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真のハイエンドFOMAを実現した「901iSシリーズ」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるVAIO 基本編 2004年モデル対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


 昨年11月に発表されたNTTドコモのFOMA 901iシリーズ。その後継シリーズとなるFOMA 901iSシリーズの開発が発表された。全機種にiモード FeliCaを搭載し、PDF対応ビューアやテレビ電話切り替え機能などの新しい機能も盛り込まれた期待のラインナップだ。発表内容の詳細については発表会レポートの記事を読んでいただくとして、記者発表で触れた実機の印象などを交えながら、その内容を見てみよう。


FOMA 901iSシリーズの新機能

901iSシリーズ

 昨年、端末ラインアップの主軸をムーバからFOMAへ移行したドコモだが、地域によって差があるものの、順調に契約数を伸ばしており、1,200万契約を超えるところまで普及している。今回発表された901iSシリーズは、昨年11月に発表された901iシリーズのセカンドモデルに位置付けられているが、901iSシリーズの共通仕様でもかなりの違いがあるという印象だ。

 サービス及び機能面から見た共通仕様の違いは、大きく分けて、4つある。それぞれの機能について見てみよう。

【901iSシリーズのチェックポイント】

  1. iモード FeliCa標準搭載
  2. PDF対応ビューア
  3. テレビ電話切替機能
  4. FOMAプラスエリア対応


ICカードロックも標準搭載のiモード FeliCa

ICカードロック

 901iSシリーズではICカードロック機能が標準でサポートされた
 まず、iモード FeliCaについては、昨年夏にムーバ3機種とFOMAで1機種、901iシリーズでは5機種中3機種に搭載してきた。今回は5機種ともiモード FeliCaを標準で搭載しており、都合、12機種のおサイフケータイがラインナップされることになった。

 シリーズ全機種に搭載してきたということは、iモード FeliCaに採用されているモバイルFeliCaのチップ供給も安定してきたという背景もあるのだろうが、来年にもモバイルSuicaのサービスが開始されるため、おそらくその時期まで販売が継続されると予想される901iSシリーズには必須と考えたようだ。

 もちろん、auやボーダフォンが年内にもFeliCa搭載端末を投入する計画もあることも関係しているだろう。この調子で搭載端末が増えれば、1年後には各社とも高機能モデルで標準的にFeliCaが搭載され、普及モデルの一部にも搭載されるようになるかもしれない。

 iモード FeliCaが標準搭載となった901iSシリーズだが、機能的に従来の901iシリーズなどと同等かというと、必ずしもそうではない。それは以前から筆者が指摘していたICカードロック機能が標準でサポートされたからだ。


モバイルSuica

 来年にはモバイルSuicaもスタートする
 従来のiモード FeliCa搭載端末のうち、F900iCとF901iCはICカードロック機能が搭載されていたが、その他の端末はICカードロック機能が搭載されておらず、なかなか安心して使えないという声が多かった。今回の901iCシリーズは全機種がICカードロック機能を搭載しているため、通常はICカードをロックした状態で持ち歩き、利用するときのみ、ICカードロックを解除するという使い方ができる。

 ただ、ICカードロックは機種によって、若干の差がある。いずれの機種もICカードロックができるが、SH901iSとN901iSは機能メニュー内からロックと解除の操作を行なうのに対し、他の3機種はロックや解除の操作がワンタッチでできるなど、使いやすくしている。F901iSとD901iSは方向キーの長押しでロックが掛けられ、F901iSは従来同様、指紋センサーによって解除ができる。P901iSもメニューボタンの長押しで操作が可能だ。

 最終的に、ユーザーがどのように使うのかにもよるが、おサイフケータイを頻繁に使うユーザーはICカードロック機能周りの操作性もチェックした方がいいだろう。


「Web to」や「Phone to」をサポートしたPDF対応ビューア

PDF対応ビューア

PDF対応ビューア
 PDF対応ビューアはその名の通り、PDFファイルを閲覧するための機能だ。すでに、社長会見などでも搭載が明らかになっていた。PDFはアドビが開発した文書フォーマットで、印刷された状態に近いイメージの文書をプラットフォームを依存せずに表示できるという特徴を持つ。パソコン環境ではマニュアルや電子書籍などにも採用されている。

