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高解像度化とT9入力でさらなる進化を目指した「N504i」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


503i/503iSの勢いを受け継げるか

 「サクサク ショック!」というキャッチフレーズとともに、6月から販売が開始されたNTTドコモの504iシリーズ。503i/503iSシリーズで人気を得たNシリーズは、予想通り発売前から高い注目を集めている。筆者も機種変更で端末を購入したので、レポートをお送りしよう。


ケータイのディスプレイの難しさ

N504i

 NTTドコモ/NEC『N504i』。サイズ:48×93×24mm(折りたたみ時)、105g。プライムブラック(写真)、ミスティシルバー、レジーナピンクをラインアップ。
 今やカラー液晶が当たり前となった携帯電話のディスプレイ。ほんの数年前まで、「モノクロで十分」「いや、カラーが必須」「バッテリーの持ちが心配」といった議論が交わされていたが、気がついてみれば、昨年来の新機種はほとんどがカラー液晶を搭載するようになり、次なる世代のディスプレイとして期待されている有機ELパネルを搭載する端末も登場した。その影響か、最近の携帯電話のショップではディスプレイ用のモックアップだけでなく、実際に電話番号が投入された実働端末が用意されていることも多い。

 パソコンやテレビなどを例に考えてみればわかるように、ディスプレイはユーザーがハードウェアと直接、接するインターフェイスのひとつだ。ボタン類などと違い、視覚的に捉えられる分だけ、端末を選ぶときの優先順位は高い。しかし、その一方で「ディスプレイだけが良くても選ばれない」「ディスプレイが悪くても選ばれる」という側面もあり、端末を開発する側としてはなかなかバランスの取り方が難しいところだ。

 今回紹介するNTTドコモのNEC製端末「N504i」は、過去に国内で販売された一般的な端末の中で、最も高解像度のディスプレイを搭載している。従来のN503iSに比べ、約1.8倍の解像度を持つため、より高精細な画像を表示することが可能だ。本連載の過去の記事でも取り上げてきたように、Nシリーズは独自の折りたたみデザインによって、ユーザーの高い支持を得てきたが、折りたたみデザインにはディスプレイを大型化しやすいという側面がある。つまり、Nシリーズは折りたたみデザインという外見的なものが支持されただけでなく、ユーザーが直接、接するディスプレイ部分にウエイトを置いた開発が行なわれてきたことも支持の要因のひとつとして挙げられるわけだ。

 また、N504iは従来のN503i/N503iSというベストセラーモデルの後継モデルとして登場している。以前、DDIポケットのRZ-J90のときにも紹介したが、どのようなジャンルの製品もベストセラーを記録すると、その後継モデルは非常に開発が難しいとされている。好評を得たモデルの何を継承し、何を進化させ、何を改めるのか。このバランス取りをひとつ間違えると、従来モデルで得られた支持を失ってしまうかもしれないからだ。特に、折りたたみデザインや大画面液晶がNECだけのセールスポイントでなくなった現在、後継モデルのバランス取りは非常に重要なポイントと言えるだろう。

 こうした背景を持つN504iだが、504iシリーズの中でも最も注目度の高い端末であることは間違いない。実際に端末を見ながら、その出来をチェックしてみよう。


国内では最高解像度の液晶ディスプレイを搭載

 製品のスペックや細かい仕様については、NTTドコモの製品情報ページやNECの情報ページ「ワイワイもばいる」、本誌の「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただきたい。ここでは筆者が実際に購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。

 まず、ボディはNECお得意の折りたたみボディを採用している。ボタン部周囲の処理などは異なるが、ヒンジ部やサイドボタン、背面液晶などはN503iSとほぼ共通となっている。背面側はN503iSのような背面ディスプレイと一体化した処理からN211iなどの背面ディスプレイのみを独立させたデザインに変更されている。これに伴い、赤外線通信ポートは背面側から右側面に移動している。ボディカラーがプライムブラックの端末では気にならないが、レジーナピンクとミスティシルバーの端末では赤外線通信ポートの黒い窓がやや目立つ印象だ。


