げ]ボタン。このボタンを押せば、メールの内容などを読み上げてくれる

歩数計を活かしたコンテンツも提供

 次に、実際に端末を使ううえでの機能を見てみよう。一般的に携帯電話を利用する上で、ユーザーが戸惑うのはそれぞれのシーンにおいて、次にどんな操作をしたらいいのかがわからないときだ。こうしたユーザーの迷いを減らすため、F672iでは操作中のいろいろな場面で画面上に操作ガイダンスを表示するようにしている。


通知画面 背面の通知画面
 メールや伝言、着信があったときは、画面に操作ガイド付きで表示される  サブディスプレイにもメールや伝言、着信があった旨が表示される

ガイド表示 ガイド表示2
 [開始/文字]ボタンを押すと、テンキーで電話番号を入力する旨のガイドが表示される  先にテンキーで電話番号を入力すると、発信に[開始/文字]ボタンを押す旨のガイドが表示される

メール作成画面(ノーマル)

 一般的なメール作成画面に切り替えて利用することも可能
 たとえば、発信するために待受状態でテンキーを押したり、発話の[開始/文字]ボタンを押し、オンフックした場合、いずれも画面の上半分に発信のための操作ガイダンスが表示される。着信については他機種同様、どのキーを押しても応答ができるが、やはり、着信時の画面上に[開始/文字]ボタンを押す旨のガイダンスが表示される。不在着信やメール着信、伝言があったときは、画面に「着信あり」「伝言あり」「メールあり」のメッセージが表示され、マルチカーソルキーのいずれかを操作する旨にガイダンスが表示される。ただ、ワンタッチダイヤルは[電話帳]メニューから設定しなければならず、ワンタッチダイヤルに登録されていないときも画面には「ワンタッチダイヤルに登録されていません」と表示されるのみで、それ以上のガイダンスはない。


簡単メール作成 簡単メール作成2
 簡単メール作成ではまず「宛先」を入力する  続いて、「題名」を入力するが、「例文」を呼び出すこともできる

簡単メール作成3 メール作成時のガイド
 最後に「本文」を入力。例文は題名と本文がセットになっている  メール作成時には文字入力のガイドが表示できる。端末の見た目のままなので、非常にわかりやすい

 また、メール作成では、一般的な「題名」「宛先」「本文」の項目を選んで入力する方法のほかに、「宛先」「題名」「本文」の順に入力する「簡単メール作成」という方法も用意されている。簡単メール作成では電話帳に登録されたメールアドレスや例文(定型文)の呼出も画面から選択するだけで呼び出すことができる。文字入力についても右上の[ガイド]ボタンを押すことで、文字入力ヘルプがテンキーのイラスト付きで表示される。ちなみに、メールはマルチカーソルキーの上方向を押すと、受信メールが表示され、長押しで新規作成画面が表示される。


機能メニュー 「できること」で表記
 [メニュー]ボタンで表示される機能メニューはすべて文字表記。もう一階層、あるときはフォルダアイコンが付加される  メニュー内の各機能は「機能名」ではなく、「できること」で表記されている

音声読み上げ

 音声読み上げは声質や速度、動作を設定することができる
 各機能を呼び出すためのメニューは、左上の[メニュー]ボタンで呼び出すことができる。機能メニューはいずれも文字で表現されており、もう一階層、メニューが用意されているときはフォルダのアイコンが表示される。表示される文字も大きいため、視認性は良好だ。シニア層のニーズを考えれば、機能を文字でハッキリと表わすことは重要だが、実際に使ってみると、どのメニューに何の機能が含まれているのかが今ひとつわかりにくいという印象もあった。できることなら、機能メニューの階層やグループごとに背景の色を変えたり、アイコンを追加するなど、もう一歩、工夫が欲しかった。

 従来モデルから搭載されていた音声読み上げ機能は、メールや機能メニューなどの読み上げに加え、iモード利用時の公式メニューやサイト内のメニュー、電卓、メール作成画面、メール送信の結果などの読み上げにも対応した。読み上げの音声については、男女の声質と読み上げの速さを設定することができ、読み上げ動作も自動、手動(側面の音声読み上げボタンを操作)、読み上げなしから選べるようにしている。正しく読まれない単語については読み上げ辞書に登録することにより、読み上げが可能になる。ちなみに、筆者の名前も読み上げ辞書に登録することで、正しく読み上げることができた。音声読み上げの様子を聞いてみたい人は、2003年9月30日(火)放送のimpressTVでF672iを紹介しているので、そちらをご覧いただきたい。

 また、音声に関連する機能として、音声で電話帳を呼び出す「ボイスダイヤル」、音声でメニューを操作する「ボイスメニュー」にも対応している。いずれも最大50件まで登録でき、ボイスメニューは着信音を調整する「オンリョウ」、受信メールを見る「ジュシンメール」、自分の電話番号を見る「デンワバンゴウ」、目覚しを設定する「メザマシ」など、10種類が出荷時に設定されている。


