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怒濤の23機種でラインアップを一新するドコモ
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


905i/705iシリーズ23機種を一気に発表

 11月1日、NTTドコモは905i/705iシリーズの23機種を発表した。例年の流れからすれば、冬のボーナス商戦へ新モデルを投入する時期だが、今回は春商戦へ向けたモデルも含め、一気に公開するという形になった。これだけの機種数を一度に発表するのは、過去に例がなく、ケータイ業界としても史上最大のインパクトを与えることになる。発表内容については、すでに本誌の詳細なレポート記事が掲載されているが、ここでは各モデルの位置付けなども含め、発表会での印象などをお伝えしよう。

 まず、23機種という過去に例のない圧倒的な発表内容だが、NTTドコモの過去1年間の発表を振り返ってみると、昨年10月のMNP商戦開始に903iシリーズを中心に14機種、2007年1月に703iシリーズを中心に10機種(一部に903iシリーズを含む)、2007年4月に904iシリーズを5機種、2007年7月に704iシリーズ8機種を発表してきている。903i/703iシリーズはかなり内容が充実していたのに対し、904i/704iシリーズは従来モデルとの機能差があまり大きくなく、特に904iシリーズは地味な印象しか残らなかったが、これは704iシリーズと904iシリーズの発表会レポートでも触れたように、いわゆる型番のルール付けの見直しをしたことが関係する。NTTドコモでは従来から90Xiシリーズとセカンドモデルを意味する90XiSシリーズを交互に発表しており、本来なら、904i/704iシリーズは903iS/703iSシリーズとして登場するはずだったが、「セカンドモデル」という展開をやめたため、型番をひとつ進める形となったわけだ。ただ、その背景には今回の23機種という新ラインアップ展開を見据えた戦略があったのかもしれない。

 今回発表された23機種の内訳を見てみると、シリーズ別では905iシリーズが10機種、705iシリーズが13機種となっている。905iシリーズがスペック的にも最先端を狙ったハイエンドモデルであるのに対し、705iシリーズは機種ごとにハッキリとした個性を持たせた豊富なバリエーションを取り揃え、普及モデル的な位置付けになっている。今さら説明するまでもないが、NTTドコモの端末ラインアップは主に90Xiシリーズや70Xiシリーズで構成されており、それ以外はらくらくホンやキッズケータイなどの企画モデル、SIMPUREシリーズが数モデルずつ存在する程度だ。つまり、今回発表された23機種というモデル数は、NTTドコモの端末ラインアップをほぼ完全に一新したことと同じ程度の意味を持つ。


「ALL IN 世界ケータイ」の905iシリーズ


 今回発表された905iシリーズは、FOMA端末を開発してきた主要6社の主力モデル(無印905iシリーズ)6機種とその派生モデル4機種から構成されており、3G/GSM方式による国際ローミング対応(一部は3G方式のみ対応)、HSDPA方式によるFOMAハイスピード対応、海外で便利な翻訳アプリの搭載などを共通仕様としている。

 おサイフケータイなど、その他の共通仕様については、基本的に従来モデルを継承しているが、GPSと1.7GHz対応は10機種中8機種のみの対応となるなど、若干、モデル間に差はある。ワンセグについては派生モデルの2機種を除く、8機種に搭載しており、一気にラインアップを充実させた格好だ。

 ボディの形状としては、スタンダードな折りたたみタイプが1機種のみであるのに対し、ディスプレイを反転できる二軸回転式が3機種、スライド式が3機種、サイクロイド及びスイング、Wオープンが各1機種ずつという構成になっている。オーソドックスなものから斬新なものまで、きちんとバリエーションを揃えており、P905iのWオープンのように新しい個性を打ち出したモデルもラインアップされている。703i/704iシリーズで好評を得た超薄型の「μモデル」もはじめて90Xiシリーズに登場し、12.9mmというスリムボディを実現している。


「Smart,Slim,Surprise」個性が光るラインアップの705iシリーズ


 705iシリーズは2006年1月に発表された702iシリーズのデザイン路線、2007年1月に発表された703iシリーズの個性派路線を継承し、各モデルともデザインや質感、機能などにこだわった個性的なモデルがラインアップされている。70Xiシリーズは従来から機種ごとに搭載する機能や対応するサービスが異なるため、共通仕様が少ないが、今回の705iシリーズも3G方式による国際ローミング、FOMAプラスエリア対応くらいしか共通仕様がない。もっとも海外メーカーモデルであるNM705iを除けば、iチャネルや着うたフル、デコメ絵文字など、最近のサービスにはほとんどの機種が対応している。

