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フルラインナップで春商戦に挑むソフトバンク
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


ハイエンドモデルも含めた充実のラインナップ

 1月28日、午前中のauに続き、午後はソフトバンクが2008年春モデルの発表を行なった。昨年後半、純増No.1を連続して獲得するなど、好調ぶりが目立つソフトバンクだが、今回も6メーカー14機種を発表し、孫社長自ら、熱のこもったプレゼンテーションを行なった。

 通常であれば、筆者も会場に出向き、発表会に見たかったのだが、諸般の事情により、今回は発表会に出席できず、タッチ&トライコーナーに、わずかな時間のみ、参加することになってしまった。本来なら、発表会の様子も含め、内容を紹介したいところが、今回はそういった事情もあり、少し趣向を変え、先週に発表された「ホワイト学割」も含め、ソフトバンクの戦略などをチェックしながら、発表内容をチェックすることにしよう。



 まず、2008年春モデルの端末ラインナップについてだが、孫社長が「高速から高級まで、まさにフルラインナップ」とコメントしたように、非常に幅広いモデルがラインナップされている。他の2社に比べても遜色のない充実ぶりと言えるだろう。端末メーカーとしては、今回は6社が供給しているが、端末のバリエーションから見ると、トップシェアのシャープに、東芝が続き、このトップ2にパナソニックとサムスンが加わろうとしている印象だ。特に、パナソニックは2006年秋に復帰して以来、着実に端末のバリエーションを増やしてきており、今回はついにハイエンドモデルの9xxシリーズの端末も供給することになった。逆に、J-フォン、ボーダフォン時代から端末を供給していたNECが昨年の春モデル以来、見られないのが少し気になるところだ。

 ちなみに、機種数についてはニュースリリースで15機種と謳われているのに対し、記事では14機種と表記しているが、これはティファニーとのコラボレーションモデルをカウントしていないためだ。個別の機種についても820SH/821SHの派生モデルである「823SH」、920SHの特定用途向けモデルである「株ケータイ 920SH YK」もあり、実質的な新機種は12機種という見方もできる。

 次に、形状については、横開きを含む折りたたみタイプが6機種、Wオープンとサイクロイド、ストレートが1機種ずつ、スライド式が3機種、二軸回転式が2機種という構成になっている。全体的に見て、従来同様、折りたたみタイプが多い傾向があるが、Wオープンや横開きの折りたたみなど、新しい形状もあり、バリエーションを揃えてきた印象だ。

 また、機能面やスペック面では、ワンセグ対応が8機種、有機ELディスプレイ搭載が3機種、VGA液晶搭載が3機種、国際ローミング対応が7機種、3Gハイスピード対応が10機種といった具合に、ハイエンドモデルを充実させている。その一方で、子ども向け、シニア向け、防水など、今までのソフトバンク端末ではあまり強くなかった、あるいはモデルが存在なかった領域にも端末を投入しており、まさにフルラインナップという表現に相応しい品揃えとなっている。


 サービス面については、ISPなどで利用されているPOP/SMTPサーバのメールを読み書きできる「PCメール」、昨年、サービスが終了したS!キャストのしくみを活かした「S!情報チャンネル」による「Yahoo!ヘッドラインニュース」の配信(1月17日に発表済み)がアナウンスされたのみで、特にサービス面に関する新しい取り組みは明らかにされなかった。ISPや企業などで利用するメールの送受信は、従来からニーズが高い用途とされ、アプリやASPサービスなどで実現されてきたが、PCメールでは通常のS!メールの受信ボックスといっしょにメールを扱えるようにするなど、独自の工夫を加えることで、使いやすい環境を提案している。S!情報チャンネルについては、S!キャスト終了時、同じしくみを利用して、いずれサービスを再開するとしていたものがようやく実現した形となる。詳しくは後述するが、いずれのサービスもソフトバンクが抱える事情や方向性が垣間見えるサービスでもある。

 さて、続いては今回発表された各機種について、少しだけ解説を加えて、紹介をしてみよう。一部のモデルは短時間ながら、試用することもできたので、そのインプレッションも可能な範囲で追記しておこう。


インターネットマシン 922SH(シャープ)

