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800MHz帯を巡る論議、ソフトバンクBB対ドコモ・KDDIで白熱

 25日、総務省で「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」の第4回会合が開催された。携帯電話向けに割り当てる周波数の有効活用に関して議論される場だが、今回は第2回会合と同じように、既存の携帯電話事業者および新規参入を求める通信事業者がそれぞれの主張を述べることになった。

 本会合では、前回明らかにされていたように「800MHz帯をどう取り扱うか」という点が中心となったが、W-CDMA方式の採用を発表したイー・アクセスは、1.7GHz帯を新規事業者に優先的に割り当て、2006年度の新規参入を強く求めるなど、新規組でも意見が異なる状況となった。


孫氏、800MHz帯の割り当てを再度求める

ソフトバンクBB代表取締役社長の孫 正義氏
 NTTドコモのPDC方式(ムーバ)や、KDDIのCDMA2000 1xおよび1xEV-DO(1X WIN)が使用している800MHz帯について、上り下りの周波数帯が国際標準と逆になっていることやテレビ放送のデジタル化などもあって、総務省ではいったん別の周波数帯をドコモおよびKDDIに割り当て、再編を進める案を示している。

 これに対して、ソフトバンクBBは新規参入する際に800MHz帯を自社に割り当てるよう強く求めている。同社代表取締役社長の孫 正義氏は、これまで開催された同検討会において、ドコモ・KDDIがマルチバンドを採用し、800MHzは優位と発言したことを強調した。

 同氏は、これまでもマルチバンドの本格的導入が周波数帯の逼迫を解消すると主張しているが、本会合でもあらためてそのポイントを説明。1台の携帯電話が800MHz帯と2GHz帯に対応していれば、ユーザー数は現状と同じままで利用できる帯域が広がるため、帯域あたりのユーザー収容数が下がるとした。また新規事業者が登場すれば、ある程度ユーザーは既存事業者から移行するため、1社あたりの将来的な需要は、現状よりも少なく見込めるとも孫氏は語り、具体的な利用案として、800MHz帯は基本バンドとして各社に割り当て、1.7GHz帯や2GHz帯は補助バンドとして使うという将来像を示した。

 マルチバンドへの対応を促進させるためには、端末や基地局が対応する必要があり、現状よりもコスト増になる可能性がある。この点について孫氏は、従来の説明通り、端末側に搭載するチップは1個当たり3ドル未満であり、基地局側も同一の施設内に新たな装置を導入するだけで、アンテナの設置だけが大きなコストになるとした。

 これらのコストは、各事業者が自前で負担できる範囲内とした孫氏は、「電波を公平かつ効率的に利用することで、公共の福祉を増進させることを目的とする」という電波法第1条を示して、既存事業者だけを保護してはならず、既得権はあり得ないと主張した。


800MHz帯は再編を待つべきとするKDDIとドコモ

KDDI代表取締役社長の小野寺 正氏
 KDDI代表取締役社長の小野寺 正氏は、「800MHz帯再編は、5,000億円という費用がかかると見込んでおり、経営的には厳しい。しかし、日本の将来を考えれば、再編しなければならない」と述べ、協力を惜しまない姿勢を見せた。

 再編後に誰にも割り当てられない帯域があれば、その部分を新規事業者にも割り当てるのは当然と語った同氏だが、「再編はまさにパズルゲーム。空きがなければ動かしようがない。そこへいきなり入れてくれと言われてもあり得ない」と語気を強めた。

 小野寺氏は、孫氏と同じように電波法第1条を引用し、「競争によってユーザーにメリット出すのは当然だが、問題は、既存ユーザーの利便性を維持しながらやっていくためにはどうすればよいかという点。既存ユーザーに迷惑をかけずにどう移行するのか。1年間で全端末を入れ換えるというのは不可能だ」と語り、800MHz帯の割り当ては再編の終了まで待つべきとした。

 既存ユーザーの移行という点について、KDDIは昨年3月にPDC方式を終了した経験を持つ。小野寺氏は当時の話として、「PDC方式の廃止では、経費は500億円程度だったものの、税金などもあって結局1,900億円必要だった。どう頑張っても、ある程度のユーザーは最後まで残る。そこで無償で端末提供したが、それでも難しい」と語り、既存ユーザーの移行促進の困難さを説明した。


NTTドコモ代表取締役社長の中村 維夫氏
 NTTドコモ代表取締役社長の中村 維夫氏も、「800MHz帯は(新たな周波数として割り当てるという話ではなく)あくまでも再編。現実に、九州エリアでは韓国と干渉している。このため、2GHz帯のFOMAについて投資を続け、開発してきた。4,000万ほどのユーザーをFOMAに移行させねばならなず、ポンと空き屋になるわけではない。徐々に移していくことが必要で、簡単にはいかない」と語り、小野寺氏同様に再編を優先して実施し、新規事業者への割り当てはその後にすべきとした。

