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おとなのおもちゃタイトルGIF
Linux搭載で生まれ変わったザウルス
シャープ「SL-A300」
広野忠敏 広野忠敏
昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。
(写真:若林直樹)


Linux搭載ザウルス

Linux OSを採用した新ザウルス「SL-A300」。実売価格は5万円を切る程度
 いままでのザウルスは、シャープ独自のOSを搭載していたが、SL-A300ではUnixがベースとなっているOS「Linux」を搭載している点が新しい。Linuxというと、コマンドラインのユーザーインターフェイスを想像する方も多いとは思うが、SL-A300のインターフェイスは従来のザウルス同様グラフィカルなものが採用されている。基本となるユーザーインターフェイスは、WindowsやPocket PCのそれに近いものがある。

 搭載されているアプリケーションは、アイコン表示され、スタイラスをタップすることで起動できる。また、ウィンドウの上部にはアプリケーション切り替えのためのタブが、ウィンドウの下部には、Windowsのスタートメニューと同等のメニュー型ランチャやステータスを表示する領域などが用意されている。

 内蔵のアプリケーションは、スケジュール、アドレス帳、ToDoリスト、メール、メモ帳など、PDAの基本的な機能は備えている。ただ、最近のPDAの傾向としては、PDAの基本機能を備えた上で、音楽再生機能や動画再生機能などのマルチメディア機能、電子ブックやゲームなどエンターテインメント系の機能を充実し、特色あるものをリリースする傾向があるが、SL-A300ではそうした余分な機能は含まれていない。どちらかというとパーソナルなユーザーよりは、ビジネスユーザーやパワーユーザーをターゲットにしていると思われる。

 ビジネスユーザーやパワーユーザーをターゲットにしていると思われる傾向は、付属のアプリケーションを見ても明らか。PDAとしての基本機能以外にも、Excelのワークシートを編集できる「HancomMobileSheet」、ワードの文書を編集できる「HancomMobileWord」が含まれている他、パソコンとの連携機能などがかなり強化されているのが特徴。

 パソコンとの連携機能では、USBで接続したWindowsマシンから、SL-A300をストレージとして参照できる「ザウルスドライブ」、Windowsでキャプチャしたスクリーンショットをザウルスに転送する「ザウルスショット」、OutlookやPalmDesktopなどとスケジュールやアドレス帳との連携が取れる「IntelliSync for Zaurus」などが用意されている。


主な仕様

Linux OS搭載だが、アイコンメニューで、アプリケーションなどもグラフィックインターフェイスを採用。一見したところではLinux採用とはわからない
 ハードウェアの仕様は、OSとしてLinuxを、CPUはIntelのXSCale(PXA210 200HMz)を搭載している。ディスプレイは240×320ドット、6万5536色表示の3.5インチ反射型TFTカラー液晶(フロントライト付き)。本体サイズは約69.4×113mm×12.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約138gと非常にコンパクトかつ軽い。また、標準で、液晶を保護するための皮製の保護カバーが付属する。

 最近のザウルスといえば、スライド式キーボードという印象があるが、今回のSL-A300にはキーボードは搭載されていない。キーボードがないから、ここまでコンパクトにできたのだと思うのだが、少し残念だ。ちなみに、バッテリーはリチウムイオン充電池。フロントライト最大輝度で約4時間、フロントライトOFFで約12時間の使用が可能と、従来のザウルスと同程度の性能をマークしている。

 外部インターフェイスとしてはSDメモリカードスロットを搭載。パソコンとの接続はUSBで行なう。ちなみにクレードルは別売で、本体に付属しているケーブルでパソコンとの接続および充電を行なうことが可能だ。また、別売のコミュニケーションアダプタを使えば、CFタイプの周辺機器などを利用することができる。本体だけでは通信手段がないため、通信をしたいユーザーはコミュケーションアダプタを購入する必要がある。無線LAN、PHSカード、LANなどが利用可能だ。ちなみに、コミュニケーションアダプタにはバッテリーが搭載されているので、本体のバッテリーを使うことなくCFカード類が利用できる。これは、通信ヘビーユーザーにとっては嬉しい配慮だといえる。


シャツのポケットに入るサイズで重量は約138g。携帯電話よりじゃっかん重い程度で、コンパクトかつ軽量 SL-A300(左)とiPAQ Pocket PC(右)を並べてみた。マルチメディア機能を搭載した最近のPDAと比べ、情報を持ち出すことに的を絞った仕様で筐体もコンパクトだ