 
 今回発表されたモデルで、もっとも注目を集めた端末のひとつだ。外見はスマートフォンや一時のメール端末のようだが、中身は通常のSHシリーズのケータイと同じ内容になっている。3.5インチのフルワイドVGA液晶が搭載されており、横画面でワンセグを見ながら、Yahoo!ケータイを閲覧するといった使い方ができる。形状が変わっているため、通常のケータイなのか、スマートフォンなのか、料金がどうなるのかがわかりにくいが、実は昨年秋に登場した920SHで、サイクロイドスタイルをワンセグ以外でも活かすため、横画面でのメニューやメールなどを利用できるようにしていたが、それは今回の922SHの横画面ユーザーインターフェイスへの布石だったというわけだ。S!FeliCaがないことが920SHなどとの大きな違いだが、こういった割り切ったスタイルは2台目需要を開拓してきたソフトバンクだからこそ、できる取り組みであって、すでにケータイを持っているユーザーにとっても選びやすい端末と言えそうだ。


FULLFACE2 921SH(シャープ)

 
 昨年発売されたFULLFACE 913SHの後継モデルに位置付けられる端末だ。ディスプレイが3.2インチのフルワイドVGAになり、液晶パネルそのものもリフレクトバリアパネルを採用したNewモバイルASV液晶が搭載されている。ボディ形状以外のスペックについては、920SHとほぼ同等だが、921SHがPCメールに対応しているのに対し、920SHは国際ローミングに対応している点などが異なる。特徴的なのはディスプレイ部横に装備されたタッチレガートセンサーで、指で触ったり、なぞったりすることで、操作できるようにしている。タッチレガートセンサーはセンサー部の四隅にある部分が方向キーの周囲にあるキーなどに割り当てられ、中央部で方向操作などを行なう。触っての操作にも慣れる必要があるが、独特の操作感に加え、画面エフェクトもVIVID UIを採用することで、アニメーションによる表現がかなり豊かになっている。3軸の加速度センサーも内蔵されており、ボディの向きによって、表示する画像や写真の向きも自動的に変わるようになっている。全体的に見て、新しいユーザーインターフェイスに取り組んだ端末と言えそうだ。


920P(パナソニック)

 
 通常のワンプッシュオープンに加え、横向きにも開くWオープンスタイルを採用したモデル。VIERAケータイと名付けられていることからもわかるように、パナソニックがNTTドコモ向けに供給しているP905iに酷似した端末だ。仕様もほぼP905iと同等で、BluetoothやGPSなどをサポートしているのに対し、ソフトバンクの独自サービスであるS!情報チャンネルやS!一斉トーク、ちかゲーム、S!電話帳バックアップ、PCメールなどには対応していない。ソフトバンクのユーザーにとってはうれしい選択が増えたとも言えるが、個人的に持っていたP905iと並べてみたところ、外見は本当に細かい部分にしか差がなかった。AQUOSケータイのように、複数の事業者に同一機構の端末を展開する例は増えつつあるが、ここまで同じデザインのものでいいのかどうかは、少し疑問が残る。ただし、端末としての出来は確実にハイエンドモデルと言えるだろう。


921T(東芝)

 
 「REGZAケータイ」の名を冠したワンセグケータイだ。基本的な仕様は従来の912Tをベースにしているが、2.8インチのQVGA有機ELディスプレイを搭載するなど、よりワンセグを視聴するための環境を強化している。ボディは912Tの角を丸めたスクエアなデザインに対し、今回はエッジを立たせた二軸回転式ボディとなっている。従来モデルでは開いた端末を片手で閉じようとするとき、ディスプレイの回転機構の動作が軽く、ディスプレイが回ってしまうという不満があったが、今回試用したモデルも同じ印象だった。


822P(パナソニック)

 
 ソフトバンクの端末としては、久しぶりのストレートデザインを採用した端末だ。8.9mmというスリムなボディに仕上げられている。ワンセグやS!FeliCaといった機能は搭載されていないが、カメラは200万画素のオートフォーカス対応となっている。サービス面では3Gハイスピードに対応していないことが長く利用することを考えると、少し気になる点だ。


821SC(サムスン電子)

