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史上最強ケータイ「J-SH51」を活かすのは?
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


魅力的な機能やスペックを満載した高機能端末

 J-フォンが今年3月から開始したパケット通信サービス。その対応端末第1弾として登場したのが「J-SH51」だ。高品質液晶やモバイルカメラ、SDメモリカード対応など、魅力的な機能やスペックを満載した端末に仕上げられている。筆者も機種変更で端末を購入したので、レポートをお送りしよう。


パケット通信サービス対応端末第1弾

J-SH51

 J-フォン/シャープ『J-SH51』。サイズ:50×96×28mm(折りたたみ時)、108g。ハイドロシルバー(写真)、アストロネイビー、バイオピンクをラインアップ。
 今年3月、国内シェア第2位を獲得したJ-フォン。「写メール」がその原動力になったのは誰もが認めるところだが、その一方で以前から「パケット通信を採用していない」ことに対する不満の声もよく耳にする。パケット通信はやり取りするデータを小さく区切って送受信する通信方式で、iモードやEZwebなどの非音声通信に利用されている。これに対し、J-フォンはパケット通信を導入していないため、必要に応じて、その都度、接続と切断をくり返す「疑似パケット通信」とも言える方式を採用していた。そのため、コンテンツ閲覧のレスポンスが今ひとつだったり、コンテンツ閲覧時の通信コストが割高に感じられるといった不満があった。

 J-フォンではこうしたユーザーのニーズに応えるとともに、非音声(データ通信)利用のコストパフォーマンスを高めるため、今年3月からパケット通信方式を導入した。ベストエフォート式での通信速度は最大28.8kbpsで、通信料金はNTTドコモのiモードと同じ1パケットあたり0.3円に設定されている。また、メールシステムなどもパケット通信向け「スーパーメール」が導入されるなど、さまざまな面で改良が図られている。

 今回紹介するシャープ製端末「J-SH51」は、このパケット通信サービスに対応した第1弾の端末だ。端末は昨年11月に発表されていたが、発売はパケット通信サービスが開始された今年3月からとなった。おそらくパケット通信のネットワーク設備の準備が遅れたため、J-SH51の発売も遅らさざるを得なかったと想像しているが、発表から発売まで4カ月もの期間を空けてしまうのはいかがなものだろうか。

 発売までのタイムラグが大きかった割には、J-SH51は非常に好調なすべり出しを見せているようだ。発売から間もなく2カ月から経過するが、地域によってはまだ品薄の状態が続いており、入手できないとも言われている。この好調な売れ行きの理由のひとつとして挙げられるのが今までの端末にはないほど、高機能かつ高スペックである点だ。動画撮影にも対応した31万画素モバイルカメラ、1670万色相当のTFTカラー液晶ディスプレイ、SDメモリカードスロット搭載など、2002年に登場した端末の中でも1、2を争うハイスペックを実現しており、「史上最強ケータイ」の称号に相応しい端末と言えるだろう。


1670万色相当表示が可能なTFTカラー液晶を採用

背面

 背面にはおなじみのモバイルカメラを内蔵。31万画素のCMOSイメージセンサーを採用。
 製品の細かいスペックなどについては、シャープやJ-フォンの製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただきたい。ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心にお伝えしよう。

 まず、ボディは折りたたみデザインを採用しているが、従来のJ-SH07がやや直線的なボディだったのに対し、J-SH51は全体的に丸みを帯びたデザインを採用している。J-SH07と比べ、実寸では幅や厚さ、奥行がぞれぞれ約2~4mmずつ増えており、ボディがひと回りやや大きくなった印象もあるが、本体右側面にSDメモリーカードスロットを装備したことを考慮すれば、納得するしかないだろう。液晶ディスプレイ部の背面には31万画素のモバイルカメラを内蔵し、隣にはおなじみのミラーも備える。J-SH08のような背面液晶ディスプレイは備えていないが、LEDで受信メールの有無などを確認することができる。

