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ボーダフォン、2003年度は最終赤字
~定額制導入の検討、海外製端末の国内投入にも言及

 ボーダフォンホールディングスは、5月25日、2004年3月期連結決算を発表した。売上高は前年比7.9%減の1兆6,556億円、営業利益は前年比32.9%の1,850億円、経常利益は33.3%減の1,812億円の減収減益。当期純損失はマイナス1,000億円と、最終赤字になった。


 減収の要因として、ダリル・E・グリーン社長は、「昨年売却した日本テレコムの売り上げが、昨年度下期から除外されたこと、第3世代携帯電話の端末の投入が遅れたことなどが原因」とした。日本テレコムの2002年度下期の営業収入が1,660億円だったことを勘案すると、実際には、今期減収分の1,410億円を相殺できる計算。また、ボーダフォンホールディングスの子会社であるボーダフォンは、売上高が1兆5,091億円となり、前年比3.3%増の増収。さらに、電気通信事業収入は前年比4.3%増の1兆2,064億円となっていることから、携帯電話事業は名実ともにプラス成長となっている。

 ジョン・ダーキンCFOは、「連結営業収入はほぼ予想どおり。だが、第3世代携帯電話関連の減価償却費用の増加、一部端末に関わる評価損の計上、顧客維持費用の増加などが、利益の減少に影響した」と説明している。


ダリル・E・グリーン社長 ジョン・ダーキンCFO

決算の概要 2003年度事業の概要

 2003年度を振り返ると、最大のポイントは、昨年10月に実施した、Jフォンからボーダフォンブランドへの全面移行。グリーン社長は、「1,860店舗のボーダフォンショップにおいても一斉にブランド変更を行ない、時間をかけずにグローバルで信頼性の高いブランドへと転換できたことは評価できる」とした上で、「ブランド変更に伴い、解約率は一時的にあがったものの、当社にとって、年間を通じて最も解約率が低い1年であったことや、顧客獲得のインセンティブを前年に比べて13.6%引き下げたことなどを考えると、ブランド変更による大きな影響はなかった」とした。

 また、2003年度の成果として、新たに導入したプリペイド方式によって、新たな顧客層を獲得できたこと、3Gネットワーク環境の整備においても、この1年間に基地局を約5,000局から10,000局にまで拡大し、国内人口カバー率を99.5%にまで引き上げたこと、そして「ドコモよりも遅れていた」(グリーン社長)としている屋内および地下鉄のカバレッジを予定通りに引き上げられたことなどを示した。

 加えて、ボーダフォンが得意とする国際ローミングに関しても、日本人の渡航先の約98%をカバー。85の国や地域での音声ローミング、36の国、地域でのボーダフォンライブ!へのアクセス環境の実現など、「この分野は、他社にはない強みとして継続的に強化していきたい」(グリーン社長)という。


端末の遅れが響いた第3世代携帯電話事業

加入者、ARPUの動向
 だが、第3世代携帯電話事業の遅れが、同社にとって大きな課題となっていることは明らかだ。

 グリーン社長は、「第3世代携帯電話である三洋電機の『V801SA』は、昨年8月から10月にかけて出荷できる予定であったが、チップセットの開発遅れなどが原因となり、実際に端末が投入できたのが12月。また、シャープの『V801SH』も、遅くとも11月までには出荷の予定だったが、実際には今年4月になった」と端末の発売遅延が3G事業に大きく影響していることを強調した。

 第3世代で好調なauはシェアを引き上げているが、ボーダフォンのシェアは18.4%と、前年に比べて0.1%減と縮小。第3世代機の投入遅れが影響した点は否めない。

 また、第3世代事業の遅れは、ARPUにも影響している点が見逃せない。3G環境には、まず比較的ARPUが高い利用者から移行するが、こうしたユーザーの取りこぼしにも直結。さらにプリペイド携帯電話の契約者数が増加したことで、低ARPUのユーザーが集中する傾向が見られ、結果として、全体としてARPU引き下げを加速させることにもつながっている。

 「ARPUは、1年間で690円減少しており、この傾向は良いことではない」とグリーン社長も指摘する。「2004年度は、プリペイドによる低ARPUユーザーの獲得とともに、3G事業を本格化させることで、高ARPUユーザーの獲得に力を注ぎたい」としている。


解約率、買換率の推移 今後の3G事業

2004年度は実行計画“MOVE”に取り組む

 同社では、2004年度の事業計画として、売上高で前年比7.5%減の1兆5,310億円、経常利益で前年比29.7%減の1,270億円、当期純利益は1,100億円と黒字転換を見込む。営業利益の目標は明らかにされていないが、同社の場合、経常利益と大きな差がないことから、営業利益でも減益を見込んでいることは明らかだ。

