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パケット通信にも対応したデジタルカメラ搭載端末「TS11」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


ツーカー初のパケット通信対応端末

 昨年、新しい料金システム「P@bit(パビット)」をスタートさせたツーカーは、10月からパケット通信のサービスを開始し、対応端末「TS11」の出荷も開始された。発売から少し間隔が空いてしまったが、筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。


PDCパケット通信で次世代に対抗するツーカー

TS11

 ツーカーセルラー東京『CyberGiga TS11』。サイズ:48(W)×94(H)×25(D)mm(折りたたみ時)、99g。ミッドナイトブルー(写真)、プラムシルバーの2色をラインアップ。
 昨年来、アナログ、デジタルに続く、第3世代の携帯電話サービスが注目を集めている。NTTドコモのFOMAに続き、今年はauやJ-フォンも次世代携帯電話のサービスを開始すると見られている。しかし、ツーカーは次世代携帯電話の免許を受けておらず、現行のPDCデジタル携帯電話を活用することで、コストパフォーマンスの高いサービスを提供する予定だ。FOMA端末のレビューなどを見てもわかるように、次世代携帯電話はまだまだその実力を十分に発揮できておらず、しばらくの間は現行サービスの方が実用的と言えそうだ。

 そういった意味で、ツーカーの選択は決して間違っていなかったわけだが、現行のPDCデジタル携帯電話がそのままでいいかというと、必ずしもそうではない。やはり、次世代携帯電話にある程度、対抗できるレベルのサービスを提供する必要があり、そのためには魅力的なサービスや端末の開発、インフラストラクチャの改良などが求められる。

 今回紹介する三洋電機製端末「TS11」は、ツーカーが新たに展開する高速パケット通信サービスに対応しているのが特長だ。ツーカーは昨年5月に、データ量による課金システム「P@bit(パビット)」をスタートさせているが、今回の高速パケット通信サービスにも同じプランが適用される。昨年5月の時点ではJ-フォンと同じように、いわゆる疑似パケット通信しか提供していなかったため、必要に応じて、回線の接続と切断をくり返していたが、今回は正式にiモードなどと同じパケット通信サービスの提供をスタートさせたわけで、ユーザーの利便性も大きく向上することになる。

 また、昨年は同じ1.5GHz帯を利用するJ-フォンが「写メール」で躍進したが、今回紹介するTS11もいち早く小型のデジタルカメラを搭載し、ほぼ同等の環境を実現している。これらのことからもわかるように、TS11は今後のツーカーの動向を見る上でも非常に重要な端末と言えそうだ。データ通信の使い勝手なども見ながら、出来を見てみよう。


6万5536色表示が可能なTFT液晶を搭載

折りたたみ時

 今や三洋電機の得意技になりつつある折りたたみデザイン。背面には「お知らせディスプレイ」を備える。
 製品の細かい仕様などについては、ツーカー各社や三洋電機、三洋テレコミュニケーションズの製品情報ページ、ケータイ新製品SHOW CASEを参考にしていただきたい。ここでは筆者が購入した端末を試用した印象を中心にお伝えしよう。

 まず、ボディは各事業者向け三洋電機製端末でおなじみのおりたたみデザインを採用している。液晶ディスプレイの背面側に「お知らせディスプレイ」と呼ばれるサブディスプレイを装備し、蝶つがい部の横にアンテナを格納している。サイズ的にも他事業者向けのものとほぼ変わらない。デザインを大きく変えないことには賛否両論があるだろうが、これだけ同系統のデザインを採用し続けていると、形状を見るだけで「あ、それ三洋ね」と連想できるほどになってくる。メーカーとしてはそれが狙いなのかもしれないが……。


液晶ディスプレイ

 液晶ディスプレイは半透過型TFTカラー液晶を採用。6万5536色表示が可能。発色も良好で、光源もなかなか明るい。
 ディスプレイは120×160ドット表示が可能な2インチ半透過型TFTカラー液晶を採用している。表示色数は6万5536色とトップクラスで、屋内外ともに視認性は良好だ。同系統デザインの他事業者向け端末はフロントライト式の液晶を採用していたため、発色が今ひとつだったが、TS11はさすがに発色も良く、写真なども比較的見やすい。メール表示やEZwebのコンテンツ閲覧中などでは、文字サイズを変更することができ、最大144文字まで表示させることが可能だ。ただ、同社製端末に採用されているフォントはやや好みの分かれるところかもしれない。