 
 820SCの二軸回転式ボディに対し、スタンダードな折りたたみデザインを採用した端末だ。基本的な仕様は似通っているが、821SCは国際ローミングに非対応で、S!ともだち状況に対応する点が異なる。ボタンの形状は立体的で、なかなか押しやすい印象だ。デザイン的にも近いという見方もできるが、昨年の812SHのようなスタンダードな路線を狙った端末と言えそうだ。ただ、充電などに利用する外部接続端子は820SC同様、同社独自の仕様となっており、付属の変換コネクタで接続する必要がある。


THE PREMIUM TEXTURE 823SH(シャープ)

 
 昨年の冬モデルで登場した820SH/821SHの双子モデルから派生した端末だ。従来の2機種はトップパネルの処理(ヘアライン加工やパール仕上げなど)の違いにより、2つの機種となったが、823SHではテクスチャーパネルを装着することで、もうひとつの顔を作り出している。テクスチャーパネルはトップパネルに固定する構造で、メインディスプレイの横にある小さなボタンを押して、着脱する。基本的な仕様は共通で、パネルの装着によって、薄さや重量などに若干の違いがある。個性を主張したいユーザーにおすすめだ。


コドモバイル 820T(東芝)

 
 従来から販売されていた「コドモバイル 812T」に続く、子ども向けモデルの第2弾。従来モデルは少し大きめのベルトストラップとリングが装着されていたため、一目でそれとわかるデザインだったが、今回のモデルはもう少しスッキリとしたデザインでまとめられ、カラーバリエーションも3色展開となった。子ども向けの端末は、あまり子どもっぽくデザインしてしまうと、逆に敬遠される傾向もあると言われているが、この程度なら、受け入れやすいかもしれない。


かんたん携帯 821T(東芝)

 
 ソフトバンクとしては、初のシニア向け端末だ。シニアユーザーを意識した端末としては、GENT 812SH sなどが販売されているが、821Tはもっと明確に簡単なケータイが欲しいという声に応えるモデルだ。折りたたみデザインのボディを開きやすくするため、側面の凹みを付けたり、ボタンも立体的なドームキーを採用したり、着信時などに操作を促すようにボタンを光らせるなど、さまざまな工夫が活かされている。デザイン的にもNTTドコモのらくらくホンのテイストを受け継いでいる印象だ。基本操作を学べる操作練習機能も搭載されているが、同機能が登録されているメニュー構造の階層が深く、その機能を起動するところにたどり着かないのではないかという声もあった。


822T(東芝)

 ソフトバンク初の防水機能を搭載したケータイだ。IPX5/IPX7相当の防水性能を実現しているが、今回は防水のデモンストレーションを見ることができなかった。基本的な仕様は、fanfun. 815Tをベースにしており、S!FeliCaに対応していない点などが異なる。ワンセグやBluetoothも搭載せず、国際ローミングにも非対応のため、防水機能のみを重視したスタンダード端末という印象だ。


X02NK/Nokia N95(ノキア)

 
 海外でもすでに販売が開始されているNokia N95のソフトバンク向けモデルだ。スライド式ボディを採用し、ボディをスライドさせると、ボタン部が現われるが、反対側にスライドさせると、音楽再生などに利用するメディアキーが露出するというユニークな構造を採用する。GPSはNokia独自のもので、ソフトバンクのサービスとして提供されているS!GPSには非対応となる。ただし、国内ではNAVITIMEを利用することもできるため、他のGPS対応ケータイと変わらない環境で利用できそうだ。IEEE802.11b/gの無線LANにも対応する。


X03HT(HTC)

 
 HTC製のスマートフォンとしては、第3弾となる端末。X01HTのスライド式フルキーボード、X02HTのストレートタイプのフルキーボードに対し、今回はスライド式フルキーボードとテンキーを組み合わせた端末となっている。スマートフォンとしてはボディサイズがコンパクトで、持ちやすい印象だ。閉じて利用していれば、通常のストレートタイプの端末と何ら変わりなく見える。手の大きさにもよるが、慣れれば、片手でスライド式フルキーボードを引き出すこともできる。


