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東京の下町、谷中のブロードバンド旅館「ANNEX勝太郎」
ゼロ・ハリ ゼロ・ハリ
「日本のモバイルキング」、「中年ガジェットキング」など数々の異名を持つ。数多くのパソコン雑誌に執筆。購入した携帯グッズはそろそろトン単位に突入か?


 江戸幕府開府400年を迎える今年、東京の下町はどこも活気に溢れている。下町の定義はまちまちだが、インターネットメディアによると、「都市の市街地のうち、低地にある地区。主に商工業者などが多く住んでいる町。東京では東京湾側に近い下谷・浅草・神田・日本橋・深川などの地域をいう」(goo辞書より)となっているようだ。


下町、谷中のブロードバンド旅館

 今回は、東京の下町でも、昨今人気のスポットとなっている「谷中」の旅館に泊まる機会があったので、ごく一般的なビジネス出張などでは宿泊する機会の少ない江戸下町の雰囲気が強く残る谷中の「ANNEX勝太郎旅館」を読者の皆さんにご紹介したい。

 最近、谷中(ヤナカ)は「江戸のある街」としてタウン誌や観光ガイドに登場する機会も極めて多く、東京周辺の人はそのユニークな街の様子を知る人も多いだろう。元々、よそ者の筆者も、谷中は何度か訪れたことがあり、「お寺と墓地」、「坂道と猫」の街だと勝手に理解している。地理的には、高台である上野の山の西側に位置する谷を中心とした坂道の多い比較的小さなエリアだ。より詳しく街の成り立ちやその他の情報を得たければ、もうかなり昔から出版されている地元のタウン誌「谷根千」(ヤネセン:谷中・根津・千駄木の省略形)が素晴らしく良い参考書になるだろう。


谷中は墓地の街:JR日暮里北口出て徒歩1分で広大な谷中霊園に 谷中は坂道の街:スキーならナローなダウンヒル、猫の多い三浦坂


 「勝太郎旅館」は本館と別館(ANNEX)の2軒があり、両方ともこの「谷中地域」を含む東京都台東区にある。本館である「旅館勝太郎」は、上野公園のすぐ側の池之端というところにあり、すでに40年近い歴史あるジャパニーズスタイルの伝統的旅館だ。近所には、は東京国立博物館や西洋美術館、上野の森美術館、東京芸大奏楽堂や東京文化会館、等々、日本の芸術と文化を担う多くの施設が集中し、何れの施設にも徒歩で行ける便利なロケーションにある。

 一方、完成後3年足らずの新しい「ANNEX勝太郎旅館」も、「勝太郎旅館」と比較的近い台東区谷中3丁目にある。ただ位置の関係から、JR山手線か京浜東北線の「日暮里駅」か地下鉄千代田線の「千駄木駅」が最寄り駅となる。新幹線で東京駅に到着したゲストなら、東京駅で山手線に乗り継ぎ、「JR日暮里駅」下車が便利だ。北口から御殿坂を上り、NHK朝の連続テレビ小説「ひまわり」に登場し、一躍有名になった「ゆうやけだんだん」を下って、谷中銀座を通過、内田康夫のミステリー「上野谷中殺人事件」にも登場する「よみせ通り」を左折すると「ANNEX勝太郎旅館」はもうすぐだ。

 JR日暮里駅北口は広大な谷中墓地への一方の入り口でもあり、春には桜の名所となり、当然、周辺にはお寺も多く、お寺の似合う街につきものの野良猫も多い。晴れていれば、お昼を過ぎた頃から、空いた駐車場スペースや路地裏の日なたのあちこちで猫の「昼寝集団」を発見することが出来る。明らかに誰かが定期的に餌をやっているらしく、殆どの猫は良い体格と見ず知らずの人も怖がらないフレンドリーなマインドを兼ね備えている。