 背面のお知らせディスプレイは本体を閉じたままでも時間、電波状態、バッテリーの状態などが確認で切るもので、7色のバックライトで着信してきた相手を特定することも可能だ。


 ボタン類は中央にカーソルキーと決定キーを一体化したボタンを配し、左右上には場面ごとに機能が変わるフレキシブルキー、左にEZ/メニューキー、右にメール/クリアキーがレイアウトされている。右側面に備えられたサイドキーは伝言メモ機能が割り当てられているが、後述するデジタルカメラ利用時のシャッターにも使われる。ちなみに、電話帳を呼び出すとき、[1]~[#]のいずれかのボタンを長押しすると、それぞれのボタンに割り当てられた行のリストが表示される。たとえば、[7]を長押しすれば、ま行に登録されたメモリダイヤルが表示されるわけだ。


ボタン メモボタン
 ボタンはカーソル/決定キーを中心にレイアウト。カーソル/決定キーはサイズも適切で押しやすい。  側面にはメモボタンを装備。カメラモード時はシャッターとしても使える。ボディを開くときなどに、不用意に触ってしまうことも多い。

小型デジタルカメラを搭載

パケット

 なぜか機能一覧メニューに表示されない「パケットエリア」の設定。しかも電源を切ると、自動的にOFFになる。
 続いて、機能面について見てみよう。冒頭でも触れたように、TS11はツーカーが昨年秋から開始したパケット通信に対応している。TD11のレビューでも紹介したが、ツーカーのパケット通信のシステムは非常にユニークなもので、パケット通信と疑似パケット通信を混在させながら、ユーザーにそれを意識させないように構築されている。パケット通信の速度は最大28.8kbpsで、EZwebのコンテンツを閲覧する環境としてはcdmaOneで標準的に利用されている14.4kbpsよりも高速ということになる。

 ただ、すべてのエリアでパケット通信が利用できるわけではなく、従来通りの疑似パケット通信を利用するエリアも多い。TS11がパケット通信と疑似パケット通信のどちらを利用しているのかは、パケットエリアの表示を変更することで確認できる。待受画面から[M][9][4]で設定すると、アンテナマークの横に[P]のマークが表示されるようになる。ただ、このパケットエリア表示の設定はなぜか出荷時にOFFになっており、機能メニューにも表示されない。マニュアルで設定を見つけて、コマンドを入力する以外に表示させる方法がないのだ。しかも、表示をONに設定した状態で電源を切ると、再びOFFに戻ってしまう。これがどういう意図なのかは理解しかねるが、せっかくパケット通信に対応したのであれば、出荷時に表示をONにするのが筋であり、電源を切っても消えないようにするべきではないだろうか。ユーザーにパケットエリア内かどうかを一喜一憂させたくないのかもしれないが、ユーザーの立場から見れば、「せっかくパケット通信対応端末を買ったのに……」とガッカリしてしまう。

 ちなみに、都内数カ所で試してみたところ、常にパケット通信が利用できるようではなく、[P]の表示を見る機会はあまり多くない。しかし、EZwebのコンテンツ閲覧などは軽快であり、ストレスなく使うことができた。今後のネットワークの拡充によって、パケット通信の利用できるエリアは、徐々に広がっていくだろう。


カメラ

 背面に備えられた小型デジタルカメラ。バッテリーのロック機構の隣には小型ミラーを備える。
 一方、TS11のもうひとつの特長とも言えるのが背面に装備されている小型カメラだ。メカニズム的には三洋電機がJ-フォン向けに供給しているJ-SA03と同じもので、7万画素のCMOSイメージセンサーを採用しており、カメラ部の横には自分撮りやツーショット撮影に便利な小型ミラーも備える。シャッターは中央の決定ボタンに割り当てられているが、端末を横向きに持ったときに使えるように、側面のサイドキーもシャッターとして利用できる。撮影した画像は120×120ドットのJPEG画像で、最大40枚まで保存することができる。撮影した画像にフレームやマーカースタンプを付加したり、PNG形式に変換することもできる。また、画像をEZweb@mailでメールに添付して送信できる他、メモリダイヤルに割り当てたり、待受画面などに利用することも可能だ。

