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携帯向けマルチメディア放送の会合、「制度の在り方」を議論

 4日、総務省で「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」第7回会合が開催された。

 国内の電波の使い道は、2011年に地上アナログテレビ放送が終了し、デジタルテレビ放送へ移行することにあわせて、携帯電話への再割当や新たな使い方などが検討されている。今回の懇談会は、地上アナログテレビ放送が使っていた帯域の用途の1つとして、携帯機器向けのマルチメディア放送がどうあるべきか議論する場となっている。サービス実現に向けて活動する企業・団体は、携帯電話や車載機器などでの利用を想定しており、携帯電話業界や自動車業界、放送業界が関わるテーマとして、制度や環境の整備に向けて、2007年8月から同会合が開催されている。

 これまでは、放送や通信の事業者らからの意見をヒアリングしてきた同会合だが、今回より「制度」「技術」「ビジネスモデル」と3つの分野について、議論が進められることになった。


日本における「放送」とは

 現在、日本国内では、地上テレビ放送やラジオ(AM/FM)、BS/CSといった衛星放送、有線による放送が存在する。一口に「放送」という枠組みにくくられてはいるが、法律における定義、基幹放送かどうかといった点、受信できる環境整備への取り組みなどが異なる。

 たとえば、いわゆる地上テレビ放送やラジオは各種放送の中でも最も基幹的なものと捉えられており、「マスメディアの集中排除原則」(1人/1法人が支配できるのは1局のみ)などの制約が大きく、逆にCSやBS放送ではそういった制約は小さい。また、受信できる環境の整備について、放送法では、「民放はあまねく受信できるよう努める義務がある」とする一方、「NHKはあまねく受信できるよう措置する義務がある」としており、責任の範囲が異なっている。

 新たな放送となる携帯端末向けマルチメディア放送サービスについては、どのような性格を持たせるべきか、「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」で検討がスタートしたことになる。


構成員の意見

 制度面での議論を行なうことになった第7回会合では、各構成員からさまざまな意見が述べられた。

 吉田 望氏(ノゾムドットネット代表)は、現状の技術に周波数を割り当てるやり方では、新たな技術が登場した場合に対応していくのが困難になるとの見方を示し、「上位互換性があり、ソフトの柔軟性がある規格、あるいは端末の書き換えができるような規格」が望ましいとの認識を示した。この点に関連し、生越 由美氏(東京理科大学大学院教授)は「今の技術は10年後、絶対に変わっている。今ある技術から選定するのはどうか。選び方としては、日本として負けない仕組みを戦略的に考えるべき」と述べた。

 鈴木 博氏(東京工業大学大学院教授)は、「インターネットの延長に近いものが良いのではないかというのが日頃抱いているイメージ。具体的な制度や技術基準の明確なイメージはないが、たとえばテレビ電話は無料なら誰もが使うだろうが、なかなか普及していない。無料でなければ利用されない。なるべく安く供給でき、どんどん発展するような仕組みが必要だ」とした。

 座長代理の黒川 和美氏(法政大学経済学部教授)は、コミュニティFMのような限られた地域での放送を可能にする仕組みも検討すべきと提案。同氏は「電波の有効利用という観点から、現状の放送はいったい何%の人々が効率的に情報を受け取っているか示す数値がない。デジタル化することで解析できるかどうかわからないが、ユーザーの要望のなかで、穴になっている部分(カバーできていない部分)はあるだろう。そのたとえが『地域からの発信』。ビジネスモデルとして成立するかどうかわからないが……」と説明した。これに対し、多くの構成員が好意的に受け止める姿勢を見せた一方、小規模なメディアとなることで広告を獲得しづらくなる可能性を指摘する声もあった。

 サービスエリアや周波数割当方針について伊東 晋氏(東京理科大学理工学部教授)は、他の構成員より踏み込んで発言した。同氏は「サービスイメージに対して比較的狭い地域を対象にした放送、より一層の高度化、サーバー型サービスなどの要望が寄せられているが、限られた周波数で実現するのは難しいだろう。たとえば、VHF帯のローバンドはデジタルラジオをコミュニティFMのデジタル化に割当、VHF帯のハイバンドは、映像中心のマルチメディア放送として全国放送ににするのが良い。新たな取り組みであり、可能な限り自由度が高いほうがいい」と述べた。

 規格については「これまでのヒアリングの中で『国際標準』の定義を尋ねたことがある。これは、ISDB-TやMediaFLOはITU-Rの標準になっているが、そういう意味ではなく、いわゆる世界標準という意味だろうが、導入するとなると、どれがその立場になるかわからず難しい。別の分科会で、ISDB-Tを世界に広めるよう進める立場にあるが、その一方で、日本市場も透明性を確保して海外の技術を締め出すわけにはいかない」とデファクトスタンダードたりえる技術を現状選ぶのは困難との見方を示した。


複数の規格導入は普及阻害か競争促進か

 たとえばテレビ放送は同じ技術を用いているが、携帯端末向けマルチメディア放送サービスには、ワンセグの発展系となるISDB-Tmmや、米クアルコムが開発したMediaFLOなど複数の技術方式が名乗りを上げている。この点については、あらためて次回以降に検討される予定だが、今回の会合でも構成員から意見が寄せられた。

 そのうち鈴木氏は「たとえば次世代DVDは、2方式存在し、一時は統一する動きがあったものの、うまくいかず市場競争となった。現状、その結果が出つつあるが、結果が出るまでの間、市場としては買い控えになった」と述べ、複数方式を導入することで競争が見込める一方、普及を阻害する要因にもなり得るとした。

 同氏は「携帯端末向けマルチメディア放送サービスは、いわゆる携帯電話のサービスとは異なるのではないか。ある特定の事業者だけで利用できるサービスというものは携帯電話にあるが、通信網経由で他社と相互接続さえできていれば、良いということになっている。しかし、放送はそうではなく、複数の規格を導入するのはどうか。特定の携帯電話会社だけで利用できるマルチメディア放送というのではない気がしている。そこは注意しておきたいところではないか」と語り、キャリアを問わず利用できるサービスにすべきとした。


検討にかける時間

 野村総合研究所の北 俊一氏は「このサービスがどうあるべきか、イメージが固まっていない。貴重な周波数を使って、何を実現すべきか。国際競争力や地域振興などが基本的視点として掲げられているが、どちらが優先すべきか決定できるのか。現時点ではゴールを1つに決められない。複数のゴールを設けて、それぞれ制度はどうあるべきか、ぶつけ合う形にすべきではないか」と述べたほか、「もうちょっと何か、新しいものがないか。もう少し頭を絞って考える時間があるのではないか」と検討期間を延長する考えを示した。

 これに対して伊東氏は「放送法が改正され、ワンセグの独立放送が可能になった。これまでは地上テレビとワンセグは同じ内容だったが、ワンセグが独自の内容になるのであれば、『同時期に自分たちもスタートしたい』と、ラジオ業界などから競争環境の公平化を望む声がある」と指摘した。

 次回会合は、2月18日に開催される予定。総務省では、4月以降の会合で、意見とりまとめに入る考えだが、座長の根岸 哲氏(甲南大学法科大学院教授)は「はたして、そううまくスケジュールが進むのか」とも述べており、現状は構成員にとっても携帯端末向けマルチメディア放送サービスがどうあるべきか、議論の余地が多分にあり、どの方向にすべきか明確にできない状況と言えそうだ。



URL
  携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会 開催概要
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/mobile_media/

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(関口 聖)
2008/02/04 20:04

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