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有機ELディスプレイを搭載したFOMA端末「N2001」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


記念すべきFOMAファーストモデル

 いよいよ10月1日から本格サービスが開始されたNTTドコモの次世代携帯電話サービス「FOMA」。端末として、5月末から行なわれていた試験サービスと同じモデルが3機種リリースされている。そのラインアップの中で、最も標準的なモデルがNEC製端末「FOMA N2001」だ。筆者も早速、既存のPDC回線から機種変更したので、レポートをお送りしよう。


ようやく始まったFOMA

N2001

 NTTドコモ/NEC『FOMA N2001』。サイズ:52(W)×103(H)×20(D)mm(折りたたみ時)、105g。レッド(写真)、シルバーをラインアップ。
 アナログ、デジタルに続く第3世代の携帯電話サービスとして開始されたNTTドコモのFOMA。さまざまなメディアで将来性のあるサービスとして紹介され、展示会などでも技術説明やデモンストレーションなどが行なわれてきた。当初は今年5月から商用サービスを開始する予定だったが、急遽、利用者を限定した試験サービスとして提供されることになり、9月いっぱいまで試験サービスは継続された。そして、いよいよ10月1日。本格的な商用サービスとして、FOMAはスタートした。エリアは東京を中心とし、国道16号線の内側がひとつの目安とされているが、年内にも関西エリアなどでサービスが開始され、2002年には全国展開が図られる予定だ。

 そんなFOMAの先陣を切るのが今回紹介するNEC製端末「FOMA N2001」(以下、N2001)だ。現在、FOMA端末は3機種がラインアップされているが、N2001は通話やiモード、データ通信などを利用するための「スタンダードタイプ」として位置付けられている。N2001と言えば、試験サービス向け端末で有機ELディスプレイを搭載していたことが注目を集めたが、商用サービス向け端末にも継承されている。余談になるが、ケータイ Watchや筆者のコラムでは「N2001は有機ELディスプレイを搭載していると見られる」と書いたが、これは各方面への取材などで有機ELディスプレイであることが確認できたものの、NTTドコモやNECが正式発表していなかったため、あのような形で表記することになった次第だ。

 さて、FOMA端末の標準モデル的存在に位置付けられたN2001だが、基本的にはN503iやN210iなど、一連のNEC端末の流れを継承するデザインとなっている。N2001がW-CDMA方式を採用するため、ハードウェアの仕様は異なるものの、メニュー周りを中心にした使い勝手は似通っている。FOMAサービスそのものについては、改めて記事を掲載する予定なので、今回は端末の出来を中心に見てみよう。


有機ELディスプレイを搭載したスマートなボディ

 製品の細かいスペックなどについては、NTTドコモやNECの製品情報ページ、ケータイ新製品SHOW CASEを参考にしていただくとして、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。

 まず、ボディはNシリーズおなじみの折りたたみデザインを採用している。サイズは異なるが、蝶つがいの部分のデザインはN503iやN503iSなどと同じだ。しかし、ディスプレイ部分が薄いため、N503iやN503iSなどと全体的なテイストが異なり、スマートかつシャープな印象を受ける。ディスプレイの背面側には不在着信や新着メールの確認、録音などができる背面ボタン、左側面にはイヤホンマイク端子と外部接続端子を備える。ちなみに、外部接続端子はPDC端末と異なり、FOMA端末用の新しい形状のものが採用されている。

 ボタン部分の背面にはバッテリーを装着できるようになっているが、IMT-2000から義務づけられているUIMカード(FOMAカード)のスロットはバッテリー装着部の内側に備えられている。UIMカードはスロット部に押し込むように装着し、取り外すときはUIMカードの頭を押すと、少し飛び出す構造になっている。PDAなどにSDカードを挿す構造によく似ているが、スロット部の横には脱落防止のために、ロックレバーが備えられている。このロックレバーをロック側にセットしないと、バッテリーは装着できないようになっている。複数の端末を持っていない限り、あまり頻繁に利用するものでもないが、N2001のUIMカードスロットはP2101Vのものに比べると、あまり着脱がしやすい構造とは言えない。


背面 UIMカード
 背面ボタンは不在着信や新着メールの確認などがワンタッチでできる。  IMT-2000で義務づけられたUIMカード(FOMAカード)はバッテリー装着部内のスロットに挿す。ロックレバーが小さく、着脱はしにくい。