オープンソースOSを搭載したメリット

 SL-A300の内蔵アプリケーションに関しては、PDAとしての基本機能は満足しているが、マルチメディア系アプリケーションに乏しいなど、現在発売されている他社製のPDAと比較しても、やや見劣りする部分がある。しかし、LinuxというオープンソースOSが採用されていることは、こうしたデメリットを上回るほどの大きなメリットをユーザーに与えてくれる可能性を秘めているのだ。

 オープンソースとは、プログラムやオペレーティングシステムの元になるソースコードが広く一般に公開されていることを指す。LinuxのようなオープンソースOSでは、そこで動作するさまざまなアプリケーションやプログラムもオープンソースとして公開されるという「文化」があるのだ。

 たとえば、誰かがSL-A300用のアプリケーションを作ったとしよう。SL-A300はLinuxを採用しているため、ユーザーが作成した多くのアプリケーションは、オープンソースとして提供されるだろう。プログラムの元になるソースコードが公開されるということは、知識があればプログラムの不具合や使いにくい部分を直すことも、新しい機能を追加することもできるということだ。つまり、オープンソースにすることで、ユーザーが独自のプログラムを作って提供するという状況を一層加速させることができるのである。これは、今のLinuxを取り巻く状況を見ても明らか。Linuxはユーザーの手によって、パソコンに限らずPDAで動作できるバージョンも作られているし、アプリケーションも数多く存在する。

 SL-A300にもこの状況は十分に当てはまる。Linuxを搭載したザウルスは、先にアメリカで発売されたのだが(SL-5000シリーズ)、発売から数カ月しか経過していないのに、かなりの数のアプリケーションがユーザーによって作られている。たとえば、Linuxザウルスで動作するWebサーバーやftpサーバーなどを入手することもできるし、音楽再生などマルチメディア関係のアプリケーションもユーザーの手によって提供されつつあるのだ。

 PDAの世界では、LinuxのようなオープンソースOSを搭載したものはまだまだ少ないが、オープンソースの「文化」によって、Linuxザウルスを取り巻く環境は一気に加速される可能性がある。もちろん、専用のプログラムを作ったり、プログラムを改良するといったことは、十分に知識のあるパワーユーザーにしかできないことだが、Linuxザウルスがパワーユーザーに普及すれば、「ソースコードって何?」っていう普通の利用者が十分な恩恵を受けられるような状況になるのである。

 ただ、いくら加速する可能性があるといっても、PDAとLinuxの時代は始まったばかり。Linuxにはあまり興味はない、PDAを本来の意味でのPDAとしてしか使わないというユーザーにSL-A300が向いているかといえば、そうではない。現在の段階では、初心者はSL-A300を購入するよりも、Pocket PCやPalm OSといった、すでに十分な情報が蓄積されているPDAを購入したほうが無難だといえる。


液晶を保護するカバーは標準添付で、取り外し可能。色違いの交換用カバーなどもオプションで用意されることを期待したい SL-A300を背面から見たところ。左側に黒く見えるのが赤外線ポート、その左下が電源ボタン。SDカードスロットの左側にあるポートはヘッドホン端子

評価(最高点は★5つ)

イバリ度 ★★★★★  とりあえずターミナルをインストールして、ネットワーク経由で自宅のサーバにアクセスするとか、Apacheをインストールして、SL-A300をWebサーバにしてしまうとか……まあ、一部の人にしかイバれませんが。
実用性 ★★  PDAの基本機能は満たしてますが、最近の流行であるところのマルチメディア機能に弱いのが問題。PDAで遊びたいという人には向いていないでしょう。
お値段 ★★  PalmOS搭載機やPocket PCなどと比較すると、やや高価。
価格 4万9800円(実売)  1年もすれば次のバージョンも出るハズってことで、予想利用時間は1年。Linuxに明るいなら間違いなく買い。サーバーを立てるとか、今までのPDAではできなかった面白いことがいろいろできます。こうした遊び方はあまり実用的ではないし、一般のユーザーにはあまり関係ありませんが、面白いから問題ないでしょう。また「Jeode」も搭載しているので、Javaアプリケーションも実行可能となっています。まさに、いつでもどこでもとりあえず「telnet」な、Unixウィザード向けPDAだと言えるでしょう。
予想利用期間 1年くらい
1日あたり単価 136円


・ ザウルスSL-A300ニュースリリース
  http://www.sharp.co.jp/corporate/news/020624.html
・ ザウルスSLシリーズ製品情報
  http://sl.ezaurus.com/index.html
・ ザウルスソフト開発サポートサイト「ザウルス宝箱Pro」
  http://more.sbc.co.jp/


(広野忠敏)
2002/09/19 16:03

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