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総務省で「通信プラットフォーム研究会」、業界各社にヒアリング

 総務省で11日、認証や課金、設備など通信サービスの構造について共通化やオープン化の方向性を議論する「通信プラットフォーム研究会」の第2回会合が開催された。

 有識者・学識経験者が研究会構成員に名を連ねるほか、オブザーバーとして携帯・PHS各社や、携帯電話・通信分野に関わる企業・団体が参加している。第2回~第5回まで、各回5社ずつプレゼンテーションが行なわれる。

 今回は、ウィルコム、テレコムサービス協会(テレサ協)、JR東日本、ヤフー、MVNO協議会がそれぞれの立場から現状の説明や要望を述べた。


ウィルコムはオープン化推進、テレサ協はNGNに注文

 ウィルコムのプレゼンテーションは、同社取締役執行役員常務ネットワーク技術本部長の平澤 弘樹氏が行なった。同氏は、携帯電話各社と比べて規模が小さいことから、差別化のために異なる戦略を採る必要があり、そのために当初からオープン化を推進してきたと説明した。

 具体的なケースとして、日本通信やバンダイなどとの協業事例に触れ、料金体系ごと他社がコントロールする場合や、端末のみの提供にかぎられる場合など、協力先が求める内容にあわせ、柔軟に対応している状況を紹介した。その一方で、現時点では固定網と組み合わせたサービス提供に難しい部分があるとして、プラットフォームを自由に組み合わせて商品として提供できるような環境作りを求めた。

 続いて説明を行なったテレサ協 政策委員会委員長代理の小林 善和氏は、次世代の通信網、いわゆるNGNに対して、ネットワークを持たない事業者でもネットワーク情報などを利用できるサービス制御機能、NGN事業者間のローミング機能による仮想通信事業者の実現、ユーザーIDポータビリティの実現はSIP-URI方式の採用を検討すべきといった点を要望していた。


Suicaも1つのプラットフォーム

 JR東日本 常務取締役 IT・Suica事業本部長 鉄道事業副本部長の小縣 方樹氏は、非接触IC技術を使った乗車券・電子マネーサービスの「Suica」を1つのプラットフォームに見立てて、現状などを説明した。その中では、Suicaにまつわる数々のデータが披露された。

 同社のSuicaでは、2007年春に首都圏の鉄道・バスで利用できるIC乗車券「PASMO」との相互利用サービスがスタートしている。相互利用サービスを実現するため、つまり、企業をまたがってプラットフォームを利用するためには、システムの仕様を統一し、ソフトウェアの共通化を行なった。電車に乗るための情報や電子マネーとしての情報を処理する「ICカード相互利用センター」も設立されている。リーダーライター(改札機)にかざして動作するかどうか、約40万件の確認作業が行なわれた。


 また、鉄道ならではの問題として、A駅からB駅までのあらゆるルートを検証した。これは運賃を算出するための判定で、そのパターンは約12億3,000万通りに及ぶという。ただし検証した12億という件数は、あくまで代表的なものとのことで、考えられるルートは3京通りにもなる。PASMOとの相互利用サービスがスタートしてからの1年間、Suicaの発行枚数は1日1万枚以上発行され、前年比24%増の約2,445万枚になった。またモバイルSuicaは153%増、Suicaチャージ券数は84%増、電子マネー利用件数は114%増となった。

 東海や西日本エリアのIC乗車券と既に相互利用サービスが開始され、今後登場する北海道や九州のIC乗車券とも相互利用できるようになるが、小縣氏は「FeliCa上にIC乗車券用のOSと言える“サイバネ規格”を定めていたからこそ、広がりやすい。利用できる画面が拡大することで利便性が増すが、便利でなければ使ってもらえない。電子マネー用のリーダーライターは、ドコモと共同設立したLLP(有限責任事業組合)が処理センターを設置したが、JCBのQUICPayやビットワレットのEdy、イオンのWAONも利用できる。他社の電子マネーは排他すべき相手ではなく、互いの競争によって市場を広げていく段階」と述べ、プラットフォームを共通利用する環境を整えることのメリットを訴えた。

 また鉄道会社らしい事例として、車両製造についても触れた小縣氏は「当社では6年前に京浜東北線に209系という車両を導入した。これは従来より価格・重量が半分。現在の京浜東北線の車両はさらに進化世代だが、209系をベースに、台車や電力を司る主回路、システムを基本的な車両プラットフォームにしている。世界的に見て、自社用の車両を製造しているのは当社だけだが、このプラットフォームは相模鉄道や小田急、都営新宿線で使ってもらっている。鉄道事業でも、我々の用意した車両プラットフォームを使ってもらうことで、安く調達できる」と述べた。

 通信業界への要望としては、モバイルSuicaを提供する立場から、端末側のスペックがバラバラであることに苦労する一方、完全統一の端末では進化が止まる懸念があることから「統一+拡張」という概念を取り入れるべきと低減した。またキャリアを乗り換えるときなどを踏まえて、ユーザーIDのポータビリティも検討すべきとしたが、検討課題として何をもってIDとするか、あるいはモバイルだけに閉じるのかどうか、といった点を考える必要があると指摘した。