 売上高は減収とするものの、同社では日本テレコムの売却分を除くと1.5%増としている。だが「競争力を維持するために割引制度の維持が必要」としており、その達成についても厳しい状況にあるのは間違いない。

 また、経常利益の減益については、早期退職制度などの費用計上が影響することになるという。


新たな事業戦略として明らかにされた「プロジェクト“MOVE”」の概要

2004年度連結業績予想
 こうしたなか、同社では、「プロジェクト“MOVE”」と呼ばれる実行計画を策定し、大きく4つの事業戦略に取り組む計画を打ち出した。

 第1点目は、第3世代携帯電話サービスの充実だ。グリーン社長は、「今年度はなんとしてでも、100万契約を達成したい」とする。先行するauやNTTドコモが、1,000万台以上の契約数を達成、あるいは目標にしていることに比べると、周回遅れの感が否めないが、早期にこの遅れを取り戻そうと必死だ。

 懸念となっている端末の強化としては、「V801SHの投入によって、ドコモの900iシリーズと比べても遜色のない性能を実現した。さらに今年秋からは続々と端末を投入することが可能になり、KOTOのような新たなデザインを採用した端末も増やしたい」と話す。

 続けて、「2G端末も含めて、ボーダフォンの製品ラインアップは、今が一番少ないといえる。だが、これを最もラインアップが豊富なキャリアへと転換させ、様々な端末をユーザーの方々に選んでいただけるようにしたい」と語った。

 同社では、「コンバージェンス端末」という呼び方で、全世界で流通することが可能な端末戦略を積極的に投入する計画を示す。「規模の経済を生かした調達コスト、開発コスト、生産コストの低減によって、高機能を搭載したリーズナブルな端末が、世界規模で出荷できるようになる」と、グローバル戦略をベースにした端末戦略を積極化させることで品揃えを強化する考えだ。グリーン社長はその一環として、今年秋以降には、ノキアなどの海外メーカーの端末も日本で販売する計画であることも明らかにした。

 さらに、ネットワークインフラでは、第3世代携帯電話の基地局の数を20,000カ所にまで拡大し、特に屋内や、第2世代ではカバーできなかった地方エリアでのカバー率を増やしたいとしている。

 第2点目は、顧客満足度の向上。先に触れた端末のラインアップ充実や、顧客視点によるショップサービスの展開などが含まれ、今年オープンした名古屋、渋谷のフラッグシップショップ展開についても、「どんどん増やしたい」とした。

 第3点目は、これまで遅れていた法人顧客の獲得。今年7月には法人向けモバイルVPNサービスを新たに開始し、無線LAN対応などを検討していることに加え、3Gデータカードの品揃えを強化したり、グローバルローミングによる強みを訴えたりするといった展開を計画している。大手企業だけでなく、中小企業も視野に入れた取り組みも加速する考えだ。

 そして、最後が営業費用の抑制だ。ボーダフォングループとしてのグローバルなシナジー効果を生かすための施策を用意。さらに、各種業務プロセスの見直し、販売網の活性化、早期退職制度などの将来に向けたコスト削減策にも乗り出す。グリーン社長は、「これらの施策を通じて、競合会社についていくのではなく、競合会社に勝てる企業へと転換したい」と抱負を語っている。



定額制の導入には「検討中」とコメント

 質疑応答では、各社が乗り出している定額制についても質問が飛び、これに対しては、「現在、検討している」として、参入する意向があることを明確に示したほか、「2G環境でのメールの遅延が他社に比べて大きいのでは」という点についても、「スパムメール対策をしているため」として、「現在は2Gと3Gに双方の投資が求められており、大変厳しい状況にある。同時の設備投資は不可能であり、将来に向けて3Gの投資を積極化していくことになる」と説明した。

 また、W-CDMAとGSMとのデュアルモードにこだわっていることについては、「欧州や中国では、GSMがカバーしているところではGSMを利用し、W-CDMAを利用できる地域ではW-CDMAで利用するという使い方が広がっている。国際的な競争力を考えると、デュアルモードのベースラインチップセットを開発することが得策であり、結果として、シングルモードのものよりも、機能が優れていながらも低価格のチップセットが供給されるようになる」として、デュアルモードをあくまでも主力とする考えを明らかにした。

 また、同社の中期的なシェア目標として、「生き残るためにはトップメーカーの半分のシェアは必要」として、「最低でも25%のシェアを目指す」ことを明らかにしたほか、「2年後には番号ポータビリティのサービスが開始される。これが大きな転換点になるだろう。このタイミングに合わせて、競争に臨める体制を整えたい」と、番号ポータビリティサービスが、同社のシェア拡大に大きな意味を持つとの意向を示した。



URL
  ニュースリリース
  http://www.vodafone-holdings.co.jp/newsrelease/040525/040525.asp


(大河原克行)
2004/05/25 20:50

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