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ドコモ初のスライド式ボディを採用した「D253i」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるVAIO 基本編 2004年モデル対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


D253i

 NTTドコモ/三菱電機『D253i』。サイズ:47×96×24mm(折りたたみ時)、96g。アウリーノ(写真)、アズーロ、ロッソをラインアップ
 液晶ディスプレイを前面に露出させる端末が増えているが、二軸回転式ヒンジではないアプローチとして注目されているのがスライド式ボディだ。ドコモ初のスライド式ボディを採用した「D253i」を筆者も購入したので、レポートをお送りしよう。

【この端末のチェックポイント】

  1. ドコモ初のスライド式ボディ
  2. 音声シャッターも使えるカメラ機能
  3. 基本機能もチェック
  4. こんなユーザーにおすすめ


操作性向上を狙った3段階スライドポジション

 三菱電機製端末といえば、フリップ式などで一時代を築いたメーカーとして知られる。折りたたみデザインの端末が主流になって以降もメガピクセルカメラ搭載のD505iで「ヨコ撮りスタイル」を提案するなど、新しい話題を提供し続けている。今回紹介する「D253i」は、NTTドコモの端末ラインアップでは初となるスライド式ボディを採用した端末だ。NTTドコモの主力ラインアップがFOMAへ移行する中、カメラ付きケータイの普及モデル「25Xiシリーズ」で新しい取り組みをしてきたことは注目に値するだろう。

 まず、スライド機構は2枚の板状のボディを上下にずらすような構造で実現しており、二段階にスライドさせて利用する。ボディサイズはコンパクトで、iモード端末の中でもpreminiなどに次いでコンパクトな印象だ。液晶ディスプレイが前面にあることで、キズなどが気になるところだが、高硬度UV加工によるハードコート処理が施されている。筆者も数カ月、持ち歩いたり、机の上に放置するといった乱雑な使い方をしたが、液晶ディスプレイのガラス面にはキズが付いていない。


STRETCH POSITION 側面
 端末を完全に開いた「STRETCH POSITION」。スライドの動きには若干、シブさが残る  ディスプレイ下のイージーセレクタープラスなどの部分を若干、傾斜させ、テンキー部との段差を少なくしている

待受画面設定

 待受画面もクローズ状態とオープン状態で別々に設定が可能
 スライド機構は閉じた状態の「UNITED POSITION」、一段階スライドさせてカメラを起動できる「QUICK CAMERA POSITION」、テンキー部が見えるまでスライドさせて、メールや通話に使える「STRETCH POSITION」の3つのポジションで利用することができる。UNITED POSITIONでは通話のほか、メールやiモードコンテンツの閲覧もでき、文字入力を伴わない操作であれば、大半の機能を利用できる。操作をしないときは、左側面にあるプロテクトキーで誤動作の防止も可能だ。QUICK CAMERA POSITIONはカメラ撮影のためのもので、スライドさせるだけですぐにカメラを起動でき、センターキーを押せば、すぐに撮影が可能だ。STRETCH POSITIONは折りたたみデザインの端末を開いたときと同じ状態に相当し、通話や文字入力などもできる。

 スライド式や回転式のように、2枚の板状のボディを重ね合わせたデザインの端末では、テンキー部と方向キー部が離れているため、メールなどの文字入力で指の移動量が増え、操作性がスポイルされることが多い。D253iでは液晶ディスプレイ下に装備されたイージーセレクタープラスなどの部分を若干、傾斜させることで、そのマイナスを軽減している。ただ、通常の折りたたみデザインの端末に比べ、慣れを必要とする感は否めない。

 D253iではスライド機構を単なる見た目だけでなく、操作に関連付けしている。たとえば、UNITED POSITIONで着信があれば、STRETCH POSITIONにして応答、通話が終了すれば、UNITED POSITIONにして終話といった使い方ができる。メール閲覧時もSTRETCH POSITIONにして返信画面に切り替えられ、スケジュール/メモ確認の画面ではSTRETCH POSITIONで編集画面に切り替えることができる。こうしたボディの機構を利用した応答や返信は過去にも他機種で採用されてきたが、慣れてしまえば、なかなか使いやすい。


