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NEC、世界で販売されている無線システムの製造現場を公開

NECワイヤレスネットワークの本社
 NECは、福島県にある生産分社、NECワイヤレスネットワークの工場を報道関係者を対象に公開した。同工場では、コンシューマー向けの製品は製造していないが、携帯電話のネットワークなどに使われる無線機器「パソリンク」などの製造を行なっている。今回はパソリンクの製造ラインを例に、NECグループの「ものづくり」に対する取り組みが紹介された。


好調なパソリンク事業

パソリンクの屋外機(右、アンテナを含む)と屋内機(左、ラックに入っている)
 パソリンクは、2点間専用の無線通信システムだ。2点間の通信ラインを敷設する場合、無線は有線に比べて格段にコストが安く、敷設までの時間もかからない。海外で携帯電話の基地局アクセス回線などに多く利用されているという。

 とくに最近では、東南アジアや中東、東欧、中南米など、携帯電話エリアを拡大中の国での採用例が増え、急速に出荷台数を増やしている。納入実績としては、153カ国に累積78万台が出荷されている。

 元々こうした2点間の無線通信システムの製品シェアは、携帯電話の基地局を作る北欧2社が強かった。しかし昨今の途上国需要などでパソリンクはシェアを伸ばしつつあり、2007年の第3四半期には世界シェア31.2%で単独トップになったという。


パソリンクの概要 携帯電話の基地局同士あるいは基地局と制御局間に利用される

世界での導入実績 パソリンクの台数シェア推移

パソリンクの屋外機は一人でも設置できるコンパクトさ
 シェアを伸ばした背景として、NECは「製品力」と「グローバルSCM」、「販売力・ブランド力」があると分析している。とくにMTBF(平均故障間隔時間)が100年以上という高い信頼性、屋外機を少人数で設置できるコンパクトさは、他社製品を大きく引き離しているという。

 NECのモバイルネットワーク事業本部長の遠藤 信博氏は、「品質、SCM、CS(顧客満足度)でダントツであり続けたい。そうすることで、シェア30%を維持することができると確信している。パソリンクのビジネスを守り、さらに広げていきたい」と語った。


パソリンク事業を紹介するNECの遠藤氏 パソリンクの強み

パソリンクの製品力。MTBFについてNECは他社製品の数倍~十倍と分析する パソリンクの事業目標

パソリンクを支える「ものづくり」への取り組み

「ものづくり力」向上への取り組み
 このパソリンク事業において、NECワイヤレスネットワークでは「ものづくり力の向上」に取り組んでいるという。具体的には、「ラインの革新」や「開発・製造部門の連携強化」、「資材調達革新」などを行なっている。

 ラインの革新としては、製造ラインでの無駄の排除、多品種に対応させる混流化、作業の標準化などの点に取り組んでいる。さらに「ネジ締め専用機器」など単機能で小型安価なインライン自動設備を導入することで、作業者の負担を減らし、作業効率を向上させている。こうした改善により、2002年1月時点では25mだったパソリンク屋外機の製造ラインは、現在では8mにまで短縮されたという。


ライン革新活動。2001年時点ではライン化もされていなかった 現在の屋外機のライン。部品の組み立てから梱包までが行なわれる

 こうした改善は、製品製造ラインの作業者が「ラインクリエーター」となり、発案からライン設備開発までを行なっているという。このラインクリエーターの研修・育成体制を強化しており、現在では設備開発人員の半数以上がラインクリエーターだという。

 製造ラインを現場レベルで改善するという努力は、非常に細かく行なわれている。パソリンクの製造ラインでは、作業工程を「ドライバーを手に取る」「リターンキーを押す」といったように、手順を細かく「動作分析表」にリストアップし、どうすれば工程を簡略化できるか、といったことに取り組んでいる。たった1秒でも工程を省略できれば、長い期間で見れば時間、ひいてはコストの節約になるし、作業が簡略化されれば製品の品質向上にもつながるという考えだ。