 液晶ディスプレイは1670万色相当の表示が可能な約2インチTFTカラー液晶を採用している。従来のJ-SH07でも視認性の良さには定評があったが、J-SH51では透過率や導光板の改良などにより、J-SH07の約2倍の明るさを確保している。気になるディスプレイの周りの消費電力はバックライトの給電回路を新たに設計したため、J-SH07よりも省電力化を実現しているという。

 ボタン類は中央に円形のマルチガイドボタンを配し、左上に[J-スカイ]ボタン、右上に[ダイレクトキー]をレイアウトしている。J-SH07では左右上のキーと一体化したデザインを採用していたが、それぞれのキーを独立させたレイアウトにすることにより、操作感を向上させている。ちなみに、J-SH07では右上ボタンにメール機能が割り当てていたが、J-SH51の[ダイレクトキー]にはよく使う機能やデータなどを登録するショートカットメニューを呼び出せるようにしている。たとえば、[ダイレクトキー]+[1]で「メール」メニューを呼び出すといった具合いに使える。


ディスプレイ キーレイアウト
 液晶ディスプレイは約2インチTFTカラー液晶を採用。液晶ドライバなどにより、1670万色相当の表示能力を実現。  キーレイアウトはJ-SH07の連結スタイルから完全分離に変更された。右上がショートカットボタン。

デジタルカメラ並みに活用できる内蔵モバイルカメラ

サンプル

 デジタルカメラモードで撮影してみた。曇天だったため、今ひとつだが、このサイズ(640×480ドット)で撮れるのは便利だ。
 J-SH51はJ-フォンのパケット通信サービス対応端末第1弾だが、端末のハードウェアにも注目すべき点が非常に多い。

 まず、写メールでおなじみの内蔵モバイルカメラは、前述のように31万画素CMOSイメージセンサーが採用されており、最大640×480ドットのVGAサイズでの撮影が可能だ。従来のJ-SH07のモバイルカメラは11万画素CMOSイメージセンサーだったこともあり、携帯電話の待受画面などに適したサイズだったが、J-SH51のモバイルカメラはパソコンにSDカード経由で転送しても見栄えのするレベルで撮影できるわけだ。

 J-SH51のモバイルカメラでは「モバイルモード(120×160ドット/JPEG)」「デジタルカメラモード(640×480ドット/JPEG)」「ムービーモード(80×60ドット/Nancy形式動画)」という3つのモードが利用できる。モバイルモードは従来の写メールにズーム機能が追加された程度(と言っても画質は数段上)だが、デジタルカメラモードは最大解像度で撮影し、SDメモリカードに画像を保存する。このときに保存する形式は「DCF」と呼ばれるデジタルカメラ用の画像ファイルシステムに準拠しており、DCF形式に対応したプリンタなどで直接、印刷することができる。

 ムービーモードについてはすでにテレビCMなどでも話題になっているが、約5秒間の動画を音声といっしょに録画できるというものだ。ムービーモードで撮影した動画は「ムービー写メール」として送信すれば、J-xx51シリーズやパソコンで再生することができ、パソコンで再生するときは「Nancy Player for PC」(オフィス ノア)が必要になる。ムービーモードは撮影できる画面サイズがあまり大きくなく、1秒あたりのコマ数も少ないため、『パラパラマンガ的な動画』という印象は残るが、逆にその特性をわかって使えば、テレビCMのように「気持ちの伝わるムービー写メール」ができるかもしれない。ちなみに、現時点で「端末のみで動画を撮影し、送信できる」という端末は、J-SH51をはじめとするムービー写メール対応端末に限られており、そういった意味から考えてもJ-xx51シリーズは非常に存在意義が大きいとも言えるだろう。