 ケータイの環境におけるPDFの閲覧は、昨年発売されたSH900iや現行機種のSH901iCに搭載されている「ドキュメントビューア」、先日発表されたW31CAの「PCドキュメントビューアー」などが実現している。いずれも米Picsel Technologies社の「Picsel File Viewer」をベースにしたものだ。また、V603SHや902SHでは「ぎゃらも!ビュー」というサービスを利用することにより、PDFファイルの閲覧を可能にしている。こちらは加BitFlash社とシャープが共同で開発した「電子ドキュメント表示システム」を採用している。

 901iSシリーズのPDF対応ビューアも基本的には同じようにPDFファイルを閲覧できるが、他の端末の閲覧機能と異なるのは、PDFファイルのビューアであるという点だ。前述の各端末で利用できる閲覧機能は、PDFだけでなく、WordやExcelのファイルなども閲覧できるのだが、901iSシリーズのPDF対応ビューアは「Adobe Reader LE」を搭載することで実現されているため、PDFの閲覧に特化している。確定的なことは言えないが、動きを見た印象ではiモードブラウザのプラグインのような形で実装されているようだ。

 また、PDF対応ビューアは「Web to」や「Phone to」「Mail to」に対応している点も異なる。PDF対応ビューアでは、PDF文書内にあるURLや電話番号、メールアドレスを選択すると、iモードブラウザを起動してサイトに接続したり、電話をかける、メールを作成するといった連携ができる。たとえば、電子カタログをユーザー向けに配布し、そこに記載されているURLにアクセスして、商品を注文するといったソリューションも展開できるわけだ。

 901iSシリーズのPDF対応ビューア搭載に合わせ、各コンテンツプロバイダからは地図や新聞、雑誌、グラビアなどのタイトルが数多く発表されており、今後、PDFを利用したサービスが一気に増えてくることになりそうだ。ちなみに、901iSシリーズではiモードサイトからダウンロードしたPDFファイルを端末に取り込める仕様になっている。PDFファイルを添付したメールをパソコンから送信した場合については、リモートメールなどのサービスを利用する必要がある。


テレビ電話切替機能

テレビ電話切替機能

 通常の音声通話で話していて、テレビ電話がしたくなれば、回線を切ることなく、切り替えられる
 FOMAサービス開始当初から提供されているテレビ電話だが、なかなかドコモが予想していたほど、普及が進んでない印象だ。900iシリーズからは標準機能となっているため、確実に対応端末の台数は増えているはずだが、まだ街中でテレビ電話で会話をしている人はほとんど見かけない。そんな状況を打破するべく、ドコモは900iシリーズでキャラ電を搭載したり、500円分の無料通話キャンペーンを展開するなど、積極的にテレビ電話をプロモーションしている。

 今回の901iSシリーズでは新たに、テレビ電話切替機能が搭載されている。簡単に言ってしまえば、通常の音声通話からテレビ電話による通話に切り替えられる機能だ。つまり、通常の音声通話で話していて、テレビ電話がしたくなれば、回線を切ることなく、切り替えられるわけだ。お互いの状態に合わせた使い方ができるため、テレビ電話の利用促進にもつながりそうだが、残念ながら、901iSシリーズ同士の通話に限られており、従来の900iシリーズとの通話では利用できないようだ。

 カメラを通じて、お互いの顔や周囲の状況を見せながら通話ができるテレビ電話は、いかにも3Gらしいサービスであり、期待するユーザーも多い。しかし、家庭やオフィスに設置されている電話機は音声通話のみの対応であり、なかなか通話相手が増えず、利用が拡大しにくい状況はあまり変わっていない。FOMAのテレビ電話機能が充実することはユーザーとしてもうれしいが、固定網のサービスやブロードバンド環境で相互接続できるテレビ電話環境を整えていかなければ、テレビ電話の需要はなかなか拡大していかないのではないだろうか。


800MHz帯対応=FOMAプラスエリア対応

 さて、今回の901iSシリーズで明らかにされた新機能及び新サービスの内、実は隠れたトピックとなっているのがFOMAプラスエリア対応だ。FOMAプラスエリア対応という言葉だけでは何を意味するのかがわかりにくいが、記事でも触れているように、901iSシリーズは従来から利用している2GHz帯に加え、800MHz帯でもFOMAを利用することが可能だ。

