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エリクソン、LTEなど次世代ネットワーク戦略を解説

エリクソン 北東アジア チーフ・テクノロジー・オフィサーの藤岡 雅宣氏
 日本エリクソンは、2008年後半から本格化すると見られる最新ネットワーク技術の動向や同社の戦略を解説する説明会を開催した。次世代ネットワークのLTEなどに加え、IPTVへの取り組みや端末向けソリューションも紹介された。

 6日に都内で記者向けに開催された説明会では、エリクソン 北東アジア チーフ・テクノロジー・オフィサーの藤岡 雅宣氏が説明を行った。藤岡氏はまず、HSPA(High Speed Packet Access)の発展系となる「HSPA Evolution」(HSPA+とも呼ばれる)と、LTE(Long Term Evolution)の世界動向について説明した。HSPAはすでに198の商用ネットワークが世界で稼働しており、エリクソンはこのうち99のネットワークを担当するなど、市場のリーダーであることをアピールした。


HSPA Evolution(HSPA+)の動向

モバイルブロードバンドの今後の発展予測
 藤岡氏からは、2008年の後半にも「HSPA Evolution」として、21Mbpsや42Mbpsの通信速度を実現するHSPAネットワークが登場する見込みであることや、平行して開発されているLTEは2010年ごろから商用化される見通しであることが解説された。藤岡氏は、現在提供されているHSPAネットワークでも技術的には「14Mbps程度までの高速化のめどが立っている」としたほか、上り速度を強化したHSUPAも2008年の後半には投入されるのではないかと予測。下りでは、変調方式を64QAMにすることなどに加え、ネットワーク設備にハードウェアの追加が必要になるものの、送受信2本ずつのアンテナ(2×2)で高速化するMIMO(Multi Input Multi Output)の技術を組み合わせることで42Mbpsを実現可能という。さらに、同一帯域で隣接する2つの下り帯域を同時利用するDC-HSDPA(Dual-Cell HSDPA)や、4×4 MIMOの活用により、HSPA Evolutionとして80Mbpsの通信速度まで計画されていることを説明した。

 同氏は「HSPAは今後拡張され、LTEと平行して開発が進んでいくだろう」としたほか、すでにHSPAネットワークを構築した事業者は、今後LTEの前段階としてHSPA Evolutionに移行していくとの見方を明らかにした。なお、藤岡氏によれば、NTTドコモのようにHSPA Evolutionではなく、先行してLTEを導入するのは世界的に見れば特殊な例であるという。

 なお、複数アンテナで高速化するMIMO技術は、ドコモのネットワークで導入が開始されているとのこと。また、エリクソン本社からは、7月18日にソフトバンクモバイルのHSPAネットワークを拡張していくという内容のニュースリリースが発表されており、DC-HSDPAについては「ソフトバンクモバイルが実用化すると考えられている」とした。


HSPA EvolutionはW-CDMAを基本に拡張され、下り・上りともに高速化が可能 DC-HSDPAの概要

LTEで注目されるキャリアの動向

世界のキャリアがLTEに収束しつつあるとした
 下り通信速度で最大150Mbpsを実現可能という、次世代ネットワークとして注目を集めるLTEは、HSPA Evolutionと同様に標準化作業が進められている段階。一方、3Gでは3GPP(GSM、W-CDMAなど)と3GPP2(CDMA 1Xなど)という大きく2つの通信方式が存在したことで、携帯電話の通信方式は結果的に統一された世界標準が確立されていない状況だが、LTE世代ではこれらの分かれている勢力の統一という点でも注目されている。

 藤岡氏はドコモをはじめ、北米のAT&T、スウェーデンのTeliaSonera、ノルウェーのTelenorなどがLTEの導入に動いているとする図を示し、欧州で開催される2.6GHz帯のオークション後には競合他社も追随するとの見方を明らかにした。また、China TelecomやCDMA 1X系の米Verizon WirelessもLTEに移行する見込みであるとし、「EV-DOからW-CDMAに変えるという事業者は多い。正式発表はされていないが、KDDIもLTEではないか」と、次世代の通信方式がLTEに収束しつつあるとした。


