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「800MHz・2GHzに差はない」、ドコモがエリアの作り方を説明

 NTTドコモは4月16日、「接続ルールの見直し」に関する報道関係者向け説明会を開催した。同社では、同様の説明会を3月11日にも開催して自社の主張を説明したが、今回はソフトバンクモバイルの孫正義社長の主張を踏まえて、携帯電話で利用される電波の特性や、エリア拡充の手法などが紹介された。


周波数とエリアの作られ方

熱弁を振るう加藤氏

熱弁を振るう加藤氏
 説明を行ったのは、ドコモ取締役常務執行役員で経営企画部長の加藤 薫氏。技術畑出身という同氏は、電波の周波数とエリアの作られ方の関係から説明をスタートした。

 同氏は、まず「たまに『携帯電話は、北海道でも九州でもどこでも繋がりますね。電波が飛んでいくんですね』と言われることがあるが、手元の携帯電話から発信された電波がそこまで飛んでいくわけではない。近くにあるビルや鉄塔のアンテナに接続するだけ」と述べ、携帯電話が使えないケースとして圏外の場合や、高層ビルの上層階にいて数多くの基地局の電波をキャッチしてしまう場合、あるいは繁華街のような場所で同時に通話・通信する人が多すぎて繋がりにくい場合というケースを紹介した。

 圏外に対しては、基地局を多く設置してエリア拡充を図り、最近では地下鉄のトンネル内でも利用できる環境作りも検討しつつあるという。繁華街では、1つの基地局のエリアをできるだけ小さくして、その分数多くの基地局を設置する。1つの基地局にアクセスできる携帯電話の数は限りがあるが、多くの基地局を設置することで、繁華街全体で利用できる携帯電話の数を増やすという作戦だ。

 加藤氏は、エリア設計の苦労について「たとえばアマチュア無線では、大きなアンテナを使って東京から北海道や沖縄、地球の裏と通信する。月に探査船を派遣した場合も電波を使ってデータをやり取りする。電波そのものは、障害物がなければ、どこへでも飛んでいくが、その特性に反して携帯電話では1km〜2kmしか届かないようにして、そのエリア内のどこでもしみこむように、全国どこでも使えるようにしている。これがなかなか難しい」と語る。


電波の周波数とは

 国内の携帯電話は、800MHz帯や1.5GHz帯、1.7GHz帯、2GHz帯を利用する。ドコモのFOMAは800MHz帯や2GHz帯を主に利用し、他社ではイー・モバイルが1.7GHz帯を、ソフトバンクモバイルが1.5GHz帯や2GHz帯を使う。

 電波にはさまざまな特性があるが、携帯電話の場合、周波数については数値が小さい(低い)ほど届きやすく、数値が大きい(高い)ほど直進性が高まると説明されることが多い。携帯電話で利用できる800MHzがドコモとauに割り当てられていることから、総務省の会合などで、ソフトバンクの孫氏が800MHz帯よりも2GHz帯のほうが不利、といった論調で説明を行うことがある。

 加藤氏は、「MHz(メガヘルツ)やGHz(ギガヘルツ)は、1分間に振動する回数のこと。つまり800MHz帯は、1分間に8億回振動するが、2GHz帯はその3倍程度ということになる。周波数は、高くなればなるほど、光の性質に近づき、まっすぐ進むようになる。一方、低ければ低いほど、ちょっと曲がったりして、内側へ入ろう入ろうとするし、低いほど壁を突き抜ける力がやや高い。だから光は壁に遮られるが、電波は壁の向こうまで届く。そういった(電磁波の)特性からすると、そもそも800MHz帯と2GHz帯に(光と電波ほどの)大きな違いはない」とする。

 800MHz帯と2GHz帯の違いを見ると、理論上は伝搬損失が10dB程度あり、これは1つの基地局でカバーできるエリアで比べると、800MHz帯のほうが2GHz帯より2倍程度広くできる。この点だけであれば、「800MHz帯のほうが有利」となるが、アンテナの使い方を見ると、2GHz帯のほうがより小さなアンテナで済み、感度面で有利だという。そのため、実際には800MHz帯のほうが2GHz帯よりも1.2倍程度のエリア半径になる。


800MHz帯と2GHz帯の比較。理論上は2倍の差がある 一方、都心部では小セル化が進められている
800MHz帯と2GHz帯の比較。理論上は2倍の差がある 一方、都心部では小セル化が進められている

