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接続ルール合同ヒアリング、NTTやソフトバンクが激論

 16日、総務省で電気通信事業政策部会・接続政策委員会合同ヒアリングが開催された。携帯電話や光ファイバー網などの普及を受けて、通信各社のネットワークを接続する際に、どのような規制が必要・不要か議論するため、関係各社からの意見を聞く会合となっている。

 3月6日に行われた第1回会合ではNTTドコモやKDDIらが意見陳述。ドコモ・KDDIともに会合後、報道関係者向け説明会も開催して自社の主張をアピールしている。2回目となる今回は、NTT東西やソフトバンク、テレコムサービス協会、関西ブロードバンドが意見を述べた。焦点は携帯電話の接続料だが、NTT東西が進めるNGNにおける機能のアンバンドル化、NTTグループの連携についても議論の対象となった。


NTT、「自社網通話の無料は接続料で原資回収できる仕組みでは」

 NTTグループのうち、今回はNTT東日本・西日本がそれぞれ意見を述べたが、陳述時間の多くはNTT東日本側からの説明で占められた。NTT東日本では、他国に比べて、先進的なブロードバンド回線網が整えられている日本において、光ファイバー網の普及に務めており、接続ルールの議論のうち、たとえば「屋内配線を複数事業者間で転用する」という指摘については、ユーザーの宅内にある設備のため、今後、転用・再利用できるようにすべく、事業者間で環境設備する必要があるとして、今後前向きに取り組む姿勢を見せた。

 携帯電話の接続料については、「指定設備として規制を受けるひかり電話のユーザー数が760万だが、携帯電話事業者のうち、非規制の事業者は2000万ユーザー(ソフトバンクモバイルのこと)となり、携帯電話事業の影響度はきわめて大きい」と指摘した。

 また、ソフトバンクモバイルやイー・モバイルのように、自社ユーザー同士の通話であれば無料とする仕組みについても触れ、「他の事業者からの電話がかかってくると接続料が支払われるが、見ようによっては、自社ユーザー同士の通話無料の財源は、他社からの接続料で賄っている、あるいはそれが可能な仕組みになっている。そもそも電話をかける際、ユーザーはどの企業の電話にかけるか認識しづらく、これは接続料を低廉化するインセンティブが働きにくいという構造ではないのか。携帯・PHSは、有限で貴重な電波を割り当てられた、数少ない事業者だけが展開しており、接続料について何らかの透明性が求められるのではないか」として、携帯の接続料に規制をかけるよう主張した。


800MHz帯は有利? 不利?

総務省で数々の主張を述べた孫氏

総務省で数々の主張を述べた孫氏
 続いて説明を行ったのは、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏だ。同氏は、公平かつ公正な競争環境が整えられていないために基地局展開などでのコストで差が出ていること、他国と比べコスト構造が接続料には反映されていないこと、固定電話の接続料は高く、携帯の接続料を値下げしても結果的にNTT東西の利益に振り返られてしまうことを指摘した。

 まず競争環境については、NTTドコモとKDDIのみに800MHz帯が割り当てられていることに触れた。2GHz帯で3Gサービスを展開するソフトバンクだが、NTTドコモやKDDIは2GHz帯に加えて、800MHz帯も3Gサービスに利用している。一般に、2GHz帯よりも800MHz帯のほうが電波が届きやすいとされており、孫氏は岡山県新見市のエリアマップを示して「ドコモの2GHz帯のエリアは当社よりも狭いが、800MHz帯の基地局を加えると、当社より広くなる。基地局数はドコモは74局、当社は159局と倍ほど違う」と述べ、歴史的経緯でソフトバンクモバイルに800MHz帯が割り当てられていないことは致し方ない面があるとしながら、800MHz帯を利用できるドコモやKDDIは、他社よりも設備投資面で有利な立場にあり、競争環境を公平にするためには事業者間のローミングを義務化すべきと主張した。