CDMA方式からW-CDMA方式へ変更するキャリアも増加

LTEネットワークはFMCも考慮

LTEのコアネットワークであるSAEでは各種のネットワークが共存可能
 LTE世代のネットワークでは、IPによるコアネットワークをSAE(System Architecture Evolution)として策定中の段階だが、藤岡氏はこれを「携帯のNGNと言えるもので、固定系も収容できる。FMC(Fixed Mobile Convergence)を考えた場合、SAEがコアになる可能性もある」として、固定系も含めて、SAEを基本に発展していくことに期待するとした。

 藤岡氏は、キャリアやメーカーによる団体の存在にも触れた。ドコモを含む18のキャリアを中心に構成され、会社組織化されたNGMN(Next Generation Mobile Networks)は、キャリアの要求仕様などをまとめるほか、対象技術にLTEを選定している。一方、ネットワーク・端末メーカーが中心の団体であるLSTI(LTE/SAE Trial Initiative)は、メーカー間の相互接続試験など実施し、NGMNと連携してLTEの普及に取り組んでいる。藤岡氏は、「W-CDMAではこういった取り組みは無かったが、相互接続試験を実施しており、2009年には試験サービスが始まる」と語り、LTEの実現と普及に取り組む姿勢を改めて示した。


エリクソンのLTE開発ロードマップ FMCを考慮したSAEの展開

IPTV、共通サービスプラットフォームへの取り組み

IPTVへの取り組み

オープンな国際標準化の意義を解説した
 エリクソンの動向として、IPTVへの取り組みも紹介された。IPTVは、IP技術を使い動画を配信するもので、国内では仕様の共通化などを目的として6月にフォーラムが設立されている。一方、エリクソンはAT&Tや松下電器、フィリップス、サムスン電子などからなるOpen IPTV Forumに参画しており、日本国内のフォーラムについては「若干、閉じた環境で、日本独自仕様になるという認識。次のステップとしてIMS(IP Multimedia Subsystem)を使うことになれば、なんらかの貢献ができるのではないか」との見解を示した。同氏は、「コミュニケーション機能の統合を主眼に置いている。通信機能をうまく使ったサービスで、家でも携帯でも同じサービスが利用できるというもの。標準化の意義は、規模の経済を目指しているから」と語り、日本国内向けとは異なる環境での取り組みになっているとしたものの、国際標準化やオープンな標準による新市場形成の意義を語った。

 同氏からは、RCS(Rich Communication Suite)についても解説がなされた。RCSは2月に開催された展示会「The Mobile World Congress 2008 Barcelona」で発表されたもので、キャリア間で異なるサービスを、共通化して利用できるようにするという、端末・ネットワークを含めたソリューション。「キャリア内で閉じた世界を改善するもの」といい、チャットやメッセージング、プレゼンス、ファイル転送といったサービスをキャリアを超えて利用できるようになる。同氏はアドレス帳を中心に据えて、通信機能やサービスを融合させたサービスに対応していく旨が説明された。現在は参加各社による団体RCS Initiativeが設立されており、海外向けの一部のソニー・エリクソン製携帯電話で採用されているほか、実際の利用はできないものの、ソフトバンクモバイル向けのシャープ製端末でも採用されているとのことだった。


RCSでは異なるキャリアでチャットやプレゼンスの共有が可能に RCSではアドレス帳を基本に各機能を展開する

デザイン性を持たせた「かっこいい基地局」

外観にデザイン性を持たせ、景観にも配慮した基地局「Ericsson Tower Tube」
 同氏からは最後に環境に対する取り組みなどが説明された。その中で、新たな基地局として、コスト効率、環境負荷の削減に配慮しながらデザイン性を持たせたという「Ericsson Tower Tube」が紹介された。基地局といえば、郊外であれば武骨な鉄塔となっているのは国内外を問わず共通だが、Ericsson Tower Tubeは大きな煙突のようなユニークなデザインで、内部を中空とした構造を採用。景観に配慮するほか、エアフローの制御などで従来よりも省電力化が実現されているという。現在はスウェーデンのストックホルムに設置されているというこの基地局は、日本市場でも最近発売したとのことで、一部のキャリアが関心を示しているとのことだった。



URL
  日本エリクソン
  http://www.ericsson.co.jp/

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(太田 亮三)
2008/08/06 19:12


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