都市部では小さなセル、郊外では大きなセル

6セクタ基地局の導入も増大するトラフィックへの対処法の1つ

6セクタ基地局の導入も増大するトラフィックへの対処法の1つ
 1つの基地局がカバーするサービスエリアは、“セル”とも呼ばれる。携帯電話のサービスエリアは、複数の基地局を設置して、より広い地域をカバーするが、基地局1つ1つのエリアを“細胞(cell)”に見立てたことから、英語で携帯電話はcellular phone(セルラーフォン)と呼ばれ、1つのサービスエリアが“セル”と呼ばれることになった。

 携帯電話の電波は360度、どこへでも飛ぼうとするが、何の対策もせずに複数の基地局を設置すると問題が起きる。たとえば繁華街では人が多く、同時に通話・通信する携帯電話の数も多くなる。かつては「東京の新宿で、18時頃になると電話が使えないとクレームが来たこともあった」(ドコモ加藤氏)というが、現在では1つの基地局がカバーするセルの範囲を小さくし、繁華街全体に設置する基地局数を増やした。ただし、隣り合う基地局で同じ周波数を使ってしまうと干渉してしまう。そこで、一般的には「この基地局では周波数“A”を、隣では周波数の“B”を、AとBに隣接するところでは周波数の“C”を使う」といった手法が採られる。隣り合う基地局で、利用する周波数帯を徐々に変えて干渉を避けるが、使える電波には限りがある。そこで「Bの向こうにはAは届いてない。では、その周辺でAをもう一度使おう」という考え方でエリアが設計される。さらに、1つの基地局でアンテナを6つ設置して、エリアを6つのセルにする“6セクタ”という技術がFOMA開始時から導入されている。6セクタは、ドコモだけではなく、世界的には標準と言える手法とのことで、他社も技術を保有しているとのことだが、それなりに費用がかかるという。

 1つ1つの基地局のセルを小さくするため、ドコモではビルの上にあるアンテナの向きを地上を歩く人に向けて、下向きにしたり、横に飛ばさず、下へ飛ぶよう電波の位相に手を加えたりしている。また、屋内への届きやすさという点では、壁の向こうには800MHz帯のほうが届きやすいものの、窓からは2GHz帯のほうが届きやすいという。これらの要素を踏まえると、都心部では、よく飛ぶという800MHz帯であっても、2GHz帯と同じくらいのセル半径にならざるをえない。

 一方、郊外では800MHz帯のほうがより広いエリアにできるものの、山などの起伏もあり、理論値ほど2GHz帯よりも有利とは言えないという。


コストで比べる

 加藤氏は、「もし800MHz帯と2GHz帯で日本全国のエリアを作ると、800MHz帯の場合は都市部で4万5000局、郊外で1万局必要で、2GHz帯では都市部で4万5000局、郊外で2万局必要」という試算を提示した。800MHz帯と2GHz帯の差は、理論値ほどではないとしながら、この試算では、郊外における800MHz帯は、2GHz帯の2倍有利という基準が採用されている。

 では、基地局を設置するコストはどうなるのか。都市部ではビル屋上に設置するケースが多く、郊外では巨大な鉄塔を設置することが多い。また都市部の方がより多くのトラフィックをさばくために、基地局装置も高くなる。これらの要因を踏まえて試算すると、都市部と郊外の基地局コスト比率は、1:0.3となり、都市部の方が3倍以上高いという結果になった。ちなみに基地局1つあたり設置費用は3000万〜5000万円程度で、全国をカバーする基地局を設置すると、2GHz帯・800MHz帯のコスト比は5.1:4.8となり、5%ほど800MHz帯のほうが安い。


コストで比べると、800MHz帯と2GHz帯は5%程度の違いとなった 実際の設備投資状況
コストで比べると、800MHz帯と2GHz帯は5%程度の違いとなった 実際の設備投資状況

 実際にどの程度の基地局が設置されているか、加藤氏が示したデータを見ると、800MHz帯は3万504カ所、2GHz帯は4万5135カ所で、計7万5639局となる。これだけの基地局を設置するため、ドコモは約3兆円投資している。一方、ソフトバンクは3Gサービスを2GHz帯だけで展開しており、その基地局数は3万7471カ所、投資額は約1兆7000億円とされている。なお、ソフトバンク側では自社の基地局数を約5万5000局としているが、ドコモの資料では「そのうち約1万8000局はリピーターと推察。リピーターは、基地局よりも出力が小さくアンテナの高さも低く、単純に基地局とカウントして良いのか疑問が残る」と記されている。