 ディスプレイは前述の通り、4096色表示が可能な有機ELディスプレイを採用している。有機ELディスプレイは自己発光をするため、バックライトなどが必要なく、ディスプレイ部の薄型化や省電力化が可能とされている。確かに、N2001のディスプレイ部は他の折りたたみデザインの端末と比べても薄く、暗いところでの視認性もかなり良好だ。ただ、太陽光の下での視認性は今ひとつで、503iシリーズで言えば、SO503iSなどよりも少し見えるかなといった程度だ。ちなみに、N503iやN503iS同様、GIF形式やJPEG形式の画像表示は可能だが、PNG形式には対応していない。

 ボタン類はPDC端末のNシリーズと大きく異なるデザインを採用している。中央に風車、または手裏剣のようなデザインのマルチファンクションキーを備え、左上に[文字/メール]ボタン、右上に[電話帳/ファンクション]ボタン、左下に[CLR(クリア)]ボタン、右下に[Menu]ボタンというレイアウトになっている。マルチファンクションキーは方向キーと決定ボタン組み合わせたもので、中央の決定ボタンは独立しており、方向キーとの間の部分が通話中などに青く点滅する仕様になっている。方向キーと決定ボタンを一体化したレイアウトはPDC端末のN210iなどのデザインを継承するものだが、N503iやN503iSと比べると、N2001の方が使いやすい。

 ちなみに、iモードボタンなどが備えられていないが、決定ボタンの長押しでiモードのメニューが呼び出せるようになっている。長押しはメールボタンがメールやメッセージの問い合わせ、電話帳ボタンがiアプリのメニューなどに割り当てられている。

 ただ、筆者が購入した端末はバッテリー装着部分に少し歪みがあるようで、ボタンを押していると、ギシギシと軋みが感じられる。編集部で購入した端末ではこうした現象が見られないため、おそらく個体差だろうが、決して安い買い物ではないので、購入を検討している人は実際の端末を触ってチェックすることをおすすめしたい。


有機EL ボタン
 有機ELディスプレイを搭載。自己発光をするため、屋内での視認性はかなり良い。太陽光の下では今ひとつ。  風車、または手裏剣のようなデザインのマルチファンクションキーを装備。操作性はN503i/N503iSなどよりも良好。ただ、ゲームプレイ時に[CLR]ボタンを押し間違うことも……。

マルチアクセスは便利?

マルチアクセス

 iモード接続中に[Menu]ボタンを押すと、iモードに接続したまま、メニュー画面が表示される。上半分の背景が白くなっているのはiモードに接続中であることを示す。通常は下半分と同色になる。
 一方、機能や使い勝手はどうだろうか。N2001は前述のように、メニューや機能の構成をPDC端末のNシリーズから継承している。なかでもメニュー周りの構成はN50xシリーズの流れを受け継いでいる。

 まず、着信音はN503iなどと同様の16和音に対応している。スピーカーはバッテリー装着部の隣に備えられており、音量も十分だ。標準で登録されている着信メロディにあまり目立ったものはないが、いわゆる「着声」を楽しむこともできる。N503i/N503iS用の着信メロディであれば、問題なく再生できるようだ。

 iアプリもN503iやN503iSをそのまま受け継いでいるようで、処理速度もあまり変わらないように見受けられる。ただ、一部のiアプリで画面表示が一時的に崩れたりすることもあり、完全に互換性があるとは言えないのかもしれない。公式メニューで公開されているN503i及びN503iS用のiアプリで、N2001では利用できないものがある。今後、動作検証などが進めば、少しずつ対応iアプリが増えてくるのだろうが、正式な商用サービスが開始されたのにも関わらず、PDC端末のときと同じような感覚で使えないのは少々残念なところだ。

 メール周りの機能では、FOMAのiモードメール機能が拡張されたことを受け、受信メールの最大件数が500件まで拡張されている。ただ、N503iSに搭載されていたフォルダ管理の機能はなく、仕様的にはN503iに近いものとなっている。おそらくN2001は試験サービス開始に合わせて設計されていて、同じ時期にN503iが開発されていたためだろう。10月からの正式な商用サービス開始に合わせ、この部分だけでもN503iS相当にして欲しかったところだ。

 また、FOMAならではの機能として、N2001には「マルチアクセス」という機能が搭載されている。マルチアクセスはパケット通信をしながら、同時に通話もできるというものだ。たとえば、通話をしながら、待ち合わせ場所などのメモをメールで同時に送ったり、PCと接続してパケット通信をしながら、通話をするといった使い方ができるわけだ。マルチアクセスが利用できるFOMA端末は、今のところ、N2001のみとなっている。


