ケータイ Watch
連載バックナンバー
東京の下町、谷中のブロードバンド旅館「ANNEX勝太郎」
[2003/11/27]

快適な工夫を凝らした下町のブロードバンドホテル「ホテル吉晁」
[2003/10/16]

沖縄「ラグナガーデンホテル」に泊って家具を探す!?
[2003/06/06]

ホテルのような大学の裏の、大学のような「山の上ホテル」
[2003/03/14]

890万個の煉瓦で作り上げられた伝統あるホテル
「東京ステーションホテル」
[2003/01/24]


2002年

2001年

2000年

モバイルセントラル
モバイルセントラル一覧へ
モバイル一宿一飯タイトルGIF
年末の喧噪の中、蒲田の天然温泉「ホテル末広」に泊まる
ゼロ・ハリ ゼロ・ハリ
「日本のモバイルキング」、「中年ガジェットキング」など数々の異名を持つ。数多くのパソコン雑誌に執筆。購入した携帯グッズはそろそろトン単位に突入か?


温泉旅館のようなビジネスホテル

 ロコでもなく、常に発想の貧弱な筆者にとって、「蒲田」と聞けば、かの有名なつかこうへい氏の「蒲田行進曲」か、刺繍やパッチワークファンにはとても人気の「ユザワヤ」発祥の地ということくらいしか思いつかない。そんな蒲田の駅のすぐそばに、なかなか捨てがたい温泉旅館のようなビジネスホテル「ホテル末広」がある。東京駅から京浜東北線の横浜・桜木町方面行きの下り電車に乗って、約20分くらいで到着する蒲田は、駅前に飲み屋やキャバレーその他のあらゆる飲食店や商店街が溢れる喧噪の街だ。

 JR蒲田駅の改札を出て西口のエスカレーターを下ると、駅前のロータリーに出る。左手の「東急プラザビル」横の通りを池上線・多摩川線のガード下をくぐって、すぐの道を右に折れ曲がれば今日の目的のホテル「ホテル末広」が見えてくる。ちょうど、ユザワヤの10号館の隣にあたるが、この近辺はユザワヤだらけであり、ただ「ユザワヤの隣」というと10以上の該当箇所があるので注意が必要だ。


JR蒲田駅は東京駅から20分少しで到着する 改札を出て西口を目指して少し歩く

東急プラザとコクミンドラッグの間を入ってゆく くぐった線路に沿って右に曲がるとホテル末広がある

 「ホテル末広」はれっきとした日本温泉協会会員であり、実際に地下から汲み上げた天然温泉がこのホテルの一番の売りなのだ。もともと、神奈川県から東京湾岸までの広範囲に渡って、地下数百メートルから千メートルの深さに多くの温泉脈が分布しており、ホテル末広の名物となっている「黒湯温泉」もその1つなのだそうだ。温泉と言ってもやけどをするような温度ではなく、湧出源泉温度は摂氏17.6度の弱アルカリ性の「冷鉱泉」なのだ。普通の温泉が火山性のモノなのに対し、「黒湯」は、古生代に埋もれた草や木の葉の成分が地下水に溶け込むことによってできたらしい。特徴はその温泉が真っ黒なことだ。

 ホテル末広の「黒湯温泉」は、無料で入湯出来る宿泊客以外のゲストにも有料(1050円)で開放されている。全体が頑丈な石造りの結構大きなお風呂は、まずその色に圧倒される。浴室内にはそれほど明るい照明は取り付けられてはいないが、一見して、明らかに「熱い墨汁」の中に入っている感じがする。備え付けのタオルは湯船の中には持ち込みを禁止されているが、別にこの黒い色が体に付着する訳ではないので安心していただきたい。温泉に興味をお持ちの方は、ホテル末広のホームページに詳しく書かれているので参考になるだろう。


料金は東京としては格安、朝食は無料

小さなフロントだが、民宿みたいにきめ細かに対応してくれる
 ビジネスマンがよく宿泊する最近のビジネスホテルや都市ホテルと比較して、この「ホテル末広」の特徴は、「黒湯温泉」だけではとても語りきれない。まず、時代に逆行するような超安価な宿泊料金が目を引く。筆者が宿泊した部屋は最も安価なシングルルームでバス・トイレ共用という、ちょっと昔の学生下宿やアパートのようだが、駅側で、なんと1泊6500円という安さだ。さらに、インターネット予約割引が適用されるので、そこから10%オフ。実際に支払った金額は、消費税込みでたったの6142円だった。

 確かに地方に行けばこのくらいの値段のビジネスホテルは見つけることはできるが、驚くことはまだまだあるのだ。まず簡単な無料の朝食がある。米国で言うところの「コンチネンタルブレックファースト」だ。そして、早朝だけだが、羽田空港に向けて送りの無料バスが運行されている。出張で早朝の便を利用するビジネスマンにとってはなかなかありがたいサービスだ。国内の馴染み客以外に、外国人の宿泊者の多いことでも、「ホテル末広」のグローバルなエコノミーぶりが伺える。


デスク周辺にコンセントが3つも!