ラインクリエーターの制度 作業ライン脇に貼り出された「動作分析表」。これを見ながら作業員自身が改善策を発案していく

開発部門と製造部門の連携
 さらに、製造ラインと設計者との連携も行なわれている。たとえば現行のパソリンクでは、部品実装作業を表面と裏面の両方から行なう必要があり、作業中に部材を「裏返す」という工程が必要になっている。この「裏返す」という工程をより短時間で正確に行なうために、ラインには専用の固定器具が導入されているが、それを一歩進めて、次世代のパソリンクでは片面のみの部品実装で済ませられるように設計自体が改良されたという。これは、製造ラインからの要望が設計者に組み上げられた形だ。

 このほかにも使用する資材を標準化し、種類を減らすことで、部品調達コストの削減だけでなく、作業者の負担も減らすといった工夫もなされているという。

 資材調達面では、トヨタのジャストインタイム調達方式としても広く知られる「かんばん方式」を採用している。資材が納められる箱には「かんばん」が貼り付けられていて、資材を使い切ると「かんばん」が供給元に送られ、それがそのまま発注の合図になるという方式だ。余計な資材の在庫をなるべく持たず、かつ必要な資材は常にストックし続けるようにしている。


前処理部門の資材置き場。資材ごとに決められた箱に入れられ、「みずすまし」に運ばれるのを待つ
 この「かんばん方式」は社外の部品サプライヤーとのやりとりにも用いられるが、社内でのライン間の行き来にも用いられている。具体的には、「みずすまし」と呼ばれるスタッフがライン間を定期的に行き来し、「かんばん」の回収と資材の補充を行なっている。「かんばん」により、必要な資材は常に同じ場所に補充されるため、スタッフは誰かに指示したり、逆に指示を聞くことなく作業を行なえる。

 NECワイヤレスネットワークの工場では、東側に外部からの資材納入場所が設けられている。工場内でも東から西に向かって前処理ライン、組み立てラインが流れるようになっており、最終的に工場の西側に出荷場所が設けられている。資材や製品が東から西へと直線的に動くことで、移動経路が短くなっている。

 またパソリンクの場合、使用周波数や転送速度、インターフェイス、ファームウェア言語などで多様な製品仕様があり、顧客から注文を受けた仕様で受注生産している。たとえば外見が同じ基盤でも、異なる仕様のものが混在する。部材の仕様差異は2次元コードやRFIDタグで管理されており、作業者は供給されて目の前に置かれた部品を組み立てていけば、最終的に注文を受けた仕様の製品が完成するようになっているという。

 資材調達面では、「かんばん方式」の採用だけでなく、コア部品となるMIC(マイクロ波集積回路)を社内で作ることで、多品種の安定生産にも対応している。


MICを製造しているクリーンルーム。MIC自体は単三電池ほどの大きさだが、複数のラインが製造に携わる クリーンルームで作られたMICは、専用の出口に置かれ、「みずすまし」が運ぶ

 NECワイヤレスネットワークの水村 元夫社長は、こうした「ものづくり」への取り組みについて、「生産・開発・販売が三位一体となり、自律的に毎日進化し続けるというコンセプトが強み」と語った。


パソリンク製造における「ものづくり」の取り組みを説明するNECワイヤレスネットワークの水村社長 製造ラインなどが現場の人間の協力で自律的に進化し続けるというのがNECの「ものづくり」のミソとなる

NECグループとしての「ものづくり」への取り組み語るNEC ものづくり革新企画部長の沢村 治道氏
 このような「ものづくり」への取り組みは、NECグループ全体でも行なわれている。NECでは「ものづくり革新ユニット」という専門の部署を設け、さまざまな改革を行なっている。たとえば「かんばん方式」はNECグループ全社で採用されていて、1,200社あるサプライヤーとのあいだを毎日定期便で結び、物流の効率化を図っている。また、ラインクリエーターのような生産現場改善を行なう人材の育成も、NECグループ全体で取り組んでいるという。

 生産・開発・販売が一体となって「Process Innovation」を行ない、一方で人材育成によって「Personnel Innovation」を行なっていくのが、NECの推進する「ものづくり強化」の取り組みだという。



URL
  NECワイヤレスネットワーク
  http://www.nec.co.jp/newin/index.html
  NECの「ものづくり」革新への取り組み
  http://www.nec.co.jp/effort/monozukuri/


(白根 雅彦)
2008/01/18 20:05

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