 カメラモードへは待受画面から[*]の長押しで切り替えられ、最初に保存画像のサムネイルが表示される。撮影したいときはフレキシブルキーを押して、撮影モードに切り替える必要がある。明るさやホワイトバランスが調整でき、セルフタイマーも使えるため、いろいろなシーンで活用することが可能だ。ただ、ストラップの穴とカメラ部が非常に近いため、ストラップでカメラを塞いでしまうので、注意が必要だ。


サムネイル 拡大表示
 [*]の長押しで表示されるサムネイル画面。保存されている画像が4つずつ表示される。  サムネイル画面から画像を選択すると、拡大表示される。[編集]から画像フォーマットの変更が可能。[メニュー]から画像を添付してメールを作成できる。

サンプル

 ペットショップで撮影してみた画像。やや近すぎるくらいで撮った方がいいようだ。
 ところで、TS11をはじめ、最近のツーカー端末はEZweb@mailとSkyMessageという2つのメールサービスを利用することができる。TS11はメールボタンを押すとEZweb@mail、メールボタンの長押しではSkyMessageのメニューがそれぞれ表示される。ところが、この2つのメール機能の内容が統一されておらず、ややチグハグな印象が残る。たとえば、EZweb@mailは受信したメールをフォルダで管理できないが、SkyMessageでは4つのフォルダに分類することができる。本来なら、両方のメールサービスともにフォルダで管理できるようにすべきであり、欲を言えば、両方のメールサービスをシームレスに管理できる方が望ましい。これは一例でしかないが、どうもTS11は必ずしもツーカーのサービス特性を十分に考慮した機能構成になっていないように見える。


パケット通信対応は「買い」

 さて、最後に「買い」の診断をしてみよう。ツーカーが新たに提供を開始したパケット通信サービスに対応し、デジタルカメラも内蔵するというツーカー端末ではトップクラスのスペックを持つ。ディスプレイも6万5536色TFTカラー液晶を採用したことで、良質な画像を楽しむことができる。昨年、ベストセラーを記録したJ-フォンのシャープ製端末「J-SH07」にも匹敵するスペックと言えるだろう。その半面、ほぼ同じデザインを採用する端末が他事業者向けにも販売されており、今ひとつ個性に欠ける感も否めない。パケット通信に対応したのはいいが、ツーカー独自のサービスの特性を十分に活かした機能構成になっておらず、不満に感じられるところもいくつかある。

 まず、オススメしたいのは、EZweb@mail導入前のツーカー端末を持つユーザーだろう。EZweb@mailはTD11から導入されているが、ツーカー端末のメール機能はEZweb@mailが主力であり、SkyMessageはこれを補完するような位置付けになる。EZweb@mailは現在の携帯電話に搭載されるメールシステムとしてもトップクラスの機能を持っており、これを利用しない手はないからだ。パケット通信対応については積極性が今ひとつ感じられないが、効果があることは確かであり、今後、ツーカーのネットワークが充実してくれば、活躍するシーンも増えることになりそうだ。

 また、デジタルカメラ機能を活用したいユーザーにもオススメできる。120×120ドットの画像はPCなどに送るサイズとしてはあまり大きくないが、携帯電話同士で送受信するにはちょうどいいサイズであり、画質も不満のないレベルだ。

 難しいのは京セラ製「TK12」と比較しているユーザーだろう。TK12もTS11同様、パケット通信に対応しているが、TS11にはデジタルカメラというアドバンテージがあるのに対し、TK12はデータフォルダが500KBと大きく、コンテンツをたくさんダウンロードすることができる。このどちらのアドバンテージを重視するのかによって、TS11とTK12のどちらを選ぶのかを判断するしかないだろう。ただ、現時点ではデジタルカメラ機能の面白さを推したいところだ。


・ TS11 ニュースリリース(ツーカーセルラー東京)
  http://www.tu-ka.co.jp/news/release/010820.html
・ TS11 製品情報(ツーカーセルラー東京)
  http://www.tu-ka.co.jp/line_up/ts11.html
・ TS11 製品情報(三洋テレコミュニケーションズ)
  http://www.stel-web.com/line_up/ts11/

TS11(ミッドナイトブルー)
ツーカー、パケット通信対応「TS11」はTFT液晶・カメラ搭載
ツーカーの成否を握るP@bit&EZweb@mail対応「TD11」


(法林岳之)
2002/01/15 12:01

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