魅力的なSDカードスロット

SDカードスロット

 本体右側面にはSDカードスロットを装備。パッケージには8MBのSDメモリカードが標準添付される。
 J-SH51でもうひとつ注目されるのが「SDメモリカードスロット」の搭載だ。すでに、九州松下電器がDDIポケット向けPHSとしてSDメモリカードスロット搭載端末を販売しているが、携帯電話としてはJ-SH51が初採用ということになる。J-SH51に利用できるSDメモリカードは付属の8MBタイプの他、16/32/64MBタイプが対応となっている。「128MBタイプを利用している」という例も耳にするが、開発元のシャープによれば、本体バッテリーの残量が少ないときでもきちんと書き込みができることを考慮した上で、最大サイズを64MBタイプまでに設定したそうだ。対応サイズを超えるSDメモリカードは基本的に動作保証外であり、どうしても利用したいときはリスクを覚悟した上で……ということになる。また、カードの抜き差しも端末の電源OFFが原則なので、このあたりも注意したい。

 J-SH51のSDメモリカードにはいろいろな活用方法が用意されている。前述のモバイルカメラの撮影画像の保存などもそのひとつだが、その他にも端末に保存されているデータ(メモリダイヤルやメール、Javaアプリ、待受画像など)を一括してバックアップしたり、音楽を再生できるミュージックプレーヤー機能などが利用できる。着信メロディや待受画像、Javaアプリの保存先としてSDメモリカードをも利用することも可能だが、コンテンツによってはSDメモリカードへの保存を認めていない(できない)ものもあるので注意が必要だ。

 メモリカードを利用したミュージックプレーヤーは、NTTドコモの「SO502iWM」やauの「C404S DiVA」にも搭載されてきたが、J-SH51も同じように、ポータブルCDプレーヤーなどと接続して、音楽CDからSDメモリカードに録音することができる。録音方式は「セキュアMP3」を採用し、光デジタルとアナログ入力のいずれでも録音することが可能だ。CDプレーヤーと接続するケーブルは市販品を購入する必要があるが、光デジタルとアナログの変換プラグ、ステレオヘッドホンはパッケージに同梱されている。録音機能としてはビットレート(96/128kbps)の変更や曲間を判別するレベルを設定できる「無音検出レベル設定」などがあり、再生もリピートやランダム、エフェクトなどの機能が用意されている。


 通常はCDプレーヤーからの録音で利用するが、パソコンなどでMP3化して、SDメモリカードに直接、転送したというニーズもあるだろう。このような場合は先日、アイ・オー・データ機器から発表されたUSB接続型SDメモリカード・リーダー/ライター「USB-SDRW」を利用するのが手だ。4月下旬出荷開始とのことなので、間もなく店頭に並ぶはずだ。

 ただ、これらの機能を使う上で、非常に気になるのがJ-フォン側から提供される情報の少なさだ。たとえば、SDメモリカードに保存できるJavaアプリの情報はJ-フォンのホームページに情報が掲載されておらず、セキュアMP3対応のSDメモリカード・リーダー/ライターの情報もメーカー任せとなっている。携帯電話にメモリカードを搭載し、さまざまなデータを保存できる機能は、ユーザーからのニーズもたいへん大きく、これからの携帯電話の進化にも欠かせないものと言われている。にも関わらず、J-フォン側から何ら情報が提供されていないというのはいかがものだろうか。

 ところで、気になるパケット通信によるコンテンツ閲覧だが、ベストエフォートということもあり、28.8kbpsという通信速度を十分に体感できるというほどのレベルではない。確かに、Javaアプリなどをダウンロードするときに「お、速いかな!?」と感じることもあるのだが、全体的に見れば、疑似パケット通信のときよりも少し速い程度だ。また、J-SH51でコンテンツ閲覧中に前のページに戻る操作をしたとき、「お待ちください」と表示されることが多いのも少し気になる。おそらく端末のCPUパワーに起因するものだろうが、欲を言えば、もう少し「サクサク感」のあるコンテンツ閲覧ができるとベターだ。