前回意見陳述したドコモだが、今回も山田社長が出席

前回意見陳述したドコモだが、今回も山田社長が出席
 これについてNTTドコモ社長の山田隆持氏は「確かに800MHz帯のほうがエリアカバーの距離は稼げる。しかし都心部では、大容量ネットワークを構築するため、エリアをいかに小さくするかという点に腐心しており、800MHz帯だから有利とは言えない。郊外では距離は稼げるが、伝送装置のコストが安い。結果的に800MHz帯と2GHz帯は、大きな差はないと考えている」と説明した。

 また基地局数についても触れた山田氏は「総務省に登録されているドコモの2GHzの基地局免許数は4万5000局ある。これに800MHz帯や1.7GHz帯の基地局が加わることになる。しかし、ソフトバンクモバイルの登録数は3万7000局。そしてリピーター(中継局)が5万5000局ある。リピーターにかかる設備コストは基地局の1/10、あるいは1/5と言われている。各社間で正確に比較するなら免許数で比べるべき」と述べた。これを受けて、孫氏は「ドコモばかり槍玉に挙げているが、KDDIは800MHz帯だけでエリア展開しており、コスト面で有利なのは事実」と指摘した。これに対してKDDI側は「現在は2GHz帯でもエリア展開しており、設備投資費がかさんでいるのが事実。周波数帯域による違い自体は否定しないが、事業全体の有利不利に致命的影響があるとは考えていない」とした。


ローミングは義務化すべきか

 競争環境の公平性をもたらすため、ローミングを義務化すべきという孫氏だが、委員からあらためて考えを尋ねられると「実際に800MHz帯がないため、繋がらないエリアがある。エリアカバーするためには莫大な費用がかかり、現実的には無理。ローミングが義務化されれば、そのローミングエリアの通話料をそのままドコモに渡しても良い。経営的には当社の収益にならなくてもユーザーを救済することが重要だ。逆に当社のエリアであれば繋がるという場所もあるだろう。そういうところではローミングを提供する意志がある」と述べる。

 これに対し、ドコモの山田氏は「イー・モバイルに対しては時限的な提携としてローミングしているが、やはり設備競争やサービス競争は、携帯業界の競争の源泉ではないのか。800MHz帯は必須のもの、あるいはオールマイティなものではない」と反論すると、孫氏は「設備投資したくても800MHz帯がないのだから、したくてもできない。設備投資したくないのではない。ローミングは、電波を持つもののある種義務ではないのか。ユーザーを救済するためであり、通信事業者のある種、社会的責務ではないか。精一杯、設備投資すべきというのは賛成している」と語った。


携帯・固定の接続料、海外と比較

 孫氏は、海外との比較を交えながら、携帯電話の接続料についても触れ、「ソフトバンクが高いと指摘されているが、周波数による格差などがある。たとえば英国では安いところと高いところの差は151%もあるが、日本は28%に留まっている。接続料の格差があるといっても、実際のコストの差はきちんと反映されていないのではないか」と述べ、コスト面の違いを踏まえれば、接続料は現状よりも大きな差になり得るとした。

 また固定電話と移動体の接続料についても海外のデータと比較しながら「固定は海外平均よりも高く、移動体は海外平均よりも安い。すなわち、固定はNTTの独占状態なので高い。もし携帯の接続料を半分にしても携帯事業者間でやり取りする額の利益差分は変わらないが、安くなった分の差益はNTT東西に行く。たとえば今年は54億円安くなるが、その分NTT東西とNTTコミュニケーションズの利益になるという計算。なぜ日本一稼いでいる企業に利益を付け替えなければならないのか、大変疑問」と指摘する。これについてNTT側からは「毎年、パブリックコメントを募集し、総務省の認可を得た上で接続料を改定している。接続料の設定手法は、これ以上透明性を高められないくらいだ」と反論するも、孫氏は「そうはいっても固定が高いのは事実。接続料は透明性を確保して完全にフェアにすべき。固定はもっと安くなり、周波数との格差なども考慮してフェアなモデルにすべき」とした。

 透明性の確保については、NTT東西やNTTドコモも同様の主張を行っている。KDDIのみ「携帯電話の接続料は、どの企業でもコストは一定かかり、あまり違いはないはず。必要以上の規制を定めることはない」として、固定電話の接続料は規制が必要ながら、携帯電話の接続料に関して規制撤廃すべきとしている。NTTやソフトバンクは透明性確保の観点では、主張を同じくするものの、具体的な算定基準については今後の課題となる。