クローズ オープン
 クローズ状態の待受画面は画像のみ  オープン状態ではカレンダーを表示

音声シャッターも使えるカメラ機能

カメラ

 カメラは液晶ディスプレイ背面に装備。スライドを閉じると、カメラ部は隠れる構造
 回転式や二軸回転式、スライド式を採用した端末は、液晶ディスプレイを前面に出して操作できるが、多くの場合、カメラの利用を考慮して、こうしたボディデザインが採用されることが多い。

 しかし、スライド式を採用したD253iは、液晶ディスプレイをファインダーとして利用できるものの、カメラが液晶ディスプレイの真後ろに装備され、ボタン側のボディがレンズカバーの役割を果たしているため、ボディをスライドさせなければ、カメラを利用できない。同じスライド式ボディを採用するD901iやW22Hとは、少し趣が異なる点だ。

 カメラはUNITED POSITIONからQUICK CAMERA POSITIONに切り替えて起動するか、STRETCH POSITIONでメニュー画面、もしくは右側面の[サイドボタンB]の長押しで起動する。STRETCH POSITIONでの起動は他の端末と大きく変わらないが、UNITED POSITIONからQUICK CAMERA POSITIONへの切り替えはスライドしすぎてしまうことが多く、今ひとつ使いやすくない。

 カメラそのものは32万画素CCDを採用しているため、最近のメガピクセルカメラを搭載する端末と比べると、明らかに見劣りがするが、D506iでも採用された音声シャッターなど、意外に(?)機能が充実している。


サイズ選択 撮影モード
 VGAサイズで撮影した画像をプレビューしているとき、メールボタンを押せば、すぐにiショットのサイズを選択し、すぐに送信画面に移行できる  カメラ起動時、イージーセレクタープラスの上下右を押すと、撮影モードなどの設定ができる。覚えれば、サブメニューからの設定より簡単だ

画像編集 サンプル
 画像編集機能は意外に充実している。VGAサイズでもフレームの割付などができる  VGAサイズで撮影したサンプル画像。JPEG回転させている。リンク先は無加工。(モデル:篠崎ゆきスーパーウイング所属)

サムネイル トリミング
 撮影した画像はサムネイル表示が可能。本体メモリーのみのため、読み出しは比較的速い  画像編集のトリミング枠の大きさは固定だが、iショット(L)やQVGAなどでもトリミングが可能

 まず、カメラ起動時にイージーセレクタープラスの上下右で撮影モードや明るさ、コントラストなどの設定項目を選ぶことができ、[#]ボタンで撮影サイズの切り替え、[0]ボタンでムービー撮影に切り替え、[*]ボタンでカメラアルバムの呼び出し、[開始]ボタンでコンパクトライト点灯、[メール]ボタンでセルフタイマーなど、ショートカットも充実している。iショットについてもカメラアルバムから画像を呼び出し、メールボタンを押すだけで送信の操作を始めることができる。撮影した画像がVGAサイズの場合、iショット(S)か、iショット(L)かを選ぶことができ、自動的に縮小して送信することが可能だ。画像編集についても回転やトリミングなどがサポートされているため、常にVGAサイズで撮影しておき、必要に応じて、画像編集などを行なうという使い方ができる。

 音声シャッターはD506iでもサポートされていた機能で、ユーザーがあらかじめ登録した「合い言葉」でシャッターを切る機能だ。記念撮影などには便利な機能だが、合い言葉の登録は静かなところで録音しなければならないので、あらかじめ自宅などで登録しておいた方がいいだろう。また、音声シャッターでの撮影は端末をテーブルなど横向きに置くことになるが、背面から見て、カメラは左側面に寄っているので、右側面よりも左側面を下にした方がテーブルなどが被りにくいことを覚えておきたい。


音声シャッター設定 合い言葉
 音声シャッターは本人性重視、確実性重視の設定が可能  合い言葉の登録はできるだけ静かなところで行なった方がいいようだ

基本機能もチェック

メニュー

 メニュー画面は9分割アイコン表示を採用。25Xiシリーズだが、アイコンのカスタマイズもできる
 コンパクトなスライド式ボディを採用するD253iだが、基本的なユーザーインターフェイスは従来のDシリーズのものを継承している。最新のD901iでは富士通製端末と同じSymbian OSを採用したため、従来のDシリーズから受け継がれてきたのユーザーインターフェイスは、このD253iやD506i、D900iで最後になるかもしれない。