 その一方で、機種ごとの搭載する機能や対応サービスによる差別化は705iシリーズでもさらに増え、905iシリーズでは未サポートの7.2MbpsのHSDPA方式に対応するL705iXのようなモデルもラインアップされている。ちなみに、HSDPA方式によるFOMAハイスピードは、13機種中7機種が対応する。その一方で905iシリーズではほぼ標準となりつつあるGPS機能が705iシリーズではまったくサポートされておらず、1.7GHz対応も13機種中4機種しか対応していない。

 機能やデザインは個性派揃いの705iシリーズだが、ボディ形状は適度にバリエーションを揃えているという印象だ。通常の折りたたみタイプが13機種中9機種、ストレートタイプが2機種、スライド式が2機種といった構成となっている。意外なことに、二軸回転式やWオープンのようなユニークな形状は存在しない。ハードウェア的には703i/704iシリーズで好評を得た超薄型の「μモデル」がさらに拡大し、今回は705iシリーズだけで4機種のμモデルをラインアップしており、9.8mmという世界最薄を実現している。個性という点では、「amadana」とのブランドコラボレーションに取り組んだN705iなども注目される。


緊急速報「エリアメール」や「Music&Videoチャネル」を提供

エリアメール

Music&Videoチャネル
 サービスについてもいくつか新しいものが発表されている。まず、「CEATEC JAPAN 2007」でもデモンストレーションが行なわれていた緊急速報「エリアメール」が正式に提供される。エリアメール気象庁が配信する緊急地震速報、災害情報や避難情報などを対応端末向けに配信するというもので、緊急性のある情報を専用の着信音などで知らせ、画面に情報をポップアップ表示する。ただ、情報は全国に一斉に配信されるわけではなく、対象となる特定のエリアにいるユーザーに対してだけ、配信されるしくみとなっている。事前申し込みは不要だが、端末側で受信設定を行なう必要がある。

 対象はFOMAハイスピード端末に限られるが、従来から提供されていたコンテンツの自動配信サービス「ミュージックチャネル」が動画番組に対応し、「Music&Videoチャネル」として提供されることになった。FOMAハイスピードの高速通信を活かすサービスだが、従来のミュージックチャネルが今ひとつ奮わなかっただけに、今回のリニューアルでユーザーの反応がどのように変わるのかが気になるところだ。

 この他にも905iシリーズ全機種にインストールされる「地図アプリ」、「きせかえツール」のバージョンアップなどが新たなサービスとして提供される。表示する機能を絞り込んだ「シンプルメニュー」、文字サイズの大きな「拡大メニュー」、iモードやメール、電話帳の文字などを大きく表示できる「拡大もじ」など、端末のユーザービリティを向上させる機能も搭載される。ただ、いずれのサービスも機能も905iシリーズでは標準でサポートされていながら、705iシリーズではサポートされていないといったものが多いので、705iシリーズを検討するユーザーは十分、事前にチェックをおすすめしたい。

 発表会の会場ではタッチ&トライコーナーが用意され、短時間ながら、いくつかの実機を試用することができた。ここではファーストインプレッションをお伝えするが、今回は発表された機種数が今までにないほど多いため、十分な試用ができていない。705iシリーズについては、基本的に全機種ともモックアップでの展示だったため、実際の操作感はほぼわからない状態となっていることをお断りしておきたい。また、同時に発表会で試用した端末は開発段階のものであり、市場で販売される端末では仕様が変更されていることもあるので、その点もご理解いただいたうえで、読んでいただきたい。





D905i(三菱電機製)

 従来に引き続き、スライド式ボディを採用しているが、今回はボディカラーによって、ディスプレイ部横の方向キー部分の処理を2種類、用意している。ディスプレイ部側のボディに限られるものの、2種類の金型を用意しなければならないわけで、異例の取り組みと言える。ダイヤルボタンもわずかに波形の加工が施され、押しやすさが考えられている。