デバイスを問わないヤフーの戦略

 ヤフーからはCCO(最高コンプライアンス責任者)兼法務部長の別所 直哉氏が説明を行なった。同氏は「アプリケーションレベルでプラットフォームのようなものを追求している。これをプラットフォームと呼べるかどうかわからないが……」と述べながら、同社が進めるコンテンツ戦略を説明する。

 ヤフーでは、ユーザーが利用する機器がパソコン・携帯電話のどちらであろうと、スムーズに利用できる環境作りを目指しているという。具体的なサービス事例としては、Yahoo!ID、Yahoo!ウォレット、Yahoo!メールが紹介された。たとえばIDについては、OpenIDという仕組みが提唱され、ヤフーでも取り入れているが、別所氏は「OpenIDは、バージョン1がSSL非対応だったりするなど、認証付きのデータ送受信が難しい。そのため、当社独自のBBAuthと呼ぶ仕様で行なっている」と述べた。

 またメールサービスについては、デバイスやキャリアを超えてサービス提供しているものの、プッシュメール配信ができないことが難点とも述べ、今後の検討課題の1つに取り上げるよう要望した。


MVNO協議会の福田氏「iモードは法的に開放義務化を」

 日本通信常務取締役CFOの福田尚久は、今回、MVNO協議会幹事会議長として参加している。

 福田氏は「たとえば自動車のアクセルとブレーキは各社共通の配置で、いわばプラットフォーム。ユーザーがメーカーなどを意識せずに使えるよう、溝を埋めるものでもあるが、企業としては囲い込みツールとしても使われる。たとえば、携帯電話の世界では、iモード用のブラウザがある一方、海外ではiPhoneがSafariを採用し、AndroidもSafariのオープンソース版を使っている。このままでは、iモードブラウザは孤立してしまうのではないか。私はかつて、アップル社に在席し、1997年当時にグローバル競争プロジェクトの責任者だった。その当時、Mac OSで7つの言語をサポートした。日本市場向けOSを開発するのではなく、日本語を入れたのだ。その結果、世界のどこでMac OSを購入しても日本語環境が手に入るようになった。また、フォントメーカーは世界に打って出られるプラットフォームを手に入れた。国内の小規模な市場向けに考えていたのでは勝てない。グローバル競争を考えなければいけない」と熱弁をふるった。

 国際(業界)標準を取り入れる“Fit in”という考え方と、自社独自仕様を採用する“Stand out”という考え方で、どうバランスを取るかが重要とした同氏は、「私自身、iモードを使っているが、なぜauやソフトバンク向けに提供されないのか。iモードは1つの文化でプラットフォーム。ユーザーが自由に選択できるようになるべきではないか。開放しろ、というのではなく、ドコモの戦略を考えると、5,000万人で留まるよりも5億人に広がる道を選ぶべき」とした。


 その一方で、福田氏は「たとえばアップルのiPodはiTunesというソフトウェアとリンクし、オンライン音楽販売のiTunes Music Storeとリンクする。端末とサーバーがリンクするというプラットフォーム作りは、近年のインターネットの世界で発展してきている。このあたりもちゃんとやっていかなければならないのではないか」とも述べていた。

 大まかな政策の方向性としては、「日本市場は確かに世界の携帯電話をリードしているが、日本市場向けという概念からグローバルにどう展開するのか。“プラットフォーム立国”という概念でやっていけるのではないか。たとえばアップルがiPodをリリースするとき、Mac OSのみに対応すべきという議論もあったが、そのような短期的な視点では広がらない。Windows対応となったのは、長期的な視野に立ったから。短期的なスパンで考えたら何もできない。世界を支配するくらいの長期戦略で考えるべき」と語っていた。

 構成員の東京大学大学院教授の江崎 浩氏から「オープン化について法的なルールを作るべきか、あるいは市場動向に任せ各企業の判断にすべきか」という点について意見を求められた福田氏は「iモードというプラットフォームについては、通信レイヤーにおいて独占的な地位を気づいている。それを容認するのはよろしくない。iモードセンタの開放義務付けなどが必要ではないか」と述べていたが、これに対して京都大学大学院教授の依田 高典氏は「その心情は分かるが、電波は希少ということなどから携帯市場は寡占的でなかなか動かない。また囲い込みモデルで成功しているという側面もある。今回の福田氏のプレゼンテーションだけでは、法制度改革に至らないのではないか」と指摘しつつも、続けて「国家戦略として問題は多いにあると個人的には思う」としていた。

 続けて甲南大学教授で、座長代理の佐藤 治正氏は「どこからどこまで企業の範囲で、どこから法的ルールで決めるのか難しい。オープン化がもたらす恩恵の想定例、あるいは海外の具体的な事例などを示されないとわかりづらい。企業の経営戦略に対して注文を加えるのは、競争政策上の観点や消費者にとっての利益といった点が重要」と述べていた。

 次回会合は5月12日に開催される予定で、イー・モバイル、グーグル、KDDI、マイクロソフト、三井物産がそれぞれプレゼンテーションを行なう。



URL
  通信プラットフォーム研究会 開催概要
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/platform/

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(関口 聖)
2008/04/11 18:18


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