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富士通のモバイルシステム事業を支える富士通那須工場

富士通那須工場の外観

那須塩原駅から車で約20分の距離
 富士通は、携帯電話の基地局および携帯電話端末などを生産する那須工場の様子を報道関係者を対象に公開した。富士通の生産拠点では、全社をあげてトヨタ生産方式を採用した生産革新に取り組んでいるが、その成果が、最もあがっている拠点が那須工場だといえる。富士通那須工場の様子を紹介する。

 富士通那須工場は、1980年に設立した通信機器の生産拠点。今年でちょうど25周年を迎える。

 東北新幹線那須塩原駅から車で約20分程度の距離にある野崎工業団地内に、18万5,000平方メートルの敷地面積を持つ富士通那須工場は、4棟から構成され、社員667人、関連会社および関係会社などで245人の合計912人が従事する。

 同社のモバイルビジネス事業を支える中核拠点のひとつであり、IMT-2000交換機、同基地局装置、多重無線装置などの移動体通信システム、NTTドコモ向けのFOMA端末やPDC端末などの携帯端末機器、ネットワーク技術を活用した火災報知器や衛星ロケットに搭載している熱赤外線放射計などの赤外線・電波応用装置などを生産している。

 「他社を凌駕する最先端技術の採用、ドコモの先行技術とアルカテルのGSM技術の融合、無線技術と光ネットワーク技術の結集による先端技術の採用が富士通のモバイルビジネスの強み。また、確かな製品設計品質とシステム評価技術で信頼性の高い製品を市場に投入できるのも富士通のDNAといえるもの。それを支えているのが、那須工場であり、革新的な工場によって、安定した高品質の製品を、短納期で生産、出荷できる」(富士通モバイルシステム事業部・岩渕英介本部長)としている。

 同工場が富士通グループ内で革新的といわれる背景には、トヨタ生産方式の積極的な採用による工場改革の取り組みが見逃せない。

 「現在、富士通の各生産拠点では、トヨタ生産方式の柱であるジャスト・イン・タイム、見える化および自働化を実現し、徹底したムダの排除に取り組んでいる。那須工場は、小山工場、島根富士通とともに、トヨタ出身の外部コンサルタントを招き、その指導のもとに改革に取り組んでいる拠点であり、とくに、那須工場は、2004年度下期には、2S(整理、整頓)、ムダ取り、間締め、整流化、1ケ流しおよび標準作業化、後行程引き取りといったトヨタ生産方式で目指すひとつのレベルまで到達しているなど、改革がもっとも進んでいる工場だといえる」(富士通ものづくり推進本部・酒井雄一本部長)という。


富士通那須工場・山下貴規工場長 那須工場は18万5,000平方メートルの敷地に、4つの生産棟を持ち、建屋面積は6万1,000平方メートル

現場で改革の指揮を執った渡辺伸寿部長。手に持っているのが、工場全体で利用されているカンバンの札 工場のあちこちにこのポスターが貼られており、改革に全工場をあげて取り組んでいることがわかる

今回は公開されなかったが携帯電話端末も同工場で生産されている。これまでの同工場で生産された携帯電話の数々

基地局装置の基板生産ライン。2004年6月から大幅な増産体制に入り、月2,000枚から月8,000枚へと拡大。ラインは2本増えたが、トヨタ生産方式の成果でスペースは変わらず

基地局装置の生産ラインは全体的に人が少ない。今回は公開されなかったが、携帯電話端末の製品ラインには多くの社員が従事しているようだ
 もともと那須工場では、独自での生産革新に取り組んできた。セル生産方式の導入により、所要変動に対しても柔軟に対応できるラインを設置し、同時に多能工化へのシフトなどに取り組んできた。

 「だが、どうしても重い整備になりがちだったこと、また、多能工化に対する抵抗もあり、その意識改革にも時間がかかった」(富士通ものづくり推進本部ネットワークローコスト推進統括部第二製造部・渡辺伸寿部長)。

 そこで、2004年度からは、富士通グループ全体の生産革新活動に伴い、外部コンサルタントを招聘し、改めて改革に着手。徹底したカイゼン活動が進められた。

 コンサルタントから徹底されたのは、トヨタ生産方式の考え方にこだわって愚直にやること、そして、できない理由を説明している時間があったら、改善の仕方を考えるということだった。

 「自分たちでは、こだわってやっていると思っても、実際にはこだわっていないことを何度も思い知らされた。そして、生産革新は、人づくりが大切であることを実感した」と、現場で改革を陣頭指揮した渡辺部長は語る。

 山積み表と呼ばれるライン1人1人の作業者の作業を明記し、一定の時間内での全員の作業が完了するような形での配分、それを売れるスピードを造るという前提で作成することなど、根本的な発想からの改革が進められた。

 制御装置の生産ラインのなかでも、PIU(プラグ・イン・ユニット)と呼ばれるラインでは、2004年5月からトヨタ生産方式を導入した運用を開始。従来45メートルあったラインを12メートルに、スペースは21%を削減。さらに1個あたり292分かかっていたリードタイムが、75分にまで縮小した。また、15種類の製品が生産可能な混流ラインも稼働させることに成功した。

 「生産性では、2.1倍もの向上が図れた。12月には製造装置系のPIUラインで60種類の混流ラインを稼働させる」(渡辺部長)と、一定の成果を出しても、依然として改革の手綱を緩める考えはない。

 工場全体での製造手番は、2003年度末を100とした場合、61にまで削減。保有在庫日数では、同じく51にまで削減している。


 「コンサルタントの指導は月に1回だが、部長主催の改善レビュー会を二週間に一回実施し、ラインリーダーのスキル向上を図っている。さらに、ラインリーダーが独自にミニミニ指導会をオペレータとともに開催し、問題意識の共有化やトヨタ生産方式の理解推進のための活動を行っている。こうした日頃の細かな活動が、生産性向上をはじめとする工場全体の改革につながっている」というわけだ。

 那須工場・山下貴規工場長は、「かつては日陰の工場ともいわれた時期もあったが、富士通のグループのなかでも先進的な工場として、またモバイルシステム事業を支える生産拠点として、重要な位置を担っていると自負している。今後も生産革新に積極的に取り組んでいく姿勢は変わらない」と語る。

 富士通のモバイルシステム事業を支える生産拠点は、改革によって生み出される高い生産性と、柔軟な生産体制を実現したものの、さらなる進化へと挑む考えだ。


手作りの治具も随所に置かれている ドライバを置きやすくし、取りやすくする治具

組立に使われる大型ユニットは、ひとつの台車に1台分の部品が用意される オペレータは、奥にあるモニターで組立方法を確認できる。混流ラインで威力を発揮する

組み立てられた基地局装置 専用の機械に入れられて水圧検査などが行われる

通称「ちゃぶ台」と呼ばれる作業台。机の高さは一定だが、このちゃぶ台で個人ごとの高さを調整する。どこのラインにいっても作業しやすい高さを確保できる 左の台のボタンを押して、向こう側の赤いラインまでの歩くスピードを計測する装置。工場内は時速5Kmで歩くのもトヨタ生産方式の基本的な考え方

IMT2000の制御装置の組立ライン 奥にあるのが部品ストア。生産ラインに隣接する形で設置している

制御装置の最終検査ライン 検査が完了すると出荷工程にまわされて、市場に出荷されることになる


URL
  富士通
  http://jp.fujitsu.com/


(大河原克行)
2005/08/11 16:56

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