 本誌読者のみなさんもご存知の通り、FOMAはサービス開始当初から2GHz帯でエリアを展開してきている。これに対し、auは従来のcdmaOneと互換性のあるCDMA2000 1x方式を採用したため、同じ800MHz帯でサービスを展開している。最新のCDMA 1X WINでも同様だ。周波数は基本的に高いほど、直進性が強くなる傾向があり、2GHz帯は800MHz帯に比べ、ビルの谷間や山陰などで不感エリアが生じやすい。そのため、2GHz帯のみでエリアを展開してきたFOMAは、高層ビルの多い地域や山間部で通じにくいと言われてきた。

 今回の901iSシリーズはFOMAプラスエリア対応、つまり、800MHz帯にも対応しているため、こうしたFOMAの弱点をカバーすることが期待できるわけだ。ドコモによれば、都市圏はすでに2GHz帯でカバーできているため、800MHz帯の基地局は山間部や郊外などを中心に基地局を設置していくという。ユーザーにしてみれば、郊外などに出かけたときにも901iSシリーズなら、通話や通信ができる可能性が高いわけであり、FOMAへの移行を踏みとどまっていたユーザーも十分に検討する価値があるだろう。ただ、901iSシリーズが800MHz帯に対応したとは言え、どれだけの周波数帯域(幅)が割り当てられているかは明らかにされていないので、必要以上に過度な期待は持たないことだ。

 FOMAプラスエリア対応となったことで、901iSシリーズは2GHz帯と800MHz帯のデュアルバンド対応端末となったわけだが、それぞれの周波数帯域の間でのハンドオーバー(基地局間の移動)は音声通話、パケット通信、テレビ電話のいずれも対応しており、問題なく利用できるという。


 ところで、901iSシリーズの800MHz帯対応はドコモにしてみると、「ようやく実現できた」というのが本音のようだ。というのもFOMAの800MHz帯対応はもっと早い時期に実現できる見込みだったからだ。筆者が独自に取材したところによれば、FOMAの800MHz帯対応は本来、901iシリーズで始まり、700iシリーズ、901iSシリーズと順次、対応する予定だったそうだ。しかし、昨年夏、800MHz帯の3G向け再割り当てに対し、ソフトバンクが異議を唱えたため、急遽、901iシリーズの800MHz帯対応は見送られたという。そのため、901iシリーズは一見、目玉機能がないような印象を与えてしまったわけだ。

 その背景は、901iシリーズの端末デザインからもうかがえる。FOMA端末は一部を除き、従来から本体にアンテナを内蔵したデザインを採用しているが、なぜかF901iCとSH901iCは突然、外部にアンテナが飛び出したデザインを採用している。通常、端末を設計する場合、アンテナなどのRF部分は早い段階で設計するため、発売の数カ月前に設計を変更することは難しいとされている。つまり、F901iCとSH901iCに装備された突起型のアンテナは、800MHz帯での感度を考慮して設計されていたが、901iシリーズの800MHz帯対応が見送られたため、その名残として残ってしまったことが推察できる。関係者によれば、901iシリーズの800MHz帯対応機能は、内部的にも完全に削除されており、バージョンアップなどによるFOMAプラスエリア対応はないそうだ。

 また、901iシリーズが800MHz帯対応を見送った余波は、ドコモの各地域会社にも影響を与えたようだ。どの地域なのかは明確ではないが、昨年、901iシリーズが800MHz帯対応で発表されることを見込み、前倒しで基地局の整備に着手した地域があるそうだ。この情報が本当なら、901iSシリーズ発売後、800MHz帯で利用できるエリアは意外に広いのかもしれない。もっとも端末の画面を見ている限り、800MHz帯と2GHz帯のどちらで通信しているのかはわからないのだが……。


端末は6月はじめから順次発売

 さて、901iSシリーズの各端末について、発表会で実機を触れた印象を紹介しておこう。ただし、いずれも開発中のモデルを短時間に試用したものなので、最終的に発売される端末と異なる可能性があることをお断りしておく。


P901iS

●P901iS

 P901iSは、P900i、P901iに引き続き、カスタムジャケットを採用しているが、サブディスプレイ横に搭載されたイルミネーション機能を活かすため、カスタムジャケットの形状はまったく新しいものになっている。ちなみに、従来のP901i向けの追加カスタムジャケットは、サードパーティ製が充実していることもあり、NTTドコモの商品としては提供されない見込みだ。