 注目は三菱電機のHDD/DVDレコーダー「楽レコ」の技術を活かし、ワンセグで録画した番組のシーンカットやハイライト再生などだ。ハイライト再生は録画した番組の音量を10段階でチェックし、盛り上がるシーンだけを抜き出して再生することができる。たとえば、サッカーのゴールシーンや音楽番組の歌唱及び演奏シーンを中心に視聴するといった使い方ができる。デモンストレーションでは実際に録画した番組のハイライト再生をしてみたが、なかなかうまい具合いにダイジェストが見られる印象だ。いわゆる「待ち」の多い番組を録画して、視聴するときには便利そうだ。

 もうひとつ面白かったのは、カメラ機能を利用した翻訳リーダーだ。英語や中国語、韓国語の文字をカメラで読み取り、文字を自動認識させ、翻訳することができる。韓国語と中国語は海外のレストランで食事をするときなどを想定し、翻訳辞書がグルメのジャンルに限られているが、認識率も非常に高く、かなり実用的な機能と言えそうだ。


F905i(富士通製)

 F904iに引き続き、スイング機構を採用したヨコモーションケータイだ。液晶ディスプレイは対角サイズが3.2インチと従来よりもわずかに大きくなり、解像度はワイドQVGAからワイドVGAに変更されている。従来のF904iでもワンセグが搭載されていたが、F905iでは予約録画に対応し、ワンセグ視聴時の分割表示の機能が拡充されるなど、ワンセグ周りの機能が一段と進化したという印象だ。

 注目はらくらくホンシリーズで培われてきた「スーパーはっきりボイス」と「ゆっくりボイス」をFOMA 90Xiシリーズに初搭載した点だろう。こうした機能はシニアやシルバー層向けと考えられがちだが、実際の利用シーンを考慮すれば、年齢層や性別を問わずに便利な機能であり、90Xiシリーズに搭載されたのは、非常に歓迎すべきことと言えそうだ。ちなみに、スーパーはっきりボイスはらくらくホンの場合、2つのマイクで周囲の音を感知しているのに対し、F905iはひとつのマイクのみを利用している点などが異なる。

 ダイヤルボタンはF904iと違い、フレームレスになり、ボタンサイズも少し大きくなっている。ヨコモーションの機構は折りたたみ状態から片手で指を挟んで開こうとするとき、ディスプレイ部が回転してしまうことがあり、やや開きにくい印象があるが、F904iに比べ、ヒンジ部分の形状やボタン部のゴム足などを見直すことで、少し指を入れやすくするなどの改善を図っているという。ただ、NTTドコモでもこれだけで十分とは考えておらず、次期モデル以降でも改良を重ねていきたいとしている。


N905i(NEC製)

 N904iでは外国人デザイナーを起用するなど、デザイン性を追求していたが、今回はNEC製FOMA端末としては初となる二軸回転式ボディを採用している。ボタン部側は側面がラウンドした持ちやすさを考えた形状であるのに対し、ディスプレイ部側はスクエアな形状にまとめられている。スペック的には6軸手ブレ補正と被写体ブレ補正によるダブル補正に対応した5.2Mピクセルカメラが目を引く。

 実機を試用して驚かされるのは、ダイヤルボタンの押しやすさだろう。「PCライクキー」と名付けられたN905iのボタンは、パソコンのような凹凸のあるキーを採用しており、ボタントップの面積も大きいだけでなく、きちんとボタンの押下感もあり、非常に操作しやすい。メール作成時の日本語入力のインライン変換やおまかせデコメールの強化など、メールによるコミュニケーションも強化されている。

 iモードのブラウザも905iシリーズではN905iとN905iμのみがタブブラウザに対応しており、最大5つのサイトを一気に開く「ワンタッチマルチウィンドウ」という機能も提供されている。メールとコンテンツ閲覧というiモードの基本をしっかりと強化した実用性の高いモデルと言えそうだ。


P905i(パナソニック製)

 今回発表された905iシリーズの中で、もっともユニークな「Wオープンスタイル」を実現したモデルだ。会場でも多くの関係者から注目を集めていた。Pシリーズではおなじみのワンプッシュオープンを活かしながら、横方向にも開く特殊なヒンジを採用している。横方向で開くときは、側面にあるスライド式のスイッチを操作する。

 同様のスタイルは昨年、auのW44Sでも採用されていたが、W44Sと違い、ヒンジ部分が通常の折りたたみタイプと変わらない形状にまとめられており、違和感なく、利用することができる。しかも横方向でディスプレイを開くと、自動的にワンセグを起動させることができる。ワンセグを活かす形状としては、SHシリーズのサイクロイド機構がおなじみだが、このP905iのWオープンスタイルはそれに匹敵する仕上りと言えそうだ。気になるとすれば、ヒンジ部分の耐久性だが、開発段階でもその点は十分に考慮していたという。