 メニュー画面は9分割のアイコン表示を採用し、アイコンのカスタマイズにも対応しているが、右上のソフトキーを押すことで文字とアイコンを組み合わせた「シンプルメニュー」を選ぶこともできる。最近、こうしたシンプルメニューを用意する端末が増えているが、メニューを簡単に見せるため、文字だけで構成されることが多い。しかし、アイコンは本来、直感的にその機能を理解するためのものであることを考えると、D253iのようなアプローチの方が正しいのではないだろうか。ちなみに、D253iではシンプルメニューに切り替えると、電話帳やメールも文字が大きくなり、見やすくなる。欲を言えば、待受画面の最下段に表示されている「メニュー」「電話帳」「ジャンプ」などの表示も切り替えて欲しかったところだ。


シンプルメニュー 文字サイズ
 シンプルメニューはテキストとアイコンを組み合わせた表示。これで画面が大きければ、もっと見やすいのだが……  シンプルメニューに切り替えると、メール画面も文字サイズが大きくなる

フォルダ

 メールはフォルダによる管理に対応。自動振り分け、条件設定後の再振り分けにも対応
 メールはフォルダによる管理に対応し、メールアドレスや題名、グループ指定、電話帳登録なしなどによる自動振り分けが可能だ。振り分け条件設定後に再振り分けをすることもできる。ちなみに、振り分け条件は送受信メールともに設定することが可能だ。メール作成時の宛先参照は、メール着信履歴やメールリダイヤル(メールの送信履歴)も利用できる。メール返信時に受信メールを見ながら、返信メールを作成できる「見ながら返信」も利用できる。日本語入力もATOK AI推測変換を搭載し、絵文字や記号を連続入力できるなど、十分なレベルに達している。

 実用上でいくつか気になる点もある。たとえば、前述のスライド機構の動きが今ひとつシブい。D901iやW22Hのように、内部にバネが入っていないためか、スムーズにスライドしないのだ。しかもスライドの動きをQUICK CAMERA POSITIONで止めにくいため、結局、UNITED POSITIONとSTRETCH POSITIONのみで利用したくなってしまう。

 また、液晶ディスプレイが176×240ドット表示のため、QVGAサイズのコンテンツなどが利用できない。やはり、これだけQVGAサイズの液晶ディスプレイを搭載した端末が増えていることを考慮すれば、エントリーモデルでもQVGAサイズの液晶ディスプレイ搭載を検討して欲しいところだ。さらに、従来のD25Xiシリーズで採用されていたメモリーカードがD253iには搭載されていないのも残念な点だ。赤外線通信ポートが装備されているのはまだ救いがあるが、従来モデルで搭載されていた機能を省いてしまうのは、同一シリーズを継続利用するユーザーが多いiモード端末の事情を考慮すると、判断に苦しむところだ。


ちょっと変わった端末を望む人に

 さて、最後にD253iの「買い」のポイントについて考えてみよう。折りたたみデザイン全盛の中、回転式や二軸回転式など、新しい機構を採用する端末が少しずつ増えているが、D253iはNTTドコモ初のスライド式ボディを採用した端末だ。スライド機構のメカ的な面白さばかりが注目されているが、普及モデルとしては機能的にも充実している。特に、カメラ周りの機能は初期のiショット端末に比べると、満足のいくレベルに仕上げられている。惜しむらくはカメラが32万画素であること、スライド機構の動きが今ひとつであることだろう。

 これらのことを総合すると、D253iを「買い」と言えるのは、他人と違ったボディの端末が欲しいユーザー、カメラの性能は求めないが、コンパクトな端末が欲しいユーザーということになる。折りたたみデザイン全盛から新しい機構を採用する端末の時代に移行し始めたところだが、スライド式はあまり種類がなく、個性的であることは確かだ。もちろん、使い勝手の面では慣れが必要になるが、新しいケータイの形を体験してみるというのもアリだろう。ただ、コンパクトなボディの割に、液晶ディスプレイが前面に出ているため、どうしてもバッテリー消費が早くなってしまうなどの不満も残る。ライトに使うユーザーなら、大丈夫かもしれないが、折りたたみデザインではないことによって生まれる制約も一応、理解しておきたい。



URL
  ニュースリリース(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/04/whatnew0707.html
  製品情報(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/products/keitai/253i/d253i/index.html
  製品情報(三菱電機)
  http://www.mitsubishielectric.co.jp/mobile/mova/d253i/

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(法林岳之)
2005/02/16 11:46

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