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らくらくホンII「F671i」は新しい市場を切り開けるか?
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


発売以来、ジワジワと人気上昇中

 今や6000万契約を突破した携帯電話・PHS。これをさらに伸ばすために期待されているのが新しいマーケットの開拓だ。そんな中、発売以来、ジワジワと人気を集めているのがNTTドコモのらくらくホンII「F671i」だ。発売から少し時間が経ってしまったが、実機を試用することができたので、レポートをお送りしよう。


おとーさん、おかーさん。iモードですよ。

F671i

 NTTドコモ/富士通『らくらくホンII F671i』。サイズ:46(W)×135(H)×17(D)mm(フリップを閉じた状態)、87g。プレシャスゴールド(写真)のみをラインアップ。
 メールやコンテンツ閲覧機能が搭載されて以来、携帯電話やPHSはますます高機能化が進み、端末のデザインも大きく変化してきている。ほんの数年前まで、メロディが鳴ること自体が珍しかったものが、今や16和音対応着信メロディが当たり前となり、ディスプレイもカラー液晶が標準(というより、モノクロ液晶の端末を探す方が難しい)になっている。こうした携帯電話やPHSの高機能化に伴い、サービスを利用するユーザー層は拡大し、最近では小中学生までもが携帯電話やPHSを持ち歩いているという。

 しかし、すべての人がこうした高機能な端末を求めているわけではなく、なかには「もっとシンプルで使いやすい端末が欲しい」という声も多い。特に、40~50代以上の中高年を中心とするユーザー層にこうした声が多く聞かれる。この年齢層の人たちは「アクティブシニア層」とも呼ばれ、さまざまな商品の新しいマーケットとして注目されている。40~50代以上ともなれば、一人立ちした子どもがようやく親の手を離れる年代層であり、自分のための時間を楽しもうと考えている。かく言う筆者の両親もすでに60代であり、時には子どもたちが心配してしまうほど、アクティブに活動している。おそらく20~30代の読者諸兄のご両親も同じではないだろうか。

 今回紹介するNTTドコモの富士通製端末「らくらくホンII F671i」(以下F671i)は、こうしたアクティブシニア層を中心のターゲットとして開発された商品だ。ディスプレイの文字を大きくすることで見やすくしたり、操作メニューを簡易化することで使いやすくするなど、シニア層に配慮した工夫が随所に見られる。「らくらくホン」というシリーズは従来から存在したが、iモードに対応していなかったため、ほとんど話題になることはなかった。これに対し、F671iはその名の通り、iモード端末として設計されており、基本的な機能は50xシリーズや2xxシリーズとほぼ同等となっている。つまり、「お父さん、お母さんのためのiモード端末」というわけだ。

 こうしたマーケティング戦略が成功したのか、F671iは発売以来、好調な売れ行きを記録しており、本誌の売れ筋ランキングでもランクインを続けている。携帯電話の新しい市場のことも考慮しながら、F671iの実力を見てみよう。


やや大柄なフリップ式デザインのボディ

 製品の細かいスペックなどについては、NTTドコモや富士通の製品情報ページ、ケータイ新製品SHOW CASEを参考にしていただくとして、ここでは筆者が実機を試してみて、感じられたことを中心に紹介しよう。ただ、筆者もアクティブシニア層にはまだ遠い年齢であるため、必ずしもユーザー層の気持ちが理解できていないかもしれないが、その点はご容赦いただきたい。


フリップ ボリュームダイヤル
 ボディはフリップ式デザインを採用している。富士通製端末としては久しぶりの採用。  本体左側面には音量調節のためのボリュームダイヤルを装備。

ディスプレイ

 フロントライト式のTFTカラー液晶ディスプレイを搭載。視認性は屋内外ともに良い。
 まず、ボディはフリップ式デザインを採用している。フリップ式デザインと言うと、三菱電機製のDシリーズを連想するかもしれないが、富士通は過去にフリップ式デザインを採用したことがあり、実績面で特に問題はない。本体側面には音量調節が簡単にできるダイヤルを備え、背面には音声読み上げ機能のためのボタンも備える。ボディは最近のフリップ式デザインやストレートデザインの端末よりもやや大柄だが、比べてわかる程度で、実際の持ったときの違和感はない。