背面 赤外線通信ポート
 背面にはイルミネーションディスプレイを装備。iモードのロゴとともに光る。  赤外線通信ポートは側面に装備されている。ボディカラーによっては目立つ。

ボタン

 ボタン類はキートップのデザインがわずかに変更された程度で、基本的にはN503iSを継承している。
 まず、ボディはNECお得意の折りたたみボディを採用している。ボタン部周囲の処理などは異なるが、ヒンジ部やサイドボタン、背面液晶などはN503iSとほぼ共通となっている。背面側はN503iSのような背面ディスプレイと一体化した処理からN211iなどの背面ディスプレイのみを独立させたデザインに変更されている。これに伴い、赤外線通信ポートは背面側から右側面に移動している。ボディカラーがプライムブラックの端末では気にならないが、レジーナピンクとミスティシルバーの端末では赤外線通信ポートの黒い窓がやや目立つ印象だ。

 ボタン類のレイアウトはN503iSを継承されているが、最上部にある決定ボタンがやや幅広になるなど、キートップの形状は若干、変更されている。ボタン内のフォントも少し太めのものに変更され、視認性が向上している。ちなみに、3色のボディカラーのうち、レジーナピンクのみがボタン内のフォント、ディスプレイ周りのロゴなどが異なる仕様になっている。

 次に、N504iで最も注目されるディスプレイだが、今回は2.2インチTFDカラー液晶ディスプレイを採用している。従来品とのスペックの比較を表にまとめてみた。

機種名 方式 サイズ 解像度 色数
N504i TFD 2.2 216×162 65536
N503iS TFT 2 160×120 4096
N503i TFD 2 160×120 4096
N502it STN 2 130×120 256


ディスプレイ

 国内で販売される一般的な端末では、最高解像度の液晶ディスプレイを搭載。高精細な画像を表示させることができる。
 携帯電話の液晶ディスプレイは昨年あたりまで、160×120ドット/2インチ/4096色程度が標準的なスペックなっていたが、今年のはじめから登場するモデルでは高解像度と多色表示が進み始めており、N503i/N503iSの液晶ディスプレイはすでにミニマムスペックに近いレベルとなりつつあった。今回のN504iは解像度とサイズにおいて、現時点で最も高いスペックの液晶パネルを採用しており、スペック的にも他の504iシリーズを圧倒している。実際に、いくつかのデジタル画像を表示してみたが、これくらいの解像度になると、パソコンやPDAなどに近いレベルの高精細な画像を楽しむことができる。画面内のアイコンや文字なども非常にきれいで、これに慣れてしまうと、N503iSクラスの液晶ディスプレイには戻れなくなる印象だ。

 ところで、N504iの液晶パネルについては、N503iSのTFT方式からTFD方式に切り替わったことで、明るさを心配する声をよく耳にする。確かに、並べてみると、明るさはわずかに落ちているのだが、実用レベルではまったく気にならないというのが素直な印象だ。実際に使ってみると、N503iSの液晶パネルはやや明るすぎる感が強く、筆者は通常、バックライトのレベルを下げて利用していた。これに対し、N504iはちょうど見やすいレベルか、少し明るい程度となっている。ちなみに、N504iも明るさは3段階に調整ができるが、筆者はレベル2で利用している。

 照明周りでは新たに「ON+微灯」という設定も追加されている。これはバックライトがONの状態で約15秒間、操作をしないと「微灯」になり、その後、一定時間(2~99分の間で設定)経過すると「消灯」するという設定だ。基本的には画面を見やすい状態にしながら、バッテリー駆動時間を延ばすための設定だが、実は504iシリーズから採用された「待受iアプリ」をじっくり楽しむための設定とも言えそうだ。

 また、N504iでは画面の表示フォントとして、LCフォントが採用されている。LCフォントはシャープの開発によるもので、液晶ディスプレイでの視認性に優れていることを特長としている。SH251iやJ-SHxxシリーズなどのシャープ製端末、ザウルスなどにも搭載されいるので、ご存知のユーザーも多いだろう。N504iではゴシック調とポップ調の2書体、3段階の太さが設定でき、メール画面などでは20/16/10ドットの3段階の大きさを設定できるようにしている。