 この他にもJ-SH51には魅力的な機能が数多くあるのだが、あまりにも話題が多すぎるため、とてもここでは紹介しきれない。また、別の機会、あるいは別の記事で紹介できるようにしたい。


登録先変更 ミュージックプレーヤー
 コンテンツによっては『登録先変更(移動)』が選択できず、SDメモリカードに移動できないものがある。  ミュージックプレーヤーは光デジタル端子からのシンクロ録音にも対応。

パケット通信の料金設定は大いに不満

J-SH07、J-SH08、J-SH51

 着実に進化してきたJ-SH07(左)、J-SH08(中央)、J-SH51(右)。J-SH51にとって最大のライバルは、J-SH08かもしれない。
 さて、最後にJ-SH51の「買い」について見てみよう。J-フォン躍進の原動力となった写メールをさらに進化させた「ムービー写メール」、音楽プレーヤーやデータ保存領域として活用できるSDメモリカード対応、ノートPCなどに匹敵するレベルの高品質な液晶ディスプレイなど、J-SH51には非常に魅力的な機能が多い。同時に、J-フォンが新たに開始したパケット通信サービスにも対応し、今までよりも快適にコンテンツを閲覧することも可能だ。

 ただ、どうしても気になるのがJ-フォンのパケット通信の料金設定だ。すでに、本誌で従来の疑似パケット通信との比較記事を掲載しているが、パケット通信サービスの料金設定はハッキリ言って『割高』と言わざるを得ない。パック料金の契約などによって、多少の差異はあるものの、NTTドコモのiモード(PDC)が1パケットあたり0.3円、auのcdmaOne及びCDMA2000 1xは1パケットあたり0.27円が基本となっている。これに対し、J-フォンのパケット通信サービスは、iモード(PDC)と同じ1パケットあたり0.3円に設定されている。NTTドコモと同じPDC方式を採用しているため、しかたがないのかもしれないが、J-フォンがNTTドコモを追う立場にあることを考えれば、たとえ0.01円でも0.001円でも安く設定して欲しかったところだ。

 J-フォンは旧デジタルホン及び旧デジタルツーカー時代から、いち早くパック料金を導入したり、Eメールサービスを開始するなど、「コストパフォーマンスの高いサービス」をセールスポイントにしてきた事業者と認識されている。英Vodafoneグループ傘下に入ったことで、収益性を重視するあまり、従来のユーザーフレンドリーな部分が失われてしまったとすれば、非常に憂慮すべきことだ。

 これらの点を考慮すると、J-SH51をオススメできるユーザーは「ムービー写メール」と「SDメモリーカード」を重視したいユーザーということになる。この2つの機能はJ-xx51シリーズ端末、もしくはJ-SH51でしか利用できない機能だからだ。もし、写メールをたくさんやり取りしたいというレベルであれば、J-SH51と同等のモバイルカメラを内蔵したJ-SH08の方が従来方式を採用しているため、通信コストは割安になる。端末の価格も新規で1万円以上、機種変更で8000円以上違うのも気になる点だ。

 しかし、端末としてのJ-SH51は全通信事業者通じて、現時点で最も充実した機能とスペックを持つ「史上最強ケータイ」であり、完成度は非常に高い。ぜひ、J-フォンにはこれを活かすために、もう一度、料金設定や情報発信の体制を見直してもらいたい。どんなに優れた端末が発売されてもそれを活かす術がなければ、宝の持ち腐れになり兼ねないからだ。


・ ニュースリリース(J-フォン)
  http://www.j-phone.com/h/from/topics/1105.html
・ 製品情報(J-フォン)
  http://www.j-phone.com/movie-shamail/sharp.html
・ 製品情報(シャープ)
  http://www.sharp.co.jp/products/jsh51/

J-SH51(アストロネイビー)
J-フォン、SD対応の「J-SH51」とツインスピーカー搭載の「J-K51」
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(法林岳之)
2002/05/07 13:00

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