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プライバシーモードで安心して使える「F504i」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


いよいよ登場。504iシリーズ第1弾

 先日のビジネスシヨウ開催と同時に、いよいよ登場したNTTドコモの504iシリーズ。3Dエンジンを搭載したiアプリや赤外線通信など、503i/iSシリーズから一歩進んだiモードの世界を体験できるラインアップとして期待されている。その対応端末第1弾として登場したのが「F504i」だ。筆者も早速、機種変更で入手したので、レポートをお送りしよう。


キーワードは「サク サク ショック!」

F504i

 NTTドコモ/富士通『F504i』。サイズ:50×97×26mm(折りたたみ時)、105g。サムライブラック(写真)、サイバーブルー、フレッシュピーチをラインアップ。
 NTTドコモのFOMA、auのcdmaOne及びCDMA2000 1x、J-フォンの51シリーズなど、ここのところ、ケータイのダウンロード速度が向上し始めている。これに対し、NTTドコモのPDC方式によるiモード端末は、1999年2月のサービス開始以来、9.6kbpsという通信速度を維持してきた。

 iモードはNTTドコモが1997年からサービスを提供していたPDC方式によるパケット通信網「DoPa」を活用したものだ。DoPaはサービス開始当初から最大28.8kbpsという通信速度を実現していたが、データ転送量による従量課金を採用していたため、主にビジネスや企業ユースに活用されていた。1998年にはDoPaに最大9.6kbpsの「シングルサービス」が追加され、それが結果的にiモードに活用されることになる。「iモードのヒットの秘密はコンテンツにある」という話はよく耳にするが、技術的側面から見た場合、実は「DoPaがあればこその『iモード』」という見方もできる。

 今回発売された504iシリーズではダウンロード速度を最大28.8kbpsに向上させ、「サク サク ショック!」というキャッチフレーズとともに宣伝されているが、「DoPaから生まれたiモード」という流れから見れば、実は「元の速度に戻った」という解釈も成り立つ。

 今回紹介する富士通製端末「F504i」は、504iシリーズの第1弾端末として登場したものだ。NTTドコモの504iシリーズについてはゴールデンウィーク前から登場が噂されていたが、何らかの事情で発売がずれ込み、結局、ビジネスシヨウの開催と同時に発表ということになった。503iシリーズでは不具合による回収というニュースが相次いだが、今回は万全を期しての発売ということなのだろう。まったくの余談だが、筆者と編集部は当初、他メーカーの製品が504iシリーズの第1弾になると聞いていたのだが、いざ、フタを開けてみれば、またもや富士通製端末が先陣を切ることになった。

 504iシリーズには前述のダウンロード速度向上の他に、JPEG表示対応、赤外線通信標準装備、800MHz/1.5GHz帯デュアルバンド対応、DoPaデータ通信対応、iアプリの容量緩和、待受iアプリ、3Dポリゴンエンジン搭載などの仕様が共通化されている。JPEG表示や赤外線通信機能は一部の機種が503iシリーズ以前に実現しており、800MHz/1.5GHz帯デュアルバンド対応とDoPaデータ通信対応は211iシリーズに搭載済み。つまり、504iシリーズではじめて採用されたのは、待受iアプリや3Dポリゴンエンジンということになる。すでに多くのコンテンツプロバイダから対応コンテンツの配信が開始されているが、iアプリの容量緩和も考え合わせると、504iシリーズ最大の強みはiアプリの強化にあると言えそうだ。

 こうした504iシリーズならではの特長も踏まえながら、第1弾端末となるF504iの出来映えをチェックしてみよう。


背面ディスプレイに「有機ELパネル」を採用

背面

 背面には有機ELディスプレイを内蔵しているが、背面パネルとカラーを揃えることで、かなりスッキリとした状態に仕上げている。
 製品の細かいスペックなどについては、富士通やNTTドコモの製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただきたい。ここでは筆者が実際に購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。

 まず、ボディは従来モデルのF503iSを踏襲したもので、折りたたみボディを採用している。筆者が購入した「サムライブラック」には採用されていないが、「フレッシュピーチ」と「サイバーブルー」には背面側のパネルに「ダイクロック処理」を施すことにより、光沢のある質感の高い仕上りを実現している。ダイクロック処理は種類の違う物質を真空蒸着することにより、屈折率の違いを利用して発色する技術だそうだ。また、504iシリーズでは赤外線通信機能がサポートされているが、F504iでは背面パネル内に赤外線通信ユニットを埋め込み、背面パネルを処理することにより、外見からはわからないようにしている。デザイン的には優れているが、赤外線通信を使うとき、どのあたりを対抗する赤外線ポートに当てればいいのかがわかりにくい感もある。