ワード予測とT9入力で日本語入力を強化

T9入力

 T9入力では画面のように、読み候補が表示される。筆者の名前は「ふぇりーとかよか」になってしまうため、固定入力で確定し直す必要がある。
 機能面について見てみよう。Nシリーズは折りたたみデザインと大画面ディスプレイで人気を得てきたが、機能面で見た場合、同じiモード端末の中でも新機能搭載のペースが比較的比較的ゆっくりしている傾向がある。なかでも以前から不満が多かったのが日本語入力環境だ。

 N504iでは大きく分けて、2つのポイントで日本語入力の強化が図られている。まず、最も注目されるのがiモード端末に初搭載となった「T9入力」だ。T9入力はテジックコミュニケーションズの開発によるもので、GSM携帯電話などではミッドレンジ以上の端末なら、ほぼ標準的に搭載されているほど、世界的に幅広く普及している。日本語版についてはJ-フォン向けデンソー製端末「J-DN31」に搭載されているが、N504iに搭載されたT9入力はJ-DN31のものよりも洗練された印象だ。

 国内の携帯電話の日本語入力では、「マルチタップ方式」が最も多く採用されている。たとえば、「こんにちは」と入力するとき、マルチタップ方式では[2]ボタンを5回、[0]ボタンを3回、[5]ボタンを2回、[4]ボタンを2回、[6]ボタンを2回と、合計14回もボタンを押さなければならない。

 これに対し、T9入力ではそれぞれの行に対応するボタンを押し、表示された候補の中から変換したい読み候補を選び、その上で漢字に変換する仕様になっている。たとえば、「こんにちは」なら、[2]ボタン、[0]ボタン、[5]ボタン、[4]ボタン、[6]ボタンを各1回ずつ押すだけで、読み候補が表示される。正しい読み候補が表示されていれば、ここで[決定]ボタンを押し、必要に応じてマルチカーソルキーで漢字に変換する。つまり、マルチタップ方式よりも格段にボタンを押す回数が少なくなるわけだ。

 若干の慣れは必要なものの、実際にT9入力を使ってメールを作成してみると、なかなか快適に入力できる。ただ、テンキーで入力した後に表示される読み候補が正しければ、快適さが継続するのだが、読み候補が正しくないときは[*]ボタンで固定入力に切り替え、1文字ずつひらがなに変更しなければならない。たとえば、「インプレス」と入力するには、[1][0][6][#][9][3]の順にボタンを押すが、最初に表示される読み候補は「うわばりし」となっている。そこで、[*]ボタンで固定入力に切り替え、[2][3][8][4][3]の順にボタンを押し、読み候補を「いんぷれす」にする。続いて、[決定]ボタンを押して、マルチカーソルキーの下を押して、「インプレス」に変換するわけだ。

 一度、固定入力で読み候補にしてしまえば、学習してくれるので、次回からは「うわばりし」と「いんぷれす」が読み候補に表示されるようになる。こうした読み候補に表示されない文字列は人名や社名だけでなく、いわゆる「話し口調」に代表される口語体などにも多い。


T9練習アプリ

 「みんなNらんど」で配布されている「T9練習アプリ」。タイピングゲームの感覚でT9の練習ができる。
 独特の使い勝手がなかなか面白いT9入力だが、N504iでT9入力が利用できるのは「漢字ひらがな入力モード」と「カナ入力モード」のときに限られており、T9入力のオリジナルであるはず「英字入力」では利用できない。ケータイの日本語メールではあまり英字を使わないという解釈もあるが、T9入力の本領を体験できないのはちょっと残念な気もする。ちなみに、NECでは公式サイトの「みんなNらんど」で、T9入力に慣れるためにiアプリのタイピング練習ソフトを配布している。

 N504iで強化された日本語入力のもうひとつの機能は、ワード予測だ。ワード予測は最近の携帯電話で搭載が増えている「予測変換機能」だ。読みの文字を入力すれば、その候補となる単語が画面下半分に表示されるので、[メモリダイヤル]ボタンで切り替え、候補を選ぶといった仕組みだ。入力方式が根底から異なるT9入力と違い、こちらは通常の日本語入力を補助するような位置付けのものなので、どの入力方式を利用しても役に立つ。