 液晶ディスプレイは120×160ドット/4096色表示が可能なTFTカラー液晶を採用している。サイズやスペック面から考えて、おそらくF503iSとほぼ同じ液晶パネルを採用していると見られる。視認性はなかなか良好で、室内外のどちらでも自然に見ることができる。ちなみに、表示フォントは20ドット(6文字×6行)が標準となっており、12ドット(10文字×9行)表示に変更することも可能だ。老眼鏡が必要とまではいかないが、本や書類を少し離して見てしまうような人にとって、F671iの表示はかなり心強いものだろう。


ワンタッチダイヤルボタン ボタン
 フリップにはワンタッチダイヤルボタンが3つ並ぶ。フリップを閉じたままで掛けられる。  ダイヤルボタンはいずれも長方形。左上のクリアボタンで受話音質を変更することもできる。

 ボタン類は中央にレバーボタン、左右に発話/終話ボタンを配し、フリップ上には3つのワンタッチダイヤルボタン、マナーボタンをレイアウトしている。発話/終話ボタンはソフトキーの役割も持っており、待受時は発話ボタンに電話帳機能、終話ボタンはリダイヤル機能が割り当てられている。レバーボタンの下方向が着信履歴、上方向がメールメニュー、押下時は機能メニューが呼び出せるようになっている。フリップ内部にはダイヤルボタンの他、クリアボタンと文字ボタンがレイアウトされているが、いずれのボタンも長方形を基本としているため、非常に押しやすい。

 ただ、各ボタンのレイアウトや機能の割り当てについては、まだまだ改良の余地があるだろう。画面上にガイドが出るとは言え、場面ごとに発話/終話ボタンの割り当て機能が変わったり、レバーボタンの上下に割り当てられている機能に相互関係がないことなどは、はじめて端末を触る人にとって、戸惑う要因になりそうだ。誤操作防止の簡易ロックが他の機種と同様のメニューボタンの長押しというのも今ひとつだ。また、F671iが従来のらくらくホンと違い、iモードのメールとコンテンツ閲覧ができることを考慮すれば、iモードボタンやメールボタンなどをフリップ上に配するという方法も考えられるだろう。F671iでiモードを使うには、レバーボタンを押し、上下にメニューを移動させて選択する必要があり、やや煩雑な印象が残る。もっと快適性を重視した機能割り当てを期待したい。


簡単メニュー

 「簡単メニュー」はフォントサイズも大きく、メニュー構成もシンプルだ。
 F671iには機能面でもいくつか注目すべき点がある。たとえば、機能を呼び出すためのメニューを簡素化した「簡単メニュー」が標準となっている点もそのひとつだ。本体中央のレバーボタンを押したときに表示されるメニューは、「電話してきた相手を見る」「留守番電話の設定」「伝言メモの起動と再生」「メールを使う」「iモードを使う」「電話番号を見る」「着信音を選ぶ」「目覚しの設定」」「電卓機能を使う」「サービス問い合わせ」「初めに行う設定」のわずか11種類しかない。この内のいくつかは階層化されたメニューが用意されているのだが、ひと通りの機能は簡単メニューのまま、利用することができる。もっと詳しいメニューで利用したいときは、「初めに行う設定」から「詳細なメニューへの切り替え」を選択すれば、50xシリーズや2xxシリーズと変わらないメニューが選択できるようになる。


 簡素化したメニューで機能を呼び出すやすくしたことは評価できるが、はたして、この簡易メニューで十分かというと、筆者にも今ひとつ自信がない。たとえば、機能をアイコンで表わすようにしたり、機能をもう少しうまく整理するなどの改良も考えられる。「これが正しい」とは言い切れないが、より使いやすいユーザーインターフェイスを目指して、今後の機種でも少しずつ改善されることを期待したい。

 F671iのもうひとつの注目点は、音声読み上げ機能だ。音声読み上げ機能はメニューやメールの内容などを音声合成で読み上げるというもので、読み上げるキャラクターを選択したり、読み上げの速度や範囲なども設定することができる。実際に使ってみると、パソコンの音声読み上げソフトと同じ調子で、メールやメニューが読み上げられる。街中で使うには少々気恥ずかしい気もするが、迷惑メールの「おバカな文章」を読ませて笑うという遊びもできる。