 次に、F672iで新たに搭載された歩数計についてだが、オムロン製2軸加速度センサーによって実現されている。余談になるが、歩数計の名称として、広く利用されている『万歩計』山佐時計計器株式会社の登録商標となっている。F672iの歩数計は端末を垂直に立てた状態から30度以内で正確にカウントするように設計されている。地面に対して垂直であれば、傾いていても逆さまでも歩数のカウントは進む。歩数計の利用を開始するときは、歩幅や体重を設定する必要があり、設定内容に応じて、エネルギー消費量なども計算される。また、「しっかり歩行」というカウントモードも用意されており、体脂肪の燃焼に必要な有酸素運動の目安となる歩数を計算することもできる。

 また、歩数計の記録を特定のメールアドレスに送信する「あんしんメール」という機能も搭載されている。家族や医者、健康コンサルタントなどに送信することにより、安否情報や健康状態を知らせることもできる。さらに、登録した相手から指定した題名のメールが送られてきたとき、自動的に歩数や利用状況(最後に端末を開閉した日時)を返信する機能も用意されている。


歩数計 歩数メール
 毎日の歩数を保存しておくことができる  歩数を特定のメールアドレスに送信するように設定が可能

東海道五十三次

 『F672i向け歩数計サービス東海道五十三次コース』では宿場町を通過すると、「報奨メール」が送られてくる
 さらに、富士通では同社の公式iモードサイト「@Fケータイ応援団」で、『F672i向け歩数計サービス東海道五十三次コース』というコンテンツを提供している。これは歩数メールの累積歩数で東海道五十三次を歩くというもので、宿場町を通過すると、報奨メールを受け取ることができたり、通過した人だけが見られる画像をダウンロードすることができる。歩数計を楽しむためのコンテンツというわけだが、歩数の自動送信メールの宛先はひとつしか設定できないため、@Fケータイ応援団の歩数計サービスを宛先に設定してしまうと、家族や医者などに送信する「あんしんメール」が設定できない。ワンタッチダイヤルのように、複数の宛先を設定できるようにしても良かったのではないだろうか。


使いやすさを求めるシニア層、シルバー層におすすめ

ホルダ

 一部のドコモショップなどで購入者に配布されていた「らくらく歩数計ホルダ」。ベルトなどに固定するクリップ式で、収納時でも背面液晶が見えるデザイン
 最後に、F672iの「買い」について診断してみよう。NTTドコモのらくらくホンの最新モデルとして登場したF672iは、従来モデルで好評を得た機能を継承しながら、さらに使いやすさに磨きを掛けた端末だ。随所に表示される画面ガイダンスや大きくわかりやすいボタン類、大きな文字で見やすい画面など、初心者やデジタルに強くないユーザーにもやさしい端末として仕上げられている。今回は歩数計という新しい機能を盛り込んでいるが、ただ単に歩数がカウントできるだけでなく、あんしんメールによって、家族に状況を知らせるようにしたり、公式サイトの歩数計サービスによって、歩数計を楽しめるようにしている点も評価できる。

 これらのことを総合すると、F672iをおすすめできるのは、やはり、シニア層やシルバー層ということになる。電気通信事業者協会の集計によれば、携帯電話の契約数は7,800万を突破しており、国民2人に1台以上、携帯電話が普及したことになるが、使いやすさの面において、シニア層やシルバー層を強く意識した端末は非常に少なく、業界的にもまだまだ未開拓のユーザー層と言われている。F672iはまさにそのユーザー層にフィットする端末ということになる。

 ただ、本当にF672iがベストな選択かというと、必ずしもそうではない。正直に言ってしまうと、まだ不十分な面が見られるからだ。たとえば、機能メニューは前述のように、表示に改善の余地はあるだろうし、ワンタッチダイヤルなどの登録もユーザーのミスを先回りした作り込みが必要だ。メールについてもワンタッチダイヤルのように、簡単に送信できるしくみを検討した方がいいだろう。また、世代の異なる家族が505iシリーズなどを持っていることを想定すれば、赤外線通信などによって、情報をやり取りできるようにするなどのアレンジもあっていいはずだ。

 つまり、シニアやシルバーと呼ばれるユーザー層だからと言って、機能をシンプルにしたり、ユーザーインターフェイスをやさしくするだけでなく、周囲の人たちとのコミュニケーションをしやすい環境を作ることも大事というわけだ。たとえば、F672iを持つシニア&シルバー層のユーザーが居て、その家族(娘や息子、孫など)が使い方をガイドするシチュエーションは容易に想定できるが、現在のF672iは505iシリーズなどの最新端末に慣れたユーザーには、逆にガイドしにくいのではないだろうか。より多くの人がケータイを楽しめる環境を作るためにも「らくらくホン」シリーズのさらなる進化を期待したい。



URL
  ニュースリリース(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/03/whatnew0902a.html
  製品情報(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/products/keitai/unique/f672i/f672i1.html
  ニュースリリース(富士通)
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2003/09/2-1.html
  製品情報(富士通)
  http://www.fmworld.net/product/phone/f672i/

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(法林岳之)
2003/10/14 13:40

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