 機能的に注目されるのは、SDオーディオプレーヤーの搭載だろう。付属のSD-Jukebox Ver.5.0 LEを利用し、パソコンで音楽CDから取り込んだ音楽データをminiSDカードに保存して再生することができる。ちなみに、SD-Audioでは著作権保護機能付きカードリーダーが必要になるが、P901iSのminiSDカードスロットはマスストレージクラスに対応しており、端末とパソコンをFOMAケーブルで接続すれば、著作権保護機能対応の外付けドライブとして認識される。ただ、miniSDカードは256MBまでの対応となっている。

 端末の操作感は基本的にP901iと同等で、今ひとつレスポンスが良くない。ICカードロックについては一定時間が経過すれば、自動的にロックされるタイマーロック、メニューボタンの長押しでロックできるワンタッチロックが採用されており、フェイスリーダーによる認証も利用可能だ。


D901iS

●D901iS

 D901iSはD901iに引き続き、スライド式ボディを採用しているが、本体側面に装備されたボタンを押すと、自動的に端末が開くワンプッシュオープン機構を搭載している。液晶ディスプレイ側に装備されている方向キーの部分は、D253iのように若干、傾斜が付けられており、日本語入力時の変換操作も改善されている。

 カメラは有効画素数200万画素、記録画素数400万画素のスーパーCCDハニカムによるAF機能付きを搭載しており、D506iのように、背面のレンズカバーを開くだけで起動できるようにしている。ただ、レンズカバーを開く方向とスライドの方向が逆のため、レンズカバーを開こうとすると、スライド式ボディが動きそうになる(通常はロックされている)のが気になった。

 機能面では情報表示行が意外に面白そうだ。240×345ドット表示が可能な液晶ディスプレイの内、最上段の240×25ドット分を情報行として使い、新着メールやスケジュール、メモ帳の内容などが表示できる。しかもディスプレイのバックライト消灯時も情報行は表示することが可能となっている。これはD901iSの液晶ディスプレイが透過型液晶(メイン表示部の240×320ドット)と半透過型液晶(情報表示行部の240×25ドット)を組み合わせた構造になっているためだ。液晶ディスプレイを前面に露出したデザインの端末ならではの機能と言えるだろう。


SH901iS

●SH901iS

 SH900iからSH901iCでガラリとデザインを変更したSHシリーズだが、SH901iSでは両モデルを融合させたようなデザインにまとめている。ボディは二軸回転式で、SH901iCとわずか約3mmの違いだが、少し幅広になった印象を受ける。液晶ディスプレイの背面側はアルミパネルで高級感のある質感に仕上げているが、実はボディカラーごとに光沢があったり、ヘアライン加工が施されているなど、微妙に仕上げが異なる。外見ではSH901iCに装備されていたフロントコマンダーがなくなり、液晶ディスプレイ反転時は側面に装備されたAVコントローラを操作することになる。一見、SH506iCに似ているが、ボタンが片方の側面にまとめられ、それぞれにアイコンが印刷されたため、操作感はそれほど悪くない。

 カメラは316万画素CCDを採用し、従来同様、AF機構も搭載されているが、SH910iSではユーザーが選択した特定のエリアにピントを合わせるスポットAF撮影を可能にしている。フォーカスさせるエリアをテンキーで選べるため、操作はわかりやすく、フォーカスの速度も比較的、速い印象だ。カメラ周りでもうひとつ注目されるのは、動画撮影時の手ぶれ補正だ。デジタルビデオカメラやデジタルカメラでは搭載する製品が増えているが、ケータイでは初搭載となる。実機を手に持ち、少し揺らしながら撮影してみたが、確かに手ぶれが少ないように撮影できた。ただ、意識しての撮影なので、実際の利用シーンでどれだけ活躍させられるかはまだ未知数だ。

 ちなみに、SHシリーズは従来からPDFファイルなどを閲覧できるドキュメントビューアを搭載している。SH901iSは901iSシリーズの共通仕様であるPDF対応ビューアが搭載されているが、ドキュメントビューアも継承されている。


F901iS

●F901iS

 今回発表された901iSシリーズのうち、もっとも従来モデルとの差がわかりにくいのがF901iSだ。外見のデザインはボディカラーが単色になり、サブディスプレイ周りのデザイン処理が変わったため、少し印象が異なるが、端末を開いた状態やボタン類、サイドキーなども含め、ほぼF901iCを継承した印象だ。ちなみに、前述のF901iCに装備された突起型のアンテナは、F901iSにも受け継がれている。