 しかし、音声読み上げ機能にはそうした不謹慎な目的ではなく、社会的にも重要な役割を担っている。それはハンディキャップの人たちにも携帯電話やiモードを楽しんでもらえるからだ。あまり知られていないが、J-フォン(当時のデジタルホングループ)がはじめて「SkyWalker」という名称でメール機能を実現したとき、ハンディキャップの人たちの間に口コミで広がったという話もあり、こうした人たちの携帯電話に対するニーズは意外に大きい。つまり、F671iの音声読み上げ機能や大きな文字での表示機能は、シニア層への普及だけを目指したものではないわけだ。


端末の出来はいいが……

 さて、最後にF671iの「買い」を診断してみよう。F671iはらくらくホンとしてはじめてiモードに対応したもので、随所に使いやすさに対する配慮が見られる端末だ。単純に表示できる文字を大きくしたり、ボタン類やメニューを簡素化するだけでなく、音声読み上げ機能により、受信メールやメニューの読み上げを可能にするなど、今までの端末にはない工夫も見られる。アクティブシニアと呼ばれるユーザー層に加え、ハンディキャップのユーザーにも可能性を広げることができる端末と言えるだろう。

 まず、F671iをオススメしたいのは、やはり、40~50代以上のシニア層だ。今や携帯電話はインターネットと同じように、生活に欠かすことができないインフラストラクチャのひとつであり、F671iはこれを手軽に体験することができる。必ずしもパーフェクトではないが、少なくとも既存の50xシリーズや2xxシリーズと同じレベルで比較できる端末であり、満足できるレベルに達している。すでに、NTTドコモの端末は持っているが、「iモードはよくわからないから要らない」と旧来の端末を使い続けている人たちにもぜひ検討していただきたい端末だ。また、同様に、iモードに興味を持つハンディキャップの人たちにも魅力的な端末ではないだろうか。


 ただ、欲を言えば、さらなる改良を重ね、端末としての完成度を高めてもらいたい。たとえば、前述のメニュー構成についてもさらにわかりやすくするための工夫をしなければならないし、ボタン類のレイアウトや機能の割り当ても再検討の必要があるだろう。すでに、50xシリーズや2xxシリーズを使ってきたユーザーから見ると、ややクセのあるユーザーインターフェイスに見えてしまう点も気になる。端末のボディカラーももう少し落ち着いたカラーリングを検討していただきたい。

 F671iは改良の余地が残る端末ではあるものの、製品としての方向性やコンセプトは高く評価できるものであり、シニア層へのクリスマスプレゼントとしても面白い候補と言えるだろう。

 しかし、サービスとしてのiモードを考えた場合、素直にシニア層にはおすすめしにくいという考え方もある。その主たる要因は迷惑メールだ。NTTドコモは迷惑メールの対策を行なっているとアナウンスしたが、筆者や編集スタッフの状況を見る限り、迷惑メールは減っておらず、むしろ増えている感すらある。F671iの想定ユーザーに対して、迷惑メールの受信にも料金が掛かっていることやメールアドレスを熟考して変更しなければならないこと、ユーザーが工夫して防衛しなければならないことなどをきちんと説明でき、なおかつ納得してもらえるだろうか。あのような迷惑メールの内容を見て、シニア層のユーザーはiモードメールに対して、どのようなイメージを持つだろうか。厳しい見方かもしれないが、こうしたマイナス面については、若年層よりもシニア層の方がシビアな考えを持っており、ひとつ間違えば、「iモード=良くないもの」というイメージを持たれかねない。どんなに優れた端末やコンテンツを提供できたとしても現在のiモードには、この問題がつきまとうため、素直に「おすすめ」とは言えないわけだ。新しい市場を切り開くには使いやすい端末だけでなく、「アクティブシニア」にも十分納得してもらえるサービスも必要ではないだろうか。


・ F671iニュースリリース(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/01/whatnew0827.html
・ F671i製品情報(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/products/keitai/unique/f671i/f671i.html
・ F671iニュースリリース(富士通)
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2001/08/27-1.html
・ F671i製品情報(富士通)
  http://www.fmworld.net/product/phone/f671i/

F671i(プレシャスゴールド)
ドコモ、音声読み上げ機能付きのiモード端末「F671i」


(法林岳之)
2001/12/18 11:01

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