 また同氏は「マルチバンドは争点ではない。やむを得ずやることだ。もちろん反対しているわけではないが、対応コストは3ドルでは済まないだろう。過去の経験から推測すると、10,000カ所の基地局だけでも250億円かかり、端末に対しても1,500円くらいかかると見ている。当社は、毎年2,700万台の端末を販売しており、端末をマルチバンド対応にするだけでも400億円のコスト増につながる」と語った。

 最後に中村氏は、「3Gは当初鳴かず飛ばずで、ドコモにとって茨の道だった。現在も基地局や端末を小型化するなど研究開発に投資している。もし新規事業者が数千億円で携帯電話事業を展開できるというのなら、それは先行事業者の恩恵を受けてできること。先行した事業者が開拓してきたことを頭の隅に入れて欲しい」とアピールした。


ボーダフォン津田氏「論点を戻すべき」

ボーダフォン執行役の津田 志郎氏
 主力の2Gサービスを1.5GHz帯で提供しているボーダフォンからは、執行役の津田 志郎氏が同社の主張を説明した。同氏はまず、「本検討会は、周波数をいかに有効活用するか議論する場のはず。新規参入の是非論にフォーカスされている気がする」と述べ、論点を修正すべきとした。

 その上で同氏は、「800MHz帯の再編は、ドコモ・KDDIの3G向けという前提であり、整合性のとれた公平な割り当てを求める」と語った。再編自体については、合理的かつ効率的であり進めるべきとして、2006年に開放予定とされる1.7GHz帯をボーダフォンへ優先的に割り当てて欲しいと主張した。

 また津田氏は「事業者が増えると、競争が発生するとされるが、本当にそうだろうか。事業者が少ないと競争が起きにくく、モチベーションは低くなるというのは確かだが、増えすぎると過当競争になる。日本を例にとると、独占時代から激しい競争を経て、今の状況になっている。その経緯もふまえるべきではないか」として、現状もまた競争の結果であるとあらためて説明した。


1.7GHz帯の参入求めるイー・アクセス、新方式導入を求める平成電電

イー・アクセス代表取締役社長兼CEOの千本 倖生氏
 800MHz帯の再編について、新規組であるイー・アクセスおよびアイピーモバイルはともに「現実的に見て、800MHz帯の割り当てを求めるのは難しい。周波数を変更すると、既存端末は使えなくなる。混乱を避けるため、充分な時間が必要で、費用も大きい」として再編案を認める姿勢を打ち出した。

 イー・アクセス代表取締役社長兼CEOの千本 倖生氏は、「新規事業者には10MHz×2を割り当てるのが適当であり、最低でも2社の参入を認めるべき。2006年には番号ポータビリティ制度が導入され、携帯電話市場に大きな動きがあるだろうし、1.7GHzが開放される」と述べ、2006年に1.7GHz帯で新規参入できるよう求めた。

 また同氏は、「マルチバンド対応は、新規事業者にとってもコスト面で厳しい。1つの帯域に対応するほうが現実的な解だ」と述べ、800MHz帯を利用するとしても2012年以降に議論すべきであり、現時点では無理があるとした。

 アイピーモバイル代表取締役の杉村 五男氏は、どの事業者がどの程度周波数帯を必要とするか、明確に判断できるように各社がさまざまなデータを公開すべきと提案。同氏は「現在も総務省では電波利用状況の調査をしているが、それは3年ごとに行なわれており、現状のユーザーニーズを的確に把握できない。いくつか項目を減らして、1カ月~半年というスパンで情報公開できるようにすべきではないか。そういったデータが明らかになった上で、逼迫している事業者には周波数帯を追加するなどの割り当てをすべき」とした。

 同検討会を通じて、携帯電話事業へ名乗りを上げた平成電電代表取締役の佐藤 賢治氏は、「世界的には次世代通信方式の研究・開発が進められている。3Gでの参入だけにこだわるのではなく、他の方式を踏まえて検討していただきたい」と述べ、インテルなどが主導して規格策定中のIEEE 802.16e方式を採用する考えを示した。

 同氏は、参入後の具体的な計画として、全国に10,000カ所の基地局を設置して、データ通信に重点を置いたサービスを想定しているとして、「3Gの各方式では、約4,000億円の投資が必要だが、802.16e方式であれば500億円程度で済む」と安価に全国をカバーできると説明し、今後の新規参入検討において、新方式導入を認めるよう求めた。



URL
  携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/keitai-syuha/

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(関口 聖)
2004/11/25 15:45

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