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清水理史の「ザウルス MI-E1」レビュー
第3回:マルチメディア機能編

 最終回は、MI-E1で大幅に強化されたマルチメディア機能について紹介していく。MP3の音楽再生、MPEG-4の動画再生と多彩なマルチメディア機能を身につけたMI-E1の実力はどれほどのものなのだろうか。これらの機能を紹介しつつ、最終的なMI-E1の評価を考えていこう。


エンターテイメント性を身につけたMI-E1

シャープ ザウルス MI-E1
 これまで、ザウルスはどうしても「ビジネス」というイメージが払拭しきれずにいた。PDAとしての完成度が高いにもかかわらず、ザウルスが若年層や女性ユーザーにあまり支持されなかったのは、このビジネスという固いイメージが根付いていたからだろう。

 そこで、今回のMI-E1では、MP3音楽再生とMPEG-4の動画再生という2つのマルチメディア機能を前面に押し出すことで、ザウルスに新たなイメージを定着させようとしている。ザウルスにエンターテイメント性を持たせることで、これまでのビジネス的なイメージを払拭しようとしているわけだ。

 この2つのマルチメディア機能は、PDAを利用するシーンとして大きなウェイトを占める電車内での利用を想定して搭載されたものだ。現状、多くの人は1~2時間程度かかる電車内で、音楽を聴いたり、本を読んだりして時間を過ごしてる。その一方で、電車内というできることがかぎられた空間の中で、テレビやビデオを見たり、インターネットに接続したいという要望も持っている。つまり、これらの機能をMI-E1で実現することによって、新たな市場を開拓しようとしていることになる。


同時にインターネット接続も可能な音楽再生機能

オプションのリモコン付きヘッドホン(CE-RH1)は本体右上の端子に接続する。手元のリモコンで、再生・停止・曲の選択、ボリュームなどをコントロールできる
 これまでのザウルスでも別売りのMP3プレーヤーキット(CE-AP1)をオプションポートに接続すれば、音楽を再生することはできた。しかし、MI-E1の音楽再生機能が、これまでのザウルスと決定的に異なるのは、このような音楽再生機能を完全に内蔵している点だ。

 MP3プレーヤーは、本体の機能のひとつとして標準で内蔵されており、ヘッドホン用の接続端子も本体右上にきちんと用意されている。このヘッドホン用接続端子には、別売りのリモコン付きステレオヘッドホン(CE-RH1)以外に、市販の製品を接続することも可能となっており、手持ちのヘッドホンを利用して音楽を楽しむこともできる。

 ちなみに、再生するMP3ファイルは、SDカードやCFのフラッシュメモリカードなどに保存しておく必要があるため(本体メモリには保存できない)、別途SDカードなどが必要になる。しかし、CDから曲をMP3ファイルに変換したり、MP3ファイルを転送するためのアプリケーション(RealJukebox)が本体付属のCD-ROMに収録されており、MP3ファイル作成したり、作成したファイルをMI-E1に転送することが簡単にできる。


MI-E1に内蔵のMP3プレーヤー。CFまたはSDカードに保存されたMP3ファイルを再生することができる
再生時にアニメーションを表示することも可能。音楽に合わせて画像が変化する

 このように音楽再生機能を内蔵したことのメリットは非常に大きい。MI-E1では、音楽を再生しながら他の操作ができるいわゆる「ながら」機能をサポートしており、音楽を聴きながら、スケジュールやアドレスを確認することはもちろん、文庫やまんがを読むことが可能なのだが、従来のCE-AP1のようにオプションポートを占有しなくなったおかげで、今回から同時に通信をすることまでも可能となった。

 これは、NTTドコモのP-in Comp@ctを利用している場合、携帯電話をケーブル接続している場合のどちらでも可能だ。この結果、MI-E1では、音楽を聴きながらインターネットに接続してメールの送受信をしたり、Webページを閲覧することができるようになっている。今年の8月に発表されたMI-P10がデビューしたとき、本誌で「MP3再生とメールの送受信、この2つが同時にできる携帯端末が登場したら、さぞかし便利だろう」とレポートしたが、まさにこれが実現したことになる。

 これらの機能を電車の車内でMI-E1を使うシーンを想像してみてほしい。音楽を聴きながら、同時に文庫やまんがを読んだり、インターネットを利用する。このようなことが、MI-E1を使えば、現実に、しかもたった1台の機器で実現できるのだ。実際、この機能だけを目当てにMI-E1を購入してもまず損はしないだろう。


本体付属のCD-ROMにはReal Jukeboxが収録されている。このアプリケーションを利用すれば、CDからの音楽取り込み、ザウルスへの転送が可能となる

動画再生に過大な期待は禁物

 マルチメディア機能のもうひとつの目玉となるのは、MPEG-4の動画再生機能だ。MI-E1は、標準でムービープレーヤーという機能を搭載しており、これを利用してMPEG-4形式の動画ファイルを再生することができる。

 ただし、この機能に関して過大な期待は禁物だ。MI-E1で再生できる動画ファイルのフレームレートは最大で10fpsと低く、音声は問題なく聞き取れるものの、肝心の動画は決してスムースとは言えず、かなりカクカクとした印象を受ける。確かにPDAに動画再生機能を搭載したこと自体は評価すべきだが、このフレームレートでは、正直、実用性があるとは思えない。