 一見、便利そうに見えるマルチアクセスだが、通話をしながらメールを書くにはイヤホンマイクを接続しなければならず、あまり使い勝手がいいとは言えない。もちろん、N2001を耳に当て、メールを書いたり、コンテンツを見るときは手のひらに持つという使い方もできるが、iモードを利用している間は相手に通話を待ってもらわなければならず、その間にもいずれかに通話料が発生してしまう。Bluetoothヘッドセットなどが登場して、利用環境が整ってくれば便利だろうが、現時点では今ひとつ使いにくいというのが率直な感想だ。

 これに対し、実用的なのが2つの作業を同時にできる「マルチタスク」だ。たとえば、iモードサイト閲覧中にアクセサリの電卓を起動して計算をしたり、テキストメモを使うといったことが可能になるわけだ。タスクを切り替えた後、元のタスクに戻るところがややわかりにくい印象はあるが、なかなか便利な機能であり、実用性もかなり高いと見られる。

 この他にもいろいろな機能が搭載されているが、実用レベルで考えた場合、やはり気になるのが電池の持ち具合いだ。以前、J-フォンのJ-SH07を紹介したとき、『場合によっては予備の電池パックを購入した方が……』という話を書いたが、FOMA端末は方式が違うこともあり、電池の減り具合はJ-SH07の比ではない。標準セットには電池パックが2個ついてくるのだが、長時間、出かけるときはそれでも足りないことがある。たとえば、先日、約30時間近く外出しっぱなし(つまり、缶詰になってた(笑))で、まったく充電できない状態が続いたことがあった。このとき、たまたま充電器を携行していなかったため、N2001は2本の電池パックをきれいに使い切ってしまった。週末に差し掛かっていたため、通話やiモードはあまり使わなかったのに、2本とも使い切ったのは少々驚かされた(予想してたとは言え……)。FOMA端末を使う上で、予備の電池パックと充電器を携行することは、もはや必須と言えるだろう。


FOMA端末のスタンダードらしい仕上り

 さて、いつもの「買い」の診断……と行きたいところなのだが、FOMAについては正直に言って、まだとても「買い」と言える段階にはない。法人ユーザーやマニアならともかく、一般的な個人ユーザーが購入するには高価であり、エリアも決して十分とは言えない。電池の持ち具合いも実用レベルに達していない。これらの点については、別途取り上げる予定なので、そちらを待っていただくとして、ここではすでに「FOMAを買う」という覚悟を決めた人のために、「買い」の診断をしてみよう。

 N2001が他のFOMA端末(といっても現時点では合計3機種しかないが)に比べ、優れているのは『PDC端末と変わらないサイズに収められていること』『マルチアクセスやマルチタスクが使えること』『回線交換による64kbpsデータ通信と384kbpsパケット通信の両方が使える』などの点だろう。つまり、テレビ電話はいらないが、とりあえず、FOMAがどんなものなのかを知っておきたいユーザーなら、N2001は「買い」ということになる。他のPDC端末やcdmaOne、PHSなどをメインで使っていて、楽しみとして購入するユーザー向けということだ。ただ、P2101Vで利用できるテレビ電話は、今までの携帯電話にない使い方として注目を集めており、「これを楽しめないのは……」というユーザーは見送りということになる。

 サービスとしてはまだまだ課題が山積しているFOMAだが、N2001はFOMA端末のスタンダードとして、ソツなくまとめられており、端末としての満足感も比較的高い。ただ、メールやメニュー周りの機能がN503iS相当にならなかったのは残念なところだが、FOMAの記念すべきファーストモデルとして、価値ある端末であることは確かだ。次なるモデルで、FOMA端末がPDC端末と機能面でどのように差をつけていくのかなども注目したい。


・ FOMAサービスニュースリリース(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/01/whatnew0925.html
・ FOMA N2001製品情報(NTTドコモ)
  http://foma.nttdocomo.co.jp/catalog/term/n2001.html
・ FOMA N2001製品情報(NEC)
  http://www.nec.co.jp/mobile/ja/lineup/n2001/

FOMA N2001(レッド)
FOMA N2001(試験サービス用)
ドコモ、FOMA端末3機種を10月1日に発売
Act.3  トゥモロー・ネバー・BUY?


(法林岳之)
2001/10/23 12:12

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