株ケータイ 920SH YK

 
 昨年、冬モデルとして登場したAQUOSケータイ 920SHをベースにした株取引に特化した端末だ。Y!ボタンの代わりに「株ボタン」を装備し、株取引専用アプリが起動する。ハードウェアの仕様は920SHとまったく共通。920SHはフルワイドVGA液晶を搭載しているため、株取引専用アプリも視認性が良い。用途に特化した端末は他社でも法人向け市場などで提供されてきたことがあるが、こうした試みは非常に面白い。今回はSBIイー・トレード証券版ということになるが、他の証券会社向けもぜひ展開して欲しいところだ。


キャンペーンとして展開される「ホワイト学割」

 28日の発表会の前週となる21日に、ソフトバンクは急遽、会見を開き、学生向けのプランとして、「ホワイト学割」が発表された。ホワイト学割は新規にソフトバンクと契約する学生を対象に、月額980円の基本使用料を無料とし、パケットし放題の開始額を0円(上限は4,410円)とする学割プランで、S!ベーシックパックの月額315円のみを支払えば、3年間、特典を受けられるというものだ。さらに、「コンテンツ学割クラブ」という専用ポータルサイトを用意し、学生向けに無料のコンテンツを提供するという。ホワイト学割は2月1日~5月31日までの期間に新規契約をした場合に限り、既存ユーザーへの対応やその後の対応については、4月以降に明らかにするとしている。

 このホワイト学割の内容を聞くと、「また、ソフトバンクが何でもタダの無茶なプランを……」と受け取ってしまいそうだが、実はあながち無茶なプランでもない。まず、今回のホワイト学割は新規契約のユーザーを対象にしている。つまり、契約時には基本的に端末の購入が必要になるが、ソフトバンクでは新スーパーボーナスで購入することが一般的となっている。スーパーボーナスは端末代金を分割で支払う代わりに、基本オプションパックが2カ月無料などの特典が受けられるほか、月々の支払額から一定額の特別割引を受けることができる。特別割引の額は購入した機種によって、780~2,200円の範囲で決まるのだが、対象となるのは基本使用料、通信料、通話料、定額料(パケットし放題など)、月額使用料(留守番電話プラスなど)、手数料の合計額で、合計額が特別割引の額よりも小さいときは、その月はそれ以上、料金が割り引かれないしくみになっている。この特別割引は見方を変えると、販売奨励金の分割払いでもあるが、ソフトバンクとしては月々の利用料が少ないユーザーに対しては、必要以上に販売奨励金を支払わずに済むことになる。つまり、ホワイト学割で月額基本使用料が0円になるユーザーが通信料や通話料を発生させないユーザーだった場合は、販売奨励金の分割払いに相当する特別割引が少なくて済むわけだ。


 また、ホワイトブランはご存知の通り、無料通話分などが含まれていないため、無料通話の対象時間以外にソフトバンク宛に発信したり、他事業者の回線(固定を含む)に掛けたときは、すぐに通話料が発生する。記者会見や決算会見でもコメントされているが、この無料対象以外の通話がソフトバンクの利益の基になる。ホワイト学割でユーザーを獲得し、短時間でも通話をするユーザーの母数が増えれば、それだけ利益を得ることができるわけだ。

 ソフトバンクにしてみれば、月額980円の基本使用料しか払わず、通話料も通信料もまったく増えない低ARPUのユーザーが増えるより、元々、利用頻度が高いとされる学生にターゲットを絞り、仮に基本使用料を0円に割り引いてもパケットし放題の金額が上限に達したり、通話をしてくれるユーザーがある程度、増えてくれれば、十分に元が取れるという計算なのだろう。だからこそ、ホワイト学割にはパケット通信が発生する「コンテンツ学割クラブ」というしくみが必要不可欠というわけだ。

 ちなみに、ホワイト学割は前述のように、2月1日から5月31日までの期間のみ受け付けるもので、継続的なプランではない(特典は継続して受け続けられる)。つまり、どちらかと言えば、新しい割引サービスがスタートしたというより、2006年10月にアナウンスされた「ゴールドプラン」を月額2,880円で継続的に利用できる「ソフトバンク大創業祭キャンペーン」のイメージに近いキャンペーンとして展開されるわけだ。当時、ソフトバンク大創業祭キャンペーンの終了が近づいた2007年1月5日には、2007年のケータイ市場をにぎわせることになる「ホワイトプラン」が発表されている。どうも今回のホワイト学割のアナウンスは、このときの状況と似ているような気がするのだ。既存ユーザーへの対応などを4月以降にアナウンスするとしているのは、もしかすると、今回のホワイト学割の反響を見て、4月以降に本格的な学割プランを提供することを示唆しているのかもしれない。


