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10年目のSymbian、世界市場での普及拡大のシナリオ

 2月にスペインで開催されたイベント「The Mobile World Congress 2008 Barcelona(MWC 2008)」では、Googleを中心としたOpen Handset Allianceによる携帯電話ソフトウェアプラットフォーム「Android」が、来場者やマスコミの注目を集めた。イベント全体としても、携帯電話プラットフォームへの注目度が高かったようだ。

 こうした中、堅調に成長しているのがSymbian OSだ。スマートフォンの分野において、世界で7割近いシェアを獲得しており、国内では、NTTドコモの富士通や三菱電機、シャープやソニー・エリクソン製の端末のほか、ノキア製端末などで採用されている。今回は、英Symbianの戦略を担当するVice Presidentのジョン・M・フォーサイス氏にSymbian OSの今後の展開を聞いた。


英Symbianのフォーサイス氏
――バルセロナで開催されたMWC 2008では、Androidを中心として、モバイル向けLinux OSの陣営が非常に活発に動いている印象を受けました。こうした競合するプラットフォームの動きについて、どう思いましたか?

 そうですね。今回のMWC 2008は、Androidが立ち上がってから初めての大きなイベントだったので、当然、関心が集まると思っていました。しかし、その一方、Symbian側のストーリーはこれまでと同様に非常に明確で継続的なものです。関心が高まったことは、モバイルソフトウェア全体にとって喜ばしいことだと思っています。参加者の方を中心に、モバイルのソフトに何かすばらしいものがあるぞと考えてくれたのではないでしょうか。スマートフォン市場へ、またそのソフトウェアへの非常に強い関心だと受け取れると思います。

 我々Symbianは、スマートフォン市場で70%のシェアを獲得しています。我々が競合各社に対して一目を置いていることは事実ですが、しかし全体のバランスを考えてみても、Symbianは非常にいい位置にいることは間違いないと思います。

 Androidに関してはいろいろな記事で取り沙汰されましたが、実機は出てきていません。これに対してこの期間、Symbian OSを採用したモデルは8機種、実機として発表されました。具体的なものが伴っているということが大きな違いだと思います。この6週間の間に、世界のトップメーカーがSymbian OSを採用した端末を発表しており、競合各社からすれば夢のような話ではないでしょうか。他社はトップメーカーが採用端末を続々と発表するような状況には至っていませんから。


――Linux OS、Winodws Mobileなど、スマートフォンと呼ばれる端末が採用するOSの中でSymbianがトップをとっている理由はどこにありますか? また、端末メーカーがSymbian OSを採用するメリットはどこにあるのでしょう?

 私が思うに、2つの側面があるかと思います。まず1つはSymbian OSという製品に関するもの、そしてもう1つはSymbianという企業に関するものです。

 製品面では、我々は当初から携帯電話のOSに特化して開発を行なっており、非常に効率がよく堅牢とされています。端末メーカーのニーズにきちんと焦点をあてて製品開発を行なっており、そういったベースの上で、技術革新も継続的に行なっています。とくにこの数年の技術革新は顕著で、昨年は次世代で実装される新技術についても発表しました。

 また、会社としての実績も大きな理由ではないでしょうか。我々は高い品質を維持しながら定期的に新しいOSをリリースし続けています。長年に渡って積み重ねてきたこうした実績が端末メーカーの信頼を得ているのだと思います。会社としても、ビジネスモデルがクリアでオープンな姿勢をとっており、OSの価格体系もわかりやすい体系となっています。OSの提供会社に対して信頼がおけるということは、マスマーケットへの参入を考える場合に非常に重要です。

 たとえば、ハイエンドのマーケットだけに限られた機種を導入するのであれば、メーカーにとってもそれほど大きなリスクになりません。しかし、マスマーケットに入り、どのOSを選ぶかというのは、端末メーカーのその後の展開に関わる大きなカケ、大きな決断だと思います。メーカー側としても、実績があり自分たちが信頼できるところを選ぶのは自然な成り行きだと思います。そういう意味で我々は非常に幸運だったと思います。

 さらに、そうしたOSの周りを取り囲む、アプリケーションやハードウェアのパートナーなどとの総合的なエコシステムが存在することが重要です。エコシステムの構築には時間がかかりますが、一旦エコシステムが構築されれば、メーカーやソリューションベンダーなどはよりスピーディーに革新的な製品を開発できます。それがここ数年、非常に大きなインパクトになっていると思います。


Symbian OS採用のノキア製端末「N96」 ソニー・エリクソン製「G900」。こちらもSymbian OSを採用する

――Symbianの設立から今年で10年目になるかと思います。これまでの歩みは順調なものでしたか?

 そうですね、今年の6月でSymbianは丸10年を迎えます。市場は我々が思ったようにはなかなか動いてくれません。もっともこれは、市場だけでなく世の中にも言えることですが。Symbianのビジネスにおいてもそれは例外ではありませんでした。こういうことが起こるであろう、という期待はしていました。実際に我々が信念を持って考えてきたことが起こってきてはいますが、それは我々が予測していたよりも、もう少し時間がかかったようです。

 バルセロナのMWC 2008には私も赴きましたが、「やっときたな」と感じましたね。その理由は2つあります。1つはバルセロナのイベント期間中、Symbian OSを採用した携帯電話の累計出荷台数が2億台を突破したことです。これだけの大きな数字が現実のものとなったことで、市場の中で大きな位置を占めるようになったことが実感できました。

 2つめの理由は、会場で技術的な展示を見る中で、5~6年前からこういったコンセプトはあったな、というものが現実の形になってそこにあったことです。1つの例としては、ノキアのGPSを使った写真管理サービスがありました。位置情報付きの写真をFlickr上にマッピングするものですが、私が7年前に当時の3GSMに出たときもこうしたコンセプトはありました。今回、それがデモという形で現実のものになっていました。


――日本のユーザーがスマートフォンに期待している部分には、自由にアプリケーションが追加できる点などがあると思います。ところが、日本のSymbian端末は、現実的にはNTTドコモのMOAP中から登場しており、自由にアプリが追加できるというイメージとは少し違うようです。今後、MOAP以外からの採用例も登場するのでしょうか?