 また、P905iは従来モデルに引き続き、Bluetoothを搭載しているが、今回はリモコンによるチャンネル切り替えにも対応しており、一段と使い勝手を向上させている。さらに、従来のFOMAハイスピード端末のP903iX HIGH-SPEEDに引き続き、WMV形式のムービーに対応しており、インターネット上のWMV形式のデータを再生できる。ワンセグやムービーの視聴を重視したいユーザーに適したモデルと言えそうだ。


SH905i(シャープ製)

 90Xiシリーズでは通常の折りたたみタイプと二軸回転式をほぼ交互に開発しているが、今回のSH905iはSH903iに続く、二軸回転式を採用している。今回発表された905iシリーズの内、μモデルを除き、もっともスリムでコンパクトなワンセグケータイとなっており、手になじみやすいサイズだ。

 注目すべき点はSH904iから継承されたTOUCH CRUISERの進化、Dolbyモバイルが挙げられる。TOUCH CRUISERはノートPCのタッチパッドのような操作ができることを特徴としているが、今回はこれをセキュリティ対策に活かした「手書きパスワード認証」が新たに搭載されている。TOUCH CRUISER上で指を使い、手書きのサインのようなものを登録しておけば、FeliCaロックなどの解除に利用できるというものだ。TOUCH CRUISERの領域があまり広くないため、細かいサインは難しいが、顔認証などに比べれば、周囲の環境に左右されないうえ、手書きのサインは人のクセが出やすいため、なかなか実用的な機能と言えそうだ。

 DolbyモバイルはAV機器や映画館などでおなじみのDolbyサウンドをケータイで実現したもので、ワンセグを高音質に楽しむことができる。実際にワンセグの番組をヘッドホンでドラマを視聴してみたが、全体的に音がハッキリする印象だ。また、WMV形式のムービーのストリーミング再生にも対応しており、インターネット上のWMV形式のデータを再生することが可能だ。


SO905i(ソニー・エリクソン製)

 BRAVIAとウォークマンの技術を活用したワンセグ&音楽再生を強化した端末だが、それ以上にユーザーが期待しているのは、やはり、“帰ってきたジョグダイヤル”の「+JOG」だろう。すでに、auのW53Sでジョグダイヤルは復活しており、あれとほぼ同じサイズ、同じ構造のものがSO905iにも搭載されている。ジョグダイヤルそのものは非常に小さいため、従来のジョグダイヤル(NTTドコモ向けではSO505i以来)のような操作感は得られないが、ジョグダイヤルの反応などをカスタマイズすることが可能で、ダイヤルボタンも波形になり、快適な操作環境を実現している。

 ジョグダイヤルとの組み合わせで定評を得てきたPOBoxは、au向けのソニー・エリクソン製端末にカスタマイズ可能なPOBox PROが搭載されてきたが、NTTドコモ向けにも今回のSO905iで「POBox PRO 2.0」が搭載され、同等の日本語入力環境を実現している。

 操作系でユニークなのは、液晶ディスプレイ反転時にチャンネル操作などに使える「ビューイングタッチキー」、端末を閉じたときに音楽再生などで使える「ミュージックキー」などだ。ちなみに、この2種類の静電パッドキーにはフォースリアクターという機能が搭載されており、操作時に「コンコンッ」という反応がボディから返ってくる。最初は少し戸惑うが、押下感のない静電パッドキーの操作感をわかりやすくする印象だ。二軸回転式のボディは比較的、スタンダードなイメージだが、背面にワンセグ視聴時に便利な「足」が装備される。


N905iμ(NEC製)

 703iシリーズで初めて登場したμモデルを90Xiシリーズに展開したモデルだ。905iシリーズの主要モデル(無印)と違い、ワンセグが搭載されていないものの、3インチワイドVGA液晶やおサイフケータイなどを搭載しながら、12.9mmという薄さを実現している。

 N905iとの違いは、1.7GHz非対応、カメラがAF対応2Mピクセルで手ブレ補正がないこと、ニューロポインターの有無、内蔵スピーカーがモノラルであることくらいで、ワンセグ以外に実用面の大きな差はないとも言える。ユーザーによる好みもあるだろうが、デザイン的なまとまりや仕上げ、質感も非常に良く、バランスの取れた端末と言えそうだ。シートキーを採用したダイヤルボタンは各ボタンの横に小さなリブ(突起)を装備し、そこをLEDで光らせるようにしている。他のシートキーを採用した端末に比べれば、操作しやすい方だが、シートキー特有の押下感に慣れが必要な印象は残されている。