谷中は猫の街:日当たりの良い午後なら、集団昼寝猫が見られる よみせ通りに面して今回の目的の「ANNEX勝太郎旅館」はある

コンクリート造りのまだ真新しいANNEX勝太郎旅館は築3年 1階の入り口はどこか日本料理店と間違うようなエクステリアだ

料亭のような外観で、24時間ブロードバンド対応

 一見して、旅館というより料亭のような3階建てコンクリート造りの「ANNEX勝太郎旅館」は、真新しく清潔だ。玄関を入ると、目の前にチェックインカウンターと、その向かい側にインターネット・コーナー、奥からは、よみせ通りに面したダイニングスペースが目に飛び込んでくる。筆者が到着した晩も、すでに何人かの先客がチェックインの最中で、2台のインターネット可能なパソコンはすでに海外からの宿泊客が使用して熱心に調べものをしている様子だった。


1階入り口を入って正面のチェックインカウンターは国際色豊かだ 深夜で、やっとPCを使う人もいなくなって朝までしばしのお休み

よみせ通りに面したダイニング。旅立ちを急ぐ朝の朝食はここ! 2階・3階の客室にゲストを運ぶエレベータは一番奥に

 チェックインを済ませ、エレベーターで3階のシングルルームに入った。少し板の間の付いた約6畳プラスの和風スペースにはすでに布団が敷かれており、正面にある作りつけのユニット家具の側にはイーサネットのポートとACコンセントが用意されている。カテゴリー5規格のイーサネットケーブルはフロントで保証金を支払うことで借用は可能だが、昨今は細くて軽量、コンパクトなネットワーク・ケーブルがたくさん売られているので、「マイ・ケーブル」をモバイルPCと一緒に常時携帯するのもそれほど負担ではないだろう。

 もちろん、客室のブロードバンド・インターネット接続は無料で365日24時間可能だ。光ファイバで実質50Mbps以上のスピードを普段から体感しているような人はさほど快速とは感じないかもしれないが、自宅でADSLの8Mbpsを使っている筆者から見れば、自宅の回線スピードと比較して体感的に大きな遜色はなく、ビジネスマンの一般的な仕事には問題ないスピードであった。


エレベータを降りた3階の客室群。コンクリート打ちっ放しの廊下の壁と日本的な旅館というミスマッチな雰囲気が新鮮だ ごく一般的なビジネスホテルのようにバス+トイレ+洗面と約6畳の和室が「ANNEX勝太郎」の特徴だ

純和風の電気スタンドとイーサネットポートの組み合わせもなかなかシュールだ 近所の本屋で購入した地図を見ながら、快適なスピードで、翌日行く谷中の名所を検索

史跡が点在する歴史の街、谷中

 翌日の朝の朝食(洋食)は、前日に予約(800円)をしておけば、1階フロント前のダイニングコーナーでも食べられる。早朝の出発などが予定されている時には朝食の予約をしておくのが得策だが、旅館を出てほんの少し歩いて不忍通りまで行けば、喫茶店やファミリーレストランもあるので、宿で予約しなくても朝食に困ることはないだろう。この日の朝、筆者は時間的に多少余裕があったので、徒歩で、来るときと同じJR日暮里駅方面に向かい、御殿坂の途中にある喫茶店「ルノアール」で朝食をとってから、徒歩でもすぐ側の「岡倉天心旧居跡」を見に行くことにした。

 岡倉天心(1862~1913)は、明治を代表する日本の美術指導者であり、思想家でもあった。当時、東京美術学校校長として日本の美術復興を推進。その後、1898年に横山大観、下村観山らを評議員として、「日本美術院」を現在の谷中初音町に設立したことは近代史でも習う有名な史実だ。その後、「日本美術院」は茨城県に移転したが、谷中に在ったその跡地は現在「岡倉天心記念公園」となり、正面の「六角堂」内部には岡倉天心の座像が安置されている。

 谷中周辺は、岡倉天心以外にも、幸田露伴や、高村光太郎、夏目漱石、竹下夢二、朝倉文夫、森鴎外、樋口一葉、等々、数え上げればきりのないくらい多くの作家や芸術家の旧居や美術館、関連史跡が点在する歴史の街なのだ。