 日本において、MOAP以外からの採用ですか? それはベンダーさんに聞いてみないことにはわかりません。我々からは何ともいえないところです。

――それでは端末メーカーから現在求められていること、そして今後求められると予測されることを教えてください。

 2つのグループに分けて考えられると思います。1つめは最新の技術に関する要望で、2つめはメーカーがマス市場への参入するための用件です。まず、メーカーからの要望を反映した形で昨年発表させていただいた、ScreenPlayとFreeWayという技術があげられます。これらは従来にも増してユーザーのエクスペリエンスをさらに高めていくというものです。ScreenPlayは、グラフィックの部分にこれまで以上の深みを持たせて、さらにリッチなグラフィックを届けようというものです。単に見るというだけでなく、エモーショナルな楽しいものを提供できるようになるのです。

 こうしたグラフィック面でのリッチ化と同時に、通信面、コミュニケーションの技術についてさらに高いパフォーマンスを求める声が伝わってきています。FreeWayでは、Super3Gへの対応として大幅に帯域をアップさせ、ファーストクラスの帯域を確立するという面があります。それだけでなく、さまざまなワイヤレス技術を超えて、ユーザーが自由にローミングしながらアプリケーションを使えるような環境を実現するという面もあります。例えば、携帯電話網から無線LANにシームレスに接続できるようなものですね。

 マス市場への参入ということを考えると、これらに加えて開発にかける時間、ソフトのクオリティ、そして携帯電話自体のコストといった項目が大きなポジションを占めるようになります。特に、端末コストについては非常に大きなインパクトを与えます。例えば、コストに直結するRAMについては、Symbian OSの最新版(v9.5)ではD¥Demand Paging(必要なコードだけをRAMに読み込ませて実行する機能)を採用し、必要なRAMを節約できるようになっています。


ScreenPlay FreeWay

――2億台という目標は達成しました。さて、次の目標は?

 具体的な数値については気をつけて発言しなければなりませんね。というのもSymbianは市場予測をしておらず、そういったことには慎重でなければなりません。とはいうものの、Symbianがどこに向かおうとしているか、どこに向かいたいと思っているかは、我々の言葉の端々から見て取れるのではないでしょうか。

 我々はSymbian OSの数量やマーケットシェアについて時折発表していますが、従来だと、「スマートフォン市場の平均70%のシェアを獲得している」という言い方をしています。しかし最近、こうした発表する際にこれまでの70%ではなく「世界全体の携帯電話市場の7%を獲得している」という言い方に変わってきています。つまり、自らの成長を図る物差しを少し変えたということです。この数年のSymbianは、世界全体の携帯電話市場において、少なくとも毎年1%以上の成長を達成しています。世界市場の中で自らの成長を図っていく、という見方ですね。

――スマートフォンが伸びているとはいえ、世界市場で大勢を占めるのは未だ2Gや2.5Gの端末です。世界市場での普及拡大を目指す上で、Symbian OSの廉価版にあたるような製品の投入は考えていますか?

 Symbianとしてもそれは検討しました。そういった製品が会社の成長を加速だろうか? という検討でしたが、結論としては“No”でした。我々は1つの製品で大きな価値を提供しており、顧客となる端末メーカー側からしても、そこに断片化された製品がいくつも登場するよりも開発効率がよく、費用対効果が高いと判断しました。メーカーから必要とされる機能を適切に提供していくことで、最終的には端末コストが下げられると考えています。また、端末コストを下げられるような機能を提供していくことこそが、我々の基本的な考え方なんです。

 先ほど説明したDemand Pagingによって必要RAMが少なくできるため、端末製造コストが2~3ドル下げられるのです。我々のライセンスフィーもこの値段からあまり離れていないので、新たな機能の提供でコスト削減のお手伝いをするというのが我々の基本的なアプローチになっています。


――最後に、スマートフォンを含めた携帯電話業界の人たちへ何かメッセージはありますか?

 我々の顧客がいて、その周りにはパートナーとなる企業がいて、さらに広く携帯電話の業界があります。その広い世界の中で、スマートフォンに対して、さまざまなコミットメントや投資の判断というものがあると思います。特にこの数年間、スマートフォンへのコミットメントや投資は非常に活発に行なわれてきたと思います。

 市場が本格的に花開くまでには少し時間がかかります。しかし今、その市場が花を開く瞬間を迎えている、と私は思います。これまでスマートフォンに対して投資してきた方々は、競争優位をもたらす源が生まれたことを実感されているのではないでしょうか。

 また、競争優位をもたらすだけでなく、これはイノベーションの源でもあります。オープンプラットフォームにおいて、もっともエキサイティングな革新が起こりつつあるのです。これまでモバイルプラットフォームのソフトウェアに戦略的な投資をされていない方々は、今こそそのタイミングだと思います。これ以上待つ必要はないと思います。

――本日はありがとうございました。



URL
  シンビアン
  http://www.symbian.com/Japan/

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第124回:Symbian OS とは


(津田 啓夢)
2008/03/07 16:21


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