 また、3月16日に総務省で開催されたヒアリングの席上で、ソフトバンクの孫氏が岡山県新見市のエリアマップを示して「ドコモの2GHz帯のエリアは当社よりも狭いが、800MHz帯の基地局を加えると、当社より広くなる」と主張した件について、加藤氏は「新見市の数値は孫さんの言う通り。ただ、隣接する都市では当社のほうが基地局が多い」と指摘。今回示されたドコモ側の資料では「新見市は補助金を活用した光アクセス基盤の構築をソフトバンク殿が受託したことで、全国的に有名」として、新見市の実情は全国的な傾向とは異なるとしている。


鉄塔共用、接続料の国際比較について

 各キャリアの競争を論ずる場合、郊外に設置されている鉄塔を各社間で共有すべきと提案されることがあり、ドコモでは「法規制ではなく、事業者間の協議で進めるべき」と主張している。これについて加藤氏は「サービスエリアは他社と競争する点であることから、過去には『この場所は当社だけ、他社はダメ』としたことがあったのは事実。しかし現在はエリア整備が進み、郊外での基地局展開はより安価にしようとして、シンプルな鉄塔にしていると、強度面の問題から自社分の設備しか搭載できないこともある。搭載できる余裕のある鉄塔については、費用はいただきつつ、貸し出すこともある」と説明した。

 他社に対して「鉄塔を共有しよう」と呼びかけても「不要」と回答されることもある。実例として示された山梨県の例では、これまで他社に247件照会したものの、「必要」とされたのは28件に留まっている。ちなみに山梨のデータは、今回の説明のために集計されたもので、他地域に比べて自治体からの共有の要望がやや強い地域であるという。


携帯電話用基地局の鉄塔の種類 設備共用は進められているが、他社に求められないときも
携帯電話用基地局の鉄塔の種類 設備共用は進められているが、他社に求められないときも

 また、総務省で開催されたヒアリングで争点の1つとなった接続料について、加藤氏は過去から現在までの推移を示して「最初の頃は、当社も他社さんも同様の傾向で値下がりしてきたが、ある頃(2003年度)から1社だけ傾向が異なっている」と語る。音声通話にかかるコストを実際のトラフィックで割った数値を見ると、ドコモ・KDDIは接続料とほぼ同じ傾向ながら、ソフトバンクモバイルは乖離しているとの指摘もなされた。

 海外よりも日本の接続料が高いという指摘についてもデータを示し、日本は海外よりも安い、あるいは同等のレベルにあると分析したほか、ソフトバンクモバイルが示した数値は「データが古かったりMVNOも含まれていないなどの違いがある」と指摘した。


接続料の推移。ドコモとKDDIは似たような曲線。 諸外国との比較
接続料の推移。ドコモとKDDIは似たような曲線。 諸外国との比較

コスト/トラフィックと接続料の比較 ソフトバンクの示したデータに誤りがあると指摘
コスト/トラフィックと接続料の比較 ソフトバンクの示したデータに誤りがあると指摘

 加藤氏は、エリア拡充は携帯電話事業者として当然努力すべき事柄として、「田んぼに苗を植える場合、1つ1つの苗が近すぎると根っこが絡み合う。横に広がらない根にして、縦に伸びる穂になるよう、品質改良を行い、収穫量をできるだけ上げるというのが、我々の努め」と述べ、競争の源泉となるエリア拡充に今後も取り組む姿勢を見せた。また今回の説明会を行った意図を問われると「総務省で行われた合同ヒアリングで、800MHz帯と2GHz帯の違いについてソフトバンクさんの主張を耳にしたとき、あの場では理解しがたかった。接続料については、一度当社から報道関係者向け説明会を行ったが、携帯電話で使う電波はわかりにくいものなので、基本的な事実を話そうと考えた」と語り、同社の主張の解説や、ソフトバンクへの反論というよりも、“携帯電話の基本”を広く知って欲しいための措置とした。



URL
  NTTドコモ
  http://www.nttdocomo.co.jp/

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(関口 聖)
2009/04/17 15:17


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