SO905iCS(ソニー・エリクソン製)

 国内では初の「Cyber-shot」のブランドネームを冠したモデルだ。Cyber-shotのネーミングは海外向けモデルでも採用されているが、国内向けは5.1Mカメラ、光学3倍ズームというカメラ付きケータイとしては、ほぼ最高スペックを実現している。光学3倍ズームはCyber-shot Tシリーズと同じ折曲式レンズ機構を採用しており、ズームの動きも段階式ではなく、リニアズームとなっている。

 スライド式ボディにワイドVGA液晶を搭載しているため、ノッポでやや厚みのある印象のボディで、スリムなモデルが多い905iシリーズの中では手に持った印象がやや分厚く感じられてしまう。背面のレンズカバーを開ければ、カメラが起動するしくみで、起動音もCyber-shotと同じものに採用している。方向キー中央にはSO905iと同じ「+JOG」が採用されているが、SO905iCSはスライド式ボディのため、段差が気になり、やや慣れが必要な印象だ。

 機能面では撮影した画像をスライドショーで見せる「音フォト」、ブログやSNSへの投稿など、カメラ機能とケータイを組み合わせたことが活きるものが用意されており、今までのカメラ付きケータイ以上にカメラを楽しみたいユーザーに適したモデルと言えそうだ。


P905iTV(パナソニック製)

 今回発表された905iシリーズの内、唯一、モックアップのみの展示となったモデルだ。スライド式ボディを採用しているが、ソフトバンク向けの913SHなどと同じように、方向キーなどをすべてボタン部側ボディにまとめており、ディスプレイ部側の前面はフラットに仕上げられている。ボタン部は波形のキートップを採用している。

 ディスプレイサイズが3.5インチと大きいため、ボディ幅が53mmとかなりワイドだが、厚みが17.7mmと抑えられているため、思ったほど、大きさを感じさせない。筆者のような大きな手であれば、まず問題ないが、標準的なサイズの手の大きさでも十分に持てるサイズと言えそうだ。

 ワンセグをなめらかな映像で視聴できる30fps表示の「なめらかフレーム補間機能」は、ディスプレイのみでのデモとなったが、15fpsとの表示の差は歴然としており、一度、30fpsに慣れてしまうと、15fpsには戻れなくなりそうだ。他メーカーが追従するかどうかはわからないが、もしかすると、30fps表示は来年以降のワンセグ対応端末の新しいトレンドになるかもしれない。


SH905iTV(シャープ製)

 NTTドコモ向けでは第2弾となるAQUOSケータイだ。おなじみのサイクロイド機構を採用しているが、気になるボディの厚みを18.9mmまで抑えており、ソフトバンク向けのAQUOSケータイ 920SHと比べても遜色のないスリムなボディに仕上げている。

 基本的なスペックはSH905iと同等で、DolbyモバイルやTOUCH CRUISERも搭載され、カメラもAF対応3.2Mピクセルとなっている。液晶ディスプレイも同じ3.2インチを採用しているが、SH905iTVには色再現性の高い「高演色バックライト」が搭載されており、ワンセグなどを一段ときれいに視聴できるようにしている。

 SH903iとSH903iTVのときと違い、SH905iとSH905iTVでは両方にワンセグが搭載され、機能差もそれほど多くないため、かなり選ぶのに迷いそうだが、サイクロイド機構のボディで選ぶか、GPSの有無やGSM国際ローミングの対応・非対応などで選ぶことになりそうだ。


D705iμ(三菱電機製)

 Dシリーズ初のμモデルは、ハーフミラーパネルのディスプレイ部とメタル調のボディを組み合わせたストレートデザインを採用する。スリムなストレートデザインの端末として販売されていたD703iをμモデルに進化させたような印象だ。ボタン部には突起が付けられ、そこに埋め込まれたLEDが光る仕様を考えているそうだ。ちなみに、突起がボタンになっているわけではなく、シートキーの上に突起が付いているような構造になっている。意外に面白いのは側面のロックキーで、ダブルクリックでキーロックのON/OFFができる。ケータイではボタンの長押しがおなじみだが、操作の手軽さからいえば、ダブルクリックの方がわかりやすいという印象もあり、ぜひ他機種でも検討して欲しい仕様のひとつと言えそうだ。


