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三洋、携帯向け地上デジタル放送対応端末の試作機発表

地上デジタル放送対応の試作機
 三洋電機は、地上デジタル放送に対応した携帯電話の試作機を発表した。今年10月に開催される通信・情報・映像分野に関する複合展示会「CEATEC JAPAN 2003」で、同端末を使った放送受信デモンストレーションが行なわれる予定。

 地上デジタル放送は、今年12月より東名阪の3都市で固定機器向けの受信サービスが開始される次世代テレビ放送。従来のアナログ放送と異なり、1つのチャンネルを分割(セグメント化)して利用することが可能なため、高画質や多チャンネルのテレビ放送が実現できるほか、視聴者との双方向のデータ放送などにも利用できる。なお、携帯電話による放送受信も可能とアナウンスされているものの、携帯電話向け受信サービスの開始時期については未定となっている。

 今回発表された端末は、地上デジタル放送の受信機能を搭載したCDMA2000 1x方式の携帯電話試作機。端末側に複数のアンテナを装備することで受信精度を高める「ダイバーシティ受信方式」や、UHF帯のRF信号を直接ベースバンドへ周波数変換する「ダイレクトコンバージョン方式」が採用されており、これに同社が新たに開発した地上デジタル放送用の受信モジュール「1セグメント受信ジュール」を搭載することで、小型で安定した放送受信が可能になったという。

 映像の再生方式はMPEG-4となり、ディスプレイを縦位置でも横位置でも閲覧することが可能。横位置の場合はフル画面表示される。試作機には、176×220ドット、2.2インチの有機ELディスプレイが搭載されている。1セグメント受信モジュール、アンテナ、MPEG-4、音声のMPEG-2 AACオーディオの信号処理回路の全てを電池パックの形状に収めており、端末の外観は、同社がこれまでイベントなどで発表してきた有機ELディスプレイ搭載端末のプロトタイプ版と同形状のものとなっている。

 また、本体には128MBのフラッシュメモリを内蔵し、約30分のテレビ映像の録画・再生が行なえる。同社では現在、SDカードスロット搭載端末の開発も手がけているという。このほか、ディスプレイ上部と背面に11万画素のCCDカメラが搭載されている。

 試作機の待受時間は約420時間で、現状のCDMA2000 1x端末と同程度の通話時間も確保している。テレビ放送の再生時間は約90分。大きさは約105×50×30mm(高×幅×厚)で、バッテリーを含んだ重さが約150g。


大きさは従来の端末と大きく変わらない テレビ放送は手動で縦・横の切替が可能

ディスプレイ上部に11万画素のCCDカメラ 背面にも同様のカメラ。右が地上デジタル用で、左が携帯電話用

スライドさせるとボタン部が現われる アンテナは「携帯電話の機能が落ちなければ内蔵したい」とのこと

表示は滑らかな印象だ 録画した映像の表示画面

実験局 実験局用のアンテナ

三洋テレコミュニケーションズ 副社長の前神 棟三氏

三洋テレコミュニケーションズ 常務の前田 哲宏氏
 発表会の冒頭、三洋テレコミュニケーションズの前神 棟三副社長は、「近い将来、携帯電話向け地上デジタル放送が大きく広がる」との見通しを語った。三洋は、2005年にも携帯電話向け地上デジタル放送が開始されるとみて、サービス開始時に端末を供給したい考えだ。今後も商用化に向けて、受信モジュールの小型化や低消費電力化を進めていくという。

 今回の試作機は地上デジタル放送用の電池パック型のユニットと、携帯電話本体ユニットの大きく2つに分けることができる。現時点では、両ユニット別々にアプリケーションチップが搭載されているが、こうした点を将来的には一体化していく方針だという。

 また、端末の説明を行なった前田 哲宏常務は、携帯電話向け放送の特長として、電車の車内や店舗内での待ち時間、学校や会社などの休み時間など、ちょっとした空き時間に利用できる点を挙げ、「テレビの視聴環境が特に屋外で広がるだろう」とした。加えて、放送機器と通信機器が一体化されていることのメリットとして、クイズ番組やテレビショッピングなどで新しいサービスの形態が考えられるとも語った。

 デモンストレーションは、室内に設置された実験装置のアンテナから電波を発信して、端末でニュースやスポーツなどのコンテンツを受信する形で行なわれた。動きのある映像でも、滑らかに表示される印象だ。

 同社では、今回の試作機を皮切りにW-CDMA方式の端末も進めていくという。また、現在MPEG-4のライセンス料の問題で、MPEG-4とH.264のどちらの動画形式が採用されるか決定されていない点については、「H.264でも対応できるように進めている。仕様に従って提供できる」と説明した。

 なお、前田常務は、「テレビ放送を最低60分は見られるようにしなければならない」としており、今回の試作機では90分の試聴が可能と一応その点をクリアしたが満足していないとの認識を示した。さらに、録画機能を搭載することでフラッシュメモリの容量が大容量化するのではないかとの問いに対して、「個人的には」と前置きした上で、「端末内のメモリはある程度で抑えて、後は外部メモリに任せるような仕組みを考えている」とコメント。フラッシュメモリを内蔵すると、コストが高くつくとした。

 三洋電機は、地上デジタル放送対応端末の商品化を目指しつつ、将来的には、モジュールを外販するような展開も検討しているという。同社はCCDカメラモジュールの提供なども行なっている。前田常務は、「サムスンのような総合力のあるメーカーとしてアピールしたい」と抱負を語った。


地上デジタル放送は1つのチャンネルを13のセグメントに分割できる ちょっとした時間に放送が楽しめる

双方向サービスなど新しいサービスも予想される 端末の高機能化に伴なってデジタルテレビ用の部品の流用も可能だという

想定される利用シーン 即時性と携帯性と双方向性

試作機の構成 1セグメンント受信モジュールの構成

特長 縦・横どちらでも表示できる

サービス開始時に端末提供を目指す 今回のデモンストレーションの構成


URL
  ニュースリリース
  http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0308news-j/0808-1.html

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(津田 啓夢)
2003/08/08 18:16

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