大都会のビジネスホテルでは想像もできない下町の風情が、窓から見える景色から感じられる 実際に谷中は東京23区の都会なのだが、そこには現在も江戸や明治が生きている

谷中のお勧めケーキショップ

 古いものを長く大事にする住民や、歴史的な記念物の多い古い街には必ずと言って良いほど、昔と変わらない美味しい和菓子屋さんがあるものだ。もちろん谷中・根津・千駄木も上野・浅草と同じように、超美味しい和菓子屋さんが坂道のあちこちに点在している。しかし、それらの詳しい紹介は江戸幕府開府400年に合わせて発行されている何冊もの「下町グルメガイドブック」に任せるとして、このコラムでは、谷中墓地のもう一方の入り口にあり、一見してミスマッチ感覚だと思われがちな大人気の洋菓子店をご紹介しよう。

 谷中墓地に参詣するには、JR日暮里駅の南北の各出口から石段を登って行く方法と、上野桜木方面から、春には見事な「谷中五重の塔跡桜並木」をくぐってゆく方法の2種類が一般的だ。ご紹介する「パティシェ・イナムラ・ショウゾウ」は、その上野桜木2丁目の交差点から谷中墓地の方向に入ってすぐ左側にある小さな街のケーキ屋さんだ。ケーキを買いに来た人が毎日のように並んでいるのですぐにわかる。ピュアな関西人の筆者は、よほどのことがない限り、東京人ほど、「食べるモノの行列」が好きではないが、ここのケーキは「並ぶ価値アリ」と判断した数少ないお店だ。

 お店の方も、並んでいるお客さんも、混むことに慣れているせいか、かなり長蛇の列でも処理は比較的スムースだ。店内に入ると、無料のレモネードがセルフサービスで提供されている。残念ながらイートインは不可能だが、購入後すぐに、表のベンチでケーキを食べている人を見かけることは多い。ケーキの味はもちろんだが、筆者は店内にある、ケーキを焼く沢山のオーブンのコントローラにも興味を持ってしまった。


墓地の参詣道のすぐ側に超美味しいケーキ屋さんというミスマッチが人を呼ぶ!? 夏場でも持ち帰り時間3時間はOKなので、ほぼ日本国内は楽しめる圏内だ。留守番の家族や彼女には間違いなく好評のはず!

「フローライフ」のススメ?

 長引く不況でビジネスマンの出張は減り、地方から上京しても宿泊出張が許されるケースは以前より圧倒的に少なくなっているのが現実だろう。また、宿泊出張であっても、一般的には24時間臨戦態勢の取れる都心のビジネスホテルやシティホテルに宿泊するサラリーマンが圧倒的なのだろう。しかし、そんなハードな時代だからこそ、たまには都会の雑踏から大きく離れ、まだまだ江戸の風情が残り、芸術と文化の香りのする「ディープ下町の旅館」にゆっくりと宿泊するのはどうだろうか? いつも同じハードなビジネス環境の中に身を置いていたのでは、それが普通になってしまって、決して新しい革新的なアイデアは浮かんでこないだろう。

 止まるところを知らず、どこまでもスピードアップする「ファースト・ビジネス」の世界は本当に我々全てにとって必要なことなのだろうか? そして、本当に人間はどこまでそれに追随して行くことができるのだろうか? 一方、マジョリティであるそれらの体制に嫌気がさし始めた一部の人達は「スローライフ」を提唱し、わざわざ田舎に住んでみたり、集めにくい高価な自然食品を掻き集め「スローフード」の開拓に熱心に努力をしたりしている。

 へそ曲がりの筆者は、「ファースト」でも「スロー」でもなく、ただその場の雰囲気や環境に逆らわず、流されているがごとく「フロー」な人生を送りたいと考えているが、読者の皆さんは、この「フローライフ」はいかがだろうか。そんなことやあんなことを、止め処もなくゆっくりと考えるには、「ANNEX勝太郎旅館」はベストな宿だろう。

はぶふぁん!



URL
  ANNEX勝太郎旅館
  http://www.katsutaro.com/indexj.html


(ゼロ・ハリ)
2003/11/27 11:19

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