 ボタン類もF503iSのデザインを踏襲し、中央にマルチカーソルキー、左上に[Menu]キー、右上に[メモリダイヤル]キー、左下に[iアプリ]キー、右下に[メール]キーというレイアウトになっている。ボディカラーによって、マルチカーソルキー及び周囲のキーのカラーが異なる点なども同様だが、F503iSで指摘していたマルチカーソルキーの下方向とクリアキーのサイズが似通っていて混同してしまうという点は、マルチカーソルキーのキーを大きくすることで対処している。この点はF503iSよりも操作しやすい。

 ディスプレイはF503iSのフロントライト式から6万5536色表示が可能な半透過型TFTカラー液晶に変更されており、解像度もF503iSの160×120ドットから175×132ドットの解像度が向上している。デジタル画像などを待受画像に設定するときの再現性もかなり良くなっている。また、ディスプレイの解像度向上に合わせ、表示フォントを12ドットから16ドットに変更し(標準フォント)、メール画面などでの視認性を向上させている。

 さらに、F504iは背面に有機ELサブディスプレイが搭載されている。有機ELパネルはすでにFOMA N2001にも採用されているが、NTTドコモが公式に「有機ELパネル搭載」を謳ったのはF504iがはじめてであり、PDC方式によるiモード端末でも初搭載ということになる。折りたたみ端末のサブディスプレイは今や定番となりつつあるが、F504iでは有機ELパネルの背景色をボディの背面パネルと合わせることにより、背面パネル部をスッキリとしたデザインにまとめあげ、有機ELサブディスプレイが発光するときは文字などが浮き上がるように表示される。有機ELパネルの特長を活かした上手な処理と言えるだろう。


ボタン 液晶
 マルチカーソルキーの4方向キーが少し大きくなり、[クリア]キーなどと混同しにくくなった。  半透過型TFTカラー液晶パネルを採用。解像度も向上したため、再現性がかなりよくなっている。

秘密を守るロック機能とプライバシーモード

メニュー

 アイコン表示の回転式メニューで構成され、アイコンを選ぶと各分類の機能のリストが表示される。
 機能面についても見てみよう。前述のように、504iシリーズではiアプリ関連の機能が強化されている。なかでも目新しいのは待受iアプリのサポートだろう。待受用Javaアプリケーションについては、すでにJ-フォンもauもサポートしているが、発売直後のコンテンツの充実ぶりは「さすがiモード」というしかない。また、F504iではJavaアプリ専用のCPUを搭載。[クリア]キーを押すことで、待受iアプリの状態と通常のiアプリの動作状態を切り替えられるようになっている。

 ただ、実際に使っている上で、いくつか気になる点も見受けられた。たとえば、J-フォンの待受Javaアプリでは端末によって、起動までの時間を設定できるのだが、504iシリーズにはそのような設定項目がない。また、アプリケーションによっては起動時にBGMなどが流れるが、これを制限する項目もない。F504iではボディを折りたたむことで待受iアプリのBGMを停止できるが、ボディを開いた状態で待受iアプリを見ているようなときは常にBGMが流れる仕様のようだ(マナーモードにすれば、BGMは流れない)。これらの項目はiアプリ側で処理できるのかもしれないが、もう少し音に対する配慮が欲しかったところだ。

 一方、高速化されたダウンロード速度についてだが、すでにJ-フォンが51シリーズで28.8kbpsパケット通信サービスを提供している。J-SH51のレビューでも紹介したように、ダウンロード速度はあくまでも最大値でしかなく、常に高速なブラウジングやダウンロードが体験できるとは限らない。当然のことながら、電波状況などに応じて、高速化されることもあれば、従来と変わらないこともある。実際に、F504iでコンテンツ閲覧やダウンロードを試してみたが、コンテンツのダウンロードでは速さを実感できるものの、コンテンツ閲覧ではiモードのコンテンツが元々、コンパクトに作られているため、速さを感じられるシーンはやや限られた印象だった。ただ、体感速度は非常にいい加減なものである上、実用ではある程度、慣れてしまう面もあるため、付加価値的に捉えておいた方がベターだろう。どちらかと言えば、画像やiアプリなどのコンテンツのダウンロードが多いユーザーにオススメという印象だ。


プライバシーモード

 プライバシーモードでは3つの項目について、設定が可能。電話帳のロックは発着信履歴なども表示されなくなる。
 504iシリーズ共通の機能はさておき、F504iの機能について紹介しよう。まず、メール周りではフォルダ管理、自動振り分けという今や標準的とも言える機能を搭載しているが、F504iではセキュリティにも配慮している点が光る。最近の多くの端末には、他人にメモリダイヤルやメールの内容などを見られないようにするため、簡易ロックやシークレット設定などの機能が搭載されている。F504iではこうしたセキュリティ機能を一段進化させ、シチュエーションを考慮したセキュリティ機能を実現している。