N705iμ(NEC製)

 N703iμ/N704iμに続く、三代目モデルということになる。ステンレスボディを採用したことで、全体的なイメージがガラッと変わり、かなりスタイリッシュになった印象だ。スペック的にもFOMAハイスピード、おサイフケータイ、2Mピクセルカメラ、ミュージックプレーヤーを採用し、我慢することなく使える超薄型ケータイに仕上げられている。外見もディスプレイサイズが3インチと大きくなったことで、従来モデルとはかなり印象が違う。トップパネルの7×17ドットのLEDを利用した「MySignal」はサイトからデータをダウンロードしてきて、追加することも可能だという。


P705iμ(パナソニック製)

 Nシリーズ同様、P703iμ/P704iμに続く、三代目モデルということになる。薄さのスペックがN705iμとまったく同じというのは、相変わらず、不思議だが(笑)、こちらはこの薄さにしながら、ワンプッシュオープンを採用している。説明員が持っていたデモ機を試してみたところ、ワンプッシュオープンで開くときのバネのレスポンスが少しゆっくりしている印象だった。これは端末そのもののイメージを上質なものにするため、敢えて、少しゆっくり開くワンプッシュオープンにしたそうだ。

 スペック的にはこちらもFOMAハイスピード、おサイフケータイ、2Mピクセルカメラを搭載し、WMV形式のムービーも楽しめるなど、かなり使いごたえのある超薄型ケータイに仕上がっているという印象だ。


D705i(三菱電機製)

 従来のD704iはワンセグを搭載しながら、若年層への普及を狙い、全体的にポップなカラーリングでまとめられていたのに対し、今回のD705iはもう少し上の年齢層を狙った質感の高い仕上げのボディとなっている。また、D704iでは非対応だった予約録画、視聴予約、タイムシフト再生に対応する。また、Nシリーズに搭載されてきた直デンが採用されているが、直デンはNTTドコモの機能であり、特にメーカーは制限していないそうだ。


F705i(富士通製)

 F703i/F704iに続く、防水機能を搭載したモデルだ。F703iとF704iはハードウェアがまったく共通で、国際ローミング対応程度しか機能差がなかったが、今回のF705iはボディが一段とスリムになり、コネクタ部を削減するために充電端子とイヤホン端子を統合するなど、新たに設計されたモデルとなっている。F905iと同じように、らくらくホンシリーズで採用されている「スーパーはっきりボイス」と「はっきりマイク」を受け継ぐなど、使い勝手の面でも改良が図られている。


L705i(LG電子製)

 SIMPUREシリーズ、L704iと着実に日本市場に浸透してきたLG電子製の端末で、韓国内で販売しているモデルをベースに、使いやすさを重視したモデルとして開発されている。ドーム形状のボタン、ディスプレイ下のワンタッチボタンなどが特徴的だが、トップパネル側などもスッキリと質感良く仕上げられている印象だ。らくらくホンまでのやさしさを求めないが、使いやすく、スタイリッシュな端末が欲しいユーザー向けのモデルと言えそうだ。


L705iX(LG電子製)

 海外市場において、LG電子が「chocolate」に続くヒットを記録している「Shine」をベースに、日本市場向けにアレンジしたモデルだ。メタルボディとミラー液晶を組み合わせることで、非常に質感の高いモデルに仕上げられている。まだ正式なサービス開始はアナウンスされていないが、FOMAハイスピード(HSDPA)の7.2Mbps(下り方向)に対応しており、来春以降であれば、実際に高速通信が体験できる見込みだという。スライド式のボディを採用しているが、キーの配置が独特で、ディスプレイ部側にはソニー・エリクソン製端末などでおなじみのジョグダイヤルにも似たマルチファンクションスクロールキーが装備され、ボタン部にはダイヤルボタンのほかに、[開始]キーと[終了]キーがレイアウトされている。シートキーはM702iS(Motorola RAZR)のようなメタリックなものを採用する。ボディカラーはいずれもインパクトのあるものだが、日本独自カラーとなるShine Goldはかなり存在感のあるものと言えそうだ。


N705i(NEC製)