机は広く、部屋も鰻の寝床型ではなくそこそこ快適だ
 どちらかと言えば「鰻の寝床」タイプの細長い部屋の多い日本のビジネスホテルだが、筆者の宿泊した「ホテル末広」の客室は、より幅があり正方形に近く、客室に居ても閉塞感が少ない。幅広の白いデコラ張りのデスクは大きく、何よりも多くのビジネスホテルや都市ホテルでまず見かけることの少ない「余剰コンセント」の多いことが素晴らしい。デスクの右側に2個、デスクの左側、電話機の下に1個と、合計3個ものコンセントがデスク周りに用意されている。これはパソコンを使いながら、ケータイ電話やデジカメに充電するタイプのロードウオーリア・ビジネスマンには有り難い仕様だ。

 どこのホテルの部屋でも宿泊客が着ていたコートやスーツを掛けるスペースがあるが、ホテル末広にも入り口を入ってすぐにそれらしきモノがある。ただ、ホテル末広の場合は、バス+洗面ユニットが個室内にないために、なかなか工夫を凝らした手作りのユニットが用意されている。いろいろ考えながら、作り上げていくと、最後にはこういうモノになるという見本のような家具なのだ。

 客室に備え付けの電話機は、いったんモジュラーボックスにきた配線を別のケーブルを使用し電話機に接続してあるので、電話機側のモジュラーコンセントを抜き、そのままモバイルPCのモデムポートに挿すだけでネットワークに接続可能だ。都心でもあり、筆者はこの夜は、客室電話経由ではなくAirH"のつなぎ放題で快適にネットワークアクセスを行なった。


手作りのようなユニット、便利かどうかは1泊では判断できない ホテルの部屋で自由に使えるコンセントは重要だ

電話機はモジュラーローゼットから引き出し線で接続されている この日の晩は電波の入りもよくAirH"で通信

セルフサービスの朝食は自分好みの味付けで楽しむ

 黒湯温泉に入り、ゆったりとした夜はいつもより遙かに寝付きが良く、朝は快適な目覚めだった。宿泊料金に含まれている無料モーニングサービスは1階正面のクロークと小さなロビーを通り抜けた奥の食堂で、ルームキーと交換で食卓に付くシステムだ。適当に切られた食パンやコッペパンを好きなだけ取り、自分で脇にあるトースターで好みの焼き加減にセットして焼く。コーヒーや紅茶は側面にあるハイカウンターの上に用意されたポットから注ぐ。冷蔵庫にあるサラダも無料だ。これらをトレイに載せて好きなテーブルに付く。

 テーブルにはバターやジャム、サラダドレッシングなども用意され、自分の好みの味付けでゆっくりと食事ができる。各テーブルの上にはなかなか綺麗なステンドグラスが飾られており、内部から照明が当たっていなくても朝の光でとても綺麗だ。よく見ると、ホテル末広のロビーや食堂はステンドグラスで溢れており、その詳細についてはホテル末広のホームページでも「ステンドギャラリー」のコーナーで紹介されている。


全てがセルフサービスの朝食を食べる食堂からロビー方向を見る 自分の好みの焼き加減でトーストを焼く。意外と楽しい

好みのテーブルに自分で朝食を運んでリラックス ホテルの中には至る所にステンドグラスの作品が展示されている

ロビーでは無料でインターネット利用ができる

ピンク公衆の横にポートハブが用意されている
 宿泊客は、クロークと食堂の間にある小さなロビーでソファにゆったりと腰を下ろし無料のインターネットを活用できる。現在のところ一般に公開しているのは、有線LANのみだが、無線アクセスポイント提供も設備的には可能だという。バックボーンは地元のケーブルテレビ局だそうで、実際のアクセススピードも快適だった。

 ロビーにあるピンク公衆電話の脇には、4ポートのイーサネットハブが用意されている。宿泊客にはフロントで希望を告げると、イーサネットケーブルを貸し出してくれるので特にケーブルを携帯する必要もなさそうだ。筆者は、1時間ほどオークションに出品している商品の売れ行きをチェックしたり、VPN接続でイントラネットに接続し、社内のメールを見たり、出したりして年内最後の仕事をホテル末広のロビーで終えた。

 多くの都市ホテルや大手のビジネスホテルチェーンが、スケールの中途半端さから、投資対効果を明確に見い出せずにブロードバンドインターネットアクセスや無線LANの設備導入に躊躇している間に、オーナー権限のハッキリしている小さなホテルや民宿、ペンションなどが続々と構内LANや無線LANを導入している事実はとても興味深い。インターネットやそれを利用した今年最大のキーワードになるであろう無線「ホットスポット」は、やはり、草の根カルチャーなのかもしれない。この連載では、ユーザーにとって便利なIT設備を強化して行こうとしているホテルをこれからもえこひいきで応援して行きたい。


ロビーではイーサネットケーブルを借りてインターネットできる コーヒーを飲みながらソファでくつろぎ、メールのチェックができる

・ 蒲田天然黒湯温泉 ホテル末広
  http://www.suehiro.co.jp/


(ゼロ・ハリ)
2002/01/23 18:08

ケータイ Watchホームページ

ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2002 Impress Corporation  All rights reserved.