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日本のモバイルビジネス成長の鍵はキャリアとの「水平分離」

 3月26日に都内で行なわれた日刊工業新聞主催のフォーラム「国際市場をにらむモバイルビジネスの行方」で、「モバイルビジネスの国際化は日本市場に何をもたらすか」と題したパネルディスカッションが行なわれた。パネリストには、NTTコムウェア IT商品企画部 ビジネス企画グループ 担当部長の竹川直秀氏、日本通信 上席執行役員 兼 CTOの中井純氏、インデックス 代表取締役副社長の小川善美氏の3名が招かれ、日本工業新聞社 編集委員の八木沢徹氏がコーディネーターを務めた。

 八木沢氏は冒頭で、「モバイルビジネスの国際化は日本市場に何をもたらすか」というテーマよりも、「日本の企業やコンテンツは、どのようにして世界へ進出できるか?」が本題になることを添えた上で進行を開始した。

 まずは、各パネリストから自社の事業紹介が行なわれた。竹川氏によると、NTTコムウェアはもともとNTTの交換機などを造ってきた企業で、NTTグループの基幹システムの構築をはじめ、企業システムのSIなどを務めていることを説明。日本通信の中井氏は、ベンチャーキャピタルから出資を受けて6年前に設立した自社の経緯や、DDIポケットからPHS網を借り入れて法人市場を中心にMVNOとして展開している「bモバイル」のサービスなどについても紹介した。インデックスの小川氏は、自社がiモードサービスの開始と同時に1999年からコンテンツサービスを展開していることや、現在約80種類のコンテンツを提供していること、最近ではアジアを中心に海外展開を始めたていることなどを説明した。


左から、インデックスの小川善美氏、NTTコムウェアの竹川直秀氏、日本通信の中井純氏

iモードが海外で成功する可能性

NTTコムウェア 竹川直秀氏
 続いて進行役の八木沢氏から、この3月からドイツでもサービスが開始されたiモードが「海外でも発展していくか?」という最初の議題が竹川氏に投げかけられた。竹川氏は、1993年にNTTフランスの副社長に就任し、現地のISP立ち上げなどに係わってきた経緯から欧米事情に明るく、同氏は「日本でiモードが成功した要因から、海外での展開も予想できる」として、日本でのiモード成功の要因を挙げた。

 iモードサービスが開始された1999年当時、日本のインターネットはアナログからISDNへの移行が進む頃で、まだ「ネット後進国」であったのに加え、「パソコンの低普及率」や、米国などの車社会に対し、通勤時間などの「空き時間」が多く存在する日本の都市事情や、海外では家庭内で複数の回線を有することが多いのに対し、日本では各人が回線を所有することがなく、料金の低廉化が進んだ携帯電話に若年層が飛びついたことなどがそれで、これらの要因のもとにiモードが日本で成功したと分析した。

 これに則ると、「アジアにおいては先述の要因のいくつかが揃っていることから、iモードのビジネスモデル成立の可能性は高いが、欧米では難しい」と同氏はまとめており、「インデックスのアジア進出は正しいかもしれない」と小川氏にコメントした。対して小川氏も、「韓国や中国などのアジアでも、端末や環境が調えばコンテンツの需要は期待できる」と述べた。

 日本通信の中井氏も竹川氏と同様、「iモードが成功したのは、日本の特殊な環境によるもの」とコメントした。


日本のモバイル市場はキャリアの独占状態

日本通信 中井純氏
 議題は3Gサービスに移り、ここで中井氏は、現在の日本のモバイル市場がキャリアの独占状態にあることを指摘した。現在の国内キャリアは、ネットワークに加えて端末やコンテンツについても独占状態であり、端末はメーカーではなくキャリアブランドに、iモード・EZweb・J-スカイもコンテンツプロバイダーの主導ではなくキャリア主導のものになっているのが現状で、「こうしたビジネスモデルを2.5Gや3Gでも踏襲すると、発展は見込めない」とし、「メーカーやコンテンツプロバイダーはキャリアの奴隷状態から脱出し、グロバールスタンダードでキャリアから“水平分離”すべきだ」と述べた。

 これに関して進行役の八木沢氏から、NTT側の見解として意見を求められた竹川氏は、「コンテンツサービスはポータルを開放すべきであり、これについては既にドコモでも始めているところで、端末についても本来はメーカーブランドにすべきだが、交換機側と直結しているため、キャリアと切り離すのは難しいところもある」とコメント。コンテンツプロバイダー側の意見として小川氏は、「キャリアの収益となるパケット代や通信料がコンテンツプロバイダーにも分配されれば申し分ない」といった意向を述べた。


モバイルはIP化、すべてはオープンソースに

インデックス 小川善美氏
 続いて八木沢氏から、「今後FOMAにはどのようなコンテンツサービスが考えられるか?」と問われた小川氏は、「コンテンツ内で必要に応じて、付加価値の位置付けでショートムービーを取り入れる」と動画に着目した方向性であることを語った。

 ここから「映像のデジタル化」として、ドコモでも今秋を目途に商用化する予定の無線LANによる接続サービスやホットスポットなどの話題が上った。中井氏は、「こうした動きは日本ではまだ遅れているが、モバイルのブロードバンド化において、端末はIPv6の進化形の形態になるべき」だと述べ、「モバイルIPv6」の普及を迎合する見解を示した。竹川氏も、「モバイルでIP化が進めば、無線LANなどのサービスも早期に発展できる」とし、「モバイルはIP化、すべてはオープンソースにすべき」と語った。


日本工業新聞社 八木沢徹氏(コーディネーター)
 パネルディスカッションの終了時間も迫り、最後に八木沢氏から「モバイルビジネス市場の将来像」について、中井氏にとりまとめが求められた。中井氏はここで、経済産業省が予想した「10年後のモバイル市場像」を紹介。その市場予測では、大まかに言うと「10兆円規模に膨れ上がる成功のシナリオ」「衰退を辿る失敗のシナリオ」「その中間にあたるシナリオ」の3つの筋書きが描かれており、「ネットワークはキャリアの専売特許でなくなっている」という。「つまり、端末メーカーもコンテンツプロバイダーも、キャリアから切り離れていく必要がある」とまとめた。

 進行役の八木沢氏は、冒頭のテーマに対し「キャリアとの“水平分離”がモバイルビジネス成長の鍵になる」と結論付けて、同パネルディスカッションは終了した。


・ NTTコムウェア
  http://www.nttcom.co.jp/
・ 日本通信
  http://www.j-com.co.jp/
・ インデックス
  http://www.indexweb.co.jp/
・ 「国際市場をにらむモバイルビジネスの行方」フォーラム情報
  http://www.nikkan.co.jp/port/0326sinpo.html


(松下 麻利)
2002/03/26 21:18

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