 N702iD、N703iDとデザイナーズコラボレーションを続けてきたNシリーズの70Xiシリーズだが、今回はリアル・フリート社が展開するデザイン家電「amadana」とのブランドコラボレーションに取り組んでいる。非対称デザインのトップパネルには時計などにも採用される常時表示が可能な液晶パネルがサブディスプレイとして装備され、角度を付けたヒンジ部分の形状とともに、独特のボディデザインを実現している。14.5mmというコンパクトサイズながら、ワンセグを搭載し、FOMAハイスピードにも対応するなど、機能的にも充実したモデルだ。5,000台の限定モデルも販売される予定だが、限定モデルのトップパネルには木目調のプレートが貼り付けられるなど、今までにないデザインに仕上げられている。


NM705i(ノキア製)

 ノキアが海外で「NOKIA 6120 classic」として販売しているモデルをNTTドコモ向けに供給するモデルだ。ノキア製のNTTドコモ向け端末としては、国際ローミング対応端末として、NM850iGが販売されていたが、今回はより多くのユーザーが利用する70Xiシリーズということもあり、キーパッドの表記も全面的にNTTドコモ向けに直されている。特に、NM850iGのときと違い、[MENU]ボタンや[CLR]ボタンなどの表記が加えられている。ただ、ハードウェア的には海外仕様と共通で、充電端子などはノキア用のものがそのまま採用されている。ちなみに、今回発表された905i/705iシリーズの中では、P905iと並ぶ数少ないBluetooth搭載モデルとなっている。説明員によれば、アプリケーションのインストールは200KBのiアプリのみで、ノキアのソフトウェアプラットフォームの「S60」向けについてはインストールできない仕様になるそうだ。


P705i(パナソニック製)

 ワンプッシュオープンを装備しながら、12.8mmの薄さにまとめたワンセグ端末だ。ワンセグについては予約録画などに対応するほか、Pシリーズのワンセグ端末としては初のオフタイマーを搭載する。メールやコンテンツ閲覧時にコントラストを落として、のぞき見を防止する機能が一部の機種で採用されてきたが、P705iでは「ビューブラインド」という機能名称で、全画面のコントラストを落とし、ワンセグの画面も横から見えなくすることができる。また、ワンセグ対応端末としてはまだ少ない例だが、本体にアンテナを内蔵したアンテナレスデザインとなっている。


SH705i(シャープ製)

 15.5mmのスリムなボディにワンセグを搭載した端末だ。布からかたどったファブリックなテクスチャーをトップパネルに施しており、SH905iなどとも共通のデザインテイストで仕上げられている。ワンセグのアンテナがボタン部の側面に横から添えるように格納される構造がユニークだ。


SO705i(ソニー・エリクソン製)

 SO703i/SO704iに続き、Style-Upパネルを採用したモデルだが、ボディデザインが変更され、全体的なイメージも大きく変わった印象だ。Style-Upパネルはボディのトップパネルを覆うような形で装着するが、Style-Upパネルがない状態でも違和感なく、利用できるデザインに仕上げられている。


PROSOLIDμ/P705iCL(パナソニック製)

 スリムなカメラなし端末として、ビジネスユースを中心に支持されてきたPROSOLIDシリーズの三代目モデルだ。ベースとなっているのは同時に発表されたP705iμで、そこからカメラを外した仕様となっている。そのため、3インチディスプレイ、9.8mmのスリムボディ、ワンプッシュオープンを採用し、FOMAハイスピードやおサイフケータイに対応する部分は共通仕様となっている。


23機種の豪華ラインアップだが……

 以上が今回発表された23機種の印象ということになるが、最後に気になる点を挙げておきたい。

 まず、23機種を同時発表するという方法論についてだ。NTTドコモはMNPの開始以降、転出超過が続き、残念ながら、数字的には負けゲームが続いている。もっとも国内で50%を超えるシェアを確保しているのだから、転出超過が続くのはしかたがないという見方もあるが、純増シェアなどでも遅れを取っており、巻き返しを図らなければならないタイミングになりつつある。

 そこで、NTTドコモとしては、巻き返しのために主力の2シリーズを一新する23機種を投入するわけだが、個人的な印象を言わせてもらえれば、この方法論はプラスにもマイナスにも振れそうな気がしている。

 冒頭でも触れたように、一気に23機種ものバリエーションを投入するのは、ケータイ業界としても過去に例がなく、市場に大きなインパクトを与えることは間違いない。これだけの機種を一気に揃えられるのは、まさにNTTドコモと開発メーカーの底力だと見ていいだろう。