 たとえば、iアプリの画面を見せたいときなど、他人に端末を一時的に渡すことがある。F504iではこのようなときにマルチカーソルキーの上方向を長押しすることで、ワンタッチでプライバシーモードを起動することができる。プライバシーモードが起動された状態では、設定内容によって、電話帳の登録や修正、リダイヤルの表示、伝言メモの再生、シークレットに表示されたメールフォルダの内容表示などをできないようになっている。つまり、プライバシーに関わる情報はいっさい見られないように設定できるわけだ。

 また、端末をオフィスや自宅の机などにおいて、席を離れてしまうとき、同じように他人に見られてしまうことが考えられるが、F504iでは一定時間、操作をしていないと、プライバシーモードを自動的に起動するように設定が可能だ。ちなみに、プライバシーモードで選択できる項目のうち、強力なのがメール周りだ。たとえば、どうしても他人に見られたくないメールがあるとき、端末に機能があれば、特定のフォルダをシークレット設定にして、そこに保存しておくことがある。しかし、シークレットに設定されたフォルダが存在することを他人に見られてしまうと、「ちょっとアンタ。これナニよ」と問いつめられる可能性がある。そこで、F504iのプライバシーモードではシークレットに設定したフォルダそのものの存在を隠すようにも設定できる。ちなみに、受信したメールをシークレットに設定したフォルダに自動振り分けをするように設定すると、設定した本人にもメールが届いていることすらわからないという念の入りよう(笑)。何かと秘密の多い人には、オススメの機能だ。

 メールに関連する機能としては、日本語入力に推測変換機能が追加されている。最近、推測変換を搭載する端末が増えているが、F504iの推測変換がユニークなのは時間帯を考慮した候補が表示される点だ。たとえば、「お」を入力して変換したとき、昼間であれば「お昼ご飯」、夜なら「おやすみ」といった候補が先頭に表示される。この推測変換は意外にあるようでなかった面白い機能と言えるだろう。

 さらに、F504iではフォルダ機能をメールやBookmarkだけでなく、iアプリの一覧画面にも用意している。端末のメモリ容量が大きくなり、多くのアプリケーションを保存できることを考えると、これもなかなか便利な機能と言えるだろう。


実用性の高い機能を重視するなら「買い」

 最後に、F504iの「買い」指数を判断してみよう。「サク サク ショック!」のキャッチフレーズとともに登場したNTTドコモの504iシリーズ。その先陣を切ることになったF504iはF503iSの機能をブラッシュアップしながら、新たに実用性の高い機能を充実させることにより、完成度を高めた端末だ。なかでもセキュリティに対する配慮は、プライバシーを重視するユーザーにとって、魅力的な機能のひとつと言えるだろう。

 ただ、503i/503iSシリーズが登場したときと違い、504iシリーズは一気に主要メーカーの製品が発売されることになってしまった。F504iと同時に三菱電機製「D504i」が発売され、NEC製の「N504i」、ソニー・エリクソン製の「SO504i」、松下通信工業製の「P504i」が相次いで発表、そして発売されている。これだけ一気に出てしまうと、ユーザーとしては選択に悩むところだ。しかも今回は各社とも完成度が高く、甲乙付けがたい印象もある。

 しかし、敢えてF504iを選ぶとすれば、やはり、前述のセキュリティ周りの機能ということになるだろう。一見、地味な機能のようだが、この機能を必要としているユーザーは確実にいるはずで、筆者の回りでも「あ、アイツが喜ぶかも」という人物が思い浮かべられる(笑)。いや、笑い事ではない。ケータイにさまざまな情報が保存されるようになってきた今だからこそ、こうしたセキュリティに対する配慮は、これからの端末にとって重要な機能のひとつになるかもしれない。

 F504iには時刻連動の推測変換やiアプリのフォルダ管理など、他社製端末にはないオリジナルの機能が搭載されている。有機ELパネルという話題性も評価できるポイントだ。これらの機能を重視するユーザーなら「買い」だが、「それほどでもないかな?」というユーザーなら、主要メーカーの5機種をじっくり見てからでも遅くはないだろう。


・ F504i ニュースリリース(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/02/whatnew0521.html
・ F504i ニュースリリース(富士通)
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2002/05/21.html
・ 製品情報(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/products/keitai/504i/f504i/f504i.html
・ 製品情報(富士通)
  http://www.fmworld.net/product/phone/f504i/index.html

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(法林岳之)
2002/06/06 11:55

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