 機能的には従来モデルからサポートされている音楽再生機能やICカードロックなどもそのまま継承されているが、新たに、端末を閉じたときに自動的にロックが掛かる開閉ロックが搭載されている。ロックの解除はおなじみの指紋センサーによる認証、パスワードを利用する。ロックを掛けた状態でもサイドキーを操作することで、センター問い合わせやマナーモードの起動と解除をできるようにしている。


N901iS

●N901iS

 N900i、N900iS、N901iCとアークラインを強調したデザインの端末を展開してきたNシリーズだが、今回のN901iSではガラッとデザインを変えている。背面ディスプレイ側のデザインはN505iSをアンテナレスにしたような印象、あるいはN2102Vに近いイメージに仕上げられている。N900iからの3機種に比べ、端末そのものは薄く持ちやすくなっている。

 機能的にはACCESSのNetFrontによるフルブラウザが搭載されているのが注目ポイントだだろう。ケータイ用フルブラウザはW21CAなどに搭載されているOpera、iアプリとして提供されているjigブラウザなどがあるが、N901iSのフルブラウザはパソコン用で増えているタブブラウザのように利用でき、複数のページを切り替えながらブラウズすることが可能だ。表示モードも等倍表示と縮小表示が用意されるほか、クッキーやウィンドウオープンガード(ポップアップウィンドウ)などの設定もできる。実際にブラウズした感想はパソコンほどではないものの、他のフルブラウザ同様、実用になる印象だ。

 ただ、フルブラウザによる通信は、パケ・ホーダイの対象ではないので、利用には十分注意する必要がある。iアプリで実現されているjigブラウザなどがパケ・ホーダイの対象でありながら、純正とも言えるN901iSのフルブラウザがパケ・ホーダイの範囲内でないというのは、ちょっとアンバランスな印象を受ける。


iモード FeliCaを使うための901iSシリーズ

 かつてムーバがそうであったように、半年に一度、大きなモデルチェンジを行なうことになったFOMA。今回の901iSシリーズは6月以降に順次、販売が開始される見込みだ。いろいろと機能的に向上した要素はあるが、やはり、全機種がiモード FeliCaに対応し、ICカードロックなどのセキュリティ機能にも配慮したのは、iモード FeliCaを利用するユーザーにとって、大きな安心になるだろう。もちろん、ユーザー自身が「おサイフ」を持ち歩いているという意識改革が必要になる点は同じだが、少なくとも紛失時のリスクは901iCシリーズ以前よりも確実に減ることになる。

 901iSシリーズのもうひとつのアドバンテージは、FOMAプラスエリア対応だ。特に、郊外や地方に住むユーザー、そこに出向くユーザーにとっては、エリアの拡大が期待できるため、FOMAへの移行がしやすくなるはずだ。もちろん、実際にどれくらい通話ができるのかは、901iシリーズ以前の端末と実地で比べてみなければわからないが、地域会社が前倒しでエリアを整備していたという情報が正しければ、十分、期待できるだろう。

 ただ、今後、901iSシリーズが市場に浸透していくかどうかは、正直なところ、未知数だ。以前、本連載でも触れたことがあるように、現在、NTTドコモのFOMA端末は、1つ前、あるいは2つ前のモデルが並行して販売されている。しかも従来モデルの方が確実に安価なため、旧機種との機能差を把握できないユーザーは「たいして変わらないだろう」とばかりに旧機種を買ってしまうからだ。また、機能差を知るユーザーも人によっては「半年ほど経ってから買えばいいや」という判断をするかもしれない。

 時間が経てば、旧機種の価格が安くなるのは当然の市場原理だが、ドコモの場合、販売される旧機種の種類が多く、しかも販売期間が長い。これがドコモとしての方針なら、それでもかまわないが、意図しないのであれば、そろそろ何らかの対策を打たなないと、事業としてもマイナスではないだろうか。最新の高機能端末を先んじて購入するユーザー(おそらくヘビーユーザー)が高い対価を支払い、機能よりも価格を重視するユーザー(もしかするとライトユーザー)が半年、あるいは1年後に安価に端末を購入できるという構図は、本当にユーザーにとって、やさしいものなのかどうかをもう一度、よく考える時期に来ているのかもしれない。



URL
  ニュースリリース
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/05/whatnew0517.html
  製品情報
  http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/products/foma/901is/

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(法林岳之)
2005/05/26 15:02

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