 しかし、その一方で現場を含めたことを考えると、マイナスに振れる不安が見えてくる。というのもよく知られているように、NTTドコモの場合、店頭では少し前のモデルが併売されており、それらが安くなった段階で売れていくといった動きがある。たとえば、現時点なら、1年近く前に発表された903iシリーズや703iシリーズが安く購入でき、904iシリーズや704iシリーズはこれから値下げが期待されるという状況だ。こうした状況に対し、来春へ向けて、23機種が投入されることになれば、店頭は端末であふれかえることになる。順次、発売されるとは言え、旧機種の在庫が潤沢にある販売店などにとっては、たまったものではないだろう。

 また、ユーザーの視点から見た場合にも悩ましい面がある。なぜなら、既報の通り、今回の905iシリーズからNTTドコモの端末販売の方法が変更されるからだ。

 NTTドコモの新しい販売方法では、端末の価格は高いが、月々の基本使用料が安い「バリューコース」、2年間の利用が前提になるが、端末の購入価格が割り引かれる「ベーシックコース」を選ぶことになる。905i/705iシリーズを購入するのであれば、いずれかのコースを選ばなければならない。バリューコースは利用期間の縛りがない代わり、端末の値段が高くなるが、実際のところ、905i/705iシリーズがいくら程度で販売されるのかが明示されておらず、ユーザーとしては選びにくい状況にある。ある関係者は「バリューコースは端末の販売価格が従来よりも高そうだが、割賦販売が提供されるので、お持ち帰りの金額は安くなり、それほど不安はないはず」と話していたが、割賦販売を利用すれば、結果的に1年間、もしくは2年間、分割金を支払うわけで、金銭的には利用期間を束縛される状況に近くなってしまう。一方、ベーシックコースは2年間の利用が前提になるため、ユーザーとしては2年間、安心して使える端末を選びたくなるわけで、やはり、端末選びは慎重にならざるを得ない。そうなると、リスクを避けるため、新しい販売方法を利用する必要がない旧機種を敢えて選択するユーザーも出てきそうだ。


 ラインアップとして見たときも少し気になる点がある。たとえば、905iシリーズはスタンダードな主要モデル6機種、特定の機能やデザインに特化した派生モデル4機種がラインアップされているが、705iシリーズの13機種は全体的に個性派のモデルが多い。しかも905iシリーズは搭載する機能や対応するサービスが「ALL IN」の方向であるのに対し、705iシリーズは機種ごとに機能やサービスの対応が異なる。そのため、各機種の差をしっかりと見極める必要があるわけだが、今回はまとめて23機種が発表されたうえ、機種間の機能差が多い705iシリーズの方がモックアップ中心の展示だったため、我々も含め、各機種の差は十分に把握しにくい状況にある。

 さらに、今回の発表では905iシリーズとともに、個性的な705iシリーズを見せてしまったため、ユーザーによっては逆に905iシリーズを買い控えてしまう可能性も十分に考えられる。特に、前述の新しい買い方を考慮するなら、ユーザーとしては、価格の高い905iシリーズと少し安い705iシリーズの価格差をきちんと把握し、機能差や対応サービスの差と天秤にかけた上で、どちらを購入するのかを判断したくなるからだ。

 この他にも個々の機種の対応ぶりを見てもエントリー向けの705iシリーズでGPSがなかったり、Bluetoothがいまだに一部の機種だけに限られているなど、意外に機能的な積み残しがあるようにも見える。国際ローミングやFOMAハイスピードなど、ネットワークに関わる部分は着実に対応してきたが、その他の部分はまだまだ課題が多いという印象すらあるのだ。やや辛口のコメントになってしまうが、ラインアップと23機種の発表については、本当にこの方法論が適切だったのかどうかも含め、かなり疑問が残った印象だ。

 とは言うものの、少なくとも発表会で見た限り、今回発表された23機種は、いずれも従来モデルを着実に上回る魅力的なラインアップとなっていることは間違いない。まずは905iシリーズが11月下旬から販売が開始される見込みだが、購入するときには本誌に掲載される新製品SHOWCASEやインタビュー、レビューなどを参照し、うまく自分のニーズに合った905i/705iシリーズを選んでいただきたい。



URL
  ニュースリリース
  http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/071101_00.html

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(法林岳之)
2007/11/02 13:11

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