 さらに、ダウンロード辞書という機能も追加されている。これはダウンロードした辞書を追加辞書として利用できるもので、N504iには最大5つまで登録でき、そのうちの2つを追加辞書として利用することができる。このダウンロード辞書は「みんなNらんど」で「顔文字辞書」「いまどき用語辞書」「タレント辞書」など、7種類が公開されている。

 この他には、N503iSから継承した「ディズニーモード」、N504iシリーズ共通の3Dポリゴンによる「待受iアプリ」、アニメーション再生が可能な「E-アニメータ」などの機能が搭載されている。今回試用した範囲では、待受iアプリの起動時間(○○分後に起動)が設定できないのが不便だが、その他の機能については十分、満足できるレベルにあると言えるだろう。


視認性重視なら「買い」

Nシリーズ

 着実に進化を遂げてきた最近のNシリーズ。N503i(左)、N503iS(中央)、N504i(右)。
 さて、最後にN504iの「買い」を診断してみよう。504iシリーズで発売前から最も注目を集めていたN504iは、国内で販売される一般的な携帯電話の中で、最も高解像度の液晶パネルを採用することにより、今までにない高精細な画面表示を可能にしている。従来のNシリーズで弱点とされていた日本語入力もT9入力やワード予測、ダウンロード辞書などによって、大幅に強化されている。

 ただ、液晶ディスプレイと日本語入力を除く他の機能については、基本的にN503iSと同レベルであり、使い勝手そのものはダウンロード速度の向上や待受iアプリなど、504iシリーズ共通のものが中心となっている。日本語入力についてもT9入力は好みが分かれるところであり、SOシリーズで採用されているPOBoxとフロントジョグのような強力なアドバンテージを築くことができていない。

 これらの点を総合すると、N504iの購入を第一に検討したいのは、高解像度液晶ディスプレイに価値観を見いだせるユーザーということになる。たとえば、待受画面に高品質な画像を表示したい、従来の160×120ドット程度の液晶ディスプレイでは満足できないといったユーザーだ。また、Nシリーズのユーザーということで考えれば、N502it以前のユーザーにとっては、N504iがいいタイミングと言えるだろう。N503i/N503iS発売当時よりもiアプリの環境も整っており、端末としての完成度も高められているからだ。

 以前、N503iSをレビューしたとき、明確なアドバンテージが見えにくいという評価をしたが、今回のN504iはNシリーズが本来こだわってきたディスプレイ部に「高解像度化」というアドバンテージが与えられている。ユーザーによって好みが分かれるものの、日本語入力にもT9入力という新しいチャレンジが見られた。ただ、冒頭でも紹介したように、ディスプレイはプラスになることもあれば、必ずしもプラスにならないこともある難しい要素でもあるため、このあたりはユーザーがどう評価するのかが興味深いところだ。いずれにせよ、購入時には実際に動作する端末と他の端末(できれば、N503iやN503iS)と見比べた上で、自分にとって高解像度化がどれだけメリットがありそうなのかを判断することをおすすめしたい。


・ ニュースリリース(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/02/whatnew0527a.html
・ ニュースリリース(NEC)
  http://www.nec.co.jp/press/ja/0205/2701.html
・ 製品情報(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/products/keitai/504i/n504i/n504i.html
・ 製品情報(NEC)
  http://www.nec.co.jp/mobile/ja/lineup/n504i/
・ 「法林岳之のケータイならオレに聞け!」(impressTV)
  http://impress.tv/pop.htm?imhkt

N504i(レジーナピンク)
ドコモブースは504iシリーズとSH251iで大盛況
ドコモ、216×162ドットの大型液晶を搭載した「N504i」
キータッチを極力少なくできる文字入力システム「T9」
J-フォン、機能を絞り込んだ「J-K31」「J-D31」「J-DN31」
セカンドモデル「N503iS」は何が進化したのか?


(法林岳之)
2002/06/26 13:43

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