 また、MI-E1で再生可能な動画ファイルは、別売りのビデオレコーダー(CE-VR1)を利用して、TVやビデオ、DVカメラなどからメモリカードに取り込むことができるのだが(64MBのSDカードで約2時間録画可能)、こちらの機能も多少中途半端な印象を受ける。CE-VR1にはチューナーが内蔵されていないため、TV放送などを録画する場合にはTV、もしくはビデオの電源をONにし、あらかじめチャンネルを合わせておかなければならない。CE-VR1には、タイマーによって指定した時間に自動的に録画を開始する機能が備えられているのだが(ザウルス側でタイマーの設定も可能)、肝心のチャンネルをセットできなければ意味がないだろう。


MI-E1に内蔵のムービープレーヤー。ASFファイル(映像:MPEG-4準拠、音声G726準拠)を最大10fpsで再生できる
CE-VR1の録画予約は、MI-E1内蔵のMOREソフトからも可能。設定後、メモリカードをCE-VR1に挿せば、予約設定が完了し、指定時刻に録画が開始される。日単位、週単位での定期的な予約もできる

 もちろん、ビデオ側でも録画予約を設定し、これと同時にCE-VR1で録画を開始するようにタイマーをセットしておけば、希望のチャンネルを指定した時間に予約録画できる。しかし、ビデオ側にテープをセットして、こちら側でも録画をするというのはナンセンスだ。利用用途としては、圧倒的にTV番組の録画が予想されるだけに残念と言わざるを得ない。

 よって、このCE-VR1は決してビデオデッキ的なイメージで利用できる製品ではないと言える。MI-E1の動画再生機能も短時間のビデオクリップを見るものと割り切った方が良いだろう。シャープではSSTで映画の予告編などをザウルスで再生可能な動画ファイルとして配布している。前述したCE-VR1の操作性に違和感を感じなければ、TV番組を録画して電車の中で見るというような使い方をしてもかまわないが、どちらかというと、これらのビデオクリップを再生して楽しむという使い方が向いているだろう。


意外に深刻なバッテリ問題

 ここまで、MI-E1の音楽再生と動画再生について紹介してきたが、これらの機能を利用する際にぜひ考慮しておきたいのが消費電力の問題だ。MI-E1のバッテリでの連続動作時間は、カタログスペック上は10時間(フロントライト消灯)となっているが、音楽や動画を再生したり、P-in Comp@ctなどを使って通信を行うと、この連続動作時間は極端に短くなる。

 具体的には、以下の表のような動作時間となる。通信、MP3音楽再生、動画再生と、どれをとっても2時間程度の連続動作が限界だ。つまり、通勤や通学に往復2時間かかるような人は、行きの電車の中で音楽を楽しみ、日中にPIM機能を利用すれば、これだけでバッテリをほとんど消費し、帰りの電車内ではMP3の再生ができないということになりかねない。

 ちなみに、MI-E1のバッテリは「AD-T51BT」という型番のリチウムイオン充電池となるが、これはシャープ製のMDプレーヤーなどに採用されているものと共通で、別売りもされている。中には予備のバッテリを持ち歩くことを考えるユーザーもいるかもしれないが、実はこれもあまり意味がない。このバッテリは単体では充電が不可能であり、ザウルスにセットしておかないと充電できない。2本のバッテリを入れ換えながら、2本とも充電するという手間を惜しまなければ、スペアを持つことも可能だが、あまり現実的ではないだろう。

 このようなバッテリ動作時間の問題は、全体的な完成度が高いMI-E1の唯一の弱点と言える部分だ。現状は、家と会社の往復で利用するなら、両方の場所にACアダプタを用意しておくなどして対応するしかないだろう。個人的にも大容量バッテリなどがオプションで販売されることを期待したいところだ。

【MI-E1のバッテリー動作時間】
通常時(フロントライト消灯)約10時間
P-in Comp@ctでの連続データ通信時約2時間
MP3音楽再生時(アニメーションON時)約2時間
動画連続再生時(フロントライト消灯時)約1時間40分
動画連続再生時(フロントライト最小時)約85分
動画連続再生時(フロントライト最大時)約45分


長所を活かし、弱点をカバーする使い方を

 以上、全3回にわたって新型ザウルスMI-E1のレビューをお届けしたが、MI-E1の完成度は、全体的にはかなり高いレベルにあると評価できる。PIM機能、通信機能、マルチメディア機能と、どの点を取っても満足できる出来にあるので、MI-E1をスケジュール管理など行いたいユーザー、メール端末として活用したいユーザー、MP3プレーヤとして使いたいユーザーと、どのようなユーザーにも安心しておすすめできる。

 店頭などでの売れ行き、デモ機に集まる人の数などを見ても、MI-E1は、これまでのザウルスシリーズにはない盛り上がりを感じさせるほどだ。来年以降は、今まで以上にPDA市場が盛り上がりを見せる次期と予想されるが、ぜひ、ここでのリーダーシップを取って欲しいところだ。それができれば、これまでザウルスが苦手としていた若年層や女性ユーザー層を獲得し、圧倒的なシェアを回復することも夢ではないだろう。

 もちろん、バッテリーの問題など、MI-E1にも欠点はある。しかし、大切なのはユーザーが長所と短所をよく理解し、長所を生かして短所をカバーするような使い方をすることだ。すべてのユーザーが完全に満足できるPDAなどというのは存在しない。自分の使い方をPDAに強要するのではなく、PDAに自分の使い方をある程度合わせるべきだろう。このような使い方をする限りは、MI-E1を購入しても決して損をしたとは感じないはずだ。




URL
  ザウルスMI-E1ニュースリリース
  http://www.sharp.co.jp/sc/gaiyou/news/001121-1.html
  ザウルスMI-E1製品情報
  http://www.ezaurus.com/


(清水理史)
2000/12/21 00:00

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