 このほか携帯電話番号のポータビリティ制度(MNP)についても、ユーザー利益を考えれば、手続き時間の短縮化や事務手数料の無料化が必要とした。また、メールについても電話番号だけで送信できれば利便性が向上すると主張したほか、キャリアを乗り換えても少なくとも3年間はメールを転送すべきと提案した。これを受け、山田氏は「メールの転送やSMSなどについては、事業者間で議論している」と説明。孫氏は「事業者による自主的な取り組みの進みが遅い場合もある。総務省や有識者から指針を示してもらえれば、事業者間のまとまりが促進される」とした。

 孫氏は、固定事業関連でNTTが光回線をばら売りしないことや、名義人と回線使用者が異なるケースへの対応、光網で地上波テレビの再送信が可能なこと、ひかり電話に0AB番号が割り当てられIP電話は050番号となることなども指摘して、議論を進めるべきとした。


孫氏自らが報道陣に説明

ソフトバンク本社で孫氏が報道陣に説明を行った

ソフトバンク本社で孫氏が報道陣に説明を行った

透明性のある規格で接続料を算定すべきと主張

透明性のある規格で接続料を算定すべきと主張
 ヒアリング終了後、ソフトバンク本社で報道関係者向け説明会が開催された。同社の主張をあらためて紹介するもので、孫氏自らが熱弁を振るった。

 固定・携帯の接続料について質問された孫氏は「今回は、ソフトバンクの接続料が高すぎるという指摘もあるようだが、透明性を確保した上で算定すれば、ドコモやKDDI、NTT東西の接続料はもっと安くなり、当社はもっと高くなるはず。これは800MHz帯がないことによるコスト増や、ユーザー数の違いによるもの。必要なのは、フェアなフォーミュラ(規格)だ」として、公平・公正な環境作りを実現するためにも、透明性のある接続料算定が必要との見解を示した。

 ローミング義務化という主張に関連し、仮にそのような事態になった場合、インフラ整備の動機付けはどうなるのか。孫氏は「ローミングするのは限られた地域になるだろうが、そのエリアの通話料は全てインフラを持つ事業者に渡す。収益が上がるということで、インフラ事業者はエリア拡張の動機になる。また当社からすると1円も収益上がらず、できるだけ自前のネットワークを使ってもらえるようにエリア拡充することになる。ローミングもまたユーザーを救済するための措置として必要」と述べた。

 また同氏は、「最も重要なのは、利用者本位の接続ルールを定めること。今回、公聴会が行われたことは歓迎すべきことだが、本来の電波の所有者は事業者でも総務省でもなく、国民だ。公聴会もネットで中継して一般に公開し、国民の審判を仰ぐべき」とした。これに関連し、合同ヒアリングの開催より先に接続料関連の報道が為されたことに触れた孫氏は「一部の役人が先に結論ありきで進めているのではないか。2.5GHz帯割当のときに、KDDI系列とウィルコムに割当という報道がスクープされたが、そういった形で世論を誘導することはあってはならない」と述べ、ウィルコムが資金調達したという一部報道に対しても「2.5GHz帯割当のとき、ウィルコムに対する財務面の評価は最高点だった。当時、どのような理屈でそういう評価になったのか。政治には“大臣の任命責任”があるが、電波にも“割当責任”があるはず」と語り、オープンな場での議論の重要性を強く主張していた。


ユーザー本位での結論にすべきとした 接続料水準は同一にならないとの説明。この点は携帯各社は同じ見解だ
ユーザー本位での結論にすべきとした 接続料水準は同一にならないとの説明。この点は携帯各社は同じ見解だ

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URL
  合同ヒアリング開催案内
  http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/kaisai/090316_1.html
  ソフトバンク
  http://www.softbank.co.jp/
  NTT東日本
  http://www.ntt-east.co.jp/
  NTT西日本
  http://www.ntt-west.co.jp/

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(関口 聖)
2009/03/16 22:16


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