「タダ」の向う側を見極めて選びたい

 最後に、もうひとつ料金に関係する話を説明しておきたい。冒頭で、PCメールとS!情報チャンネルはソフトバンクの抱える事情や方向性が垣間見えるという話を紹介した。これはどういうことを意味しているかというと、これも前述のホワイト学割と同じ方向を目指している。

 ソフトバンクの場合、音声通話については無料対象の通話のみを使われてしまうと、それ以上、ARPUを上げることができない。そこで、パケット通信が発生するサービスやコンテンツを積極的に展開し、たくさん利用するユーザーにはパケットし放題を契約してもらう。これが上限に達すれば、ARPUは単純計算で5,000円を超えることになる。さらにARPUを稼ぐには、より上限の高いPCサイトブラウザやXシリーズのPCサイトダイレクトを使ってもらう方法が考えられる。ホワイトプランとパケットし放題のPCサイトブラウザ課金の上限なら、ARPUは約7,000円、Xシリーズのパケットし放題のPCサイトダイレクト課金の上限なら、ARPUは約11,000円に達する。

 今回、提供が開始されるPCメールは、パケットし放題の対象ではあるものの、課金はPCサイトブラウザによる通信と同じ扱いになるため、パケットし放題の上限は月額5,985円に設定される。メールサーバーにどれくらいの間隔でメールを確認し、どれくらいメールを受け取るのかにもよるが、ISPのメールをある程度、利用しているユーザーであれば、十分にパケットし放題のPCサイトブラウザ課金の上限に達する可能性はあるだろう。

 一方、S!情報チャンネルは前述の通り、昨年9月にサービスが終了したS!キャスト(元はVodafone live! CAST)のしくみを利用している。S!キャストの時代は通信料込みの月額315円で、S!キャストのみで楽しめるオリジナルコンテンツを受け取ることができたが、S!情報チャンネルでは月々の利用料こそ無料になったものの、コンテンツの受信には1パケットあたり0.0105円のパケット通信料が掛かるうえ、コンテンツはYahoo!ケータイでもアクセスできる「Yahoo!ヘッドラインニュース」になってしまった。


 誤解しないでいただきたいのは、ここで料金について解説しているのは、ソフトバンクの手法が良し悪しを論じているのではなく、従来と課金の方法が異なってきていることをユーザーとして理解しておいた方がいいという考えからだ。ソフトバンクが割安な料金プランを展開し、ユーザーが入りやすく、興味を持ちやすい環境を整えてきていることは確かだが、彼らも利潤を追求する企業である以上、闇雲に「タダ」を打ち出しているわけではないことをきちんと理解しておきたい。

 さて、話を本題に戻そう。昨年、ソフトバンクはホワイトプランをはじめ、ユーザーが取っつきやすい環境を展開し、市場で好評を得てきた。端末についてもスタイリッシュなモデルやキャラクターの強いモデルなど、ラインナップを着実に拡充してきた。2008年春モデルでは、その最後の詰めをするべく、個性的なモデルや高級モデル、シニア向けモデルなどをラインナップに加え、他の2社にまったくひけを取らない充実のラインナップを構成することになった。いずれの端末も興味深いが、なかでも「インターネットマシン 922SH」は、日本のケータイの文化とPC文化、あるいはインターネットのカルチャーをうまく融合させた日本らしいスマートフォン的な端末として、非常に注目される。2台目需要が多いとされるソフトバンクだからこそ、企画できた端末という一面もあるが、いずれ劣らぬ、魅力的な端末が勢揃いしていると見て、差し支えないだろう。今回発表された端末は2月上旬から順次、販売が開始される予定だ。購入時にはぜひ本誌の開発者インタビューやレビューなどを参照し、自分に適した端末を選んで欲しい。



URL
  ソフトバンクモバイル
  http://mb.softbank.jp/mb/

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(法林岳之)
2008/01/30 13:06

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